表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

186/192

ワイバーン討伐編 16 〜月読の姫の真相〜


 

  ブックマークと高評価、つけてくださり嬉しーーーい(● ˃̶͈̀ロ˂̶͈́)੭ꠥ⁾⁾!

  

 


 雲間から顔を上げたトランザニヤが黒銀の瞳を細める。


 「あの姫が加われば……古の末裔が揃うな」


 その言葉に神シロが、顎髭を撫でながら無言で頷く。

 一方で女神東雲がその赤い瞳で遠くを見据える。


「あとは、あのアマゾネスーーエリナ・エイマスだけね」


 そう零しながら目を伏せ、眼窩に広がる雲間の隙間を眺めた。



 ーーその頃ゴクトーたちは、宿屋帰巣のVIPルームで、

 ファルダットの姫の思いがけぬ言葉を聞き、凍りついていた。




 

 ◆(女神東雲が語り部をつとめます)◆




「妾を、そなたたちのパーティーに入れてくれぬか?」


 ファルダットの姫がゴクトーの問いに微笑を浮かべ、静かに落とす。


 その言葉に場が凍りついた。

 

 だが空気を読まない男ーーノビが驚きの声を上げる。


「えぇぇーっ!? なんで姫さが? あ……先生も姫さだった……」


 その声が終わる前に、パメラがすかさずノビを制した。


「貴様ああああ! 余計なことを言わんでいい!!」


 睨みつけられたノビだったが、

 いつものように「ケロッ」とした表情で受け流す。


 一方、ヒラム・イブ・ファルダットが、

 そんな二人の様子をじっと見つめていた。


(こちらも姫かぇ……姫なのに、随分と賑やかな連中といるのぅ……)


 そう思ったのか、彼女が突然「ぁははははは!」と笑い声を上げた。

 その声は柔らかくも響き渡り、ゴクトーたちの注意を一瞬で集めた。


「そなたら二人は実に面白いのぅ。

 頼みの理由か……それは、ファルダットの現女王ーー

 妾のお祖母(ばあ)様の命だからじゃ」


 その言葉にノビ以上に驚いたのはアリーだった。


 彼女が低い声で尋ねる。


「僕たちのことを、女王しゃまは知ってりゅの?」


 姫が軽く首を横に振る。


「いや、知らんと思うぞ」


 すると、ぶつけるようにクロニクが問う。


「じゃぁ何でだ?」


 その言葉とともに鋭い目が姫を探るように向けられた。

 少し考えるような仕草を見せる姫が唇を動かす。


「リリゴパノアのリーダーが、八咫鴉と呼ばれていると聞いたからのぅ」


「そう呼ばれてるらしいな……それが?」


 ゴクトーが静かに聞き返すーー

 だが彼の内心では何か嫌な予感を覚えていた。


 眉をしかめるゴクトーを一瞥、姫が一つ息をつきながら口を開く。


「『太古の大戦』で『始祖の一族』から授かり、

 我が一族に、代々受け継がれてきたーー

 【月読(ツクヨミ)】の能力(スキル)

 それがじゃ、妾には一向に開花せん」


 姫の表情が一瞬だけ翳る。

 その声には、王族の重圧を背負う者だけが知るーー

 苦しみが滲んでいた。


 ゴクトーたちもその話に目を丸くする。

 部屋の空気が重くなる中、ファルダットの姫が静かに紡ぎ出す。


「昨年、父上が病で亡くなり、

 母上と妃も……この【月読】の能力を持たぬゆえ、

 妾が【月読】を開花させねばならんのじゃ……

 このままでは、我が家は”名ばかりの月読”と蔑まれよう。

 それが耐えられぬのじゃ!」


 静寂が場を支配する。

 カーテンが揺れ、窓から吹き込む風が冷たいのを感じる一同。

 いつの間にか月明かりも翳る中、


(この姫……何かが引っかかる。仲間になんて、簡単に入れたくない……)


 内心思うジュリが声を荒げた。


「それで ?!  なんで、うちらのパーティーに入るのよっ!」


 場の緊張が一気に高まる。

 しかし、姫は動じることなく微笑を浮かべたまま唇を噛む。


「お祖母様が【月読】で"視た”のじゃ」


 その言葉にアカリが冷静に問いかける。


「何を視たんですか?」


 その声は淡々かつ冷徹で、緊張感をさらに高めた。


「お祖母様が”視た”のはこうじゃーー


 『北に新たに現る迷宮にーー導かれし美しい姫たちとともに、

 八咫鴉と呼ばれる者が、それを顕にするだろう。


 ーー二体の龍が友となり、

 八咫鴉は漆黒のローブを身に纏い、

 或る男と、七星の武器を探す旅に出るだろう。


 八咫鴉についてゆけば、ヒラム・イブ・ファルダットの能力は、

 必ず開花することだろう』


 そう、妾のお祖母様は、言うておった」


 その言葉に一瞬場が静まり返る。

 そして、次に放たれた言葉がトドメを刺した。


「それだけではないぞ。

 国からここへ出発する朝、お祖母様はこうも言ったのじゃ。


『よいか、その八咫鴉を必ず見つけ出して、共をせぇ。

 イブさえその気なら、その八咫鴉を婿に迎えても良いのだぞ』……と」



 その姫の言葉に全員、揃って驚愕の声を上げた。


「「「「「「「えぇっ!!!!!!! 」」」」」」」


 その声が揃い過ぎていたせいか、

 ファルダットの姫も護衛たちも目を丸くしたーー。




 ◇(ここからゴクトーが語り部をつとめます)◇ 




 ……なんだその話……

 八咫鴉と呼ばれてるって聞いたのは、今日だぞ。

 恐ろしい能力だな……【月読】か。


 俺は内心で驚き、その場の空気に一瞬呑まれた。


 しかし、クロニクだけが鋭い視線をファルダットの姫ーー

 ヒラム・イブ・ファルダットに向ける。


「姫さんよぅ……よくオイラたちの居場所がわかったな?」


 その言葉に応えたのはーー特殊な連弩を携えるボインの護衛。


「我々の部下数人を冒険者ギルドに、張り込ませておりましたので……」


「へぇーー。じゃあ、アンタら5人だけじゃないんだな」


 クロニクが興味深そうに尋ねる。

 

 今度は大剣を背負った色白の護衛が応じた。


「今ここにいる5人は、姫様護衛師団の団長なのです」


 その言葉にクロニクが"ニヤリと笑った。


「ククククク、さすが一国の跡取りだな。

 5人も女師団長を従えてるなんて、恐れ入る。


 ……ってことは、姫さん一人に一万人以上の兵がーー

 ついて来たってことになるが?」


 場が再び静まる中、クロニクの問いに、

 大楯を背負った“ふくよかな”ガリが、静かに答えた。


「いや、我々5人と隊長階級(クラス)の者だけだ」


 その言葉を受け、

 クロニクが笑いながら俺に目を向ける。


「それでも100は下らないだろうよ。

 “ははははは” こりゃ逃げられんな、兄貴」


 彼の目には、どこか愉快そうな色が浮かんでいた。

 そのやり取りを見たアカリが、不安げに口を開いた。


「一国の姫様を……危険に晒す訳にはいきませんわ」


 その言葉に耳をピクッと動かすファルダットの姫が、

 不思議そうにアカリを見つめ、言の葉を落とす。


「そなたも姫なのだろぅ?」


「それは……その……」


 アカリが言葉を詰まらせると、ジュリがすかさず助け船を出す。


「わたしたちは分家の娘だから、大丈夫なのっ!それと目的もあるし……」


 そう言って彼女が目を伏せる。

 どこか気負けしている感が否めない。


 そんな中、ファルダットの姫が首を傾げて尋ねる。


「目的とは? 七星の武器を探すことか?」


 アカリが一瞬動きを止めながらも、なんとか声を絞り出す。


「私たち姉妹の目的は、兄を探すことですが……

 七星の武器も探す予定です」


「ほぅ、それが〝或る男〟か?」


 姫の問いに、俺が頷いた。


「ああ。【月読】で言うところの〝或る男〟は、

 俺の師匠でな。ここにいる姉妹の義理の兄だ」


「ほぅ……なんと因果な。では、間違ってはおらんな」


 ファルダットの姫が満足そうに笑う。


「そうなるな……」


「なら決まりでいいのだな。妾の頼みを受けてくれるのじゃな?」


 俺に答えながら姫が上品に足を組み替える。


 挿絵(By みてみん)


「……っな!……」


 この姫さん、話を持っていくのがうますぎる……。

 にしてもーー金色の三角がチラついてますけども?


 

 内心計られたと思いつつ、

 この状況に追い打ちをかけるが如くーー

 姫がニヤリと笑い、俺を見上げる。


 その堂々とした態度に、

 答えを濁す間もなく押し切らそうになったーーその時。

 クロニクが横から、助け舟を出すように口を挟んだ。


「姫さんよぅ、勝手に決めてるが、アンタ冒険者の登録はしてあんのか?」



「無礼だぞ!」

「姫様に向かって!」


 杖を持つ護衛とともに、連弩を扱うボインがクロニクに怒鳴った。


 だが次の瞬間。


 「ピィーーーッ!」


 場の空気を切り裂くように、コガラの鳴き声が響いた。


「っ……!」


 咄嗟に身構え、護衛たちが反射的に動きを止めた。


 一方ファルダットの姫だけはその様子を見て、口元を緩める。


「ふふ……騒ぐ必要はないぞぇ。

 妾にとっても、その小さき龍は特別な客人じゃ」


 その言葉にクロニクが苦笑いを浮かべる。

 その態度や言葉には威厳が宿っていた。

 

 やれやれ。

 この……姫さん、随分と肝が据わってる。


 思いながらも、目を向ければ、

 その後ろで護衛たちが姫の命を守るべく、緊張感を高めていた。


 そんな折。

 空気を読まない男がここで、意外な一面を見せる。

 

 ノビが、退け反りながらも信じられないようなーー

 【覇気】を出して口を挟む。


「……ひ、姫様の護衛師団長は、威勢がいいんさ!」


 その【覇気】を感じた者は誰もいないが、俺だけは感じ取っていた。



 「もう帰っでぐるもんかさ!」ーーって、パン屋を飛び出し、

 お前に初めて会ったあの時の事を思い出すよ……

 ずいぶんな迫力があったよな。

 今思えば……あの時にもうお前は、

 その片鱗を見せてたのかもしれないな。

 ふ、ほんと、驚かされるばかりだよ。


 

 心の奥底で密かに感じていたことを思い浮かべる。

 

 ーー変わりゆくノビの姿を目の当たりにし、

 ひしひしとした感慨に浸る。

 今の俺は、仲間の成長を心から喜んでいる。

 以前なら有り得ないことだ。


 思いに耽る時間が続く中、場は静寂に包まれる。

 護衛たちも言い返さず、沈黙したままだった。


 

 ふと悠然とした笑みを浮かべながら、

 ヒラム・イブ・ファルダットが口火を切った。

 


「登録はしてあるぞ。王女命令の特権を使ってな……

 冒険者としては、イブラヒムと名乗っておる。

 

 妾のランクは本部も認める『S級』じゃ。

 文句はあるまい?」


 

「ぇえっ! 『S級』!?」


 ノビが驚きのあまり、後ろに大きく退け反る。

 その姿を見たパメラが、鋭い目線をノビに向ける。


 いつものように、ノビが「ケロッ」と無邪気に返し、

 なんとか平静を保とうとしているが、その様子を横目で見ている俺は、

「やっぱり、お前はそのままでいいよ…」と零し、大きく息をついた。


「姫様は、戦闘経験があるのか?」


 俺が重い口を開くと、ヒラム・イブ・ファルダットーー

 その姫、イブラヒムが少し考えた後、穏やかに答えた。


「妾のことはイブと呼んでくれ……お祖母様や母上、他の王妃にも、

 そう呼ばれているからのぅ。


 妾が武術を学んだ師は、

 ファルダットの精鋭ーー暗殺師団の元師団長でな。


 みっちりと仕込まれておるから……そこは安心せぇ」


「……なら、ギフトも当然『暗殺者(アサシン)』か?」


 クロニクが問いかけると、イブがひとしきり笑いながら答えた。


「“ぁはははは” 皆がそう言うが、妾に自覚はないぞ。


 【闇魔法】を纏う白兵戦は得意じゃが……

 それとは別に、妾は母上の血を多く継いでいてな。

 生まれながらに『錬金術師』のギフトもあってのぅ……

 物体融合や生成、分解はお手の物じゃ。


 どうじゃ? 損はなかろう?」



 その言葉に俺は少し驚きながらも口を開く。


「そうか……『暗殺者』、『錬金術師』ともに初めて出会った。

 俺はゴクトーだ。

 仲間からは色々な言われ方をしているから、好きに呼んでくれ」


「ならば妾は、婿殿と呼んでよろしいかぇ?」


 イブが揶揄うような口調で、楽しげに微笑みながら返してくる。


 「おいッ! 何でそうなる?」


 問いただしたその瞬間、「ダメに決まってるでしょっ!」と。


 ジュリがすかさず声を上げ、アカリも眉をつり上げ叫ぶ。


「ダー様を婿殿とは、呼ばせませんわ!」


 一方でパメラも顔を真っ赤にして、息を荒げながら言い返す。


「何よ!〝お宝〟のゴクちゃんを横取りする気?!」



 イブがそんな彼女らの反応を見て、クスッと楽しげに笑う。


「“ぁははははは” 戯れも通じんか……

 では、婿を取って殿と呼ばせてもらうのじゃ。

 これなら文句はあるまい?」


 挿絵(By みてみん)


 「はぁ…?」


 俺が零したーーその刹那。

 ジュリ、アカリ、パメラも一斉に黙り込む。


 一度は怒りを顕にしたものの、

 イブの言葉に上手く丸め込まれたように、

 何とも言えない表情でーー3人が顔を見合わせる。


 この姫様……暗殺者というより、

 政治家だな…ファルダットの王族の血は伊達じゃない。


 

 心中に沈めながら苦笑したーーその時。

 ふと、顔を上げたアリーが口を開く。


「僕にゃね、アリー・ココロ・オブニビアにゃ!」


 さりげなくイブの隣に座り、

 笑みを溢すアリーに少し驚いた様子で見つめた後、


「イブと呼んでくれ………アリリンよ、こちらこそ、よしなに頼む」


 そう言ってイブも笑みを浮かべた。


 ……その呼び方ッ!

 何だその"アリリン”って……異国情緒たっぷりだな。


 もちろん口には出さない。

 場の雰囲気が和み始めたその矢先。

 

 クロニクの肩に飛び乗り、

 コガラが鳴き声とともに、イブに向かって”コトバ”を飛ばす。


「ピ〜〜〜〜〜♪♬」「コガラだよーー!」


 イブがその声に反応し、軽く笑いながら。


「そのほう、コガラと申すか……可愛いのぅ。イブじゃ、よしなにのぅ」


 その場にいた誰もが、

 彼女の穏やかな言葉に心地良さを感じながら、

 その流れに自然と引き込まれていったーー。


 そんな中、クロニクが少し悪戯っぽく目を細め、


「イブ姫さんよぅ。 オイラたちはギルドに行く予定があるんだが……

 ギルドの鍛錬場でオイラたちと、手合わせの模擬戦をしてみねぇ?」


 そう気軽に言うと、イブが嬉しそうに応じる。


挿絵(By みてみん)



「おぅーーお! 良いじゃろう。お前たち、師団長も胸を借りてみろ。

 いい経験じゃ。国に帰ったら土産話になるのぅ。ぁはははは」


 クロニクの無礼な態度に、師団長たち護衛陣は眉をしかめたが、

 イブがその場を和ませるように笑いながら零す。


「妾は、あまり物事を深く考えぬ性分じゃからな、

 皆の者も気楽に楽しんでくれ!」


 その言葉に師団長たちも少しずつ表情を緩めていった。


 おいおい、何でそうなる?

 まったく……この姫様、只者じゃないな。


 心中に留め、俺は遠くを見つめたーー。


「ピィ!(ちゅぢゅく!)」






 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
イブ姫ーーーー!!! 麗しくて、内面も素敵……ドストライクです笑 今回もイラストとストーリーの相乗効果が素晴らしく、読んでいて、ドキドキワクワクしました! キャラ造形もお見事!
姫様キター! でも姫様、食えない人だった!((( ;゜Д゜))) そしてジュリさんたちの顔怖いよー!(´;ω;`) これからどうなっていくのか、目が離せません! ゜+.ヽ(≧▽≦)ノ.+゜
イブ姫、見れば見るほど気になるな……ってなりました。 強気でぐいぐい来るのに、その裏にあるものがちらっと見える。 楽しいのに、胸がざわつく感じがグッ(๑•̀ㅂ•́)b
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ