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妄想図鑑が世界を変える? 〜異世界トランザニヤ物語〜 #イセトラ    作者: 楓 隆寿
第3幕 動章  〜ワイバーン討伐と新たな仲間〜

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ワイバーン討伐編 11 〜豪快な親方バグマンと見知らぬ気配〜



  新キャラ登場٩( 'ω' )و





 下界を注視する黒銀の瞳がギラリと光る。


 「やはりか……」

 

 そう漏らしながら顔を上げるトランザニヤに神シロも頷く。

 

「こりゃぁ、一波乱あるかもしれん」


 零しながら白い口髭を整えた。

 二人の落ち着いた様子に、

 女神東雲だけはどこか、落ち着かない様子で口を開いた。


「あの一族が動き出したというのに、本当に呑気ですわね」


 彼女はそう言って息をつき下界を覗き込む。




 天上の神々の不安を他所にーー

 その頃ゴクトーたち『リリゴパノア』の面々は、

 ギルド支部の応接室を出ようとしていた。





 

 ◇(主人公ゴクトーが語り部をつとめます)◇



 

 ハウゼンが立ち上がり、俺たちもそれに続く。

 応接室から出ると、彼を先頭にして『解体室』へと向かう。


 観音開きのドアをハウゼンが力強く押し開ける。


 ギュィィィーン!


 魔導ノコギリの甲高い金属音が響く中、

 内部からは血と鉄の匂いが漂い、

 複数の作業員が忙しなく動き回る様子が目に飛び込んできた。


「親方はいるか? バグマン親方ーー!」


「お呼びでしょうか?」


 低く響く声とともに現れたのは、

 解体作業用の透明なマスクを上げた髭面の男だった。


 逞しい体躯ーー両手と白い前掛けには血の染みがついている。

 大きな肉切り包丁を抱える姿が、泥臭い職人魂を知らしめていた。


 バグマン親方の身内だろうか。

 作業場で働く緑の巨軀が数人、忙しなく汗を流す。

 

 初めて見る緑の巨躯にーー

 目を丸くするノビにパメラがそっと囁く。


 「貴様は初めて見るのか……。

 彼らは多分、オーガのパワーと人種(ヒューマン)の器用さを併せ持つ、

 ハーフオーガ。

 ーーオーガと人種との混血だろう……」


 その言葉にノビが息を呑む。

 俺を含め、他の仲間たちは驚きもしない。

 

 そんなノビを横目にハウゼンが口を開く。


「バグマン親方、ワイバーンの解体をお願いしたい」


「ほぉ、久しぶりに、良い仕事が舞い込んできたな……腕が鳴るぜ」


 バグマンの目が細まり、厚い唇が"ニヤリ”と上がる。


「ゴクトー君、では早速」


 ハウゼンに促され、

 『アイテムボックス』から巨大なワイバーンを一体取り出し、

 作業台の上に横たえた。


「ほう……これはまた立派だな。

 傷はあるが、素材の質は悪くない。

 右胸の穴は銃か何かの痕か?高値が付きそうだな」


「親方、これで宴会ができるぞ!」


「あぁ、こいつで鍋でも作りゃ、村ひとつ分は食わせられるな!」


 作業員たちが騒つく中、俺は他の仲間に目配せする。


「みんな、頼む」


 一言で全員が動き出し、それぞれ『アイテムボックス』、

 『万能巾着』からミニチュア化されたワイバーンを作業台の上に並べていく。


「お、おい……これって、全部ワイバーンなのか?

 どう見ても五十体以上あるが……こんな数、見たことねぇ!」

 

 驚愕する作業員。


 唖然とするバグマンの背中を、ノビが自慢げに叩く。


「これは先生の魔法で、小さぐしでるんさ!」


「おい、待て待て!これが全部元のサイズに戻ったら天井が吹き飛ぶぞ!」



 挿絵(By みてみん)


 そう言ってバグマンが額の汗を拭いながら、作業員たちに指示を出す。


「おい、全員集合だ!別棟の作業場に移動するぞ!さっさと動け!」


「「「「へぇーーーい!!!!」」」」


 作業員たちが青色の大きなコンテナーを用意し、

 ミニチュア化されたワイバーンを慎重に詰め込む。


 そんな中、別棟の作業場に入ると奥から声がした。


「次! 23番 前に!」


 目をやると訓練所で、ギルド職員が新人冒険者の昇格試験をしている。

 審査員は多分ベテラン冒険者だろう。


 その光景を見ながら、ジュリとアカリが顔を見合わす。


「ネー 見て!懐かしい……あの頃は必死だったよね」


「ええ、私もジュリもね。ギルドの訓練所はーー辛かった記憶しかないわ」


 

 二人のやり取りに、俺も思わず過去を振り返る。

 

 冒険者になって初めての経験ーー

 E級昇格試験で手が震えたあの日。

 師匠が変な笑い方しながら、背中を押してくれたっけ。


 そんな思い出に浸りながら、別棟の作業場へと移動した。


 

 作業場は巨大な天井と頑丈な作業台が並び、

 壁際には大型の『魔導保冷庫』が三台設置されている。

 その横には解体用の大きい『魔導ノコギリ』やら大型のハンマーも。

 大きな肉切り包丁とノミも数本、作業台の上に散らばっていた。


 壁一面に並ぶ、見たこともないようなーー

 解体道具の数々にも目を奪われる。

 

 

 バグマンと作業員たちがすぐに準備を整え、

 大量のミニチュアワイバーンを三つの山にわけて並べた。


「全部で……55体か」


 俺が確認すると、ハウゼンが驚きと期待の入り混じった唸り声を上げる。

 その表情を見て、すぐ俺は声をかけた。


「パメラ、頼む」


「おっけーよん!」


 親指を立てたパメラが、新たに出した紅杖を掲げ詠唱を紡ぐ。


「【イーチ・ォ・グロゥナァーープ】!」


挿絵(By みてみん)


 真紅の魔法陣が作業台の上に広がりーー淡く輝き出す。

 次の瞬間、ミニチュアワイバーンが、次第に大きくなり元の姿を取り戻した。


 その巨大な群れに作業員たちが見上げながら、呆然と立ち尽くす。

 

 一方ハウゼンが爛々と目を輝かせる。

 彼の頭の中ではーー皮算用がしっかりと組まれているのだろう。


 そんな中、一人の作業員が頭をかきながら愚痴を零す。


「おいおい……こんな数を解体するのかよ……」


「最高だな!残業代は期待できるぞ!」


 隣の作業員はガッツポーズだ。

 その横で少し背が小さな作業員が袖をまくりーー


「腕が鳴るぜ!」と、ワイバーンの山に手をかけた。


「面倒だが……仕方ないやるか……」


 四人目はどこか面倒臭さそうに漏らしていたが、

 その目には鋭さを宿す。


 作業員の表情が次第に熱気を帯びていく。

 解体場の空気が上昇し始めたーー丁度の頃合い。

 作業員たちにバグマンが号令をかける。


「よーし全員!今夜は徹夜だからな。覚悟しろよ!」


 その声に慌てて俺が口を開く。


「二十体分の肉は、こちらに寄こしてくれ。

 残りの素材は全部、買い取りで頼む」


「明日には解体を終わらせるから、取りに来い!」


「ああ、頼む。さすが親方だ、仕事が早いな」


 俺の言葉にバグマンが嬉しそうな笑みを溢し、

 作業員に向かって指示を出す。


「おい、急げよ!これは、巷で噂されている、

 八咫鴉様からのご依頼だぞ!がっははは」


 俺の異名を口にしながら揶揄うように豪快に笑う、

 バグマンの声に、作業場がさらに活気づく。


 そんな中、ハウゼンが振り返り、

「ゴクトー君、では、明日」と、嬉しそうに支部に戻って行った。


 その様子を見届けながら、期待と満足感を胸にーー

 俺は仲間たちと作業場を後にした。 



 ギルド支部の別棟を出ると、斜陽が地面を赤く染めている。

 俺たちの歩調に合わせた影が長く伸びる。


 先頭を歩くアリーの尻尾が、少し冷たくなった風にゆらゆらと揺れる。


「ワイバーンのお肉楽しみにゃ!」


 振り返る彼女が嬉しそうに笑った。


 一方、ノビが墨色に変わりつつある空を見上げた。


「もう……ごんな時間なんさ」


 彼の(なま)りは相変わらずだが、

 それも今や仲間内では親しみの一部。


「そうだな、腹も減ったし。サーシャの所にでも行くか?」


 俺が答えると、他の仲間たちも無言で頷く。

 

 歩みを早める最中、

「ピピ〜〜〜」とコガラが小さく鳴く。

 

 俺の肩で羽を震わせ、”コトバ”を飛ばしてくる。


「あるじー、おなか ちゅいた」


 その声は、鳴き声以上に愛らしい。

 潤んだ目を向ける姿は、まるで幼子のようだ。


「わかったよ、コガラ」


 思わず目尻が下がってしまう。


 そんな俺たちはビヨンド村のメインストリートを歩いていく。


 夕陽に照らされる人々の表情もどこかのんびりで、

 商店の軒先では、終わりゆく一日をまるで楽しむかのように談笑している。

 他方、夜の屋台を準備する獣人たちが、忙しなく準備を進めていた。

 これからが彼らの稼ぎ時だ。


挿絵(By みてみん)


 そんな様子を横目にジュリ、アリー、アカリの3人が、

 手を繋いで歩く姿が微笑ましい。


 垂れ耳をピクピクさせるアリーの横で、

 ジュリが何かを話しかけているが、内容までは聞くことはできない。

 その隣ではアカリが、寄り添うように歩いていた。



 「ほんとあの3人は、仲が良いよな……」


 思わず零し、口元が緩んだ。


 

 俺の後方を歩くミーアが珍しくパメラとが並んで歩き、

 話し込んでいる。どうやら魔法の話題らしい。


 パメラが手振りを交えながら熱心に何かを教えているのがわかる。

 ミーアが頷きながら真剣な表情を見せていた。


 そんな二人の横で、何か言いたそうにしているノビ。

 だが、話しかけるタイミングを掴めず、時折顔を赤くしていた。

 それを見て思わず苦笑が漏れる。


 

 教会の鐘がカラ〜ン、カラ〜ンとなる中、


 メイン通りの喧噪が一瞬、途切れたように感じたーーその時。


「っ……!」


 背中にゾクッと寒気が走った。


 振り返るとーー

 フードを目深に被るひとりの男が、こちらをじっと見据えている。


 やがて、人混みの中に紛れるかのように男はふっと消えた。


 次の瞬間、只ならぬ気配が俺を襲う。


「っ……!」


 『アイテムボックス』から【桜刀】を出し、咄嗟に柄を握る。


 

 だがーー。


 不意に柔らかな"むにゅにゅ〜ん”とした感触が腕に伝わった。


 ミリネアが腕を絡ませてきたからだ。


「うふふ、こんな夕陽の中で、歩くのも悪くないですわね?ご主様」


 そう漏らしミリネアが上機嫌な声色とともに頬を朱らめる。


 「はぁ〜…びっくりしたぁ……てっきり魔族かと思ったぞ」


 俺は脳が一瞬フリーズした。

 

 ……頼むから、突然の”小玉スイカパンチ”はやめてくれ……。


 胸中に沈ませる俺を他所に、微笑むミリネアが念話を寄越す。


《「……うふふ……突然でなければ、ご主様のそんなお顔、見れませんもの……」》


 悪戯っぽい笑い声が顳顬(こめかみ)に響く。


《「だからああああ!勝手に思考を読むなあああああ!」》


 大きく息をつき、思わず肩を落とした。


 以前、アカリ、ジュリ、アリーがこの辺りで魔族に襲われたことがある。

 その時の呪詛魔術のせいで、アリーが急成長したのを未だに忘れない。


 どこで再び魔族が襲ってくるかはーーわからない。

 だが、仲間たちを守ると心に誓った。

 せめて俺だけは、いつでも戦えるように準備しておかなければ。


 そんな想いを馳せる俺の横で、鋭い目つきでクロニクが歩く。

 ハルバードを肩に担いだ無骨なその姿が、

 道行く人々の視線を集める。

 彼の鋭い眼光が向けられる度、通行人がさっと目を逸らす。


 「しかし、目立つな……」


 思わず口から溢れる。

 すれ違う人々の視線が、針のようにこちらを刺してくるのを感じる。


 商店の人たちの目と顔がヤバイな……

 格好が派手過ぎるからだろうか?


 仲間たちの華美な装飾、露出度の高い装備、

 そしてーークロニクの存在感。


 どう考えても、地味とはほど遠い仲間たちだ。


 ……いや、世間から見れば、黒一色の俺が地味過ぎるのかもな。


 そう思いながら、ぼんやりと考え込む。


 俺たちがこうして歩くだけで注目を集める。

 それは誇らしくもあり、少し気恥ずかしいものでもあった。


 ……この気配、胸がざわつくな。


 だがこの時ーー俺以外、誰も気づいていなかった。

 俺たちを監視するように見ているフードの集団をーー。



 挿絵(By みてみん)









 お読みいただき、ありがとうございます。

 引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )



 




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― 新着の感想 ―
親方まわりの現場感がめっちゃ良かったです。 ワイバーン大漁で楽しい空気だったのに、最後にしっかり不穏を差し込んでくる。 続きが気になります('◇')ゞ
ワイバーンの肉……( ̄¬ ̄) Σ(゜Д゜〃)! まさかこんな良いところで切るなんて! 続きが気になります! また新たな展開の予感o(*゜∀゜*)o
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