元勇者の嫁1
アウ王女は俺に向かって眉を吊り上げる!
「四ヶ月よ! 四ヶ月!」
「四ヶ月ってあれの事ですよね?」
「そうよ! 妊娠四ヶ月よ! 一言も話さないで手紙だけを残して私を置いて魔王を倒しに行ったと思ったら、なんでこんな所で遊んでるのよ! 赤ちゃんが産まれるまであと六ヶ月しか無いのよ! あれから一ヶ月間何してたのよ! もう魔王城の封印を守る幹部の一匹でも倒してるのかと思ったら、こんな田舎町で燻って何遊んでるのよ! 調べたわよ! あんたの事! この街の冒険者ギルドで冒険者して遊んでるんですってね! 冒険者をするにしても強い敵を倒して剣技を鍛えてるならまだ解るわよ! でも雑魚の野盗を倒してるだけなんですってね! そんな事やってて魔王なんて倒せるんですか? ちゃんと将来の事を考えてるんですか? このままじゃ田舎町の冴えない冒険者が私のお腹に居る赤ちゃんの父親になってしまうのよ! ねえ、真剣に考えてるの? 今どんな状況か解ってるの? 解って無いわよね! 解ってたらこんなとこで遊んでないわよね?」
俺は顔を真っ赤にしたアウ王女に鬼のように捲し立てられて怒られた。
全てを話し終えるとアウ王女は突然ボロボロと涙を流し始める。
え?
さっきまで怒ってたのにどうなってるの?
なんで泣くのさ?
「手紙だけを置いて居なくなっちゃったから、物凄く寂しかったのよ」
アウ王女は俺に抱きつく。
そして俺の胸の中に顔を埋め号泣した。
体を震わせて泣くアウ王女。
俺は王女の肩を抱き「ごめん」としか言えなかった。
*
翌日の早朝、王女と二人で街を旅立った
さすがに結婚寸前までいったニケさんやアレスさんに会わせる顔は無かった。
俺は既に妻が居た事を懺悔する置手紙を置いて何も言わずに街を後にした。
馬車を乗り継ぎ五日目。
魔王城の封印をする幹部のいる砦の近くの町、バストの町に辿り着いた。
さすがに五日も馬車に乗ってるとキツイ。
馬車酔いは慣れてきたが、疲れがかなり溜まってくる。
アウ王女はどうなのかと心配してみるが、かなり元気な様子だ。
本当に妊婦なのかってレベル。
「妊婦なのに馬車に酔わないんだな。というか、妊婦なのにこんな長旅をして大丈夫なのか? お腹の赤ちゃんが少し心配なんだけど? 城で待ってた方がいいんじゃないか?」
「大丈夫よ。流産しないように安産の護符を貰って来たから。これさえあれば流産の心配は一切無いから臨月まで元気に歩き回れるわ。それにお城に戻ってたらあんたがまたサボっていつまで経っても魔王倒しそうも無いから、魔王倒すまであんたについていきますから!」
どうやらアウ王女は魔王を倒すまでついてくる気満々の様だ。
それに逃げる隙も無さそう。
諦めるしかなさそうだ。
宿屋を探しながら砂漠の街を歩き回っていると、王女の豪華な服を見てチンピラ三人組が襲って来た。
「ずいぶんと綺麗な服を着たねーちゃんじゃねーか。命が欲しけりゃ金目の物を全部置いてけ」
「ねーねー、聞いた? あたしの事、綺麗なお姉さんて褒められちゃったよ。ちょっと嬉しいよ!」
「褒めてねえって。綺麗だと褒めたのは服だって」
「いや、私の事を綺麗って言った!」
「言ってないって!」
王女はキリっとした表情をすると、チンピラに問い詰める!
「ねーあんた! あたしの事を綺麗って言ったよね! 間違いなく言ったよね?」
あー、王女何チンピラにマジになってるの?
チンピラさん何が起こってるか解らず目をキョロキョロさせて困ってるじゃないか。
それでもチンピラさん、王女の勢いに流されずに踏みとどまる。
自分の役割を思い出したチンピラさんは仕事を再開した。
「おうおうおうおう! そんな事はどうでもいいんだよ! とっととその服脱いで金目の物出しやがれ!」
「ねーちゃん、俺達の事舐めてねーか?」
短剣の切っ先をアウ王女の喉元に突き付ける
さすがに王女の身が危ないと思った俺は三人のチンピラの武器をサクッと収納。
何が起こったか解らないチンピラは混乱していた。
「あれ~? 俺の武器どこ行った?」
オロオロして地面に落としたと思った武器を探し回るチンピラ達。
俺はこれ以上チンピラに関わっても仕方ないので、いつもの様にチンピラをアイテムボックスの中に収納。
今度は王女が何が起こったのか解らずにオロオロしてる。
「ど、どこ行っちゃったの! 私の質問に答えずにどこか逃げちゃったよ!」
「逃げたんじゃないよ。俺のアイテムボックスに収納した」
「あのチンピラをアイテムボックスに? あんたそんな事出来るの?」
「おう、チンピラの百人ぐらい余裕で収納出来るぞ!」
すいません、少し話を盛りました。
百人収納は試した事が無いからほんとに収納出来るのか解りません。
た、たぶん出来るから!
本気出せば出来るから!
その言葉を聞いて王女は目をキラキラさせた。
「まさか、あんたがそこまで強くなってるとはね。私も見る目が無かったわ。こんな強いあんたを旦那様に出来て幸せです!」
「おおう!」
「じゃあ今すぐ魔王軍幹部を倒して来て! 倒すまでご飯抜きよ!」
「マジですか?」
「マジです」
俺は町についていきなり魔王軍幹部討伐に駆り出す無茶ぶりな命令をされた。




