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三尾

「ギャアギャアうるせーんだよ、チンピラ共。さっさと汚え古巣に帰れ」


鬱陶しそうな顔をして長い濡羽色の髪を掻き分ける男に対し、チンピラの一妖が叫ぶ。


「テメッ!紅剡(こうえん)!!」

「まぁた(なん)も知らねぇ世間知らずの女にちょっかいかけてんのか?いい加減にしねぇと、今度こそ打撲だけじゃすまねぇぞ」

「っるせぇ!毎度毎度俺たちの邪魔ばっかしやがって!今夜という今夜はぜってぇ許さねぇ!!殺っちまえっお前等っ!!!」

「「「「「おおーーーーっ!!!」」」」」

「はぁ...毎度毎度、同じ台詞しか吐けねえのか、よっ!」


肩に担いでいた長物を振るい、次々と襲いかかってくるチンピラ共を薙ぎ倒していく紅剡と呼ばれた男。


「(ほほぅ!)」


一方、我はと言うと、恋愛におけるよくある出会いのパターンに遭遇した感動よりも、紅剡とやらが手にしているあの獲物に目が釘付けになっていた。


「(分かるぞ!あれは刀だ!しかも超レア物!!)」


実を言うと我、無類の刀好きなのだ!

守護妖仙やってた頃は【月ノ本】中の名刀だけではなく、我が気に入った無銘の物まで手に入れては、その切れ味を心行くまで戦場で堪能したものだ...。

勿論、相手は【負ノ遺産】だぞ?


「(ああっ!もう!布取ってくれんかなぁ!?)」


チンピラ共の怒声と悲鳴、紅剡とやらの挑発するような笑い声なんかが、耳に入って来た気もするが、我は今それを聞くどころではなく、何とか長物の全体像を見ようとそっちにばかり気を集中させていた。


「っクソぉ!覚えてやがれよぉ!!」

「へーへー覚えといてやるよ。直ぐ忘れちまうかもだけどな」

「〜〜〜〜〜っ!!」


我が長物をガン見している間に、決着はついたようで、ボロボロになったチンピラ共がお決まりのセリフを吐いてフラフラと何処かへと逃げていった。


「(...全然中身見れなかった.....)」


結局、紅剡という男は長物を覆っていた布を取らずに喧嘩を終わらせてしまいおった...うぅ〜。


「(こうなったら───!)」


我はただ黙って見るのを止め、次の手段に打って出た!


「おい、嬢ちゃん。今この町は厄介なことに見舞われてんだ。巻き込まれたくなかったらさっさと「そんな事はどうでもいい!(ぬし)の持っているその長物を我に見せてくれっ!」はあ?」


必殺・直談判!!男にゼロ距離まで詰め寄り、物を見せてくれと必死で訴える技!

※上目遣い無し。目がちょっぴり血走ってるかも?


「お主が現れた時、我のキューティクルな尻尾がビビッとキたのだ!

これは最早運命だとなっ!!」

「ちょっ!ちかっ!?っいきなり運命とか何言ってんだ!てかさっきとキャラが違「早く見せてくれっ!先っちょだけでもいいからー!」女が先っちょとか言うなぁ!!」


はしたないとか言ってくるが、我はそんなの気にしない!男はそんな我をなんとか宥めようとしているが、早くあの布の中身を見たいという焦りから、我は益々興奮状態に陥り、いつもの口調が子供みたいに駄々をこねるように、


「見せてー!みーせーてー!!」


と言いながら、強くはないが男の服の襟を掴んでグイグイ引っ張っていた。

それが堪えたのか、男は観念した様で、


「だああああ!もう分かったから落ち着けっ!!」

「やったーーー!(勝った!)」


我の必殺技に押し負けた男は、我をそっと押しのけて長物に巻かれた布を取り始めた。

それを我はワクワクしながら黙って見守る。

シュルリ...と長物を覆っていた布が取れる音が静かに響いた。


「ほらよ、これでいいか?」

「おお...!」


布が外され顕になった長物を目にし、我は思わず感嘆の声を漏らす。


───そこにあったのは一本の夜色の打刀だった。


柄から鞘まで全て黒くも紫がかった夜色に彩られた外装がなんとも美しい...。

しかし、我が一番気になるのはその鞘に収められた刀身だ。


「刀身の方も見せてはくれんか?」

「ハァ...嫌だっつても見せろとしつこく言ってくるんだろ?」

「うむ!見せるまで帰さないから覚悟しておけ!」

「だから、言い方...ハァ、もういい」


呆れを含んだ溜息を吐きながら、男はゆっくり鞘を抜いた。


「─────!!」


抜かれた鞘から現れた刀身。そのあまりの妖しき美しさと肌に刺すような心地よい剣気に言葉を失った。


夜の暗闇の中、妖艶で...然し斬るべき獲物を斬らんとする鋭く緋く光る緋色の刃。

刀身から放たれるその剣気は花弁の様な形を成してひらりひらりと舞っている。

その光景を目にし、我は久々に剣気に惑い酔いそうになった...。


「はぁ...これはまた、なんとも美しい刀だ.....」

「見た目だけはな」


我が美しいと口にした時、何故か男は不機嫌そうな顔になっていた。


「(何を不貞腐れているのだ、この男は?)見た目だけではない。

刀から放たれる剣気も含めて美しいと言ったんだ。

この刀、我が今まで見てきた刀の中で五本指に入るほどの逸品だぞ。嗚呼...本当に良いなこの刀...特にこの剣気。あるモノをただ斬る事だけに心血を注いだ執念はとても純粋かつ激しきもので心地が良い...」


うっとりと刀身を見ながら絶賛する我に、男は一瞬酷く驚いた顔をしたかと思ったら、次は耳元まで顔を赤くし、


「なっ!?何言ってんだお前はっ、ただの()()()()()にそこまで言う価値なんぞ「今、なまくら刀と言ったか?」!ああ、そうだよ!この刀は「阿呆うか貴様!これほどの鋭い刃と剣気を秘めた刀の何処がナマクラだというのだ!!」!?」


こんな価値のある刀を「なまくら」などとほざいた男に怒りを覚えた我は男の言葉をことごとく遮って否定してやったぞ。

何がなまくらか!コイツこんな凄いものを直に見て、そんな戯言を抜かすとか、目玉ちゃんと付いているんか??


「.....なまくらだ、コイツは.....」


一喝入れた我に男はまた驚いた顔をしたが、また直ぐに表情を変えた。今度は寂しさ、悔しさ、そして諦めが混じったものでポツリとまた「なまくら」と言い、暗い顔して(だんま)りとしてしまった。

途端に空気が周りの重くなる。何だこれ?我のせいか?


何か嫌な空気だったので、我はその空気を強制的に変える為、男が握りしめていた刀をサッと華麗に掻っ攫ってやった!


「!?」

「ふむ!この手に吸い付くような感じといい、重さも羽根のように軽い!風を斬る音も何とも堪らんものだな!本当に、お主は何がどうしてこの刀を「なまくら」などと言い張るのか理解に苦しむぞ?」


そう言いながら、我は男の前で軽く簡単な剣舞を舞って見せた。


「剣舞など滅多にやらんが、今回は特別だぞ」


ふふん♪と胸を張り、チラリと男の方を見て見たが、我はまた「?」になる。(でも剣舞は止めない)


「そんな...馬鹿な...!?」


何度目の驚きか、今度は信じられんものでも見るかのような驚愕した顔で我と刀を凝視していた。

この男、毎回驚かないと死ぬ病にでも罹っているのか??


「剣舞をしてみただけで、そんなに驚くことか?それとも、我のあまりの美しさに見惚れたか?」

「お前、その刀持つ事が出来んのか?」


我の揶揄(やゆ)を完全にスルーして、何かおかしな事を聞いてきたぞこの男。


「我が剣舞をしただけでそんなに驚く事か?それとも我の舞のあまりの美しさに見惚れてしまったか?」

「お前、その刀触れる事が出来んのか?」


むぅ〜、またも完全スルーしてきおった。

と言うか、何言ってんだこの男?


「触れるも何も、こうして普通に手に取って持っているだろう。主にはそう見えないのか?」

「ああ、いや...見える」

「なら、別に変じゃないだろ。お主何故我が刀を持っているだけでそんなに驚いている?」


大袈裟なくらいに驚く男の態度が気になり、つい聞いてしまったが、聞いてよかったのか、これ?

案の定触れられたくなかったのかは分からんが、男はグッと黙りこくってしまった。

しかし、暫し言おうか言わずか瞬時した後、男は意を決した表情で、ポツリポツリと話し始めた。


「俺の打った刀や他の武器は、俺以外誰も扱えるどころか触れる事すら出来ねぇんだよ。俺の師匠でさえも、だ。

何十、何百、何千本と武器を鍛造してきた。それでも全部、駄目だった...。

今回も依頼されて一本打って持っていったが、結果は───ハッ!ご覧の通り!いつも通りさ。依頼主は持つ事が出来ず「触れられないなまくら刀なんぞ使えねぇからいらん!」とお決まりの台詞を吐いて突っ返して来やがった!

...ま、多分俺の触れない武器の噂を聞いて面白半分で依頼してきたんだろうけどな...!」


最後はヤケクソになって吐き捨てる様に言った男は、我を真っ直ぐ見て、


「だから驚いたんだよ。今まで俺以外持てなかった武器を、何の変哲もない妖力も俺より小さいか弱そうだった嬢ちゃんが、それを普通に持って(あまつさ)え剣舞までやった事になっ」


と、何が不満なのか複雑そうに、然し、始めて己以外の他者が刀を持ったことへの嬉しさを抑えきれずに最後少し声が上ずっているのを我は聞き逃さなかったぞ。


しかしなるほど。そういう事情があったのなら、この男が何度も驚いてしまうのは無理もないな。

だが、それはそれとして...


「(我がか弱そうとは何事か!我元・守護妖仙ぞ?数数多(かずあまた)の【負ノ遺産】屠ってきた歴戦のぉ───)ハッ!」


しまった!我今出会いを求めて&婚活中だった!予想外の展開のせいで、つい素に戻ってしまったー!


「ソ、ソウイエバッ!オ礼ヲ言ウノガ遅レテシマイマシタネ。先程ハアリガトウゴザイマシタ。不埓ナ輩カラ私ヲ守ッテクレマシタトコロ、深ク感謝致シマス」

「何で片言?そして何で尊大なキャラ放り出して白々しくしおらしいキャラに戻った?」


速攻でツッコんできおった!そこは空気をんでスルーせよ!!

だが!我は年上、その言葉を呑み込んで、


「気の所為でしょう?はただの観光客Aに過ぎませんもの。

───そんな事より、お礼と言ってはなんですが、この刀、私に買い取らせてき頂けませんか?」



ここまで読んで下さりありがとう御座います!


おまけ

〜覚えて学ぼう【月ノ本】の世界と愉快な仲間達!〜


Kさん「皆様今晩は、おまけ進行役のKです」


作者「こんばんは〜♪作者でっす!」


Kさん「今回は登場妖怪の紹介をしましょう。

勿論紹介するのは、私の主・緋桜木朔夜様です。

外見年齢二十歳前後の美妖の分類に入ります。

後、髪色は赤みがかった桜色、瞳の色は若草色ですね」


作者「朔夜ちゃんはある国の元・守護妖仙で七千年以上【負ノ遺産】と戦ってきた歴戦の狐の大妖怪なんだよ!」


Kさん「はい。主は【月ノ本】でも一、二を争う程のとてもお強い守護妖仙でした。

しかし、物語の冒頭でもあったように、主の周りで結婚ラッシュが発生した為、焦った主は結構な高い地位を捨てて、元いた国を後にし、結婚して幸せな生活を手に入れる為に婚活活動に精を出す選択をしました」


作者「結構行動力あるよね!」


Kさん「主はこうと決めたら、もうそっちに真っ直ぐ全速力で突っ走る方なんです」


作者「そうなんだ〜。まぁ、勢いつけすぎて壁に激突ししなきゃいいけど」


Kさん「私もそこが心配です...」


作者「兎に角、朔夜ちゃん婚活頑張ってね〜!

それでは今回はここまでにしようか。また何かあったら追加で出すかも?じゃあね!」


Kさん「またお会いしましょう」(ペコリ)



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