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元勇者の嫁5

 アウ王女に連れて来られたのは砂漠でなくて馬車乗り場。

 

「何処に行くんですか?」

「もちろん水を汲みに行くんです」

 

 砂漠の街から馬車を乗り継いでやっと到着。

 二日も掛かりました。

 海です!

 真っ青です!

 スカイブルーのサンゴ礁です!

 

「まさか海水を汲めって事ですか?」

「そうよ! 水は高いけど海水ならタダよ! 今日の日が暮れるまで海水を汲み続けなさい。私はあなたが損した百万ゴルダを取り返すべく街で商材を探します!」

 

 俺は丸一日掛けてアイテムボックスの中に海水を取り込む。

 

 ──ズゴゴゴゴ!

 

 物凄い音を立てながら丸一日掛けて取り込んだ海水は七億立方メトル。

 どのぐらいの容量か解らないけど多分、津久井湖分ぐらいの海水は取り込んだはず。

 これでアイテムボックスの消費量が二%なのはおかしい。

 

 街に戻ると噴水前で大きな木箱を積み上げて山のようにし、その頂上で高笑いをしてるバカを発見した。

 標高十メトル程の木箱の山。

 一メトル半の大きさの木箱をピラミッド状に積んでいた。

 街に突然出来た山に住民大迷惑。

 王女は本当にバカだった。

 

「おーっほっほほほほ! タナオカ様! これだけ塩を買い占めましたよ! これだけ買い占めれば塩不足は必至! 塩が胡椒よりも高くなる時代の到来ですわ! これを転売すれば私達は大金持ちですわ! あっ! どこに行くんですかタナオカ様! 私はここ! ここですわ! 行かないで、タナオカ様! タナオカ様!」

 

 おいこら!

 俺の名前を呼び続けるな!

 関係者だと思ったら恥ずかしいだろうが!

 マジでヤバそうな奴!

 と言うか、完全にヤバい奴!

 目を合せないでおこう。

 俺は華麗に噴水を通り過ぎた。

 夜になって人目が無くなったら回収しに来よう。

 背後からは泣き声が聞こえる。

 

「待って! 置いてかないで! 降ろしてよ! あんたがいつまで待っても帰って来ないから寂しくなって、あんたを探す為に箱の上に登っただけなの! 登ったら高くて怖くなっちゃって降りられなくなっちゃったのよ!」

 

 お前は木に登って高さに目が眩んで降りれなくなった子猫か!

 可愛いな、あーもう。

 俺はアウ王女をアイテムボックスに収納し、そっと地面に降ろした。

 いきなり箱の上から景色が変わって王女はよろける。

 身重の王女がコケたら大変な事になるので俺はそっと抱き止めてやった。

 

「な、何が起こったの?」

「アイテムボックスに収納してから、地面に置いたんだ」

「助けてくれたのね。ありがとう」

「ところであの箱の山は何だ? 塩がどうとか聞こえたんだが?」

「あれ? あの木箱はね、塩よ! あんたが損した分を取り返せるようにこの街の塩を全部買い占めたわ! これで塩不足になって塩が値上がり、そして胡椒よりも高くなるわ! 値上がりした塩を転売したら大儲けよ! 大儲け! 百万ゴルダどころか、一億ゴルダは儲かるわよ! ねえ? ありがとうは? アウ王女様ありがとうは?」

 

 うぜー!

 マジうぜー!

 さっき可愛いと思った俺がバカだった!

 それに塩の買い占めって……そんな事して儲かる訳無いだろ?

 

「塩ってこの街だけで売ってる物じゃ無いだろ? そこらじゅうの街で売ってる物だと思うぞ」

「えっ?」

「それに塩が品切れになったら、海水から作ればいいだけなんだから、数日たったらまた在庫が復活するぞ」

「えっ???」

「いくら買ったんだ?」

「ひゃ……百万ゴルダ」

「お前が手にしているお金は領民が汗水流して働いて税として納めてくれた物なんだぞ。それなのに百万ゴルダもの大金を無駄遣いするとは何を考えているんだ? 王女としての自覚が無さ過ぎるんじゃないのか?」


 言ったった!

 言ったった!

 ブーメランだぜ!

 ブーメラン!

 この前、水を買った時に怒られた言葉をそのまま返してやった!

 

 ふー!

 気持ちいい!

 

 すると、何も言えなくなったのか王女は激泣きした。

 

「うわーん! タナオカのくせに生意気だー!」

 

 お前は駄々っ子か!

 王女は泣きながら俺の目の前から走り去った。

 あの方角は多分宿屋の方向だ。

 そのままにしておいても大丈夫だろう。

 王女も心配だったがそれ以上に心配だったものが有る。

 噴水前に積み上げられた木箱だ。

 通行人の人が凄く邪魔そうな顔をして困ってる。

 俺は塩入木箱の山をアイテムボックスに収容し、宿屋へと向かった。

 

 宿屋に戻るとアウ王女がベッドでうつ伏せになって激泣きをしていた。

 俺が部屋にやって来たのに気が付いたのか、泣きながら言い訳を言い始めた。

 

「うっくうっく。あんたが損したから取り戻そうと思ったのに。うっくうっく」

「なくなよ。塩は俺がどうにかするから」

「売ってくれるの?」

「高くは売れないだろうが、俺も商人だ。損をしない程度には売ってみせる!」

「ありがとう!」

 

 王女は泣き止んで俺に抱きついてきた。

 うん、可愛いなこいつ。

 王女の頭をモフモフして堪能した。

 

 それはそうと、塩を売ると言ったものの、売れる気が全くしない。

 さてとどうするか。

 俺は頭を抱えて悩んだ。

 ※津久井湖(城山ダム) 36.2万立方メートル

  ちなみに日本最高の貯水量を誇る徳山ダム 6億6000万立方メートル

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