六尾
「返事が!来ないっ!」
あの(刀の)運命の出会いから十夜が経った。
我は楓に指摘され、本来の目的を忘れてしまった事を反省しつつも、直ぐ残り半分の代金を用意した後、紅剡に用意が出来たとの旨を書いた文を飛ばした。
.....のだが、一夜、二夜、三夜〜と、現在十夜経っても返事が全く、一通も来る様子がない!
「どうしたというのだ!?我は最大目的の婚活を控えつつも、ずっと返事を待っているというのにっ!!」
〚成果は全部惨敗でした〛
「誰に言ってるんだ楓!?うぅ...だって、我が良いなって思った殿方全妖、恋妖やら夫婦だったんだもん...!」
刀のことばかりかと思ったか?否!我ちゃんと婚活してたからな!
あれから、この町以外の場所に赴いては、出会いを求めて良き旦那様になりそうな殿方をリサーチしていたのだがっ!
言った通り、どの殿方も全妖相手がいた...。
何故だ!一妖位フリーの殿方がいてもいいではないか!と内心叫ぶ程全くフリーはいなかったのだっ!
出会い無しの惨敗...。そこで更に紅剡の返事無し...。
「流石の我も、泣くぞ...?」
〚心中お察しいたします、朔夜様...〛
楓から心の底からの労いの言葉を言われた...。
いや、もう本当に泣きそうだ...。
「...まさか、紅剡の奴。我に武器を見られたくないから、隠すための時間を稼ぐため、返事を寄越さないのでは?どう思う、楓?」
〚私はその紅剡殿に会ったことはないので何とも...ただ、朔夜様から聞き、あの刀の出来具合からして彼は誠実で真面目な、しかし何処か危うい印象の鍛冶師だと見受けられます。
故に、約束を疎かにするようなタイプではないと思いますが〛
「...うむ、そうだな。だが、十夜はちょっと長くないか?」
長命な妖には短くないかだって?
愚か者!我にとっては一夜も十夜も長いわっ!(婚活と武器限定)
〚確かに(今の状態の朔夜様にとっては)十夜は長いですね。
しかし、もしかしたらあの後急遽、鍛造の依頼が入ったのかもしれませんよ?〛
「それならそれで、一言文を飛ばしてくれてもいいだろう?多分、あの者ならそれくらいの返事は寄越してくれる筈だ」
横柄な男ではあったが、楓の言った通り、根は真面目な妖だったからな。
「...となると、もう一つ可能性があるとするならば───」
〚何かトラブルにでも巻き込まれたか、ですね〛
「そうだな」
“トラブル”に関しては心当たりがあった。
「あのチンピラ共、何やら紅剡とは因縁めいた物があったからな...。もしや別れた後、お礼参りに遭ったのかもしれん」
〚それに負けた、と言うことですか?〛
「そうかもしれん。しかし、紅剡は鍛冶師ではあったが、それなりに武芸の腕に覚えがあった。
それも、【負ノ遺産】に太刀打ち出来る程に、な。
そうなると、可能性は低くに思うのだが...」
〚なるほど、それなら確かに可能性は低いですね〛
「うーん...」
〚うーん...〛
考えれば考える程分からなくなっていくな!
もうあれだ、いっその事───
「このまま店に行ってしまおうか?」
〚その方が良いかもしれませんね。もし、何も無くただこちらに返事が出来ないくらいの大仕事を請け負っていたのなら、そのまま引き返せば良いだけですし〛
「ああ、そうだな。そうと決まれば、店に行く準備をしてこ〚お待ちください、朔夜様。文が来ました〛何?」
噂をすればなんとやら。楓の知らせに私室へ向かおうとした足を止めた。
〚どうしますか?〛
「構わん。通せ」
〚はい〛
我が文を中に通す許可を出すと、スーッと閉じていた襖が開き、そこからカサカサと白い一匹の蜘蛛の形をした文が入ってきた。
無言で我が手を差し出すと、蜘蛛はゆっくりと我に近づき指の上に乗る。
そして、手の平に収まるとポンと軽い音を立て、皺一つ無い長方形に折り畳まれた紙へと転じた。
その紙、文を開き我は底に書かれた内容を読む。
全部読み終え、静かに文を元に形に折り畳み、目を瞑り暫し思案した。
「..........」
〚あの鍛冶師からですか?〛
「否、違う─────見合いの話だ」
〚は?〛
我はソワソワしながら文をもう一度開き、読み上げた。
「“今宵、子ノ刻に妖神様に見合う者をお連れいたしますので、どうか心行くまでお楽しみ下さいませ”」
〚.....朔夜様、これ本当に見合いして下さい的な内容のものですか?
何か所々文脈におかし「楓!見合いに着る服は何色が良いと思う!?」聞いてない!〛
この町に来て初めての見合い話!
有頂天になっていた我の耳に楓の文の内容の指摘など一切入らなかった。
「簪は鼈甲の物にしようか?否、可愛く見せる為、紅の玉簪の方が良いかもしれんな...うーん!悩むぅ」
〚駄目です。完全に見合いモードに入っています...。
朔夜様、見合いのことで浮かれるのも良いですが、あの鍛冶師の事はどうするのですか!?〛
「あ」
目の前に楓の大文字が表れ、我の浮かれていた心が一旦落ち着く。
確かに紅剡の返事が来ないのは気になる。
何かあったのなら直ぐにでも動かなくてはならない所...。
しかし、見合いは今夜だ。うーん、どうするか朔夜.....よしっ!
「見合いを終えたら、即行で紅剡の所へ向かう!」
我は見合いを取った。
だって!産まれて■■■■年。初めての見合いなんだぞ!?この出会いのチャンス逃してなるものかっ!!
〚...そっちを取りましたか。まぁ、いいんですけどね〛
「楓!時間がない!早く見合いに相応しい服をコーディネートするぞっ、手伝え!」
〚はいはい...〛
しょうがないんだからなぁ...と楓からの幻視でも見えそうな気配を華麗にスルーした我は、いそいそと見合いに挑む服選びに勤しむのだった。
ここまで読んで下さりありがとう御座います!
今回もおまけを置いて終わりにしたいと思います!
〜覚えて学ぼう【月ノ本】の世界と愉快な仲間達!〜
楓「こんばんは、おまけのコーナー進行役の楓です」
作者「作者だよ〜♪こんばんは〜♪
今回は楓ちゃんについてご紹介しましょー」
楓「特に紹介する所などないのですか...」
作者「またまた〜、それなりにあるでしょう?
楓ちゃんは迷い家という妖で、朔夜ちゃんの元に仕えている忠実兼ツッコミ役の働き者なんだよ」
楓「ツッコミ役の所はいりませんが...そうですね、朔夜様には六千年前から仕えております」
作者「おお!結構長い付き合いなんだね!」
楓「はい。あの方に救われてから一生この身の全霊をかけて仕えていこうと決めています」
作者「そうなんだね。因みに妖全部が迷い家に住んでいるわけじゃないんだよ。
一部の力のある妖、又は楓ちゃんの様に迷い家自らが住まわせたいと思った妖だけが中に住まわせることを許されるんだよね!」
楓「はい。該当しないものは、中に入らせないし、入っても直ぐに追い出します」
作者「迷い家自体出会える確率が低いから、住んでいる妖はとても珍しがられているよ!あと、家事全般もやってくれるからとても羨ましがられているとかなんとか」
楓「羨ましいのはわかりませんが、逆に私は朔夜様に仕えられた事自体が奇跡に近いですね。
あの方は守護七妖仙の一妖ですから」
作者「確かに朔夜ちゃんってああ見えても、雲の上の妖仙だからねぇ...」
楓「私達の話はもうよいでしょう。今夜はこのくらいで終わりにしましょう」
作者「そうだね。それではまた会えたらあいましょー!さよーならー♪」
楓「さようなら」




