表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える?【異世界トランザニヤ物語】  #イセトラ R15    作者: 楓 隆寿
第0幕 〜妄想図鑑と神代魔法士〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

20/69

『蛾・メッシュ』

 






「どうやら、例の奴らが動き出したようだぞ」


「マジか……」



 黒銀の目の友の顔色が変わった。

 神々は下界を覗き込む。








 ◇(主人公のゴクトーが語り部をつとめます)◇











「ありがとう、助かったよ」


「もう日暮れだ。早めに帰りなよ」



 西に沈む茜が紺空に変わり、星々が煌めき始める。


 村の若者に案内され、ようやく目的地に着いた。



 お礼に金貨を一枚───手渡す。



「……ふっ、 お主、礼をわきまえてるな」



 若者の仕草はまるで老齢の貴族のよう。 顎に手を添え口が綻ぶ。


 

 その話し方ッ! 



 ニコニコ笑いながら、若者はそのまま去っていく。



 年寄りか?……ったく。


 彼の背中を見送った。



 


「ここかぁ」



 『ロカベルの魔法薬材と薬店』



 窓ガラス越しには、薬材がびっしり並ぶのが見える。



 

 道のり……。

 長かったんですけども?



 苦笑しながらため息をつく。




「ヤバイ時間がない!」



 慌てて店の扉を肩で押す。




 カラン



 ようやく辿り着いた、って感じだ。




 その瞬間───



 若葉のみずみずしい清涼感が漂う。


 まるで、山中の澄んだ空気の中にいるような感覚。



 大きく息を吸い込む。



 薬草とともにハッカ油の爽やかな香りが心を落ち着かせた。



 ガラス瓶に光が差し、緑や琥珀色がきらめく。


 見渡す限り、薬瓶や薬草が所()しと並んでいる。




 ───その時。



 カウンターの向こうで立っている女性が俺に声をかけた。




「いらっしゃい。探し物かしら?」



 しっとりとした、つややかな声と美貌────白衣をスラリとまとう。



 美しい緑碧色の髪。


 長い耳と滑らかな白い肌。



 ふわりと漂っていた爽やかな香りがバニラのように甘く変わった。



 潤うエメラルドの瞳で彼女が俺に近づく。



 柔らかな笑みを浮かべる、その美女────"おねいさん”がこう言った。



「ふふふ。顔を真っ赤にして……可愛い坊やね。……魔法回復? 

 体力回復かしら? 麻痺や毒の回復ポーションも揃ってるわよ。

 それとも……若いのに────"あれ”が欲しいの?」




 最後の一言───艶やかな声の中に含まれる揶揄(やゆ)するような響き。




 バウンッ!




 見つめる彼女の視線に心臓が跳ねた。




 なんだ……。


 この綺麗なおねいさん……と、顔を床に落とす。



「ふふ。坊やね」



 彼女の声に顔を上げた。



 ”たわわ”ッ!


 

 俺の目を奪った。


 あれっ? 目が。 目が霞む。



 身体が宙に浮く感覚。



 目の前がゆらゆらと揺れ出す。

 意識が遠のく。



 視界がぐにゃりと歪み───俺は”自分の癖”の世界へ入っていった。






 【妄想スイッチ:オン】


 ──ここから妄想です──


 

「けけけ……」


 


 谷間から覗く魔物『蛾・メッシュ』が北叟笑む。



挿絵(By みてみん)


(*ゴクトーの妄想上の魔物)


 

 強敵を目の前にして、奥歯がギリっと音を立てる。



 紫の翅には二つの目。



 威嚇なのか……?



 翅を広げた。



「ふっ…… 『ジョウヨク・フクロウ』の笑みのようだな……」



 だが、握る拳に汗が滲む。


 張り詰めた空気が漂う中───



 バフッン バフッン



 煌びやかな鱗粉を放つ。



 次の瞬間────



 チラリ///



 『蛾・メッシュ』がこちらを見る。



「…っ……”ナマメカシ”のスキルかっ!」



 また、チラリ///



「くっ!」



 肩が震え膝が落ちる。



「ふふふ」



 『蛾・メッシュ』は笑みを浮かべた────。




【妄想スイッチ:オフ】


 ──現実に戻りました──




 

 俺は意識が戻り、我に返った。



「”はっ” ……蛾・メッシュだと?」


 この時、『鼓動』が頭に妄想図鑑のページを送った。




 ***



 妄想魔物図鑑 No.004


 《蛾・メッシュ》(ガ・メッシュ)


 ■種族:幻影魔獣(妄想由来)

 出現地:薬師の谷間(主に異世界薬局)

 ランク:A級妄想幻獣



 ステータス(妄想補正あり)


 ■スキル一覧


【ナマメカシ】


 対象の視線を引き寄せ、思考力を一時停止させる。MP10消費。

 → 発動時、対象は「……っく! なんだこれ……ッ!」と膝をつく。


【チラリズム・ウィング】


 薄紅色の斑点を翅で隠したり見せたりし、注意力を撹乱する。

 全体魅了(確率高)。


【誘惑の鱗粉】


 艶やかな鱗粉を振りまき、対象の判断力を一時低下。

 状態異常「魅了」「混乱」を付与。



【ジョウヨク・フクロウの微笑】


 ただ、笑うだけ。だが強い。強烈な羞恥心を植えつける必殺妄想技。



美胸防御壁パーフェクト・ボイン・シールド


 攻撃しても目が行ってしまい、命中率が大幅に下がる(物理攻撃無効:♂限定)



…………


 ***



 

 滲む汗が目に入る。



 まともに息すらできない。



 うつむきながらポツリ。



「"あれ”以外のポーション……五本ずつください……」



 意味もわからず、ただ注文を告げる。




 彼女と目が合う。



「か、かわいいわね」



 彼女は悪戯っぽい笑みを浮かべ、口元に手を当てて笑う。



 背中にもじっとりとした汗が滲む。



挿絵(By みてみん)



(※彼女の衣装は異世界の薬師制服をベースにした特注のコスチュームです。

 ※デザイン上の露出はありますが、下着ではありません)



 心臓がっ!



 大きく息を吸い込む。



 その目ッ!

 やめてほしいんですけども。




 思いながら視線を窓ガラスに向けた。


 対面の店の松明に火が灯る。


 ゆらゆらと揺れるのをじっと眺める。



 この時、ふと頭に浮かんだ。



『エルフは見た目に反して、年齢が大きく違うからな。はっはははは』



 ってな。 師匠が言ってたのを思い出す。



 なんとなくな。 口が勝手にだ。



「騙されるもんか……」



「っえ?」



「いや……何でも……HAHAHA」



 小さく漏れ俺は苦笑する。




「用意するわね。ちょっと待ってて」



 彼女はカウンターへ戻り、短いスリットから網目の美脚を覗かせる。



 色っぽすぎるだろ?  ここ薬屋だろ?



 息つく暇もない。


 

 鼻唄まじりに彼女が薬瓶を並べ始める。




 独特な形状の小瓶。 


 揺れる色とりどりの液体。




 さすがにこれくらいの色分けなら分かるぞ……。


 ん?……でも……と、小瓶を凝視。




 ふと、彼女が口角を上げ上目遣いで口を開く。



「全部で金貨三枚ね。おまけも付けとくわ。た~くさん買ってくれた、

 ワタシ好みの坊やにね……ふふふっ」




 そのしゅんかん。

 ↑……心の動揺だ。 察しろ。



 “坊や”って! ガキ扱い、すんじゃねぇ!




 心の中で叫んださ。


 

 つややかな声が響く中、彼女の唇には意味深な笑みが浮かんでいた。


 表情はどこか妖艶さを感じさせ、周囲の空気を一変させる。



 金貨三枚を慌てて渡し、『アイテムボックス』に放り込む。



 その時、彼女の表情が一変した。 



「気をつけて……割れるわよ……ワタシの薬たち……」




 そう言って息をつき、肩を下げる。



 その顔はかすかに、かげりが見えたんだ。



 どうしたんだ?  



 チラリと彼女を見る。




 その瞬間、柔らかい笑みを浮かべる彼女。



「また来てちょうだいね~。 ”特別サービス”しちゃうから〜」



 言い終えると「パチッ」とウィンクを寄越す。



 まるで、”魅惑の魔法”にでもかけられたように。


 心、奪われたよ。  見りゃわかるよな。



 狼狽える俺を他所に、次の瞬間───



 chu♡



 色っぽい投げキッスが俺の♡(ハート)に───”呪い”もかけた。



 固まる俺。



 っく! こ、このおねいさん……。


 侮れねぇ!



 俺は彼女の目をそらしつつ、なんとか言葉を絞り出す。




「ど、どうも……」




 カラン




 その場から逃げ出したよ。 



 心の中の余韻と言いますか……なんと言いますか……。


 わかるかな?



 店に振り向きしばらく佇む。



「魔性のエルフだな……」



 ポツリ。



 大きく息をつき、雲ひとつない黄緑色の満月を眺める。




 呪いの類だろうか?


 いや、麻痺の魔法か?



 解けるのか……俺っ!



 深呼吸して気を落ち着ける。




「まあ……いいか」



 ……で、結局パンは買えなかった。



 必要なポーションは手に入った。


 これでダンジョン攻略には困らないだろう。


 なんてな。



 ちょっぴりの”満足感”が意気揚々と足を進める。




 だがしかし。  ”方向音痴”発動だよ。 


 

 冒険者としては致命傷とも言える俺の弱点。



 まるで道自体が変わったみたいだ。



 あれ? 宿の名前、なんだっけ……?

 やっちまったか?



 冷や汗が滲む。

 途方に暮れながら路地を彷徨う。



 角に大きく伸びる黒い影。



「けけけ」



 噛み殺したような笑い声に背筋が凍る。


 急いで影に近づく。



「嫌な【覇気】だ……」



 初めて感じる異様な【覇気】。


 何かに付き纏われてるような感覚。


 だが、師匠の柔らく優しい【覇気】とは……違う。


 俺は注意深く周囲を見渡す。



 だが、そこには───誰もいなかった。  


 肩をすぼめ歩き出す。




 やがて、朝方に見かけた小さな教会が目に入った。




 ほっと息をつく。


 メインストーリーに向かって歩き出した。



「やべ!」


 

 路地を抜け、苔むしる石畳に───”コケ”た。



 毎度のことだよ。



 膝に力を込め再び、歩き出した。




 だが、メインストリートの先に、赤と桃色の点々が目に入る。 


 それは朝に通った酒場の付近だった───。




「ん?」










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ