護衛クエスト4
翌日、早朝から帰路に就くことになった。
シルマインの街をニケさんと見て回りたかったがあくまでも俺は仕事でここに来ている。
商隊の出発時間に合わせないといけないので、ニケさんとの観光はお預けになった。
かなりガッカリした顔をするニケさんだったが、今度休暇が出来たらまた来ようと言うと表情が明るくなる。
朝一番の出発時間の午前六時に商隊と共にシルマインを後にした。
馬車の中ではニケさんがお茶やお菓子を俺に勧めてきたが、シルマインの食堂で買った物なのでどれも美味しい。
こうして二人だけでいる甘い時間がとてつもなく楽しい。
ニケさんに料理の経験を聞くとこの前作ったサンドイッチが人生初めての料理との事。
教えてくれる先生も居なかったのであんな呪殺兵器が出来上がったらしい。
作った食事が全て毒属性を帯びるスキルを持ってなくて良かった。
そりゃ子供の頃から冒険者をやってたら、まともな料理を作る機会なんて無かったよな。
ニケさんとの結婚の唯一の懸念材料が料理だったが、ちゃんと勉強をして貰えば問題無さそうなので俺はほっと胸を撫で下ろした。
本拠地のエストの街に近づくとまたしても野盗が襲って来た。
しかも今度は三十人という大所帯。
この人数では護衛の青春騎士団には勝ち目がない!
俺がいなければな!
この野盗、往路の農民上がりの野盗とは違い、明らかに戦闘経験を積んだ集団だった。装備を見ると使い古されているものの前線に立つ者は鎧を付け、後方から攻撃する物はかなりしっかりとした武器を持っていた。かなり面倒そうな敵だ。
俺がいなければな!
野盗は火矢を放って来た。
数に物を言わせて俺達の戦力を削ぐ攻撃だ。
火矢を放ち、馬車を燃やし、火を恐れる馬を暴れさせて俺達を混乱に陥れる作戦だ。
これはきつい攻撃である。
俺がいなければな!
俺は飛んできた火矢を全てアイテムボックスに取り込む。
真っ赤な炎に染まっていた空が一瞬で青さを取り戻す。
俺がやったんだよ!
ついでに野盗の弓と矢筒と杖も取り込んだ。
呆然と立ち尽くす野盗達!
これも俺がやったんだよ!
一瞬で戦力を大幅に削がれる野盗。
みな明らかに狼狽えていた!
これも俺がやったんだよ! 俺!
野盗は大混乱だ!
もちろん俺のお陰だよ!
って、ちょっと自慢がしつこいと言うかウザいか。
すまん。
だが断る!
野盗の親分は怒鳴り散らす!
「てめーら! 落ち着け! 落ち着かんと今日の昼飯は抜きだぞ!」
野盗の親分の声で一瞬で騒ぎが収まった。
なかなかやる奴だな。
親分は俺達に凄みを効かせて脅し始めた。
「おい、お前ら! 金目の物を置いていきやがれ! さもなくば、ぶも~!」
親分は突然白目になって倒れ込んだ。
「親分、どうしたんですか! 親分! ぶも~!」
親分を揺り起こそうとしていた側近の男も泡を吹いて倒れる。
何が起こったか賢明な読者諸君ならお判りだろう。
俺は喋る奴に片っ端から例のファイナルウェポンを口の中に突っ込んでいたのだ!
「ど、どうなっているんだ? いったぶも~!」
「お前ら、落ちつぶも~!」
「しっ死にたくねぶも~!」
「にっ逃げぶも~!」
次々に築き上げられる動かなくなった野盗の気絶体の山。
俺がやってるんだよ。
もちろん俺に決まってるだろ!
俺のお陰だよ!
それを見て遠隔攻撃をしていた遠くの奴らが逃げようとする。
「逃がすか!」
俺は視界に入る奴らを片っ端からアイテムボックスに収納してやった。
あっという間に野盗達は壊滅した。
アレスさんが恐る恐る俺に聞く。
「これもお前がやったんだよな?」
「はい、俺がやりました」
「お前凄いよ! 本当に凄い!」
結局三十匹の野盗は全て気絶し、俺のアイテムボックスの中に収まった。
凄いよ!
マジ俺凄い!
これだけ強けりゃ他の勇者なんて目じゃないな!
商隊とチームの皆に拍手喝采を浴び褒めたたえられながらエストの街に向かった。
これが俺の冒険者人生のピークになるとはその時の俺は思いもしなかった。
次回、強敵の勇者達が襲ってくる鬱展開です。




