表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

190/192

ワイバーン討伐編 20 〜透ける妄想と優しい気遣い〜



 久しぶりの妄想図鑑♡

 


 


 雲間から顔を上げる神シロが零す。


「ゴクトーの奴、いい気なもんじゃな」


 その言葉に女神東雲が顎に手を添えながら唇を噛む。


「ゴクトー君がモテるのはわかるけど、そろそろはっきりーー

 嫁候補を選んでもらわないと。

 アカリやジュリだって、気が気じゃないですわよ」


 そう言って神シロの袖を掴む。

 一方、トランザニヤが黒銀の目尻を下げながら言った。


「ゴクトーは奥手だからな。東雲さん、ここはじっくりと……」


 苦笑するトランザニヤに目くじらを立てながら、

 女神東雲がつっけんどんに返す。

 

 「悠長なことは言ってられませんわ。

 華もいるし、ルシーヌの末裔だって、いるんですから。

 それに加えて、月読の姫まで……

 これじゃまるでーー昔のトランザニヤ様みたいですわ」


「まさにな」


 その言葉に神シロが女神東雲の顔を見て吹き出した。

 一方トランザニヤは、どこかバツが悪そうに下界を覗き込んだ。




 ーーその頃ゴクトーは、宿屋帰巣の食堂で仲間たち朝食を楽しんでいた。




  

 ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇




 「ん?」


 いきなり立ち上がったアカリが女将さんの耳元で囁く。


「女将さん、すみませんが……あと三人分用意していただけますか?」


「わかりました。男性のお連れ様の分と一緒にお持ちします」


 食堂の窓から差し込む朝日を背に、

 眩しい笑顔を見せるアカリが戻ってきて、俺の隣に座った。

 

 だがこの時、アカリの無防備な透けるシャツを見てーー

 ガラの悪そうな獣人の冒険者が口を開く。


「よぅねーちゃん、色っぺーな。なんなら、

 こっちへ来て、オレらと呑まないか?」


 その言葉に隣に座る中年のドワーフの男と、まだ若い魚人の男がニヤけた。

 3人とも朝からエールを飲んでいる。その装備からして冒険者だろう。


挿絵(By みてみん)


 食堂が騒つく中、俺とコガラとクロニク、

 そしてノビまでもその男たちを睨む。


 張り詰めた緊張感が漂い始めたーーその瞬間。



 ガタッガタッガタッ! バッターン!


 そいつらが椅子ごと倒れ込んだ。

 

 周囲から「うわッ!」「何事っ!」と驚く声が聞こえる中、


 

 挿絵(By みてみん)

 

 

 そのガラの悪い奴らは膝をガタガタと震わせてーー


「「「すいませんでした!!!」」」と、食堂から一目散に逃げ出した。


 その様子にイブと師団長たちが表情を緩め、

 「ゲラゲラ」と腹を抱えて笑っていた。


 一方のアカリが頬を赤くしながらポツリ。


「ありがとうございます。ダー様、クロニク皇子、それからノビもね」


 そう言ってアカリがハーブティーを俺たちに注いだ。


 その優しい気遣いに、思わず心がグッと動かされてしまい、 

 脈はさらに速くなる。

 高揚に少し戸惑うが嫌なものではなかった。


 初めて感じるこの独特な感情に、

 自分自身がどう反応すべきか迷う。


 いきなりドクンと飛び跳ねるーー

 『江戸っ子鼓動』に「引っ込んでろッ!」と、

 心の中で命じながら無理やり『妄想図鑑』に押し込めた。


 息をつき、クロニクやノビにバレてないかとーー内心はヒヤヒヤだ。

 

 そんな中、イブが色とりどりの新鮮なサラダをシャキシャキと噛む。

 ふくよかなガリ師団長が、香りの良いマルミ茸のスープに手を伸ばす。

 双子のボイン師団長たちは、サンドイッチを頬張り、

 白髪のキキ師団長はローストビーフにナイフを入れた。

 一方で大剣を背負うココ師団長だけは、ふと食事をする手を止めた。


 その時、窓から入ってきたのは、爽やかな朝露の香り。


「おはようにゃ!」


 元気な声を響かせアリーが、風のように駆け込んできた。


 獣耳がはためき、

 ドット柄のパジャマが彼女の無邪気さを一層引き立てている。

 その顔は、朝の光に照らされた無垢な笑顔も浮かぶ。

 後に続いて、白いTシャツにグレーの短パン姿のジュリが入ってくる。


「ネー!! 起こしてよーーー!!」


 彼女は少し寝ぼけた様子で、アリーの元気さに圧倒されつつも、

 少し恥ずかしそうに微笑んだ。


 ジュリはいつも冷静で大人びていたが、

 今はその柔らかな表情に、どこか親しみやすさを感じさせる。


挿絵(By みてみん)

 

 二人の存在感が食堂の空気を和らげたのも束の間、

 ノビが入り口へ向かって手を挙げた。


「先生ーー!! こご空いてまづ!」


 その声に周囲が沸き立ち、視線が入り口に集中する――

 『ゴッデス』のようなパメラが降臨した。


 目を惹くのは、鮮烈な赤いネグリジェ。

 豊かな『爆弾(ダイナマイト)』をブルンと揺らし、風を巻き起こすが、

 堂々と闊歩する。

 露わになった美脚と圧倒的なオーラーーまさに圧巻の登場だった。


挿絵(By みてみん)


 その姿にクロニクが風に髪を靡かせ、

 ポカーンと口を開いて、顔を真っ赤に染めている。


 一方で俺は、彼女を見た瞬間、

 眩暈とともに「ドクドクドク!」と『江戸っ子鼓動』が再び暴走。

 脳内でスイッチが入る音がカチッと響いた。


 ふわりと『妄想図鑑』から飛び出した”死線”が、揶揄うように零す。


「主よ。オレの妄想眼は獲物を逃さない――。

 だが気をつけろ、この【シジマビジョン】は中身まで映し出すからな。

 ははははは! ステータスオープン!」


 

 ■ 基本データ


  名称:パメラ・ルシーヌ・カルディア

  種族:人種(ヒューマン)月人(ルナリアン)の、禁忌たる交わりの血脈。 

  年齢:30歳

  職業:カルディア魔法学院特別講師、S級冒険者

  

  ギフト:高魔力赤魔道士ブラッド・レッドメイジ


  レベル:780/999

  魔力値:880/999

  セクシー値:999

  攻撃力:必殺の【ブルンブルン】使用時のみ♾️

  防御力:779/999


 

  異名:「紅玉の爆弾」(コウギョクノ・ダイナマイト)、

     「戦場の爆弾魔」とも呼ばれる。



 ■ 外見

  

 機能的なレザージャケットやストッキングを好み、

 ストッキングは編みタイツが主で、

 サンドル製ーー特注の薔薇柄が混ざり合った独自のスタイルを装備。

 その体躯には『爆弾(ダイナマイト)』と形容されるーー

 特異な豊満さが宿るが、真力解放後は魔法の出力と引き換えに、

 それが急激に萎んでいくという視覚的矛盾を抱えている。


 戦場においては、優雅な補助魔法と『爆弾』を揺らしながら、

 荒々しい爆風を巻き起こす戦法を使う。

 「戦闘が終われば元に戻る」とわかっていても、

 その直後の彼女の不機嫌な視線は、敵以上の殺気を放つことで知られる。


■ 魔法・スキル・特殊攻撃


【ウォーター・ウォール】

  攻撃を弾く水の壁を作る。


【マジック・ヒーリー】

  魔力を直接消耗者へ補完する回復術。

  彼女は魔力0の状態から80%まで回復できる。


【メガント】

  対象の物体質量を大きくできる。


【ミニマム】

  対象の存在質量を強制的に圧縮する魔法。


【イーチォ・グローナップ】

  【メガント】の魔法の限界を突破させ、

  複数を同時に拡大させる強制ブースト。

  禁忌に近い補助魔法。カルディアの血筋のみ使用可能。


【クリア・クリンネ】

  一切の穢れ、汚れを消し去る清浄魔法。

  ただし、彼女自身の苛立ちを鎮める効果はない。


 【ブルンブルン】

  彼女の『爆弾』の胸が激しく揺れた時、

  最小で旋風、最大で竜巻まで起こる。

  ダンジョンボスさえ吹き飛ばす破壊力。

  別名ーーダイナマイト・ハリケーンとも呼ばれ、

  意図的ではないにしろ、風魔法の属性を持つ。


 


 ■ 真紅の魔法陣

 この赤魔道士が持つ「真力」は、肉体の質量を魔力へ変換する性質を持つ。

 『爆弾』の胸部が縮むのは、

 魔法発動時に消費される莫大な魔力のエネルギー源として、

 彼女自身の肉体的パーツが“燃料”として優先的に消費されるためとされる。

 彼女の一族、特に母方ルシーヌの特性と血脈を強く受け継ぐ。

 周囲からは「強力な魔法には代償が伴う」と恐れられているが、

 本人にとっては悩みの種でもある。


 

 ■ 備考

 

 普段は高水準の魔力制御により均衡を保っているが、

 真力解放フェーズに入った彼女に「胸」の話をするのは、

 死を意味する禁忌事項とされている。


「魔法を撃つか、スタイルを守るか。

 ……これぞ赤魔道士の究極の二択よ」ーー

 『パメラ先生の教え』、ノビのノートより抜粋。


 

 ■ 図鑑メモ


「魔力が枯渇するんじゃない。……私の『魅力』が、枯渇するのよッ!!」

 ーーパメラの独白より(真力解放直後に絶叫)。


 

 そしてーー”死線”が静かに図鑑を閉じた。

 高笑いを残し、奴は図鑑の奥へと消えていった。


 カチッとした音が脳内に響く中、

 我に返り、動揺と苛立ちを抑え、再びパメラを目で追う――。

 その刹那、赤い薔薇を散らした黒いレースが、目に焼き付いた。

 

 それは夢か幻か。


 神秘的かつ優雅なーー

 パメラの『禁断』の中身だった。


 挿絵(By みてみん)


 必死に目を逸らし、周囲を窺う。

 顔に熱は籠っているが、幸い『妄想図鑑』の露見は免れたようだ。

 

 俺が密かに胸を撫で下ろす傍らで、ノビが顔を真っ赤にしながら、

 甲斐甲斐しくパメラのために椅子を引いていた。


「アカリちゃんとイブ姫様に、抜け駆けされたわん……仕方ないわね。

 貴様の隣に甘んじて、座ってやるが……いい気になるなよ!」


「オラは嬉しいんさ……先生の隣で……」


 ノビの言葉に場の空気がさらに和らぎ、

 その様子にイブが楽しそうに笑った。


「ぁはははは! そなたらは、ほんに面白いのぅ!」


 その言葉に師団長たちもつられて笑う。

 そんな中、漂うマルミ茸の芳醇な香りに振り向く。


「お待たせしました」


 女将さんと女中さんたちが、人数分の食事を一緒に運んでくる。

 ニコッとする女将さんが、

 ハーブティーの入ったガラスのポットをそっと置いてくれた。


 女将さんのその優しい気遣いに、俺の心はじんわりと温かくなった。

 テーブルに並べられた朝食が、目まで幸せにする香りを放つ。


 待ちきれないアリーが目を輝かせ、首を傾げながらアカリに問いかける。


「僕の分でいいにょ?」


「コガラが知らせてくれてね……頼んでおいたのよ」


 そう言って、アカリがアリーの目の前に朝食を差し出す。


 一方で感心したようにーー

 椅子に腰を下ろすパメラが口を開く。


「その優しい気遣い……さすがよねん、アカリちゃん」


 その言葉に続き、


「ネーもコガラも、あ、ありがとう……」


 ジュリがどこか気まずそうに、俯いて座った。


 アカリの言葉に羽をピクッと動かすコガラが、

 「どうだ」と言わんばかりの勢いで鳴く。


「ピピィ〜〜〜〜♪♬」

 

 上機嫌なコガラが羽を丸く畳んだ。

 

 食堂の喧噪が収まりつつある中、客たちが「美味かった。ご馳走さん」と、

 次々に食堂を出て行く。

 

 扉から入る新しい風が暖炉の火を揺らす中。

 アカリがハーブティーを注いで、柔らかい笑顔を見せる。


「ダー様、熱いうちに」

 

 その言葉とともに仲間たちが目を瞑り、

 想いを込めたお祈りをし、声を揃える。


「「「「「 いただきます 」」」」」


 食べ始めてすぐに、ノビがふっと口元を緩ませて、

「これ…… うぢのケロッグ・フロッグのパン……」とポツリと落とす。


 そんなノビを無視するパメラが音も立てず、

 気品ある仕草で優雅に朝食を摂っていた。


 

 チラッと今、ノビを見たな。パメラがほんのり頬を染めてるのが、

 なんか可愛いらしい乙女に見える。

 ……パメラのこのギャップ……本当、ヤバイな。


 

 思いながら笑いを堪えるのに耐えきれず、ニタリとしてしまう。


 そんな俺を他所に、双子の師団長マルルがボインの胸を揺らして、

 イブに尋ねた。


「姫様…… 部下から聞いていた……

 ハイエルフの姫様、お二人が見当たりませんが……?」


「おおそうじゃった。妾も気になっておった。

 殿! ハイエルフのお二人は、今、どこにおるのじゃ?」


「ミリネアとミーアは……」


「旅の支度を整えるのに、姉妹の家に帰っています。

 これから迎えにいって、一緒にギルド支部へ向かいますわ」


 俺が応える暇もなく、アカリが自然に会話を引き継ぐ。

 これも彼女の優しい気遣いの一つ。

 

 喋りは苦手ーーだが心中だけは饒舌な俺を気遣ってのこと。


 それはさておき。

 

 アカリの言葉にイブが嬉しそうに唇を光らせる。


「ギルド支部で会うのが楽しみじゃのう……

 妾も朝食を済ませたら、用意してギルド支部へ行くつもりじゃ。

 お前たちも用意せぇ!」


「「「「「ハッ」」」」」


 師団長たちが一斉に返事をし、その場の緊張感が引き締まる。


 その一方で、隣ではクロニクが黙々とサンドイッチを平らげていた。


 その光景に自然と言葉が口をつくーー

 「……凄い食べっぷりだな、皿まで食うなよ」と、思わず漏れる。


 皿を食うのも時間の問題だ、と思ったその矢先、

 イブがふと自分の皿に目を落とした。


 そこに残っている最後のサンドイッチを一瞥すると、

 彼女が何気ない仕草で手を伸ばし、それをそっとクロニクの皿へ滑らせる。


 イブの行動はあまりにも自然で、誰も気づかない。


 唯一、その様子を見ていた俺だけが、

 彼女のさり気無い、優しい気遣いを目にする。


 ……さすが、ファルダット、いや、一国のお姫様だな。

 確かにーー高級そうな金だ。……ってか、なんでボタンを外す!?


 言葉には出さない俺を他所に、イブがウインクを寄越す。

 その悪戯っぽい行動に、動揺を隠せない。


挿絵(By みてみん)

 

 一方でクロニクがノビとの会話に夢中。

 無心に食べ続け、

 自分の皿に増えたサンドイッチなど、まるで気付かない。


 俺を横目にイブが小さく微笑み、パジャマのボタンを閉めると、

 優雅にカップを傾けた。


「さあ、皆も食事が済んだら、

 妾に続いて準備を始めるがよい。殿をあまり待たせるでないぞぇ」


 その一言が場を締めくくり、

 食卓は再び賑やかな活気に包まれていったーー。







 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ほうほう?トランザニヤ様?(* ̄ー ̄) イケナイ神様ですねー( *´艸`) それにしても、パメラさんのステータス、とんでもないです! 特に…… いえ!何処かとは言いませんが。 何処かとは(/ω・\)…
楽しい食事風景が目に浮かびます! 私も一緒にビールを飲みながら、美味しいご飯を食べたいなーと思いました笑 妄想図鑑も「おぉーー!」とワクワクしながら読んでいました>▽<!
わちゃわちゃした空気がめっちゃ良かったです。 みんなのやり取りが楽しい中で、最後にイブの優しさが入るのがすごく好きでした(๑´ڡ`๑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ