護衛クエスト1
翌日、ギルドへ行くと商隊の護衛クエストを受ける事になった。
俺は護衛クエストなんて受ける気は無かったが、青春騎士団のアレスさんが受けたので受けざるを得ない。
なぜかというと気が付いたら俺は青春騎士団に加入してたからだ。
確かアイアンゴーレム討伐の時は同行するだけのはずだったんだが。
青春騎士団に加入なんてした記憶は無いんだけどな。
なんで加入してる事になってる訳?
するとニケさんが無邪気な顔をして説明してくれた。
「だってタナオカ君、私の彼氏だからいつも一緒に居たいじゃない? 彼女の私といつも一緒に居たいでしょ? だからチームに入れてあげたの」
犯人はお前か!
お前かよ!
他にやる事もないし、ニケさんにいつも会えるし、まあいいか。
青春騎士団がなぜ護衛クエストを受ける事になったかというとチームに指名依頼が来ていたからだ。
ヘビーメタルゴーレムを倒して一躍名を上げた青春騎士団は、この冒険者ギルドで一番の注目株となった。
今一番勢いの有るチーム!
そこに舞い込んだ指名依頼である。
テーブルにチームのメンバーを集めて、アレスさんが依頼の説明を始める。
「今回の依頼は商業ギルドから発行されたものだ。最近この街エスト周辺の街道に野盗が出没するようになったので商隊の護衛をする事になった。エストとシルマイン往復する商隊に同行し馬車に乗っているだけでいいと言う簡単な仕事だな。護衛と言っても戦闘が目的では無く、俺達が商隊に乗り込む事により野盗の襲撃を牽制するのが目的なんだ。気楽な馬車旅と思って貰えばいい。どうせ暇だろうし、アイテムバッグやアイテムボックスを持っている奴は、商品の搬送依頼も同時に受けとくといいんじゃないかと思うぞ」
俺はクエストボードから薬品の運搬依頼を受けておいた。
俺のアイテムボックスなら収納中の時間経過が無いので、鮮度が重要な薬品の運搬にうって付けだ。
今日の護衛はシルマインまでの護衛だ。
片道六時間の旅。
一時間後にこの街の馬車乗り場から出発する事になる。
商隊に乗り込んでシルマインまで護衛をする。
その後向こうで搬送依頼の薬品を依頼主に渡し、宿屋に一泊。
翌日再び護衛をしながら戻って来る事になる。
リーダーが言う様に一泊旅行だと思えば悪いもんじゃない。
商隊の護衛は先頭、中央、最後尾と別れて乗り込む事になる。
俺とニケさんだけが中央の馬車に乗る事になった。
アレスさんが気を利かせて中央の馬車はニケさんと俺だけにしてくれたみたいだ。
どうやらアレスさん、ニケさんとの付き合いを公認してくれてるみたい。
おまけに俺とニケさんがくっ付くように色々と工作してるっぽい。
俺はニケさんが好きなので、その好意には甘えさせてもらう事にしよう。
中央の馬車の荷台は積んでいる荷物も少なく、かなり快適だ。
元々は俺達騎士団全員がこの馬車に乗り込む事になってたらしい。
そのせいで荷物が少ないようだ。
ニケは自分で作ったと言うサンドイッチと紅茶を勧めて来た。
「わたし、料理を作った事無いんだけど、タナオカ君の為に頑張って作ってみました。食べて貰えるかな?」
「もちろん!」
なにこの幸せ!
彼女の手作り料理を食べれるとか幸せ過ぎる!
俺はランチボックスから取り出したサンドイッチにかぶりつく。
うん、これは幸せの味って奴だね。
だが、一口噛むと、俺の手が止まった。
というか、命の危険を感じた。
ぶほっ!
なにこれ!
苦っがー!
やたら苦みの有る味と臭いが口の中に一気に広がった。
意識が飛びそうな苦さ。
俺の人生中、最高レベルの苦さ。
たぶん、苦いので有名な〇ンテンドー〇イッチのカートリッジの方が美味しいと思う。
これは食ったらタダじゃすまないんじゃないかといった感じの味である。
俺は何かの間違いでコーヒー豆でも挟んで有るんじゃないかと思い、食い掛けのサンドイッチをそっと開いて中身を確認してみた。
なんじゃこりゃー!
ありえねー!
中には信じられない物が挟まっていた!
どす黒く焦げたハムらしきもの!
真っ黒なペーストとなったチーズだったものらしき物!
漆黒の闇を纏ったダークマター別名元レタスらしき物!
信じられない物を発見した。
すべてが漆黒の闇を纏った食材!
焦げ食材だった。
なんでこんな物が入ってるんだよ!
サンドイッチの具を焼いたらダメだろ!
しかも炭化するぐらいに焦げ焦げだし、どんだけ火を入れたんだよ!
ニケさんは満面の笑みで俺を見つめる。
「おいしい?」
笑顔が眩しすぎる。
さすがにこの笑顔に向かってマズいと言える勇気はなかった。
「お、おう。美味しいよ」
「よかった! 私初めて料理したから、美味しく出来ないかと心配しちゃった。もちろん褒められたのもタナオカ君が初めてだよ!」
あまりにも純真すぎる笑顔!
天使のほほ笑み!
やべぇ!
残せねぇ!
俺は腹をくくり、ランチボックスの中のサンドイッチを命を賭けて食らう事にした。
息を止めて口の中に入れ噛まずに紅茶で胃に流し込む!
全部食ったぜ!
胃が拒絶反応を起こし床の上でのた打ち回りたくなる程の激痛が走る!
うごー!
苦しい!
痛い!
しぬ!
マジ死ぬ!
吐かねば死ぬ!
だが、吐くわけにいかぬ!
ニケさんの初料理を目の前でリバースなんてしたら、一生消えないトラウマが残ってしまう!
我慢!
必死に我慢!
男なら我慢しかない!
異物を感知した胃がリバースしようと激しい痙攣を続けるが、それを鋼の精神で押さえつける!
俺は死兆〇の天の川を見た!
だが、ここで死ぬわけにはいかない!
俺は必死に運命に抗った。
ニケさんとの輝かしい未来を掴み取る迄は絶対死ぬわけにはいかんのだ!
俺が息を荒くしているとニケさんが心配そうに俺の顔を覗き込む。
「もしかして不味かった?」
美味いとか不味いとかそう言うレベルの話じゃないんです。
生きるか死ぬかのレベルなんです!
だが、愛の為なら何でもできる!
死の宣告を受けようともそれを跳ねのけてやる!
ぐおおおおおおおぉぉぉお!
耐えた!
耐えたぞ!
リバースせずに食いきった!
俺はやり遂げた!
俺は死を乗り越えた!
愛する女の人の為ならば何でもやれる男である!
「おいしかったよ」
「やったー!」
そう、その笑顔が見たかったんだ!
冥土の三途の川を越えて戻って来たかいが有ったぜ!
するとニケさんは特大のランチボックスを取り出した。
「お兄ちゃんや、他のメンバーさんの分も作ったんだけど、そんなに美味しいならタナオカさん全部食べて!」
「えっ!」
ニケさんは俺にトドメを指しに来た!
ぐはあああ!
俺の命運はマジで尽きた!
さようなら異世界。
こんにちわ異世界転生。
今度生まれ変わる時はアイテムボックススキルじゃ無くて、神様になんでも食べられる状態異常無効チートを貰う事にするわ。
俺が腹を括り最後の晩餐を始めようとすると、馬車の先頭から怒鳴り声が聞こえた!
「敵襲だ! 野盗が出たぞ!」
野盗さんグッジョブ!
俺死なないですんだよ!
襲ってくれてありがとう!
マジ大感謝!
君たち神だよ!
俺の命を救ってくれてありがとう!
俺はどさくさにまぎれサンドイッチをアイテムボックスにしまう。
そして颯爽と野盗退治に向かう。
野盗は七人だった。
「死にたくなければ馬車の荷と金目の物を全部置いていけ!」
俺はアイテムボックスから即死アイテム参怒至死を取り出す。
大口を開いて怒鳴っている野盗達の口の中に放り込む!
「くらえ!」
俺のアイテムボックスから取り出されたサンドイッチが次々に野盗の口の中に納まる。
処分完了!
サンドイッチのな。
「ぐわわあああ!」
「なんじゃこりゃー!」
「のどが~! 喉が~!」
「死にたくねー!」
野盗達は口から泡を噴き、次々に気絶をして地面に倒れ込んだ。
たったひと切れで気絶である。
それを何個も食っていた俺って……。
俺はこんな危険な物を喰ってたのか。
よく死ななかったな!
俺、どんだけ運がいいんだ?
商人のステータスの幸運の高さが無かったら確実に死んでたぞ。
アレスさんが俺の顔を見る。
「今のはタナオカがやったのか?」
「ええ、まあ」
「お前って本当にすごい奴なんだな」
凶器はあんたの妹のサンドイッチだけどな。
俺は気絶した盗賊達をアイテムボックスに回収。
後で衛兵に突き出して特別報酬を貰おう。
こいつらは冒険者ギルドの依頼の討伐対象だから、衛兵に突き出せばいい。
わざわざゲイバーに放流しに行って、髭の〇レディに襲われなくて済むのは助かる。
俺の冒険者稼業は順調に進んでいた。




