ワイバーン討伐編 10 〜ゴクトーの跳ねる内心と討伐報告〜
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「ゴクトーたちのこれからが、楽しみじゃわい」
下界を覗く神シロが漏らす。
その言葉に妻の女神東雲が口を揃える。
「カルディア魔法国に向かうと言ってましたわね。
てっきり、コリン聖教皇国に向かうものかとーー」
女神東雲はそう言って顎に手を当てながら、しばし物思いに耽っていた。
一方で、黒銀の目を細めるトランザニヤが一言ポツリ。
「あの姫も動き出したな」
ーー天界の三柱が下界注視する中、
ゴクトーたちは、ビヨンド村のギルド支部を訪れていた。
◇(ゴクトーが語り部をつとめます)◇
トントントン
「失礼します。リリゴパノアの方々をお連れしました」
受付嬢がドアをノックし、応接室のドアを開けると、一礼して下がった。
そこには紺色の三つ揃えスーツを身に纏った、
支部長ハウゼンが座っていた。
「ゴクトー君、どうぞ。みなさんも座ってくれ」
俺たちは促されるままにソファへ腰を下ろした。
やたら広い応接室。
部屋の中央に座るハウゼンを挟むように、
俺たちは左右にそれぞれ、わかれて座った。
席に着くのを見計らうハウゼンが、にこやかに口を開く。
「ゴクトー君、随分と大所帯になったね。
さっき『魔導端末』で、君たちの登録情報を確認したけど、
メンバーが凄い顔ぶれだ。
桃色姉妹ーー【白の疾風】と【黒の戦慄】。
【紅玉のダイナマイト】に【カエルノビ】。
【魔導銃のプリティー】に【魔性の二つ矢】、
そしてーー【ゴット・スキル】と【紅蓮の黒龍】……
さらに従魔がピクシー・ドラゴンだなんて。
これだけの異名を持つ冒険者が集まるパーティなんて、
聞いたことがないよ。
それも『S級』が七人も揃っているんだから、
君たちはズードリア大陸でも屈指の存在だろう。
もしかしたらーー
この大陸で十本の指に入るパーティかもしれない。ははははは」
ハウゼンの軽快な笑い声が応接室に響く中、
俺はその言葉の重みを感じながら、
これからの責任の重さを改めて実感していたーーその時。
「へぇー、そんな風に呼ばれてるんだ」
ジュリが椅子に座り直し、
足を組み替える仕草をわざとらしく見せつけるようにする。
そのミニスカートから覗く脚線美に、”死線”が自然と引き寄せられた。
『江戸っ子鼓動』の制止も聞かずに。
ジュリがチラリと俺の顔を見て、頬を朱らめる。
(恥ずかしいけど、わたしだって、アピールしなきゃ)と、
ジュリの気持ちが伝わる”心読”スキルに動揺しつつ、
……急にどうした?……ジュ、ジュリさん?
今はやめてもらいたいーーその【コントラストカラー・デス】!
……殺す気ですか?
と胸中に沈める中、
奥に微かに覗く『紫と黄色のボーダー』が目に入った瞬間、
俺の理性が揺らぐ。
その瞬間ーーカチッとした音が脳内に響き、
『妄想図鑑」のページがパラパラと開いた。
図鑑No.17:【小谷山】が顔を覗かせる。
「……今日の取り組みは……紺トラスト将軍か……」
漏らしながら小谷山が相撲取りのように、自身の両頬をパチンと叩く。
「ひぇーー!」
紺トラスト将軍が、紫と黄色の布を靡かせ、
一目散に『妄想図鑑』に逃げ込んだ。
次の瞬間、『江戸っ子鼓動』が飛び出し、
「勝者【小谷山】〜【小谷山】〜♪」と笑いながら軍配を上げた。
「おいッ! 鼓動、遊ぶなッ!」と揶揄う鼓動に胸中命じる。
「旦那、すいやせん。つい……。ほら小谷山、行きやすよ!」
そう言いながら、小谷山とともに『妄想図鑑』に収まった。
カチッとした音とともに、ほっと胸を撫で下ろす俺を他所に、
パメラが「ふふ〜〜ん」と、軽く鼻を鳴らし口を開く。
「紅玉のダイナマイトって、少し失礼じゃない?」
そう言ってパメラが美脚を組む。
その動作一つ一つが、見る者を惑わすほどに艶っぽい。
彼女がこちらを見て微笑む度、ベージュストッキングのその奥ーー
『紫の薔薇』がチラつく。
(どう? ゴクちゃん……
この"異名”もだけどーー大人の魅力も負けてないと思うわよん?)
心中そう思っているパメラが艶然と笑い、俺の顔を見つめる。
その姿にノビとクロニクが顔を真っ赤にしながら目を逸らす。
一方のハウゼンは魔導端末を覗き込み、てんで気が付いていない様子。
その薔薇柄は……“ハーデス”。
地獄の死神ですか?
『妄想図鑑』No.04:黒薔薇ノ黙咲ーー
じゃないだけマシか。あれは観るものを恐怖に陥れるからな。
パメラさんや、あなたは悪魔の親戚ですか?
………落ち着け俺。……ここで動揺したら負けだッ!
胸中を押さえつつ、再び捉えられた”死線”が気になるのだが。
『妄想図鑑』が見えてないことに気づき、息をついた。
そんな中、口元を微かに緩めるアカリが唇を噛む。
「ダー様、リーダーとしての威厳が出てきましたわね……クスッ」
そう言って口元を緩め、自ずからふわりとした仕草で美脚を動かす。
ノビとクロニクの視界からはそれが見えていない。
……ちょっと……目の前で開かないでーー
いや、今……見たら負けだっ!
思いながらピタリと動きが止まった”死線”を逸らす。
だがーー。
「ふふ、ダー様に、この呪文を捧げますわ”パカックスッ”」
小声で囁きながらアカリが笑みを溢し、静かに足を広げ、
俺の視界にしか入らないようーー
チャイナをスッと持ち上げ、パチッとウインクを投げる。
その刹那、『金と白のストライプ』が覗く。
「 お見事、カーテーシーデス……!」
思わず漏らしながら耳まで熱が籠る。
”死線”がそこから離れようともせず、ピタリと動かない。
一方、アカリの仕草を見たジュリとパメラが凄い目つきで俺を見る。
その刹那、背中に悪寒が走った。
ぐっはあっ!……アカリさん、いやデス姉さんや、
シマウマじゃないんだし……得意技の"パカックス”、今しないで!
綺麗なストライプ……ってか、そうじゃないでしょ!
もうそれ、俺の理性が……崩壊する呪文デス……!
無意識にそう思いながらも、深呼吸して必死で堪える。
そんな俺を見ながらアカリが小さく笑う。
その表情には無邪気な可愛らしさと、
挑発的な色気が同居しているーーほんとタチが悪い。
応接室の温度が急上昇する中、
他の仲間は気がついていないのか、沈黙を続けていた。
一方の俺は、頭のてっぺんまで熱が籠り、胸中はヒヤヒヤ。
額にも冷や汗が滲む。
思わず席を移ろうと俺は立ち上がった。
そんな中、支部長のハウゼンは『魔導端末』を弄りながら、
「うんうん」と頷くばかりだ。まるで気付いてない様子。
ふと立ち上がったミリネアが俺の背中に張り付く。
「ご主様には、異名はないのですか?」
ミリネアの優雅な雰囲気は他の女性たちとはまた違い、
控えめながらも、小玉スイカ級の胸を"むにゅにゅ〜〜ん”と密着、
頬を朱らめながら俺の顔を覗き込む。
それぞれの個性をフルに生かして翻弄してくる中、
俺はひたすら耐えるしかなかった。
なんでだ……?
なんで、いつも俺はこんな状況にぃぃぃぃ!
冷静で居ろってほうが無理だろッ!
一人一人の視線、仕草、
そして隠し切れない色気が、容赦なく襲いかかるのが辛い。
俺の胸中の葛藤などお構いなしに、
魔導端末に集中しながらーー
ハウゼンがミリネアの問いに答えた。
「もちろんついてるよ……
【八咫鴉】とね。
冒険者がゴクトー君をそう呼んでるらしい。
三本足の神の遣い、導く者、太陽の化身とか……
八咫鴉はいろいろ言われてるね。
まさか君がここまでの存在になるとはね……
本当に、時間の流れというのは面白いものだ」
ハウゼンが音吐朗々に語る。
その声の調子からもどうやら本当らしい。
……ハウゼンさんや……
俺がそんな異名をつけられる器だとでも、思ってるんデスか……
まあ、確かに今、足が三本みたいになってますけども。
……ってか!違うだろッ!
半ば諦めつつも、胸中穏やかでいられない俺は、思わず座り目を伏せた。
一方でハウゼンの語りにアリーが目を輝かせる。
「ゴクにぃ! それ、かっこいいにゃ!!」
その言葉にクロニクが"ニヤリ”と笑う。
「兄貴の呼び名か……ま、当たり前だな」
そう言いながら口を尖らせた。
「はいはい、もし、気に入ったなら譲るよ」
とクロニクに俺は思わず返す。
その言葉にミリネアが誇らしげに覗き込み、
「ご主様に相応しい呼び名です」
と言いながら微笑む。
一方でクロニクの隣に座るミーアが零す。
「ミリネア姉様……うち、魔性の二つ矢なんて……」
目を泳がせる俺を横目に、ミーアが肩をすくめた。
アリーの隣に座るーー空気を読めない男がここで口を開いた。
「オラは……カエルノビ、ダサいんさ!」
そう言って不貞腐れると、パメラがすかさず笑いながら茶化す。
「貴様には……ちょうどいい呼び名だわ!」
口では斬り捨てるパメラが温かい目をノビに向けた。
その視線にノビが肩を窄め、頬を朱く染める。
『恒例行事』の発動。
ノビに目を向けると「ケロッ」とはせず俯き、
ゆっくりと顔を上げ、パメラの優しく微笑む顔に見惚れていた。
(……あら、ノビ……“ちょっとだけ格好いい”じゃない)
パメラの内心が予想外。
見ればパメラもやんわりとした表情で、頬も朱に変わっていた。
そんな中、ジュリが気合を込めた言葉を投げる。
「閃きのカエルに変えていこうーーっ!」
指を突き上げる仕草に、コガラが鳴きながらノビの口調を真似た。
「ピ~~~~~~♪」「いごうーーー!」
全員が”ゲラゲラ”と笑う。
その光景に、場の空気が一気に和らいだのを感じた。
顔に血が昇っていた俺も、やっと”冷静さ”を取り戻す。
「ハウゼン支部長……依頼の報告なんだが……」
俺が切り出すと、ハウゼンの表情が引き締まる。
「ワイバーンはハゴネに何体ぐらい……いたのかね?」
「50体ぐらいか……」
「っえ! そ、それなら、すぐ本部に依頼してーー
討伐隊を編成して貰わないといけないね……すぐに知らせないとッ!」
慌てて、立ち上がろうとするハウゼンに、
垂れ耳をピンと張るアリーが、明るい声で答えた。
「やっつけたにゃ!」
「アリーさん?……やっつけた?……まさか全部討伐したと?」
静まる応接室。
場を踏まえるアカリが落ち着き払った声で答える。
「ええ、私たちとコガラで全滅させましたわ」
その姿はさっきとは打って変わり、堂々とした姿で凛としていた。
やっぱり……デス姉が、リーダーやればいいのに……。
そんな思いの俺を他所にハウゼンが動揺したのか、目を丸くした。
「アカリさん……いくらなんでも……
ワイバーンが50体ですよ。
一気に襲ってこられたら、この国は半壊しますよ!」
「……ってか、やっぱりそうだよな!」
俺の言葉にハウゼンが申し訳なさそうに頬を掻いた。
応接室の空気が重くなる。
仲間たちもハウゼンを睨みつける。
そんな中、アカリが独り言のようにポツリと零す。
「そうですか……私たちはそんな事も知らずに……」
そう言ってひとつ息をつく。
一方で、開き直ったのか、ハウゼンが口を開く。
「ワイバーン一体でも、
七、八人で構成された……S級冒険者のパーティでも苦労するほどなのに……」
そう言って口ごもり、天井を見上げた。
「だろうな。俺の肩に乗るコガラがな……毒針で刺したり、凄まじい豪炎を吐いたりで、突撃していったんだ……まるで嵐のようだったよ」
驚愕したハウゼンが、信じられない様子で目を泳がせ俺たちを見つめる。
一方眼鏡を掛け直し、柔らかい笑顔を見せるミリネアが優雅に提案した。
「ご主様、ここはハウゼン殿に、実際の成果を見て頂くのがよろしいかと」
その言葉に頷く。
「へへ、そうだな。解体してもらって肉も手に入れたいしな!」
俺の言葉に仲間たちも頷く中、ミリネアが立ち上がった。
「ハウゼン殿、解体室はどちらに?」
「ああ、案内するよ」
ハウゼンも立ち上がり、俺たちもそれに続いたーー。
お読みいただき、ありがとうございます。
引き続き読んでいただければ嬉しいです(๑╹ω╹๑ )




