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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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ワイバーン討伐編 19 〜宿屋帰巣の食堂で、まさかのお見合い?〜



 「のほほん」が続きます。╰(*´︶`*)╯♡

 

 



 下界から顔を上げる神シロの言葉が天界に響く。


「やれやれーーといったところじゃな」


 その言葉に女神東雲は笑みを溢す。

 だが、黒銀の目を光らせるトランザニヤは顔を赤くし、黙ったままだった。




 ーーその頃ゴクトーは、宿屋帰巣の食堂で朝食を摂っていた。 




 

  ◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇



 ーー宿屋『帰巣』の食堂には朝陽が差し込み、

 木のテーブルに落ちる陽の粒が優しく揺れていた。

 

 コガラが羽を畳む音も、

 アカリのカップがソーサーに触れる音も、

 やけに柔らかく感じられる。


 ふわりとした優しい空気が流れる中ーー食堂も客たちで賑わい始める。

 ドワーフやエルフ、亜人や人種(ヒューマン)、様々な言語を話していた。

 カシャカシャとしたカトラリーが擦れる音とともに、良い香りも立ち込める。


 そんな中、満腹になったコガラが、

 俺のふとももの上にちょこんと乗り、丸くなる。

 

 一方、コガラを優しく撫でるアカリが、ハーブティーを一口含む。

 余計な言葉もなく、ただ俺とコガラに微笑む。



 ……普段は凛としてあっけらかんなのに、

 癒すようなーー優しい視線をたまに寄越すんだよな。


 

 口には出さず、動揺を沈めるが、なんだかふんわり心地良く、

 妙に落ち着いた気分でハーブティーを楽しんでいた。



 ふとコガラが念話を飛ばしてくる。


《「あるじーー! イブしゃんたちがくるよーー!」》


 食堂に流れる空気が一瞬、張り詰める。

 どこか、香辛料を感じさせるようなーーそんな【覇気】が漂い始めた。



 すると、昨晩の姿とは打って変わりーー

 白い太めのヘアバンドで白い髪を纏め、

 耳に掛けたイブが白いガウンを羽織りながらやってくる。


「なんじゃ、殿……もう起きておったか」と。

 

 紫と白の縞柄のパジャマ姿で堂々と食堂に入ってきた。


挿絵(By みてみん)


 その後ろには、護衛師団長たちがピタリと付き従っている。


 「ああ。おはよう、ヒラム・イブ・ファルダット」

 

「おはようございます。イブ姫様」


 俺と同時にアカリも丁寧に挨拶する。


「おはよう。殿……そのフルネーム、それとアカリ姫、

 イブ姫様というのはやめてくれぬか?」


「ん? では、なんて呼べば?」


「私も姫はつけずに呼んでいただけると……」



 俺とアカリが困惑する中、イブがニヤリと口元を歪める。


「殿はなんと呼んでおるのじゃ?」


「お、俺は……ふ、普通に……アカリ、と……」



 いきなり、俺に振るなあああ!

 恥ずかしいだろうがあああ!


 

 心の中で叫びつつ、

 口を尖らす俺を見て、イブが面白そうに笑う。


「それなら、(わらわ)はアカリンと呼ばせてもらうとするか。

 ああ、妾のことはイブと呼んでくれて構わぬぞ」


「ア、アカリン?……では、私はイブと呼ばせていただきますわ」



 ……イブの”リン”。

 それって、異国情緒、漂いすぎじゃない?



 首を傾げる俺を他所に、イブが目尻を下げ口を開く。


「殿、隣に座っても良いかぇ?」


「ああ」


 隣に座るや否や、アカリがギュッと俺の腕を掴んだ。

 "むにゅっ”が俺の腕に伝わり、カチッとした音が脳内に響く中ーー


 「ドクドコドクドコドンドンドン!」と。

 『江戸っ子鼓動』が暴れ太鼓を叩きだす。


挿絵(By みてみん)

 

「旦那!今日も祭りですかい? 

 あっしのばち捌きーーまんざらでもないでやんしょ!?」


「……ってか、祭りじゃないッ! 揶揄うなっ!」


 胸中命じると、『江戸っ子鼓動』が悪びれず舌をぺろっと出し、

『妄想図鑑』に飛び込むように消えていった。


 ーーカチッとした音とともに我に返る。


 こんな状況でも妄想する自分が憎らしいし、恥ずかしい。

 いや、そこは癖だから仕方ない。


 ポーッと気が抜けたような俺の様子にアカリの思いが伝わる。


(ダー様は……何でそんなに真っ赤になってるんだろう……いつものことなのに) 


 と彼女が首を傾げていた。


 俺のレアスキル、【心読】が発動する。


 未来を読むイブの【月読】、心を読み取る俺の【心読】、

 そしてーー世界の理を読み解く【星読】。


 これら三つの「読む」スキルは、

 この世界では破格の希少性を持っているーー

 昨日、イブが少し誇らしげに、かつ真剣な面持ちで教えてくれた。


 

 そんな中、護衛師団長の一人、”ふくよかなガリ”が厨房へ向かい、

 女将さんと話す声が聞こえる。


「女将、昨晩お願いしていた朝食を頼む」


「かしこまりました」


 ふくよかなガリが戻ってくると、イブが席に座るよう促す。


「お前たちも座るが良い」


「「「「「ハッ!」」」」」


 俺とアカリの座るテーブルの横に、

 ふくよかなガリ、大剣を背負う美人、

 ボインの二人、背の高い白髪の師団長たちが順に並んで座った。



 挿絵(By みてみん)

 

 

 周囲が騒つく中、キリッとした表情で食事を待つ師団長たちだが、

 何気ない視線をこちらに向ける。


 周囲の視線などお構いなしで、ふとイブが俺に問いかける。


「殿……アカリンと随分親しげじゃが……昨晩は一緒だったのかえ?」


「い、いや……お、俺は、コ、コガラと……」


「ほぅ、さっきは良い雰囲気じゃったが。

 アカリンがそのような格好で一緒にいるのは……何故なのじゃ?」


 訝しげに問い詰めるイブに、アカリの表情が変わった。

 そして彼女が節目がちに唇を噛む。


「ダー様は昨晩……お疲れでしたから……

 朝のご挨拶を、と思いまして……ダー様のお部屋に……」


 その言葉にイブが『即畳』する。


「アカリンが、殿の寝込みを襲うたのかぇ?」


「…えっ! い、いえ……部屋にいらっしゃらなかったので、ここに……」


 イブの畳み掛けるような問いに、

 しどろもどろになるアカリ。

 彼女の返答にイブがニヤけながら続ける。


「まぁ良かろう。……妾の国では一夫多妻制じゃから、

 アカリンを妻に(めと)ろうが妾は一向に構わぬぞ。ぁはははは!」


「……べ、別に……ダー様の寝顔が見たかったとか……

 そういうわけじゃ……ありませんけど……」


 イブの言葉に、アカリが頬を朱くして小声で漏らす。

 一方俺も、隠しようのないほどーー顔から火が出るかと思った。


 客が食事を終え、次々に食堂を後にする。

 残ったパン、スープには小さな羽音を立てる金蟲が、

 隙を見計らったかのように、(たか)り始めた頃。


 場の空気が落ち着く中、対面に座る護衛師団長たちが、

 頬を朱らめ”うっとりしちゃってる視線”をこちらに向けてくる。


 その視線に気づいたイブが口を開く。


「お前たちーー羨ましがっておらんで、早く良い男を見つけよ!」


 一方、大剣を背負う師団長が即座に、まるで噛み付くように答えた。


 「我は、姫様の護衛任務が生き甲斐であります」


「だからココ、もう護衛は要らぬと言っておろうが。

 国に帰ったら、良い男を見つけるがよい」


「我は男になど興味はございません。姫様に一生仕えますゆえ……」


「国に帰って屈強な漢と一緒になれば、

 良い戦士が生まれるというのに……ココには困ったもんじゃ。

 ガリ……姉のお前の指導が悪いからじゃ!」


 イブが眉をしかめて叱る。

 だが、”ふくよかなガリ”は、まるで気にしてない様子。



 「ぇっ?……ミニマムびっくり!」


 思わず訳のわからん言葉が口をつく。



 この二人、姉妹なのか……?

 『図太さ』だけはーー確かに、似てるかもしれないけども……。


  

 思いつつも、さすがに口に出す勇気はない。

 一方で美人師団長のボインのうちのひとり、

 杖を持つ方が真剣な表情で訴える。


「姫様……我が国の屈強なダークエルフの男たちは、

 軍に入るかーー船乗りになってしまいます。


 それこそ船長で何日も帰らぬ父を、

 母が日々寂しさを募らせておりました。


 ゆえに……なかなか相手が見つからぬのです……」


 その言葉に隣に座るーー連弩を持つボインも静かに頷き、同意を示した。


「マルル、メルル……お前たち双子も国に帰ったら、

 妾の異母兄弟と見合いをせぇ。

 文をしたためておくゆえ、お祖母(ばぁ)様に渡すが良いぞ!」


 イブがきっぱりと言い切る。

 その瞬間、ボインの二人の表情がパァと明るくなった。


「姫様!私も是非に!」

「姫様!あたしもお願いいたします!」


 その声に反応して、ふくよかなガリと、

 ひと際背が高い白髪の師団長も手を挙げて声を上げる。


「わかったわかった。ガリもキキの名も、文にしたためておこう。

 ココよ……お前もそうせぇ!」


 師団長たちの呼び名がはっきりしたなーー

 なんて思っていたのも束の間。

 師団長のココが、断固とした表情で首を振った。


「我は男になど全く興味はございません。姫様に一生を捧げ仕えます……」


 その固い意志に、イブがため息をつきながらも、

 チラリとガリ師団長を睨む。

 睨まれたガリ師団長はというとーー再び「図太い」表情をして、

 のんびりと構えていた。


 ……この二人が姉妹だってのは、

 どうしても、信じられないんだが……。


 場の雰囲気を壊さぬよう、

 心中でツッコミを入れるに留めたーーその時。


 芳しい焼きたてのパンの香りが俺の鼻をくすぐった。


「お待たせいたしました」


 女将さんとふたりの女中さんが、イブたちの朝食を運んでくる。

 

 食事を終えた俺は、

 コガラを抱きながら席を立とうとする。


 だが、コガラが念話を飛ばしてきた。

 

《「あるじーー! クロにいしゃんとノビたんがくるよーー」》


 《「そうか」》


 女将さんたちが朝食を並べる中、

 入り口の方からざわめきが聞こえてくる。


挿絵(By みてみん)

 

 クロニクが入ってくるなりーー

「兄貴、ここにいたか。 ん?  ア…アカリ姫、その格好は……」と。

 目を泳がせながら赤面し、言葉に詰まる。

 

 そのクロニクの視線は、アカリの白いシャツから透けたーー

 『桃色の花柄』に釘付けになっていた。


 一方で空気を読まない男、ノビが口を開く。


「アカリさん……上下お揃いの桃柄、素敵なんさ。おはようございまづ。

 しだっけ、みなさんも、おはようございまづ!」


 挙動不審ながらも、ノビが田舎訛り全開で挨拶した。


 一方平然としているノビとは対照的に、

 クロニクが完全にノックアウトでボーッとその場に立ち尽くす。


 そんな中、アカリはクロニクの視線を気にするどころか、

 凛としていつも通り、にこやかな挨拶をする。


「クロニク皇子、おはようございます。ふふ、ちょっと派手かしら? 

 ノビもおはよう」


 その言葉にクロニクが頬を真っ赤に染めた。


 クロニク……まだ朝だぞ。

 今、戦っているのは、己の理性とかッ!?

 ……目を覚ませ。お前は紅蓮の黒龍だろッ!

 でも気持ちはわかる……。


 内心思いながらも声をかけた。


「早いな、クロニクもノビも……」


 ノビが深々と頭を下げながら説明する。


「ゴクどーさんの部屋に皇子と行って、

 ノックしでも返事がないから、

 きっと食堂だと思っで……したっけ……」


 その訛り混じりの言葉に苦笑しながら口を開く。


「……腹減っただろう? 女将さん、追加お願いできますか?」


「わかりました」


 配り終えた女将さんが厨房へと戻っていく。


 そんな中、イブが余裕の笑みを浮かべながら声をかける。


「二人とも、妾の隣に座るが良いぞ」


 だが、師団長ココがすかさず口を挟む。


「姫様!そやつは昨日、無礼な態度を……」


 一方でイブがその言葉を遮るように手で制す。


「構わぬ……殿の弟なら、妾の弟も同然。無礼もないじゃろ」


 その言葉に顔を赤くしながらクロニクが叫ぶ。


「おい、オイラは兄貴の弟だぞ!」


 それを受け流し、大声で笑いながらイブがクロニクの肩を叩く。


「ぁはははは! そんな顔を赤くせんでもよかろぅ?」


 いきりたつクロニクを宥めるべく、ノビがクロニクの肩を必死に掴む。


「皇子! 落ちづいで……!」


「わかったから……離せ!」



挿絵(By みてみん)


 


 クロニクの胸元が暴れた拍子に開き、

 鍛え抜かれた胸筋と腹筋が露わになる。


 その瞬間ーー食事の手を止めた師団長たち。


 それを見たココが、恥ずかしそうに目を背けたが、

 他の師団長たちが目を輝かせてクロニクを見つめる。



 ……この師団長たち、完全にクロニクに釘付けじゃんか……

 まさかーー”肉食”なのか?


 

 そんな思考を沈める最中、

 ノビが顔を真っ赤にしてクロニクの隣に座る。


 まるで、お見合いパーティーみたいだ……

 でもここ、宿屋の食堂だよな?


 その様子に俺は口には出さず、笑いを堪える。


 そんな俺のふとももに爪を立てるーー

 コガラからの念話が顳顬(こめかみ)に響く。


 《「あるじーー、モフねぇと、ジュリねぇしゃん。

 それと、あたいのおねーしゃんがくるよ」》


 

 コガラや、あたいのおねーしゃん……って、パメラの事か?



 「ししし」


 俺は噛み殺した笑いを堪えきれず、漏らしてしまった。


 その瞬間、アカリが急に立ち上がった。


「ん?」






 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




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― 新着の感想 ―
むふふ( *´艸`) ゴクトーさん、たじたじ♪ でも……いつまでこの穏やかさが続くのか……! (; ・`д・´) 物語の転機の足音が聞こえる気がします! 続きを楽しみにしてます!
ブが来た瞬間に空気が変わるの、やっぱり強いな、と。 アカリの反応も可愛く、楽しい空気がそのまま伝わってきました(*´ -` )旦~
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