砂漠の封印の鍵争奪戦2
俺の手柄の横取りをさせるか!
頭の片隅に、奴らに鍵を渡してしまえば面倒な王女との面倒な魔王討伐の旅をしなくて済むのでむしろラッキーなんじゃね?と思ったが、それは許さぬ!
俺が散々苦労して退治したアリだ。
砂漠の鍵を入手する手柄は俺が手に入れるべきもの。
それを譲る程俺は心が広くない。
俺は砂漠の鍵を奪還する為にアウ王女と砂漠の砦(跡地)へとダッシュで向かう。
すると背後で京子が騒いでいた。
うぜー女だ。
「あんた、話の途中なのになんで逃げるのよ! まだ私の聞きたい事は聞いて無いわよ! なんで私の火球を消せたの? 教えなさいよ! 約束でしょ!」
俺はテキトーにうそぶく。
「それはな、修行の成果だ!」
嘘は言ってない。
本当の事も言ってないが、俺はわざわざ規格外のアイテムボックスを持っていると手の内を明かす程の馬鹿な男でもない。
「はあ? あんた私をバカにしてるの?」
「バカにしてない。本当だ。血の滲むような努力の結果だ」
主に犠牲となったのはウサちゃんだけどな。
「ほんとうなの?」
「本当さ」
「まあいいわ。話は変わるけど、今砂漠のダンジョンに行くのは止めなさい。殺されるわよ」
「なんでだ?」
「もうクラスメイトはあんたの知ってるクラスメイトじゃないわ。人を人とも思わずに殺す戦闘集団よ。王女の魅了に掛かった戦闘集団なのよ! もう虐めじゃ済まないから! あんたが近づいたら間違いなく殺されるから。だから、棚岡君行かないで!」
「そう言っても俺にも止められない事情がある」
俺が必死に頑張ったのに手柄を横取りされるのは許せん!
「どうしても戻りたいのね」
「ああ、戻るさ」
「それなら、一つだけ安全にグループに戻る方法があるわ。王族を追い出された王女と手を切って私の僕になりなさい。この首輪を付ければ名実ともに私の僕になれるわ」
「はあ? 私とタナオカの縁を切れですって? そんな事、旦那のタナオカがするわけ無いじゃない!」
アウ王女が物凄く腹立たしそうな顔をして京子を睨んでいた。
なんか言葉のやり取りのすれ違いで変な事になってるけど?
俺が戻りたいって言ってるのは砂漠のダンジョンに戻りたいんであって、クラスメイトの仲間に戻るって意味じゃ無いから。
むしろ奴らを退治する為に戻るんだって。
そんな俺の気持ちを知らずに京子が話を続けるので俺はハッキリと言ってやった!
「断る!」
途端に顔がほころぶアウ王女。
そして眉間にしわを寄せて嫌悪感を丸出しにする京子。
「誰が、俺を散々いたぶってた女の僕になるってーの! 犬とか言われて靴を舐めさせられるのがオチだろ!」
「そんな事は絶対させないわ! だって棚岡君の事が好きなんだもん! 絶対に幸せにしてあげるから! だから僕になりなさい!」
「悪いな、俺は俺の道を行かせてもらう!」
「なら、私はどんな手を使ってでも足止めするわ! 愛してるあなたを失いたくないの!」
京子は火球を放って来た。
愛してるとか訳わかんない事言い出したと思ったら、今度は火球かよ!
愛してると火球がどういう繋がりなんだよ!
サッパリ訳わかんねーよ!
面倒なので火球ごと京子を収納してやった。
ざまぁ!
勝ち誇った表情をしている俺を見て、アウ王女が混乱した表情を見せる。
「なんか今、あんたの事を好きだとか愛してるとか訳わかんない事言ってたけど、誤解を解く前に収納しちゃっていいの?」
「あれは俺を油断させて寝首を掻く常套句だろ?」
「そうなの?」
「散々俺をコケにしてたのに愛してるとか言い出して訳わかんないし。後でどこかに捨てる」
俺はアウ王女も信用して無いけどな。
俺を利用するだけして、王妃になって用が済んだら切り捨てる気だ。
そう思いどうりにはさせないぜ。
俺達は砂漠の砦跡に向かった。
*
俺は岩山の上から勇者達の様子を見る。
京子から聞いていた情報通り、砦の有った大穴の周りには勇者達が集まっていた。
どうやら京子から聞き出した情報は信用できる様だ。
神官や新しい王女の姿は見えないので、勇者だけの単独行動だと思う。
アリの巣穴の中へ準備が出来たグループが一グループずづ大穴に入っている。
地上に残る人数を見る限り、既に半数はダンジョンの中に潜っている様だ。
このアリの巣穴がどのぐらいの大きさかは解らないが、半日もしたら砂漠の鍵を取られてしまうだろう。
かなりヤバい状況だ。
ここは話し合いでどうにかするしかないのか?
だが、俺がノコノコ歩いて近づいても危険すぎる。
京子はあいつらは血も涙も無い戦闘集団で危険だと言っていたからな。
ましてや足手纏いのアウ王女を連れて近づくのは危険過ぎる。
かと言ってアリのまだ残る砂漠の街に王女を帰すのも危険過ぎる。
「どうするの? 勇者がいっぱいよ?」
「さすがに近づくのは危険だな。かと言って知性の低いアリと違い、ここからスナイプしてもすぐに居場所がバレて追い詰められるだろうな」
「じゃあ、どうするの? 鍵を取って戻ってきた所を襲う?」
「鍵を手に入れた後じゃ、逃げられたらそれでお終いだ。俺達が魔王を倒す手立ては無くなる。鍵を手に入れる前に何とかしよう。先廻り出来る様な他の穴がないかな?」
「そういえばあんたが放水してた時、穴が水で一杯になった時、遠くの方で水柱が上がってたわね。そこからも洞窟に入れるんじゃないの?」
「その手が有ったか!」
早速記憶を頼りに別の入り口を探す。
少し迷ったが巣穴らしき物を発見した。
洞窟の中にいまだに水溜りが残ってる。
ここで間違いがない。
「水でビチャビチャね。こんなに水溜りが有るのに中に入れるのかな?」
「物凄い勢いで水が噴き出してた穴だからな」
「ここの入り口って向こうの穴と繋がってるんでしょ?」
「たぶんな。むしろ繋がって無いと困る。街を襲ったアリ達は水没した洞窟からこの穴を通って逃げて来たんだと思うからたぶん繋がってる筈だ」
「地上に逃げて来たアリ達も突然の洪水で巣穴を追われて災難だったわよね。あんたが水を流し込む前は沢山のアリ達が平和に暮らしてたのにね」
アウ王女が鍵が欲しいと言うから頑張ってるのに、なんか俺が物凄く悪い事をしたような風に言うのは止めてくれ。
「今は巣穴の中はアリじゃ無く勇者でいっぱいですけどね」
勇者がいっぱいか。
それなら、水を流し込んだらどうなるんだろうな。
別に溺れさせるのはアリだけじゃなくてもいい。
勇者を溺れさせてもいいんだ。
「いいこと思いついた!」
俺は穴に水を注ぎこむ。
まるで穴の開いたバケツの様に水を飲みこむ穴。
この穴からだと洞窟に水を流し込めないかな?と思ったが、いい感じで水が流れ込んでいるようだ。
「これで勇者達を溺れさせてやる」
「タナオカ、あんた仲間を溺れさせるとか結構酷い奴だわね。鬼畜ね!」
「あいつ等は仲間じゃねーし! 俺をいたぶっていた敵だし!」
俺が水を注ぎこんで30分もすると遠くの砦の穴で騒ぎが起こってた。
悲鳴に怒声。
それがかなり離れたこの穴にまで聞こえてくる。
大変な事になってる様だ。
ははは!
いい気味!
俺をハブるからだ!
俺をバカにするからだ!
あの時俺がどれだけ肩身の狭い思いをしたか!
あれから俺がどれだけ苦労したか!
ざまあ!
俺は対岸の火事を笑っていた。




