砂漠の封印の鍵争奪戦5
俺は砂漠の街の宿屋に戻るとアウ王女をアイテムボックスの中から取り出した。
この部屋は京子の大火球の被害を免れた数少ない部屋だが、俺のアリ退治での活躍を見ていた宿屋のオヤジが無料で泊まらせてくれたのだ。
王女はアイテムボックスから出たら、辺りの景色が砂漠から宿屋に変わっていたので、すぐに勇者達との戦いが終わった事を悟ったようだ。
その辺りの頭の回転の速さはさすが王族だと感心する。
王女は普段はあまり見せない程の満面の笑みを俺に投げかけてきた。
「ねえ、どうだった? 倒せた? 鍵取れた?」
「倒せなかったし、鍵も取れなかった」
途端にガッカリした表情をする王女だったがその表情は一瞬で、顔に怒りが滲みだす。
「じゃあ、なんで宿屋に戻ってるのよ? 戻って来ちゃダメでしょ? 何の為にアリの巣に行ったか覚えてるの? 魔王城の封印の鍵を取りに行ったんですよ! 散歩や遠足に行ったんじゃないんです! それなのに鍵を取らないで宿屋に戻って来たってどういう事なんです? やる気あるんですか? やる気ないですよね? やる気あるなら鍵を取らないで宿屋に戻って来ないですよね? 本当にあんたは魔王を倒して真の勇者になる気が有るんですか? 本当に私を王妃にしてくれる気が有るんですか? もう時間が無いんですよ? あんたは一体何を考えてるんですか? 考えて無いですよね? ねえ?」
ウザ!
まじウザ!
王女の長話ウザ!
すーはー! すーはー! すーはー! すーはー! すーはー!
何度か深呼吸したら少し落ち着いた。
王女には言葉で言い返しても絶対に勝ち目は無いからな。
言うだけ言わして怒りのガス抜きをしたとこで、そっと事実を告げるのが正解だ。
それでも文句を言われたらまたガス抜きだ。
「ねえ、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる」
「じゃあ何でよ?」
「それなんだがな。俺がアリの巣に水を流し込んだせいで水浸しになってしまって先に進めなくて鍵を取れなかったんだ」
「そう言えばそうだわね」
王女は言いたい事を言った後のせいか、俺の言い訳を素直に受け入れてくれた。
俺が海水を巣に注ぎ込んだせいで俺が鍵を取れなくなったが、逆にそのお陰でクラスメイトの奴らが砂漠の鍵を取れなくなった。
俺が砂漠の鍵を取るには水が干上がるのを待つしかないが、水が干上がればクラスメイトの奴らも動き出して鍵を取る行動に出るのが目に見えていた。
困ったな。
マジで鬱陶しいクラスメイト達。
そんな事を考えながら眠れない夜を王女と同じベッドの中で過ごしていると、夜更けになって照輝達が宿屋にやって来た。
廊下で宿屋のオヤジとの声が聞こえる。
「本当にここなんだな?」
「ええ、ここでございます」
あれだけ脅したのに襲撃かよ!
懲りてない奴め!
王女をベッドの隅に隠れさせ、俺はドアのすぐ横に潜んだ。
宿屋の主人の案内でドアを開けた照輝。
部屋の中に入ると俺と目が合った。
「こ、こんばんわ」
部屋に入って誰も居ないので振り返ろうとしたらすぐ目の前に俺が立っていたのを見つけた照輝。
照輝は驚いた顔をして間抜けな挨拶をした。
俺の険しい目を見てかなりビビってる。
武器は持ってないので襲撃では無いようだ。
どうやら喧嘩を売りに来たのでは無いらしい。
それにクラス委員長の田町と上野さんを連れていた。
俺は警戒しながら探りを入れる。
「どうしたんだ? こんな夜更けに?」
俺はいつでも奴らをアイテムボックスに取り込めるように、奴ら全体を視界に収める。
照輝の腕と足は回復魔法で完全につながっていた。
怪我から完全回復だ。
また野球をやれて良かったな。
完璧な仕事をしてくれた聖女に感謝してやれよ。
俺がそんな事を考えていると、照輝がいきなり俺に深く頭を下げた。
「昼間の事を謝りに来た。いきなり殺そうとしてすまなかった」
「分かってくれたならいいよ」
殺そうとしたのをスマンで済ます奴も奴だが、それを許す俺も俺だな。
まあ、こいつは雑魚だ。
殺そうと思えばいつでも殺せる。
照輝もいつ殺されるか分らないので俺の怒りを買わない様に言葉を選びながら話してる様だ。
「ところで棚岡はこれからどうするんだ?」
「明日の朝にはアリの巣から水が引くだろうから、また鍵を探し始めるつもりだ」
「どのぐらい探索に時間を掛けるつもりなんだ?」
「さあな。鍵が取れるまで探索を続けるつもりだ。アリの巣の規模が全く解らないし、道も分らないのでどのぐらい掛かるとはハッキリとは言えないな」
「そうか。じゃあ、昼間の侘びのしるしにアリの巣ダンジョンの地図を渡す事にするよ。これが有れば遅くても一日で攻略できるはずだ。俺達は撤退する事にするよ。お前とやり合っても勝ち目が無さそうだから、俺達は明日の朝日が昇る前に砂漠を後にする」
「そう言って貰えると俺も無駄な争いをしないで済むので助かる」
照輝が再び頭を下げた。
「こんな事言えた義理じゃないんだけど、一つだけ頼みがある。もしクラスメイトの遺体を見つけたら装備とかは棚岡にやるから形見の品を拾っておいて欲しいんだ」
「わかった、見つけたら拾って返すよ」
「ありがとう。あとダンジョンの探索に役立つと思う、HPポーションとMPポーションを渡しておく。砂漠のボスの女王アリが生きていたらかなりの強敵のはずだ。きっと役に立つと思う」
「毒じゃないだろうな?」
「もし毒だったら俺を殺しても構わない。なんなら今この場で俺が飲んでもいいぞ」
「いや、信じるわ。これは受け取っておく。ありがとう」
あいつらはポーションの束の入ったウエストバッグを置くと帰っていった。
今まで黙っいていたアウ王女がほっとした顔をして俺に話しかけて来た。
「何にもなくて良かったね」
「ああ、寝室で騒ぎとか怒ったら、今夜の寝る場所が無くなって堪ったもんじゃないもんな」
「なんかあまりにも簡単に砂漠の封印の鍵から手を引いて不気味ね」
「それにこのポーションも怪しいな。受け取ったものの飲むのが怖いわ」
「ちょっと見せて」
アウ王女はポーションを一本ずつ手に取るとウンウンと頷く。
なにしてるんだろ?
「これ、全部ちゃんとしたポーションね。しかもかなりいいグレードの物みたい」
「そんなの判るのか?」
「わたし鑑定スキル持ってるからね」
意外と使える王女だった。
でも、商人でもないのに鑑定スキル持ってても使う機会は無いんじゃないかと思うぞ。
「それにしても昼間は襲って来たのに今度は謝罪で、急に態度が変わって怪しいわね」
「そうか? 単に俺の力にビビっただけなんじゃないか?」
アウ王女には照輝の足や腕を吹っ飛ばした事は内緒だ。
バレたら何言われるかわからないからな。
「あれから勇者達に何かしたの?」
「それ程大したことはしてない」
手と足を吹き飛ばしたが、殺して無いので大したことじゃない。
だからノーカウントのセーフだ。
「だって、砂漠の鍵は魔王討伐には絶対に必要な物なんだよ。なんで手を引くのか謎よね?」
「さあ、なんでなんだろうな?」
俺の暴れっぷりに怯えて手を引いたんだよ!
目の前で腕や足を飛ばされたのを見てビビリまくってたからな!
他の奴らがビビるのもなんとなく解るわ。
「それにその地図本物なのかな? なんで敵である私達にこんな大事な物をくれるんだろ?」
「さあ、なんでなんだろうな?」
言われてみると、王女の言うようになんでこの地図をくれたのか解らないな。
もしかすると、この地図には罠とかが仕掛けて有るのかもしれないな。
俺は地図を広げて見てみる。
すると、赤字で書かれたポイントが有った。
『遭難予想地点』
たぶん、ここを探せと言う事なんだろう。
ここに罠が仕掛けて有るのかもしれないな。
逆に言えばこの地点に罠が無ければこの地図は信用出来る事になる。
十七層と比較的浅い地点に有るのでここを先に調べた方がいいかもしれない。
「遭難予想地点だって。これ、あんたが殺した人の事じゃない?」
「溺れただけだし! また死んだとは決まった訳じゃ無いし!」
「悪い事した人はみんなそういう言い訳をするもんなんだよ」
「うぐぐ」
照輝が手を引いたのはもしかすると、仲間の捜索を優先したと言う事なのかな?
まだ生きている可能性が有るかもしれないから、俺と争うよりも装備を餌に俺に捜索を任せたのか。
そうなると渡してきたポーションの意味も分かる。
遭難した奴らが生きていた場合の応急処置用の薬品だ。
俺が探すか解らないのに物凄い賭けをしたもんだな。
俺は奴らのやり方に感心した。
読んでくださいましてありがとうございます。
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(連載中)
クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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水土夜更新
書籍化作業中
正しいスキルの使い方 。『商人の俺がアイテムボックスで魔王討伐!』
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