模擬戦編 1 〜開始の合図!〜
国士無双様に感謝と敬意を〜☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
ふと起き上がる神シロが目を擦り、口元に涎の後を残しながら欠伸する。
「ふぁ〜よく寝たわい」
起きたことに気づいた女神東雲が息をつく。
彼女は一瞬瞼を閉じ、湯気がほんのり立つタオルをぱっと出し、
神シロに差し出す。
「あなたは本当に……呑気なんですから!」
一方下界を眺める、トランザニヤの黒銀の目が閃く。
「模擬戦が始まるぞ!」
「おお、そうじゃった」
「面白そうですわね」
トランザニヤの言葉に神シロと女神東雲も下界を眺めた。
ーーその頃ゴクトーたちは、
ワイバーンの肉の仕分けも終わり、イブたちを待っていた。
◆(トランザニヤが語り部をつとめます)◆
ーーギィィ…
緊張が頂きに達する中、別棟の扉が開いた。
「あのぅーーゴクトーさんは、まだいらっしゃいます?」
顔を出したのは、三本の皺を眉間に寄せる美人受付嬢。
「っえ?」
目を丸くするゴクトーと「!!!」顔の受付嬢は目が合う。
一瞬静まり返る作業場。
……あの地図をくれた美人受付嬢さんか……
名は確か、コクシ・ムソーさんって言ってたよな。
なぜ彼女はあの制服なのだろう? しかも、レースの赤ッ!
以前、ビヨンド村の地図を書いてもらった記憶が彼の頭をよぎり、
彼の妄想眼”死線”の口元が緩む。
動揺を隠せないゴクトーの内心はさておき。
次の瞬間、扉が”バタンッ!”と開かれ、
そのすぐ後に、イブと師団長たちが姿を現す。
”ゴォーー”という音とともに、突風が天井に吹きあげた。
開口一番、クロニクが軽い調子で声をかける。
「待ってたぜ、イブ姫さんよぅ」
その瞬間、イブの隣に立つ美人の師団長ココが、
クロニクに食ってかかるように吼えた。
「また……姫様に向かって! なんて無礼な言い方を!」
ココの怒りに満ちた瞳がクロニクを睨みつける中、
一礼した「!!!」顔の受付嬢ーー
コクシ・ムソーさんが、苦笑いを浮かべながら静かに作業場を後にした。
それを横目で見ながらクロニクが気合いを入れる。
「さて……ここからが本番だな」
漏らしたクロニクの身体は、うっすらと金色の【覇気】に包まれた。
緊張した空気が漂う中、イブが訝しい目をエリナ・エイマスに向けた。
「そこの……随分と綺麗なアマゾネス。殿を口説いておったのか?」
「い、いや……ち、違うわ……あの、あなたは……」
イブの言葉にエリナ・エイマスは言葉に詰まり、頬を染めた。
そんな様子を見て、薄く笑みを浮かべながら、エリナ・エイマスを見据え、
イブが凛とした威厳ある声色で零す。
「妾は、この殿をいずれ婿にする……ヒラム・イブ・ファルダットじゃ!」
響き渡るその声には、周囲を圧倒する風格も滲む。
「そなたの持つ【覇気】と【色気】は……尋常ではないな。何者なのじゃ?」
(殿? 婿? それって……
姫が許嫁ってこと? なら、アタシが八咫鴉と一緒になるとしてもーー
側室にしかなれないってこと……?)
エリナ・エイマスは内心混乱しながらも、なんとか冷静を装った。
「あなたは、確かイブラヒムーー
そうですか。本部では一言も口を聞かなかったので、
謎の人物だとは思っていましたが…………。
ファルダット……姫様でしたか。
本部からの緊急依頼を受けてここに参りました、
冒険者クラン『Goddess』のリーダー、エリナ・エイマスです。
リリゴパノアが手合わせする相手がいると窺い、
見学させていただこうと思い、まかりこしました……
まさかその相手がファルダットの姫様とは……」
(エイマス? どこかで訊いたことがある名だが……エイマス……)
イブが考え込むような仕草を見せる。
だがすぐに表情を戻した。
一方でイブが挑発するように目元をつり上げる。
「ほぅーー見学、とな。妾たちの腕前を見たいと申すか。まぁ良かろう……」
威厳が滲む言葉と態度にエリナ・エイマスが圧倒される。
そんな中、師団長の一人がイブに耳打ちする。
その刹那、イブが表情を柔らかく変えながら口を動かす。
「そこにいるハイエルフのお二人が【ロカベル】の姫様かぇ?」
イブの言葉に淑やかに一礼しながら、ミリネアが静かに言葉を紡いだ。
「初めてお目にかかります、ヒラム姫様。
ハイエルフ『八支族』の一つ、
【ロカベル】の長女、ミリネア・ロカベルと申します。
ここにおります末妹、ミーアともども、どうぞお見知りおきください」
その所作には貴族らしい品格と知性が滲み出ていた。
(……あのミリネア・ロカベル?
アタシと同じーー【七つの大罪】の一人よね……)
ミリネアをじっと見つめるエリナ・エイマスが内心で思う。
場の空気が少し柔らかくなったーーその時。
イブが柔らかな笑みを浮かべる。
「うむ。妾もお会いできるのを楽しみにしておったぞぇ。
ハイエルフが治める森ーー『マヌエル』とは、
長らく疎遠であると、お祖母様もおっしゃっておったからなぁ。
お祖母様からも、『マヌエル』との友好関係を結べるならば、
それに越したことはないと仰せつけられておったのじゃ。
ミリネア姫、ミーア姫、どうかよしなに。
妾のことはイブと呼んでくれて構わぬぞぇ。
ガリ、お前たちも姫様方に挨拶せぇ!」
イブの言葉にファルダットの護衛たちが、
「「「「「ハッ!」」」」」と。
姿勢を正し、同時に美しい声を揃えたーー。
◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇
「我はファルダット第一護衛師団長、ガリハナ・カムヨと申します。
姫様方々、お見知りおきください」
大盾を持った”ふくよかな”体格の女性がガリだ。
ガリさん? 鼻噛むよって……名前が凄いんですけども……。
もちろん口には出さない。
背中に大剣を背負うココが男勝りに挨拶をする。
「我が名はココハナ・カムヨと申します。
ファルダット第二護衛師団長を務めております。
姉ともども、よろしくお願いいたしま、しゅ」
美人の彼女の顔が、朱に染まっているのが印象的だった。
いやいや、最後、噛むところなの?
美人なのに、クロニクにはーーよく噛みついてるし……
なんかキャラが濃いなぁ。
当然胸中に留め、一歩前に出たーー
揺れるボインに目が奪われる。
「お初にお目にかかります、姫様方。
ファルダット第三護衛師団長、
マルル・ボインと申します。
横におりますのが双子の妹、メルル・ボインです。
妹は第四護衛師団長を務めております」
マルルは特殊な連弩を構え、
メルルは杖を持ちながら、二人揃って美しい笑みを浮かべた。
……なにぃ?、名前もボイン……っだ、と……?
『ボインボイン』とか……凄いんですけども…
おっと、今は考えるな。マズイぞッ!
驚きつつ胸中でツッコミを入れる最中、
仲間たちも驚き、目を丸くしていた。
俺たち同様ーー
エリナ・エイマスも、そのボインの迫力に、驚いた仕草を見せる。
そんな中、唯一白い軍服を着るひと際背が高い師団長が頭を下げた。
「姫様方……第五護衛師団長のキキ・キリンと申します。
お見知りおきください」
槍を持つその姿と声は威圧感がありながら、どこか神秘的でもあった。
……キリンって……あの背の高い動物だろ?
名前がそのまんま過ぎないか……?
どこかで訊いたようなーー名前ですけども……。
彼女たちの名前と個性にツッコミを入れる、
俺のことなどお構いなしに、
師団長たちの挨拶に、ミリネアとミーアも優雅に頭を下げ、
礼儀正しく応じていた。
表面上は無言無表情を貫きつつある俺の横で、
クロニクが鋭い目をエリナ・エイマスに向ける。
「挨拶は終わったな。
ちょうどいい……アンタ、模擬戦の審判役をやってくれないか?」
「アタシで良ければ、構わないけど」
エリナ・エイマスがどこか自信を含ませ紡ぐ。
「アタシのことはエリナと呼んで。
模擬戦は個人戦、それとも団体戦か、どちらにする?」
その場に立つ者の視線がクロニクに集まる。
そして、クロニクが『アイテムボックス』からハルバードを取り出し、
重みのある音とともに地面に柄をつき立てた。
「どっちでもかまわねぇ」
その言葉にイブが落ち着いた声で提案する。
「個人戦ではつまらんのぅ……団体の勝ち抜き戦というのはどうじゃ?」
その場の全員が無言で頷く。
「では……僭越ながら」
そう言ってエリナが一歩前に出て、全員を見渡す。
「お互い六人ずつ選抜して、
先鋒から大将までを決めてもらいましょう。
ルールは簡単で、あくまで模擬戦。
死に直結するような攻撃や魔法は禁止です。
戦闘不能、または危険と判断した場合、すぐに止めます。
どちらがより多くのメンバーを残すかで勝敗を決定しますがーー
それでよろしいですか?」
全員が静かに頷き、了承の意を示した。
作業場から鍛錬場へと続く石畳の廊下に、
複数の足音と、金属が擦れ合う硬質な音が反響する。
先頭を行くガリハナが背負う巨大な盾が、
歩みに合わせてガシャン、ガシャンと重々しい地響きのような音を立てる。
その後ろでは、ココハナが背負う大剣の柄が鎧と触れ合い、
低くチリッ…と鋭い金属音を溢していた。
「……遊びじゃ、ないんさ」
ノビが、彼女たちの背中から立ち上る、
戦場慣れした者特有の「鉄と油の匂い」を感じ取り、
無意識に拳を握り直した。
ハウゼン支部長に許可をもらった”鍛錬場”へ移動した一行は、
それぞれの陣営にわかれ、選抜メンバーの選定を始めた。
仲間の表情にも緊張と期待が滲んでいる。
そんな中、ノビが挙動不審に立ち上がった。
「ぢょっと、トイレに……」
ノビの背中越しに「落ち着けって」と、
言いながらクロニクが小さく笑った。
しばらくして戻ってくると、ノビの顔には若干の赤みが差していた。
「よろしいですか?」
エイマスが再び全員に確認し、場の空気を締める。
「では、先鋒の方、前へ!」
「姫様、では……」
イブ陣営から静かに歩み出たのは、大楯を背負うガリ。
彼女はふくよかな身体を揺らしながら進み出た。
「先鋒、ガリハナ・カムヨ、参る」
一方、リリゴパノア陣営からはアカリがすっと歩み出る。
柔らかい微笑みとともに、持ち前の気品を漂わせて宣言する。
「ダー様、いってきます。先鋒、アカリ・ミシロ、参ります」
ガリが大盾を構え、腰に挿していたレイピアを抜いて身構えた。
その動きから漂う力強さに、見ていた仲間たちも息を飲む。
対するアカリは、白檀の扇子と【桜刀・黄金桜千貫】を
静かに手に取り、軽やかに身構えた。
「始め!」
大きく声を張り上げ、エリナ・エイマスが始まりの合図を告げたーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
このエピソードは仲良くしていただいております、
『国士無双』様をモデルにしたーー受付嬢に特別友情出演していただきました。
Xアカウント @13_FSI
私が愛読する╰(*´︶`*)╯♡
=ファンタジアシリーズ=
『第一王女を探さないで〜隠された愛と男装王女の誓い〜』
作者:国士無双様
https://ncode.syosetu.com/n0442jw/
小説家になろう、他のWEB小説サイトでも掲載されております。
こちらも読んでいただけたら嬉しいです☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆




