元勇者の嫁3
完全に地下に引き篭もってしまったアリさん達。
地下に引き篭もった敵だと地上からは手を出せないな。
かといって遠距離戦がメインの俺が通路の入り組むアリの巣の中に入るのは自殺行為以外の何物でもない。
きっと洞窟に入ったら、死角に隠れたアリさんからワンパン食らってゲームオーバーだ。
敵を地上に誘き寄せる為の砦はもう無いし、どうやって誘き寄せるか。
アリさんと言えばあれしかないな。
砂糖だ!
アリは砂糖というイメージしかない!
こいつで巣から誘き出してやる!
俺は町に戻り食料品店に飛び込んだ!
「おい! オヤジ! 砂糖をくれ!」
「白砂糖と黒砂糖が有りますがどっちにしますか?」
「種類はどうでもいい! ありったけの砂糖をくれ!」
「ありったけって店にある砂糖全部という事ですか?」
「そうだ! 全部くれ!」
「まいどー!」
こうして買って来ました砂糖百キログラム。
ちなみにこっちの世界での単位はキロルグランドだ。
店の砂糖を全部買い占めたので店主の親父は大喜びだ。
とは言っても一キロルグランド五百ゴルダなので、百キロルグランドで五万ゴルダ。
大人買いにもならない値段だ。
高く無いから!
全然高く無いから!
いい宿屋に十泊泊まれる値段なんて思って無いから!
仕方ないだろ。
餌が無いと魚は釣れないんだからな。
俺は超高級お砂糖さんをアリん子の巣の前にばら撒いてみる。
百キロルグランドも有るのでちょっとした小山が出来た。
俺は岩山の陰に隠れてそっと監視。
だが、いつまで経ってもアリさんは現れなかった。
砂糖を完全無視だ!
ありえねー!
アリん子のくせに有り得ねー!
なんで砂糖を目の前にして無反応なんだよ。
日本のアリならアヘ顔した上に、ヨダレダラダラだぞ!
ビビりながら巣の入り口の大穴の中にも砂糖をぶち込んでみるが反応がない。
むう!
この世界のアリん子は砂糖を食わんのか?
お前ら本当にアリなのか?
砂糖代五万ゴルダ損した!
ならば次の手段に移るしかない。
次は水攻めだな。
アリの巣といえば水攻めだ!
男子諸君なら一度や二度はやった事が有るだろう。
いや、女子でもやった事が有るはずだ。
子供の頃、アリの巣の入り口に立ちションをしておしっこを巣穴に流し込んでオロオロするアリ達を見て楽しんだ事だろう。
なに?
ないだと?
それは人生の三十%は損してるぞ!
スマホゲーで意地になって無課金プレイを貫き通すぐらいの人生の損だ。
ちなみにアリの巣におしっこを掛けるとあそこが腫れるとの都市伝説が有るがあれは嘘だ。
何度もアリの巣におしっこを掛けてみたが、俺のあそこはつつましいサイズのままだからな。
さすがにアリの巣を水攻めするほどのおしっこは出せないので、俺は砂漠の町に戻り水を買う。
なんと水は一リトルで千ゴルダもしやがりました。
ジュースや牛乳買った方が安いんじゃね?ってレベル。
すげーたけえ!
ありえねー!
「なんでこんなに水が高いんだよ!」
俺が食料品店のオヤジに詰め寄ると、親父は困った顔をしながら答えた。
「そりゃ、このオアシスの水源は領主様の持ち物ですよ。その領主様がその値段でしか売ってくれないんですから、高くて当然なんですよ」という事だった。
あまりの領主の横暴ぶり!
砂漠で水源を独り占めとはとんでもない奴だ!
利権を与える代わりに金品を要求する悪代官並みのとんでもない奴だな。
ムカついた俺は領主を倒しに行った。
アイテムバッグから取り出した大岩で領主の屋敷をぶっ潰す!
アイテムバッグから取り出したアリ人間の死体を領主の目の前に転がして嫌がらせ!
アリ人間のグロい死体の山を見せつけられた領主は悲鳴を上げる。
ビビッて尻餅をついた領主に俺が胸倉を掴みながらアリ人間の討伐の事情を話すと、領主は俺を褒めたたえ水をタダで分けてくれる。
そういう妄想を心に抱きながら、素直に店のオヤジに金を払った。
水如きで領主の屋敷に殴り込みに行ってたらいくら時間が有っても足りないからな。
多少の不正には目を瞑るのが大人の対応ってもんさ。
俺はオヤジから水を買う。
千リトルで百万ゴルダも掛かった。
冒険者稼業で稼いだ金が一瞬で全部吹き飛んだじゃねーか!
でもアリを倒す為だ。
多少の出費は仕方ない。
俺は岩山に戻りアイテムボックスから水を取り出すと、消防車の放水の様にアリの巣の入り口の大穴に流し込む。
──どぼぼぼぼぼ!
水が尽きるまで二分間放水し続けるが、水は乾いた大地を潤すだけで何も起きなかった。
「マジか?」
たった二分間で百万ゴルダを無駄にする男爆誕!
くう!
「マジかよ! 俺の百万ゴルダが砂に吸われたし! あは、あひゃ、あひゃひゃひゃ! 金無くなったし、マジでどうすればいいんだ?」
金が無いとどうにもならない世知辛い世の中。
マジどうすればいい?
冒険者ギルドで依頼でも受けて稼ぐか?
そもそも、こんな砂漠の街に冒険者ギルドなんて有るのか?
勝手に依頼なんて受けたらアウ王女に「また遊んでますね! 何考えてるんですか?」と延々怒られそうなので宿屋で待つアウ王女に相談に。
アウ王女ならお金を持ってるはず。
頭を下げて少しお金を借りよう。
宿屋に戻るとアウ王女が笑顔で出迎えてくれた。
「お疲れ様。タナオカ様」
言えねー!
満面の笑顔で労ってくれてるアウ王女に金を貸して欲しいなんて言えねー!
俺はどう話を切り出せばいいか悩んでいた。




