ワイバーン討伐編 22 〜艶やかなロカベル姉妹と本部からの使者〜
ミリネアの新装備 ♪( ´θ`)
ふと、トランザニヤが雲間から顔を上げた。
「八支族の中でも最強と言われる【ロカベル】の娘だな。
薬師なのにも関わらずーーあのノビとクロニクの【覇気】を読むとはな」
そう漏らしながら黒銀の瞳を細める。
一方で、下界を眺めながら表情を曇らせる、神シロと女神東雲。
「おい、二人とも、どうした?」
トランザニヤの問いに、間を置きながら神シロが口を開く。
「エリナ・エイマス……あのアマゾネスが再びビヨンド村に……」
天上の三柱の不安を他所に。
ーーその頃ゴクトーたちは、
『ロカベルの魔法薬材と薬店』でミリネアとミーアを待っていた。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
「ミーア! ミリネア姉様!〝ご主人様〟がいらしたわよ~」
「はーーーい」
ミンシアが叫ぶと、二階からミーアの返事が聞こえる。
暫し待つ間、ふと必要なものを思い出した。
「そうだ、魔力回復薬を買っておかないと……」
ポツリと落とした俺の言葉をミンシアが拾い上げる。
「坊や、魔力回復薬? あるだけでいいのわよね?」
そう言うと、カウンターに並んだ薬瓶を一本ずつ数え上げ始める。
「18、19、20本……これで足りるかしら?」
「ああ、それでいい。いくらかな?」
『アイテムボックス』から小袋を出しながらミンシアに尋ねる。
「1本銀貨1枚だから……金貨2枚ね」
「わかった。これ」
そう答えながら金貨2枚を差し出すと、ミンシアが嬉しそうに微笑んだ。
銀貨10枚で金貨1枚と同等の価値。
この世界の金貨の通貨価値は、前世で言わば1万円ぐらいだろうか。
宿屋が1泊銀貨5枚ーー朝夕の食事付き。
銀貨は千円ぐらいなのだろうーー。
そんなことを考えながら、『アイテムボックス』に魔法回復薬を収める。
思考の海に沈む中、ミンシアが艶やかに投げキッスをしてくる。
「毎度、ありがとう〜♪ 坊や! chu♡」
何ぃ?……今度は……”ズッキュン魔法”……だと?
肉食魔獣恐るべし!
その”挑発的な魔法”に対して、
俺はバカなことを妄想して、またしても顔に熱が籠るーー
火が出るかと思うほど、耳まで真っ赤になったのがわかる。
そんな俺を他所に。
ミンシアの投げキッスを見て、
クロニクとノビも頬を少し赤らめる。
一方で隣にいるアカリやジュリ、
そしてーーパメラが露骨に不機嫌そうな視線を向けてくる。
俺は妄想してただけですけども……。
だから、睨むのはやめてくれっ !
俺の叫びが虚しく脳内に響く中、
ミンシアから距離を置き、その場を後ずさる。
その時、パタパタ…パタパタ…と階段を降りる足音が聞こえてきた。
その特有の【覇気】に気がついたコガラが、
満面の笑みで俺に念話を飛ばす。
《「ミリネアおおねいちゃんと 、ミーア ちいねぇちゃんがくるよーー!」》
その無邪気さがこの場の空気を和らげてくれた。
入り口の呼びベルが、風に煽られカランと鳴った。
店内の空気が変わる中、
奥から緑色の髪を編み込んだミリネアが、優雅に階段を降りてくる。
彼女は柔らかい笑みを浮かべ、深々と頭を下げる。
「おはようございます、ご主様。
わざわざありがとうございます。皆様も、お待たせいたしました」
その真摯な姿勢に、自然とこちらも背筋が伸びる。
緑色の髪が肩にさらりと流れる度、
差し込む朝日を受けて、まるで翡翠のように輝いていた。
続いて露出高めな装備のミーアが降りてくる。
彼女の声は、いつもより弾んでいるように聞こえた。
「リーダー! みんなもおはよう!……あ!クロニク皇子も……
おはようございます」
その声がクロニクを直撃したのか、
彼は目を見開き、途端に息を呑んだ。
気づいたミーアも恥じらい、視線を伏せる。
頬を淡い薔薇色に染めながらも、
ミーアの瞳には、キラキラとした「悦」が宿っていた。
一方で二人の姿をみたコガラがコトバを飛ばす。
「おはようーー!」
小さな翼をパタパタと動かして二人に愛嬌を振りまく。
その仕草にミリネアとミーアも揃って笑みを浮かべた。
「コガラ、おはよう。ちゃんと挨拶できて偉いわね」
「おはよう、コガラ。偉い偉い」
二人が交互に撫でる度ーーコガラは満足げに「ピピィ〜〜〜♬♪」と鳴く。
その音色には幸福そのものが滲み、
店内の空気が一層和やかになった。
そんな様子を眺めながら、
クロニクがミーアにぎこちない動きで声をかける。
「ミーア姫……その、何と言うか……その格好、派手すぎやしないか……?」
その一言にミーアが目を瞬かせるも、考え込むような素振りを見せる。
そして、小首を傾げながら困惑した表情で答えた。
「……そう?……うち、これでも控えめにしたつもりなんだけど……」
だが、その派手な装いはーー
深緑色レザーブラトップとレザーパンツスタイル。
揺れる臍ピアスが鈍く銀色に光る中、
弓を背負う革バンドと腰に下げるタガー。
その姿は『狩人』をイメージさせるがーー
「控えめ」という言葉とは、ほど遠い。
森をイメージする深い緑は、彼女の白い肌を際立たせ、
その大胆さに視線を逸らしたくとも、つい見入ってしまう。
そんな中、ジュリが頬を膨らませながら、つっけんどんに言葉を投げる。
「あのぅ……ミーア?……それのどこが控えめ?」
「うちとしてはーーこの深緑のレザーパンツも脱ぎたいぐらいなの」
ミーアの答えにジュリがパカッと口を開いた。
そう言うジュリの姿も大概だと思う。
白い肌艶に黒のチューブトップ、黒いミニスカートの軽装だ。
彼女がどこか不満げに腰に手をやり、頬を膨らませ、
美しい美脚を露わにーー舌打ちしながら床を蹴る。
まさか……ロカベルって『裸族』の末裔なのか……?
そ、そうか、思い出したぞッ! ……まさか見せたいのか!
ロカベル三姉妹が、
高級ランジェリーの『Caravan・Climb』を集めるのが趣味だって、
ミリネアが教えてくれたんだっけ……。
内心思いながらふと目をやると、
クロニクがミーアを見つめて固まっていた。
まさに火がついたようにーークロニクが真っ赤になり顔を歪める。
俺は苦笑しつつ、
目のやり場に困りながら、ミリネアの方に目を向けた。
彼女の装備は、その端正な顔立ちと調和して上品かつ艶美。
銀色の龍鱗ジャケットはショート丈で、
ジップが◇型に開き、腰ベルトには鞭を装備。
歩くたびに揺れる小玉スイカ級の膨らみが、
胸元をさらに強調させている。
超ミニスカートも同じ龍鱗素材の銀色で、
同じ素材の膝丈ブーツは網タイツとの相性も良く、
引き締まった脚線美を映えさせていた。
ミリネアの美貌に見惚れてしまうのは、
仕方のないことだ……俺も男だからな……。
なんて思っていたのも束の間。
ミリネアが艶やかに唇を光らせる。
《「ふふふ、ご主様、どうかされましたか?」》
彼女の念話が顳顬に響く。
その表情はどこか揶揄うようだ。
次第に耳たぶまで熱が籠る俺を他所に、
一方でアリーが袖を引っ張り、俺の耳元で囁く。
「ゴクにぃ、耳まで赤いにゃ…」
「ア、アリー?!……お前まで、ったく、揶揄うなッ!」
小声で突っ込みながらも、一同を前に俺は気を引き締め直した。
そんな中、ミーアのぎこちない仕草に目を細め、
どこか揶揄するような声でミンシアが口を開く。
「あら、ミーア。あの黒い子に乗り換えたの?
だったら、ワタシが坊やを……」
その瞬間、ミーアの顔が一層真っ赤になった。
口を開こうとするが、
言葉が詰まったように彼女がそっぽを向く。
「ミンシア姉様……それ、余計……」
零すミーアの狼狽ぶりに、拍車をかけるかのようにーー
ミンシアが肩を揺らし、悪戯っぽく笑う。
その艶やかな表情は、意図的な挑発を含んでいた。
一方でミリネアが慌てて間に入り、ミンシアを叱る。
「ミンシア! 坊やとは何ですか!
……失礼ですよ。ご主様に向かって……」
エメラルドのような瞳を揺らしながら、
ミンシアを静かに諫めるその姿は凛としていた。
「わ・か・り・ま・し・た」
ポツリポツリと話すミンシアは、どこ吹く風といった態度で、
小さく息をつきながら、肩をすくめた。
「全く、姉様は……こと、ご主様のこととなると、
目の色が変わるんだから……
エメラルドがオレンジトパーズになってるわよ、姉様!」
ミンシアが姑のような小言を漏らす。
その言い方は、さっきまでの挑発的な物言いとは打って変わってーー
投げやりかつ、どこか拗ねているようにも見える。
それが妙に可笑しくて、思わず堪えきれずーーニタリと唇が緩む。
こうして俺たちは、ロカベル姉妹と合流した。
ーーギルド支部へと向かう途中、あることを思い出す。
「あっ、そうだ……模擬戦だ。
ミリネア、ミーア、ちょっといいか?」
声を掛けると、二人がこちらに振り向く。
ミリネアが凛としながら落ち着いた声を返す。
「ご主様、何なりと」
「リーダー、どうしたの?」
一方のミーアが首を傾げた。
俺は少し、口籠もりながらも切り出した。
「実は……ミリネアたちと別れた後、ファルダットの姫が突然、
パーティに参加させて欲しいって、言ってきてな……」
その言葉にミーアが目を丸くしながら声を上げる。
「えぇ! ファルダットの姫ーー!?」
一方、ミーアの声にも驚かず、ミリネアが冷静に尋ねてくる。
「それでご主様は、何とお答えに?」
「丸め込まれそうになったところを……クロニクが上手く……な」
言い淀む俺を他所に、ミリネアがクロニクを見つめる。
その目には疑念が滲んでいたが、ミリネアの唇が言葉を紡ぐ。
「クロニク殿、どうされたのですか?」
その問いにクロニクが腕を組み、笑いながら答えた。
「ははははは! イブ姫の実力がわからないから、
腕試しの模擬戦をしようって、オイラが言ったのさ!」
その豪快な笑い声に場の空気が少し和らぐ一方で、
気不味さを拭えずにいる俺は、ミーアとミンシアに頭を下げた。
「すまん。ギルドに行ったら……イブ姫たちとの模擬戦があるんだ……」
「……たち……?」
ミーアが一瞬困惑したような表情を見せたが、
すぐに何かを飲み込むように頷いた。
「ファルダットの姫……そっか……」
そんな中、ミリネアが少し肩を窄め、優しく微笑んでみせる。
その笑顔に救われた気持ちになるが、
彼女の口調はいつものそれではなかった。
「ご主様、わかりました。
ギルドでワイバーンのお肉を引き取って、
イブ姫様たちを待ちしましょう」
ミリネアの粛々とした提案には、威厳と安心感がある。
彼女の言葉に全員が自然と頷く。
結構な人数で歩くメイン通りに、
11オクロックの鐘が鳴り響く。
この世界で言えば午前11時を指す。
教会の前を通り過ぎ、忙しなく準備を進める屋台には、
人だかりができていた。
串が焼かれる香ばしい香りと、
脂が燃え、ジジジと炎を揺らす音が微かに聞こえる。
その瞬間、アリーが獣耳と鼻をピクッと動かし、
俺を見上げ、メタリックブルーの瞳を閃かせる。
「ゴクにぃ……ワイバーンのお肉、楽しみにゃね」
その言葉と笑顔を溢す表情に、思わず苦笑する。
やがてギルド支部に到着。
ーーギィィ…
ギルド支部の中に入ると、そこにも普段とは違う光景が広がっていた。
露出度の高い装備のーー
見慣れない美人冒険者が数人、視界の端に入る。
高身長で洗練された雰囲気を纏い、どこかの部族のような装備だ。
明らかに只者ではない。
なんだこれ? 水着大会でも始めるのか?
思考を沈める中、ミリネアからの念話が響く。
《「まったく、どこの裸族でしょうか?ね、ご主様」》
《「お前が言うなッ!」》
思わず声に出そうになるのを必死に堪え、念話を飛ばした。
クスッと唇を動かすミリネアに呆れながら、
彼女たちの間を抜け、受付へ向かった。
仲間たちの表情にもどこか緊張感が滲む中。
不思議と「ヒソヒソ」ともされず、スムーズに受付まで辿り着いた。
だが受付にいたのは、いつもの受付嬢ではなかった。
その身に纏う装備は、静かに語る――
彼女が只者ではないことを。
まず目を引くのは、胸元を覆う宝飾仕立ての軽装胸甲。
左腕には、肌に巻き付くように装着された護符刻印のアームバンド。
そして腹部には、小さく輝く臍ピアス。
《「あれは術者の集中力を高め、魔法発動時の消耗を軽減するためのもの。
流行っている魔導具でーー
最近の臍ピアスは、お洒落も兼ね備えているのです。ご主様」》と。
俺の視線に気づき、ミリネアが念話を寄越す。
《「そうか、だからうちの女子たちもーー俺はお洒落に疎いから……」》
俺の念話にミリネアが苦笑を浮かべる。
それはさておき。
俺は受付の女性の姿に、目を奪われずにはいられなかった。
軽やかに動けるよう設計されたーー
彼女の戦装束は、防御と機動性の絶妙な均衡を保っている。
オレンジの長髪を束ね、小麦色の肌が健康的で、
割れた腹筋と引き締まった太ももが、
その肉体美をさらに際立たせていた。
……まさか、これが本物の『裸族』ってやつか?
いや、もはや女王クラスだろ……。
その美しさと存在感に呑まれ、思わずボーッと見惚れてしまった。
それに気付いたアカリが、俺の背中をギュッと抓る。
「痛い……ですけども」
俺の微かな悲鳴などお構いなしでーー
眉を寄せるアカリが受付の女性に声をかけた。
「解体依頼をお願いした、ワイバーンの肉を引き取りに来たんですが」
「あなたたちが『リリゴパノア』のパーティよね?
まぁ、テンガロンがよくお似合いだこと。
あなたが噂のーー漆黒の八咫鴉ね……」
受付にいたその女性がそう答え、堂々とした口調で名乗りをあげた。
「エリナ・エイマスよ。本部から依頼されて、この村に来たの。
ちょうど今、職員総出で……
あなたたちの報酬と買取金額を別棟で、清算しているところよ。
案内するからついて来て!」
そう言ってエリナ・エイマスが、意味ありげな笑みを浮かべる。
……何だ、この感覚。
その笑顔に、ゾワッとした寒気が走ったーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




