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12.スーのギルド登録

 翌日、グリールさんとスーと一緒に冒険者ギルドを訪れた。

 ギルドカウンターに向かうとこちらに気づいた男性職員がカウンターから出てきた。


「グリールさんお待ちしていました。そちらが今回ダンジョンの報告をしてくださった、ユウキさんとスーさんですね。私は、ギルド職員のカーミラと言います。では、部屋にご案内します。こちらへどうぞ。」

と、カウンター横の通路を進むように促された。


 カウンター横の通路に入るとすぐ左手に2階へ上がる階段があった。この階段を上がると、ギルドの宿泊施設になっているそうだ。カーミラさんは質問をするとその都度、丁寧に説明してくれた。左側に並んでいるドアは依頼者の依頼相談などを聞く事が出来る応接室になっていて、右側に全くドアが無いのはギルドで買い取った物を解体したり保管する倉庫が併設されているからだそうだ。そのまま突きあたりまで進んで行くと、通路の2倍ほどの広さで天井の高い空間に出た、この上には宿泊施設の部屋はないようで、天窓から柔らかい光が入っていてとても明るい。ガラスのようなものはこの世界にもあるようだ。一般の建物には木の窓しかついていないのできっと高価なんだろう。


 左側にはドアが4つ並んでいて、右側には1番奥に1つドアがあった。左側は手前から書庫、仮眠室2部屋、地下に続く階段室で、右奥がギルドマスターの部屋になっているそうだ。今回の目的はそのギルドマスターの部屋らしい。

 カーミラさんがドアをノックし、来訪を知らせるとドアをあけ、僕たちに中に入るよう促す。


「こんにちは。クリスさん」

「「こんにちは…」」


 グリールさんはやはり、ギルドマスターと知り合いのようでスタスタと部屋に入っていく。その後を、僕は緊張しながら、スーは部屋に置かれた調度品を珍しそうに見回しながらついていく。

 正面にある大きな仕事机には、ギルドマスターという肩書きが想像出来ない、むしろ聖職者の方が似合いそうな優しく微笑むお爺さんがいた。クリスさんは仕事机から離れ、中央に置かれた応接スペースへと移動し、僕たちに向かい側の椅子を勧めてきた。

 グリールさん、僕、スーの並びで座る。それを見計らったかのように、カーミラさんがテーブルに紅茶の入ったカップを並べ、それが終わると部屋を出て行ってしまった。


 向かい側の椅子に座ると、僕たちの方に身体をむけ、

「それでは、改めて、私は、ラメトーク冒険者ギルドのギルドマスターでクリスと言う。」

「僕はユウキといいます。」

「私はスーです。」


 それぞれがあいさつをすると、クリスさんは僕たちが見つけたダンジョンについて話を始めた。


「まずは、ダンジョン発見を報告してくれてありがとう。あの場所にダンジョンがあったという記録は今のところ見つかっていない。領主様や、王都のギルドにも問い合わせているが、連絡が戻るまでにはしばらく時間がかかる。それと同時に、今朝早くから穴の開いた部分は修復し、何組かの冒険者パーティに調査を依頼しているので、2、3日もすればダンジョンの詳細もわかってくると思う。今は、君たちが持ち込んでくれた魔物についての調査を行っている。他にもあると言うことだが、もし良ければギルドの方で買い取らせて欲しい。」


 特に必要に感じないので、了承の意を伝える。欲しいならまた行けばいいし。


「次に、穴から落ちた際、そちらのスーさんが、浅い階層と言う言葉を使っていたそうだけど、差し支えなければどうやって階層の判断を行なったのか教えてほしい。」


 これについて、僕には分からなかったので、スーに視線を送ると、分かったと頷き返し、説明を始めた。


「探知魔法を使用して魔物の位置や魔力量を探りました。ダンジョンは階層が深くなると、エサとなる魔力の濃度が濃くなります。このエサを摂取する魔物は濃度に比例して多い魔力量を獲得します。ですので、魔力量の少ない魔物ばかりの階層だったので、浅い階層と判断しました。」


 昨日から思っていたけど、スーの知識量は本当にすごい。と改めて思った。それは、クリスさんと、グリールさんも同じようで、スーの説明を聞き、なるほど、と頷き、感心していた。

 その他にも、ダンジョン周辺の環境など気づいた事があれば言ってほしいと言われたが、僕は他の場所に行ったことなどないため比較など出来るわけもなく、答えられることは無かった。しかし、スーはダンジョンの脆くなっていた場所は、他と異なり、生えている薬草の種類が違っていたと話していた。


「最後に、このダンジョンを発見した報酬だが、過去の発見有無に関わらず、白金貨1枚とする。また、過去に発見されていなかった場合は、これからの調査の結果次第だが、産出されるものによって評価し、増額させてもらう。これについては、1ヶ月後改めて連絡をさせてもらいたい。私からは以上になるが、何か話しておく事はあるかな?」


 そこで、終始聞き役に徹していたグリールさんが、スーのギルド登録をお願いした。クリスさんは、ギルドカウンターですぐに出来る事をわざわざ今言うのか。と不思議な顔をしていた。


「それがですね。このスーさん、実はスライムなんです。」


 その瞬間、クリスさんはバッとスーの顔を確認する。その後、いやいや、そんなはずは無い。という顔をして、グリールさんに向き直る。

 グリールさんが僕の方に合図をした。僕はそれを確認して、スーにスライムに戻ってもらえる?とお願いした。

 スーは特に戸惑う事なく、スライムの姿に戻った。


「はい?えっ?」と、クリスさんは驚き、立ち上がるとスーのいる場所に近づく。

 今までいた女の子が煙が消えるとスライムに変わっていたんだ。初めて見たらそんな反応になるよね。


「この通りです。スーさんはスライムで、人族化したのです。これは、元々スライムのスーさんと従魔契約していた、ユウキさんのギルドカードの表示を見ていただいたら分かると思いますが、表示が従魔から被保証人へと変更されています。」


 グリールさんの説明に合わせて、僕は取り出したギルドカードに魔力を流した。そこには昨日見た時と変わらず、被保証人の文字が表示されていた。それを見たクリスさんは納得し、仕事机から登録する時に使う四角い台をテーブルに持ってきた。


「スーさん、人の姿に変わったもらえますか?」

 クリスさんはそういうと、ギルドの登録用紙とペンを取り出し、テーブルに並べる。「名前と種族だけでよいのですが、代筆しましょうか?」とクリスさんから声がかかる。しかし、スーは「大丈夫。」とペンを持ち、名前と種族を特に悩む事なく書き始め、「書けた。」とクリスさんへ紙を差し出した。その姿に僕だけでなく2人も目が点になっていた。

 なかなか受け取らないクリスさんを、どうしたの?という顔をして

見上げるスー。

 我に返ったクリスさんが、紙を引き取り台に挟み込む。


「では、こちらに魔力を流してください。」

 クリスさんの声に、スーは言われるまま、魔力を流し登録が完了する。クリスさんからギルドカードをもらう。


「スライムの登録は経験ない為、ギルドの規則にはありませんが、狐人族、狸人族のように他の人族に変化出来る種族と同等の規則が適応されます。普通の登録と異なるのは、人族に変化出来る種族は必ず保証人を設定してもらう事です。スーさんの場合はユウキさんですね。

獣人族は獣の姿、人の姿の2つの姿があります。しかし、先程の種族はこの2つに加え、真似る能力というものを持っています。そこで、真似る能力を悪用しない事を保証してもらうのです。

これは本人の為、と言うより依頼者への保険です。人族はあまり馴染みのない種族への偏見を持っています。噂などでですね。その中でも、自分と同じ姿になれる種族に対してはすごく警戒されます。自分にすり替わられて自分は殺されるのではないか…とか。

実際はわざわざギルド登録してまで活動してくださる方にそんな方はいないのですが、自分と同じ人族が保証して、ギルドが管理しているのなら大丈夫だろうと思わせる為です。」


 騙そうと思っている人には、こんな登録を強要しても無駄なのですがね…と、クリスさんがボソリと呟いた。

 今までに色々あったんだろうなぁ。


「では、登録は完了です。皆さんこれからもよろしくお願いします。」

 クリスさんは、部屋の外まで見送ってくれた。


「グリールさん、そういえば、ギルドの書庫って冒険者でも利用できますか?あと、この町に図書館のような施設はありませんか?」


 スーの知識量に驚かされた僕は自分でも、こちらの世界の知識を身につける必要を感じていた。そして思いついたのがやはり本。グリールさんの持っている本は魔法、魔法陣に、偏っている。人に聞くにしてもしっかりと疑問に思える知識を持っていないと身につかない。聞いたけど何が分からないのかが、分からない。では、教えてくれる人に申し訳ない。魔物や植物の勉強なら図鑑とかの方が便利だ。本なら写真は無理でもイラストなら入っているだろうからね。


「えーっと、ギルドの書庫はカウンターで必要な本の内容を伝えて職員に持ってきてもらうようになっていると思います。ギルド外への持ち出しは出来ません。図書館も基本的にはギルドの書庫と同じですね。この国では本は貴重ですから、持ち出す事は基本的に難しいでしょう。本を販売する店もありますが、購入する人がいないので、購入依頼がきてから取り寄せます。」

「ありがとうございます。ギルドで確認してみて、それでも無いようなら図書館に行ってみます。」


 僕がそう言うと、グリールさんもそれがいい。と賛同する。

 みんなで、早目のお昼を食堂でとると、グリールさんと別れ、僕はスーと一緒にカウンターで、魔物や薬草の図鑑がないかを確認することにした。

いつも読んで頂きありがとうございます。

過去の文章を読み直したらすごく読みにくかったので、今回は改行を増やしました。読みやすくなっていたらいいのですが…過去の投稿も順次修正します。

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