七尾
─────子ノ刻直前
冥色の着物に身を包み、一番お気に入りの蒼月石の玉簪を挿してバッチリおめかしした我は、見合い相手を出迎える為、家の門の前に立っていた。
「もう直ぐで約束の刻...!うぅ〜緊張するぅ...!」
〚驚きました。数多の【負ノ遺産】を真っ向に立ち向かって屠ってきた、あの朔夜様がただの見合いで見たこと無い程緊張なさるとは〛
「失礼だな、楓。元守護七妖仙であった我も一介の妖だぞ?
一度も体験したこと無い見合いで緊張するのは当たり前の反応だろうが。
何処にそんな驚く要素があるのだ?」
〚驚きますよ。だって朔夜様てすよ?
いつも堂々と殺気だった笑みとか戦闘顔しか見せなかった貴女様が普通の反応するなんて超レアですよ〛
「何だその戦闘顔って...?」
我を何だと思っているんだこの迷い家。
たまーに此奴は我に対して失礼で理由の分からん事言ってくるんだから困ったものだ。
まぁ、でもこの会話で少しだけ緊張が解れたから、今回は何も言わんことにするが。
と、少し心に余裕ができたのと同時だった───
─────チリン...
軽やかな鈴の音が沈黙していた夜闇に響く。
「む!」
〚来ましたね〛
二妖で鈴の音がした方を見る。
その方角から今度は鈴の音と合わせ、青白い鬼火がポツポツと門までの道を照らすように現れるという、一見粋な演出をしているかに思ったのだが...
〚朔夜様!〛
「よい、分かっている」
軽やかな鈴の音と相反して、発見した鬼火からは鉄の燃える臭いと、底知れぬ増悪と殺気が混じっていた───しかも、
「.....なんか、嫌でも知ってる気配がするんだが、気のせいか?」
〚気の所為ではございません。この鬼火、微かにですが【負ノ遺産】の気配が致します〛
警戒しながら前方を注視する。
すると、鬼火に照らされ姿を最初に見せたのは、酷く怯えた年老いた窮鼠、次に窮鼠と同じ様な表情をした四妖の妖が担ぐボロボロな粗末な神輿だ。
その神輿から今でも知っている気配を放つのを感じ取った我は盛大に顔を顰めた。
故に我は先頭をビクビクしながら歩いく窮鼠に、
「おい、待て。お前一体何を「妖魔様!お約束通り貴女様に相応しい贄をご用意して参りました!」は?「これでっどうかどうかっ!お怒りを鎮めて我々の暮らしに安寧と加護をお約束して頂きたく───」はあぁ!?「ヒィっ!」」
何言ってんだあの鼠!?まず妖魔様って何だ?我(元)妖仙ぞ?
ってか一番聞き捨てならんこと言わんかったか?いったよなっ!?
「楓。我の聞き間違えか?あの鼠ジジィ、今、我の事妖魔様とか“贄を用意した”と言わんかったか?」
〚聞き間違えではありません。私の耳にもハッキリと妖魔とか“贄”と聞こえました〛
「やっぱり聞き間違いじゃなかったか!この野郎ーー!!」
〚だから言ったじゃないですか。あの文の内容ちょっと怪しいと...〛
ぐぅぅ...!確かにちょーーーっとだけ引っ掛かる言い回しだなーって、一瞬だけ思ったぞ。
でも!初めて見合いの申し込みと浮かれてしまったんだもん!
だが、そんな雑なことも無視してしまった訳な我も悪いんだがなっ!!
「チッ!今更あーだこーだ悔やんでも仕方がない!
あの神輿の中の方をどうにかしないと、なっ!」
我が臨戦態勢を取ったのと同時だった。
いつの間にか我らを囲っていた青白い鬼火がボォッ!一層激しく大きく燃え、鉄の臭いも強くなった。
「楓!」
〚はい!〛
楓自身に結界を張るように名を叫んだタイミングで我は妖気を纏い、鬼火の元である神輿目掛け一直線に駆ける。
殺られる前に殺る!戦場の鉄則だな、うん。
「ヒッヒィィィ!!」
「わあぁぁ!!」
震慄する程の我の圧倒的重圧な妖気に当てられた窮鼠と神輿を担いでいた妖達は、悲鳴を上げながら神輿を手放しそのまま一目散に四方に逃げていった。
まぁ、この場にいたら神輿ごと一緒にぶっ飛ばしてしまうから逃げても問題ないのだがな。
とか頭の隅で考えてる間、取り残された神輿の中にいる奴も仕掛けてきた!
大きく燃え盛る鬼火から、炎を纏わせた熱い鉄の刃が割れ目掛けて放たれた、が───
「ふん。そんなチャチな刃崩れ如きで我が止まると思うた、かあっ!!」
全身結界を張り、当たる寸前に全ての刃は弾き落とされていくのを感じながらも、我は止まらずそのまま加速、跳躍、二つの勢いが加わった超強力な飛び蹴りを───
ドゴオオオオン!!!
神輿毎中にいる奴に喰らわせてやったのだ!
当然、一撃で勝負は決まった!
神輿は轟音を立てて粉砕。中に入っていた奴にも我の脚が入った手応えもダイレクトに伝わったのだ!
あ、後ついでに中の奴が纏っていた【負ノ遺産】の邪気も爆散浄化してやったぞ、えへん!
「さてと、我の見合い相手の顔を拝むとするか」
〚見合い相手じゃなくて、贄なんですけどね〛
「そんなん分かっとるわ!でもこうでも言ってなきゃやってられんだろうが!」
自分で言ったらちょっと虚しくなって、涙がちょっぴり出た。
〚まぁ、そういうことにしておきましょう。所で、中の妖、大丈夫なのですか?〛
「大丈夫だろう。見た目は派手な一撃だが、浄化用の妖気を纏わせて蹴り入れたものだから、体に殆ど支障はない(筈だ)」
〚左様ですか〛
二妖であれこれ話している内に、砂煙が晴れ、見合い相手の姿が露わになるんだが..........なんですとーーーっ??!
「っゔ....」
「はあぁ?!こ、紅剡!?」
なんと言うことだっ!!我が蹴りを与えた相手は十夜前に出会った、【緋桜ノ夜】の鍛造主、鍛冶師の紅剡だったのだ!
〚紅剡、殿?この方が?〛
「あ、ああ、そうだ。だが何故紅剡が贄なんぞに「ガハッ!」紅剡!?」
混乱している間に、紅剡の口から真っ赤な鮮血が飛び散った。
〚血が!朔夜様、本当に手加減したんですか!?〛
「したぞ!ちゃんとした!それよりも早く紅剡を“菊の間”へ」
〚はい!〛
腹に置いた脚を退け、気を失っている紅剡を慌てて肩に担いだ我は楓の中へと入っていった。
全く!見合いが見合いじゃなかったり、贄が紅剡でしかも【負ノ遺産】を纏っていたいたりと、あー!もうっ!今夜は色々ありすぎて何が何だか状況が全く分からん!!
兎に角、今のこの状況を把握する為に...楓が捕らえた別の部屋で転がしている窮鼠等から色々聞かねばならぬなぁ...!
ここまで読んで下さりありがとう御座います!
今回もおまけを置いて終わりにしたいと思います!
〜覚えて学ぼう【月ノ本】の世界と愉快な仲間達!〜
楓「皆々様方、今晩は。おまけのコーナー進行役の楓です」
作者「こんばんはー!作者でっす!」
楓「今夜は【守護七妖仙】についてお話しましょう」
作者「【守護七妖仙】は朔夜ちゃんが前に務めてたお役目だね!」
楓「はい。【月ノ本】七國の守護と安寧、執政を担うお役目ですね。
全員名のある大妖怪であり、数千年もの間数十万モノ【負ノ遺産】と闘い続けている猛者であり、力と術も様々で強力なのです!」
作者「ホウホウ、めっちゃ凄い大妖怪なんだ。ってか頭も賢くて力も強くなきゃやってられないわ、そんなん」
楓「そうなんですよ。朔夜様は今は引退されてあんなんですが、【守護七妖仙】の中では二番目にお強い方だったのですよ。
しかも、その強さは今も健在です!」
作者「なるほど。今は婚活に焦ってちょっとマヌ...ゴホンッ!抜けてるけど凄い妖仙なんだね!」
楓「はい!今はあんなんですが!」
作者「二回言ったよ...。そう言えば、この物語ではまだ明かされてないけど、朔夜ちゃんはどの國の【守護七妖仙】だったの?」
楓「申し訳ありませんが、それは言えません。朔夜様の婚活に支障が出る可能性があるので...。ただ言えるのは、【月ノ本】で一、二を争う程の激戦区だった國でしたと言うことだけです」
作者「なる程。まぁ、これ以上は踏み入るのは止めとこうかな。何かあったら怖いし。
じゃあ、話題を変えて、【守護七妖仙】って皆、現世に元いた妖怪なの?あと、どんな性格?」
楓「現世に元からいた方もいれば、派遣された方もいます。朔夜様は前者ですね。
皆様の性格は私は直接会ったことがないので分からないのですが、朔夜様曰く、「皆イカれてぶっ飛ん奴等ばかり」と仰っていました」
作者「その中に朔夜ちゃんも入ってるんだよね?」
楓「そうですね。朔夜様は...まだマシな方.....かも?」
作者「あんまり自信なさそうに言われても説得力ないよ、楓ちゃん」
楓「ゴホンッ!もう時間ですね!ちょっと説明が逸れたのが多かったかもですが、これにて今夜は終わりにしましょう!さようなら」
作者「強引に終わらせたよ、この妖怪。
まぁ、いいか!それではまた会えたら会いましょう!さよーならー♪」




