予想外の提案
「ヴィオラ!!!」
フォルテの誘導で無事娼館から出られた私は娼館から出た瞬間、メロディンお姉さま、嫌、お兄様に抱き着かれた。
(どうしよう、メロディんお兄様が男性の格好してる姿を久しぶりすぎるほど久しぶりに見たから助かったという現実感がわかない……。)
夢の中だったらどうしようと私は少し思ってしまう。
そんな時だった。
「ヴィオラっ……。」
私に抱き着くメロディンお兄様ごと私は誰かに抱きしめられる。
その人物は私のよく知る人物、フラットンお兄様だ。
「……心配をかけてごめんなさい。」
私を抱きしめてくれる二人に私はそっと身をゆだねる。
何だろう、兄弟皆がこんなに仲良く抱き合う日が来るなんて夢にも思わなかった。
私たち兄弟はしばらく無言で抱き合った。
フォルテの宣言通り、娼館が跡形もなく灰になるまで……。
・
・
「はい!?働いてた男たちを懐柔していた!?」
後始末があるということで私とヘオンはコモドが引く馬車によって安全な場所へと送られていた。
意外とコモドが強いということで私たち以外に護衛はつけず、目立たず移動することになった馬車の中で私はなぜお仕置き部屋に連れていかれたはずなのに一人で歩き回れていたのかをヘオンに聞いていたのだが……聞いたことを少し後悔しているところだった。
「あのね、ヴィオラ?世の中大事なのは強かに生きることなんだよ?確かに僕は女性が好きだけどどうせ一回男にいろいろ奪われた身としては1回も100回も同じわけ。だから僕は自分の身体という武器を使ってあの娼館で不自由しないように懐柔させただけの話。実のところ僕は不満はあったけどうまくはやっていたってわけだよ。」
「で、でもこの間貴方は乱暴に部屋に押し込まれて――――」
「あれは僕が頼んだ演出だよ。実際のところ僕以外は大体あぁいう扱いを受けてるから君にも見せておこうと思ったんだ。」
そんなことのために……。
そう思い始めると私はひどく悲しくなってくる。
(ヘオンってなんでこんなに自分を雑に扱うんだろう……。)
自分の身体を仕事以外で売ることもそうだし、暴力を振るわれるということに対しても何の感情もないように見える。
一体どういう環境で生きてこればこんな考えで生きれるのだろうか。
「ところでヴィオラ、実は僕君のことを売るのを伸ばせるだけ伸ばしてって娼館の主にお願いしてたんだ。」
「え……ま、まさかそれも体を使って?」
「そう。」
恐る恐る問いかける私に何の曇りもない笑顔を向けながら頷くヘオン。
本当にこの人はなんて人なんだろう。
私を思っての行動はうれしいけど、自分に与えられた救いが誰かの犠牲の上にあるものなんて
素直に喜べるはずもないというのに……。
「で、そんな体を張って君を守ろうとした僕のお願いを一つ聞いてほしいんだ。」
お願い。
そういわれて手放しにそれを了承しようとは思えない。
ヘオンはフォルテやピアノルのように食えない男だ。
なんでもするといえばろくなことを求められない気がする。
恩人に申し訳ないが慎重に答えなくては。
「それは私にかなえられることなんですか?」
「うん。君にしかできないことだよ。僕を君の使用人に加えてほしいんだ。」
「…………はい?」
私は今、何かとんでもない聞き間違いをしたのだろうか。
耳を疑うような発言が聞こえた気がする。
(ま、まさか気のせいよね―――――)
「君を狙う悪意から君を守るし、君の望みがかなうように婚約破棄を手伝うよ?」
「っ!!」
ヘオンの言葉を聞いて私の背筋はぞっとする。
(何故……何故ヘオンが私が婚約破棄を望んでいることを知っているの……?)
信じがたいヘオンの発言に私は逃げ道がない馬車の中で最大限ヘオンと距離を取る。
本当に食えない男だ。
何を考えているのかが全く分からない。
怖い。
私はとても、ヘオンが怖い――――――。




