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砂漠の封印の鍵争奪戦3

本日二話目です。

 終礼の報告会。

 勇者達は拠点となっている大聖堂でいつもの様に今日一日の成果を報告していた。

 いつも通りにレベルアップの報告を済ませた後、魔王城の封印を持つ三カ所のダンジョンの状況報告が行われようとしていた。

 各ダンジョンに使い魔を潜伏させたモンスタートレーナから次々と報告が上がる。


「ノーライフキングのダンジョン、異常無しです」

「デッドリースライムのダンジョン、異常無しです」

「…………」

「どうした? ネストアントの状況は?」

 

 だが、最後のアリの巣ダンジョンの報告が上がらない。

 クラスメイトのリーダー格の照輝が監視役の狭山に聞く。

 狭山は緊張してしどろもどろになっていた。

 

「ごめんんさい。いま状況を見ようとしてるんですがなかなかペットに同調出来なくて……」

「そうか」

「普段は簡単にペットと繋がってるのに今日だけはどうやっても繋がらないんです」

「何か異常が有って繋がらないのかもしれないな。頼む! 頑張ってくれ」

「頑張ってみます!」

 

 狭山は必死に使い魔のネズミと心を通わせようとした。

 お願い、チュー太さん!

 お話を聞かせて!


『助けて!』


 すると狭山の心の中に操っているペットから激しい感情が一気に流れ込んで来た。

 

『助けて!』『苦しい!』『死にたくない!』『溺れる!』『痛い!』『苦しい!』『水が!』『水が!』


 *

 

 僕の目の前に居た狭山さんが突然苦しみ始めた!

 口から泡を吹き出しながら、倒れた。

 訳の分からない事を口走っている!

 

「苦しい! 水! 水が!」

 

 僕は慌てて水差しから水を汲み狭山さんの上半身を起こし口に運ぶが、狭山さんは目を白目にしてコップを振り払った。

 様子を見ていた神官が騒ぎ始める。

 

「これはまずい! 死期同調している!」

「死期同調?」

「【モンスタートレーナー】のスキル使いが長い事同じモンスターを操っているとそのモンスターと心が同調してしまい、感情を共有してしまうのです。それが死の間際であっても。最悪の場合、死の苦しみまで心に流れ込んできて術者が死ぬ事になります」

「なんだって! 何とかならないのか? 狭山さんを失いたくない!」

「こちらから心の言葉を呼び掛けて通じたならば、目を覚ますかもしれません!」

「心の言葉?」

「愛する者からの叫びです。それが心に届けば現実に意識を引き戻す事が出来るでしょう」


 僕は必至で狭山さんに叫び続けた!

 

「狭山さん帰って来てくれ! お願いだ! 僕を置いてかないでくれ!」 狭山さん! 僕は狭山さんが好きなんだ! 狭山さんが居なくなったら生きていけない! お願いだから帰って来てくれ!」

 

 僕はクラスメイトの前と言う事を忘れ、恥も外聞も無く叫び続けた。

 そんな事、狭山さんを失う事に比べればどうでもいい事。

 狭山さんは、ゲホゲホと咳き込むと目を覚ました。

 

「良かった! 目を覚ましてくれたか」

 

 僕は狭山さんを抱きしめた。

 激しく波打っていた狭山さんの心臓が徐々に穏やかになってくる。

 

「久米川君……」

「何が有ったんだ?」

「砂漠のアリの街が突然湧き出た大水に襲われて飲み込まれ、街が水の底に沈んだの。そして全員が溺れ死んだの」

「全員てとはアリの事か?」

「そう。私はネズミを操っていたから全ては見てないけど、多分魔王城の封印の鍵を守る王族のアリも洪水に飲み込まれて死んだと思う」

 

 それを聞いたリーダー格の照輝が顔を覗かせる。

 

「そうか。アリの街は沈没か。どうすべきか」

 

 腕を組んで考え込んだ後、周りにも聞こえる様に独り言のように話す。

 

「この洪水をアリの戦力が減ったチャンスとして乗り込むか、洪水が発生する危険状況と判断し様子を見て待った方がいいのか。悩むな」

 

 するとそれに反応した者が居た。

 女子のリーダーの京子だ。

 女子の中で圧倒的な支持を持つ女。

 男子にも相当数の支持者がいる、照輝の次にクラスの中で権力を持つ女だった。

 

「乗りこむべきよ! 今乗りこまないでどうするの? 今なら戦い無しで魔王城の鍵を手に入れられるのよ!」

「でも俺達はまだ勇者としての訓練は終わってないぞ」

「死にかけのアリなら今の私達でも十分倒せるわ! 魔王城の封印の鍵を手に入れてしまえば確実に日本へ帰れる日が早まるのよ! それにこの洪水、雨季か何かの影響なんでしょうけど、このチャンスを逃したら次は無いかもしれないわよ!」

「でも、ジャンヌ王女が居ない間に、勝手に俺達だけで動いていいのか?」

「リーダーを名乗ってるあんたが決められないと言うなら、みんなで決めましょうよ。多数決で!」

 

 結局は京子の思惑通り多数決となった。

 多数決は十八対十八に別れた。

 狭山さんを抱いてて手を上げそびれた僕だけが残った。

 俺の一票が皆の運命を決める事になった。

 

「久米川! あんた手を挙げなさいよ!」

「久米川! 思いとどまれ!」

 

 僕に皆の注目が集中した。

 だが僕は決めていた。

 抱いていた狭山さんに聞く。

 もちろん答えは見ていたので知っていた。

 

「砂漠のダンジョンに行きたいんだよな?」

「うん。チュー太を助けに行きたい」

 

 僕は躊躇無く手を挙げた。

 読んでくださいまして、ありがとうございます。

 明日のアイテムボックスの更新はお休みです。(商人の更新はします)

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