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元勇者の嫁4

「ただいま、アウ王女。アリの巣なんだけど────」

「お帰りなさい! やっと敵を倒して魔王城の封印の鍵を手に入れて来てくれたのですね。もうすぐ日没です。私、タナオカ様の事をずっと心配していたのですよ。タナオカ様が私の事を心配してこの宿に置いて行かれたのですが、怪我をしていないか寂しい思いをしていないかなんて事をずっと考えておりました。もうそろそろ日没になるし暗い砂漠では道に迷ってしまいますよね。もしかしたら遭難して干からびてしまうなんて事も有るのではないかと考えておりました。でもタナオカ様は真の勇者でございました。勇者が束になって掛からないと倒せない魔王軍の幹部を倒して、魔王城の封印の鍵を一人で手に入れてきました。私はタナオカ様のお嫁さんになれたことを誇りに思い、心から感謝しています」

「あのー、その事なんだけど」

「なんでしょうか?」

「砂漠の砦で敵のアリをまだ倒せてないんだ」

「何ですって! まだ倒せてなかったのですか! 本当にあなたは何を考えているんですか! 倒すまでこの街に戻ってきてはダメだと言ったでしょ! なんで倒しても無いのに戻って来るんですか? なんで目的を達成してないのにノコノコとこの街に戻って来れたんですか? あのですね────」

「言いたい事は解る。アウ王女が俺に言いたい事は凄く解るよ。でもさ俺が今戦っているのはアリなんだ。地下に籠ってて地上に出て来てくれない敵なんだ」

「ならばその敵の巣穴に攻め込めばいいだけの話では無いのですか? あなたなら容易にできる事でしょ!」

「俺が凄いのはあくまでもアイテムボックスだけで、それ以外はアウ王女が知ってる様に俺は勇者じゃなくてただの商人で一般人と何ら変わりないんだ。だから近接戦闘がメインになる巣穴の戦闘は出来るだけ避けたい。地上にアリを誘き寄せる為に巣穴に水を流し込んだんだけど、百万ゴルダで買った水じゃ水攻めにも何にもならなかったんだ」


 それを聞いたアウ王女は目を見開いて俺の近くで怒鳴り散らした。

 胎教によく無いから、怒るのやめようよ。

 俺の神経にもよく無いし。


「水を百万ゴルダも買ったのですか! それなのにアリ一匹も誘き出せなかったのですか? 何考えてるのですか、あなたは! お金は領民が汗水流して働いて税として納めてくれた物です。それなのに百万ゴルダもの大金を無駄遣いするとは何を考えているんですか? 王女の旦那としての自覚が無さ過ぎです!

「その百万ゴルダは俺が冒険者をして稼いだお金だよ」

「王女の私に口答えするんですか? あなたは元勇者、勇者を追われた身のあなたが王女の私に口答えをするというのですか!」


 おい! なんだよ、この〇ャイアン理論!

 〇び太のくせに生意気だ!ってやつか?

 アウ王女は大きく息を吸って気を落ち着かせる。

 冷静になった王女は頭の悪い子でも見る様に憐れむ。


「まあ、やってしまった事をとやかく言っても仕方ありません。百万ゴルダでダム一杯の水を買ってアリの巣穴に流し込んでもアリが出てこなかった。そう言う事なんですね」

「それが一リトル千ゴルダだったから俺の持ち金百万ゴルダじゃ千リトルしか買えなかったんだ」

「はあ? なんでそんな高い水を買ってるんです! それに千リトルって! お風呂一杯分にも満たないじゃないですか! そんな少ない水じゃ穴に注ぎ込む前から効果ないのは分ってたでしょ? なんでそんな無駄をするんですか! もう少し考えてから行動を起こしてください!」

「ごめん! 千リトルと聞いてたから物凄く多い量だと思ってたんだけど、お風呂一杯分にも満たない水なんて考えもしなかったよ!」

「今日はもう寝てください。明日朝一番で出掛けますから!」


 と言う事で、王女の案内で翌日出掛ける事になった。

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