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元勇者の嫁2

 やって来ました幹部砦。

 砂漠の中に聳え立つ砦の中に魔王軍幹部いるらしい。

 俺は今、一人で魔王軍の砦に来ている。

 アウ王女も来たがっていたが、身重のアウ王女。

 敵に腹パンされて流産とかになったら洒落では済まないので宿屋で待ってもらっている。

 さっきから砦の様子をうかがう為に、少し離れた岩山の上から監視しているんだが少しおかしい。

 砦の外には誰もおらず、敵の出入りも全く無かった。

 もしかして夜行性なのか?

 それにしても守衛の一人も砦の外に居ないのはおかしいぞ?

 おまけにここの砦にはどんな敵が居るのか、どのぐらいの戦力が有るのかわからない。

 敵の情報を事前調査をする前に王女に街を追い出された。

 敵が何なのかも分からない状態なので何処から攻めればいいのか悩む。

 とは言っても、ここで細かい事を考えていても時間が過ぎるだけなので石を投げてみた。

 石と言っても直径一メートルの岩だ。

 ウサギと戦っている時に取り込んだあの大岩だ。

 そう言えばアイテムボックスの中に売り物にならなかったウサギが何匹か残ってたな。

 食べ物持って来るのを忘れたし、あとで焼いて食べよう。

 俺は手を突き出し、渾身の気合を入れ岩を投げる!

 前はこの岩を出し入れするのがやっとだったが、【アイテムボックス】スキルが上がった今となっては岩の出し入れなど余裕だ。

 出し入れどころか、小石を飛ばすように猛スピードで打ち出せる。

 

「どりゃー!」

 

 岩は凄まじい勢いで着弾!

 凄まじい衝撃!

 そして爆音!

 大岩は砦を一発で崩壊させた!

 まるで戦車の砲弾が着弾したみたい。

 戦車が弾を撃つとこなんてアニメやゲームでしか見たことないが多分そんな感じ。

 きっとそう。

 間違いない。

 砦が壊れるとすぐに土煙の中から二足歩行のアリ人間が湧き出た。

 ここの砦の敵はアリか。

 地下が縄張りで地上の建物は形だけのお飾りなんだろう。

 地下にアリの巣の様に地底都市が築かれているに間違いない。

 どうりで地上には誰も居ないはずだ。

 爆撃で地上に出来た大穴から、アリが湧き続ける。

 アリは巣を壊した犯人を捜してるらしい。

 犯人は俺ですよ!

 俺!

 砦から五百メートル離れた岩山の上から、慌てるアリたちを見て笑いが止まらん。

 

 手に剣と盾を持ってるから、アリはどう見ても物理攻撃タイプだ。

 これなら俺と相性がいい。

 俺は岩山を滑る様に降りる。

 決してコケて転げ落ちてるんじゃ無いから。

 血だらけになってるけど気のせいだから。

 回復魔法なんてちょっとしか使って無いから!

 俺はアリの前に立つと手を掲げ取り込む。

 

「しまえ!」


 アリは易々と俺のアイテムボックスの中に収容される。

 楽勝だな!

 あいつらは剣を持ってるが俺に辿り着く前に収納すればどんなに剣技が上手かろうと関係ない!

 【アイテムボックス】スキルさいこー!

 俺が近づくアリを次々に取り込んでいると、さすがに警戒して近づいて来なくなった。

 アリは死を回避する程度の知性が有る様だ。

 もしかすると話せるぐらいの知性は有るのかも?

 でも俺は容赦をしない。

 こんな奴らと話し合う気にはない!

 構わずアイテムボックスの中に取り込み続ける。

 すると遠巻きに見ていたアリが仰け反って胸を膨らませると何かを吐いてきた。

 唾液だ!

 汚ねー!

 当然俺は回避。

 汚いので取り込まない。

 すると唾液が俺の立っていた位置の少し後ろで着弾。

 ジュッ!と音を立て、地面に穴を空けた。

 そして立ち上がる白煙。

 えっ?

 もしかしてこの唾液は物を溶かす唾液なのか?

 やべーだろ! おい!

 こんなもの食らったら即死だぞ!

 俺は一目散にその場から撤退した。


 *


 再びやって来ました岩山の上。

 奴らが遠距離攻撃ならこちらも遠距離攻撃だ!

 岩山の上から小石でスナイプする。

 アリは突然倒れたアリを見て慌てふためく。

 その死体をアイテムボックス収納すると更にアリが慌てる。

 中には飛び上がったり、頭を抱えてうずくまるアリも居る。

 ぶははは!

 間抜けなアリ達だ!

 笑いが止まらん!

 ちゃんと面白おかしくリアクションしない奴は次のスナイプのターゲットね。

 俺はスナイプを続ける。

 巣の中がとんでもなく多いのか、アリが湧き続けてキリがない。

 まるでゲームの無限沸きの雑魚キャラ感覚。

 最初の一時間ぐらいは楽しめたけど、四時間も続けてるとさすがに飽きてくるな。

 既に千匹は倒してるはず。

 さすがに飽きた。

 俺は焼きウサギを食べながら、雑に狩りを続ける。

 集中力が途切れ、五匹に一匹は逃がしてる。

 どうせ後で巣穴に戻って来るからその時倒せばいいか。

 俺があくびをしながら狩っていると背後から物音が聞こえた。

 見るとアリが十匹ほど群れを組んで俺の居る岩山の頂上に登ってきてる。

 さっきの逃がした奴らか。

 やべぇ!

 気を抜いてた!

 舐めプし過ぎた!

 ウサギを焼いていた匂いに釣られてやって来たのかな?

 やばい、見つかりそう!

 たしか、アリって敵を見つけるとフェロモンという物質を巻き散らかしながら仲間を呼び寄せるんだろ?

 見つかったら岩山を取り囲まれて大変な事になるぞ!

 なにしろ俺は勇者様では無い!

 規格外の容量を誇るアイテムボックス以外は単なる高校生の一般人のモブキャラだ。

 アリのワンパンで死ねる自信が有る。

 近接戦闘だけは絶対回避!

 どうにかせねば!

 アイテムボックスに入ってる物を思い出してみる。

 あ!

 有ったわ!

 俺を助けてくれるラッキーアイテムが!

 俺は身代わりを差し出す事にした。

 

 ──じゃじゃーん!

 ──チンピラトリオ!

 

 俺はチンピラトリオを砂漠の真ん中にそっと置く。

 何が起こってるか解らずにオロオロするチンピラ達。

 全然目立ってないな。

 それじゃあ。

 俺はチンピラの近くに大岩を落として、その存在をアピール!

 ずしんと砂漠に響く着弾音。

 凄まじい着弾音でチンピラ達が腰を抜かすと同時に、アリ達が殺到する。

 もちろん岩山の頂上に登ってこようとするアリ達もチンピラの元に殺到した。

 哀れチンピラさん、俺の身代わりになってくれ。

 チンピラ達は逃げ回るもののすぐに取り囲まれ、巣へとお持ち帰りされた。

 なむー!

 チンピラさん、きっと苗床にされるね。

 男なので本当に苗床にされるかは知らん。

 それが無くとも晩御飯の材料だ。

 あまりおいしそうな食材じゃないんで、俺は食べろと言われてもお断り。

 砦を壊した犯人が見つかったので、地上を索敵していたアリが次々に巣の中に戻っていった。

 ふー、一難去ってホッとする。

 ほっとしたのも束の間。

 今度は困った事が起きだした。

 アリが居ない!

 最初に俺が来た時みたいにアリさん引きこもり。

 一匹もアリが見つからなくなった。

 これじゃ狩れないだろ!

 どうすればいいんだ俺?

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