表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

194/202

ワイバーン討伐編 24 〜ワイバーンの肉と仲間の気遣い〜



 ワイバーン討伐編最終話です。

 ブックマークと高評価ありがとうございます ♪( ´θ`)ノ

 とても励みになってます。

 




 「ぐぅ〜、ぐぅ〜」


 (いびき)の音が天界に響く中、黒銀の目を細めるトランザニヤが零す。


「東雲さんの料理は、いつも華やかで、上品かつ旨いな」


 そう言いながら器用に箸で焼き魚をつつく。


 一方でふかふかの雲の上に「大の字」になる神シロを横目に、

 女神東雲が口元を綻ばせる。


「お褒めの言葉をいただき、感謝ですわ。

 ……にしてもうちの旦那様ときたら」


 その言葉に、眼尻を下げるトランザニヤと、

 ニコリと笑う女神東雲が下界を眺める。



 

 ーーその頃、ゴクトーはデカ過ぎる報酬を得て、

 師匠譲りの特大『アイテムボックス』に大きな布袋を収め終え、

 山積みのワイバーン肉に息を呑んでいたーー。



 


 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇





 ハウゼン支部長とバグマン親方が、別棟を出ていった。


 親方に率いられた作業員たちも、軽く頭を下げ、

 疲労の色を隠しきれないままギルド支部へと戻っていく。


 その場に一人残ったエリナ・エイマスがギルド別棟の作業場を見守る中、

 山積みのワイバーン肉を俺たちは分配し始める。


 作業台のワイバーンの肉を見渡し、

 アカリがにこやかに唇を滑らせる。


「ふふふ。これ、毎日食べても三年は持つんじゃないかしら」


 その言葉を耳にしつつ、

 一方ではパメラとジュリも肉の山を見ながら繁々と零す。


「燻製にもできそうねん」


「コラーゲンが多いのは、この部位ね」


 挿絵(By みてみん)


 

 肩肉やもも肉とそして柔らかそうなヒレ肉ーー

 部位ごとに整然とわけられた、その量は圧巻。


 20体分のワイバーンの肉を、7人の仲間とコガラで均等にわけていく。


 「単純計算で、一人約、3体分の肉が手に入るって訳ね!リーダー」


 ミーアのその言葉に思わず、うっぷとむせかえる。

 そんな中、アカリが目を輝かせながら俺の耳元で囁く。


「しばらく、お肉には困らなさそうですね……ダー様♡」


 その表情はどこか艶っぽくーーまさに肉食女子の代表と言えるだろう。

 彼女がワイバーンの肉を大事そうに、

 『アイテムボックス』にしまいながらうっとりしていた。


 「ああ、食べ飽きないと良いがな」


 言いながら、口元を緩めたーーその矢先。

 山積みになった肉からミリネアがコガラの取り分を示す。


「ご主様、これがコガラの分です」


 仲間たちの気遣いで、活躍したコガラに多めの肉が配分された。


「良かったな!」と、コガラの頭を撫でる。


「ピピィ〜♬♪ピィ〜〜〜♬♪」


 コガラが小さな身体で喜びながら、高い声で鳴いた。


「思う存分食べられるぞ、コガラ」


 俺は『アイテムボックス』に収めつつ、

 改めてこの便利さに感心する。

 ーー中に入れたものが、

 どれだけ時間が経っても劣化しないのは、本当に不思議。


 博識のミリネアなら、その理屈を上手く説明できるだろうか。

 そう思いながらミリネアに尋ねる。


「ミリネア、ちょっと訊いていいか?」


「何なりと、ご主様」


「『アイテムボックス』って、

 なんで食べ物を入れても、そのままの状態で維持できるんだ?」


 そう尋ねると、ミリネアが微笑む。


 俺がアホな質問をしているように見えたのだろうか。

 けれど、表情は真剣ながらも優しい笑みを見せ、

 それでいて丁寧に彼女が説明を始めた。


「ご主様、『ズードリアの歴史大鑑』によれば、

 太古の大戦の頃、『始祖の一族』がーー

 各種族に『アイテムボックス』の作り方を教えたとされています。

 これは、【亜空間】と、

 現在を繋げる魔法の一種なのです」



「また、『始祖の一族』か……よく出てくるな。

 何だか、もう聞き慣れてきたよ。

 【亜空間】と繋げる魔法かぁ……まるで【神】のようだな」


 そう漏らすと、《「そうですね。ご主様」》とミリネアの声が顳顬に響く。


《「続けてくれ」》


 俺の念話にミリネアが軽く首頷しながら、紡ぎ始める。


「【亜空間】には〝刻〟の概念がないため、

 中に入れたものは時間が経っても変化はしない。


 また、この空間には特大・大・中・小・極小といった、

 スペースの魔法概念があり、

 それぞれにーー収容可能な量が決まっていると記されていました」



 そうか、だから『アイテムボックス』には、

 サイズの区分があるのか……。

 それにしても『始祖の一族』って、

 どこまでーーこの大陸に影響を残してるんだ?


 

 胸中で沈め、流れるような口調で説明するミリネアに、思わず感心した。

 一方、隣で話を聞いていたアリーが、驚いた声を上げる。


 「僕も知らにゃかった!」

 

 「へえ……そうなんだね。なるほど」


 ジュリもポツリと感心したように漏らした。



 仲間たちがミリネアの話を聞く中、耳を傾けながらも、

 山積みになったワイバーンの肉をじっと見つめ、

 クロニクが目を輝かせていた。


「美味そうだな」


 その言葉を受け、気を効かせたジュリが肉塊を差し出す。

 どこか遠慮がちに肉塊を受け取るクロニクが零す。


「いいのか? オイラ、何もしてないが……」


「いいのよ。こんな量、食べきれないんだし!」


 返事をするジュリが頬を朱に染めた。


 ジュリに続き、アリーやミーアも次々と肉塊をクロニクに差し出す。


「リーダー、いいよね?」


 ミーアが頬を朱に染めながら控えめに確認してくる。


挿絵(By みてみん)


 その肉のカットがハートになっていたので、思わず口元が緩む。


「ああ、もちろんだ」


 俺の言葉にパメラが明るく声をかける。


「仲間なんだから当然よん、クロニク皇子!」


 そう言ってバシッとクロニクの肩を叩く。

 なんとも彼女らしい仕草だ。

 皆の優しい仕草と行為にクロニクが少し照れくさそうに笑った。


 一方、空気を読まない男が頬を朱に染めながら零す。


「先生……オラ嬉しいんさ。優しい先生の傍にいられで」


 そのノビの言葉にパメラが顔を背けーー


「貴様に優しくした覚えはないいいいい!」


 そう叫びながら振り返る。


 ”ブルンブルン”


 彼女の揺れた胸の『爆弾(ダイナマイト)』が爆風を巻き起こす。


「しだっけええええええええええ!」


 ぐるぐると回転、巻き込まれたノビの絶叫が作業場に響く。



挿絵(By みてみん)

 


 ドシンとした着地の音とともに、

 ノビが作業場の入り口まで吹き飛ばされた。


 やれやれ……恒例行事だな。


 内心ツッコムが「ケロッ?」っと、普通に戻ってくるノビ。

 彼は怪我もなく無事で、「不意打ちなんさ!」と頬を掻く。

 

 その様子にエリナ・エイマスとクロニクが目を丸くしていた。

 

 場も和み、賑やかに分配が行われる最中、

 もちろん、ノビもクロニクに肉塊を差し出す。


 その様子にパメラが皮肉混じりにノビを見据える。


「貴様は、その肉をさっさとーー

 サーシャさんに届けろオオオオオ!」


 吼えながらも、パメラのその表情には優しい笑みが浮かんでいた。



 ほんのりとした気遣いと優しさーー

 そしてこの温かさに触れ、実感する。


「本当の仲間って、こういう時に感じるもんなんだな」


 誰にも聞かれないほどの小声が、思わず口から漏れた。

 

 その時、ふわっとした風が渦を巻きながら舞い込み、

 虫喰いの緑葉が一枚、作業場に音もなく落ちる。

 風の心地良さを感じながら、入り口の方へと目を向けた。


 すると作業場の壁に寄りかかり「羨ましいな…」と、

 どこか寂しげな表情でエリナ・エイマスが零した。

 その声には、彼女の快活な様子からも想像できない、

 ぽっかりとした孤独感をどこか感じる。


 なんだ……? 

 ワイバーンの肉でも欲しいのか?


 ふとそう思い、手元にあったワイバーンの肉塊を差し出した。

 だが、エリナ・エイマスが首を横に振り、少し朱くなった顔を伏せる。


「いやいや……肉のことじゃなくてさ」


 ポツリと漏らしながらエリナ・エイマスが顔を上げ、艶やかな唇を動かす。


 「仲間想いなんだなぁって思ってさ。

 ……アタシのクラン、こういう場面では取り合いになるんだよ。

 アタシのクラン、いえアマゾネスの世界ではーー力がすべて。

 誰かが得をすれば、誰かが損をする。

 だから、こういう“わけ合う”空気が信じられないのさ……」


 その言葉に俺は少し驚いた。


「HAHAHA……。

 ああ、そういうことか。

 なんだ…てっきり、肉のことかと思ったよ」


 苦笑いしながらも、どこか誇らしい気持ちで続けた。


「うちのメンバーたちーーいや、俺の仲間はあんまし、

 そういう物欲がないんだよ……まあ、ある意味“肉食”ではあるけどな。

 ししし!」


 軽く笑いを零し、改めて肉塊をエリナ・エイマスに差し出す。


「いいから、取っておけよ」


 仲間たちも、このやり取りを見守りながら、

 エリナ・エイマスに向かって笑みを浮かべる。


 一方、エリナ・エイマスの頬が朱く染まっていく。


「あ、ありがとう…」


 照れ隠しなのか、礼を言いながら彼女がぶっきら棒に受け取り、

 なぜか肉片を胸元に入れ、位置を整える。



挿絵(By みてみん)



 ‥‥ふっ、やはりアマゾネスーー普通じゃないなッ!

 ……ってか、そこに入れるッ!?


 

 思わず突っ込みつつも、

 視界に焼き付く光景に、カチッとした音が脳内に響くーー

 その瞬間、”死線”と『江戸っ子鼓動』が跳ね上がる。



「ーーってか、肉の出し入れが、危険デスけども……」と。

『江戸っ子鼓動」が俺の口調を真似ると、”死線”がクスッと笑った。


「揶揄うな!お前たち!」


 胸中叫ぶ中、カチッとした音とともに『妄想図鑑』の中に消えた二人。


 我に返り、苛立ちを抑え、

 なんとか気を紛らわせようとーー肉の仕分け作業に集中する。

 だがドクドクの心拍は、早いままだった。



 なんでよりにもよって、そこにしまうんだ?

 ……アマゾネス、奥が深すぎる。


 

 そんな思いの俺とは裏腹に、仲間たちが黙々とワイバーンの肉を仕分け、

 各々の『万能巾着』、『アイテムボックス』に収め終えた。


 肩に乗るコガラが、「おにく、たのしみーー! みんなだいすきーー!」

 と楽しげにコトバを投げる。


 そのコトバに作業場には笑い声が反響し、

 まるでパイプオルガンの『和音♬』のようにいつまでも響いていた。


 「この静けさはーー 嵐の前触れなのかもしれないな」


 そう漏らしつつ、俺は仲間たちの笑顔をずっと見ていたーー。



 暫くして、コガラが皆に聞こえるように声を張る。

 

 「みなしゃーーん。 イブしゃんたちがくるよーー!」


《「ご主様、来たようです」》


 続いて、ミリネアからも念話が飛んでくる。


 その気配、いや【覇気】に、アリーが耳をピクッとさせる。

 一方でクロニクが苦笑しながら、片眉をつり上げて言った。


「来たぜ、兄貴」


「来たよ、へんダー」


 ジュリも警戒気味に囁く。


「ああ」


 俺も軽く頷いた。


 ーーギィィ…


 緊張が頂きに達する中、別棟の扉が開いたーーその瞬間。

 エリナ・エイマスが驚愕の声を上げる。



 「まさか……あれはイブラヒム……?」







  




 ワイバーン討伐編 完。






 お読みいただき、ありがとうございます。

 感想を添えていただいてる方々に感謝です。




挿絵(By みてみん)

 「次回から新編突入にゃ!」


 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )


 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エリナさんも堕ちましたか…… ゴクトーさん、なんて恐ろしい人!((((;゜Д゜))) それにしても、ワイバーンのお肉、美味しそう! 食べたい食べたい!ゴロゴロ(((:з)⌒(ε:))) コロコロ …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ