ヘオンとフォルテ?
フォルテが突然私の目の前に現れ、私は思考が停止した。
いるはずのない人物。
そんな人物が目の前にいる。幻覚でも見ているのだろうか……
なんて思っている私にフォルテはでこピンを食らわせてきたのだった。
痛がる私を見て笑うフォルテ。
そんなフォルテを少し恨めしそうに睨める私。
そんな時間が少し過ぎた時だった。
フォルテは優し気に微笑みながら私の拘束具を外してくれた。
……ただの鉄の棒で。
「あ、あの、フォルテ?貴方はずいぶん変わった特技を持っているのね……。」
「あぁ、鍵開けですか?これはコモドに教わったんですよ。もしかすると拘束具がつけられているかもしれないから鍵開けができるコモドか、力の強いフラットンが貴方の救出に適任という話になりまして……ですがそんな貴方のピンチに駆けつける王子様役、譲れるわけないじゃないですか?」
(ないじゃないですか?って……)
私に問いかけながらとんでもなくさわやかな表情を浮かべるフォルテ。
一つだけ言ってもいいだろうか。
やはりこの人を怒らせることだけはお勧めしない。
絶対に。
「まぁ、そういうわけでコモドに鍵開けを習い、見事習得した僕が貴方の王子様になりに来たという訳です。」
「な、なる、ほど……。」
なんだか納得しにくいけれど、とりあえず納得せざるを得ないと思い私は頷いた。
というか、コモド。
なんて見た目によらない特技をお持ちなのか……。
「さて、こんな悪党の巣窟に長居は無用です。貴方がこんな場所に立ち入ったという過去を残さないためにも建物ごと塵になるまで焼いてしまいますので、早く出ましょうか。」
にっこりといい笑顔で怖い事を言いながら脱出を提案してくるフォルテ。
そんなフォルテに私は……
「わ、私は大丈夫だから、程ほどに……ね?」
恐る恐る情状酌量を求める事しかできなかったのだった。
そして――――――
(ヘオンの事、どうしよう……。)
私としばらく同室にいた男の子。
なんて説明しようものなら間違いなくヘオンの命がないだろう。
けれどヘオンはきっと今、私との作戦決行の為にお仕置き部屋に行っているはず。
放って逃げる事なんてできない。
なんて説明するのが良いのか。
そう考えていた時だった。
私とフォルテがいる部屋の扉が開き、とある人物が入ってきたのだった。
「あれ?フォルテ?」
「っ!!貴方は……!!!」
部屋に入ってきた人物は他でもなく、私が今どうしようと考えていた相手、ヘオンだった。
そしてヘオンはフォルテの事を私同様、愛称で呼んだ。
愛称で呼ばれたフォルテはひどく驚いた反応を見せている。
そしてその次の瞬間だった。
「ヘオン兄様!!!」
いつもは落ち着いていながらも何を考えているのか全く読めないフォルテがまるで子供のように無邪気な表情を浮かべてヘオンに飛びついた。
「あははは!何なに!?お前までここに売られてきたの!?もしかして権力争い?いやぁ、ブラコンだと思ってたけどピアノルにやられちゃったかぁ……。」
突然ヘオンに抱き着いてきたフォルテの頭をなでながら冗談めかしく語るヘオン。
そんなヘオンはやはりどこかフォルテと親し気だ。
こんなところにいても王族ということなのだろうか。
二人は本当に親しい間柄のようだ。
しかしこう並んでみると本当に二人はよく似ていると思う。
不思議な事にフォルテよりヘオンの方が背丈も小さいし、顔もどこか幼い。
それもあってか私は勝手にヘオンを同じ歳か年下くらいに思っていたけれど、おそらくフォルテが先ほど「兄様」と呼んだのが答えだろう。
彼は私たちも年上なのだと思う。
(人って見かけによらないわね……。)
そうひどく思わさせられる。
(というか、よくよく考えれば性格もどことなく似ている気がするわ。)
なんというか、危険臭がするというか……
出来れば関わりたくない感MAXだ。
でも何はともあれ――――――
「ヘオン、無事でよかったわ。でもどうしてここにあなたが?」
お仕置き部屋に連れていかれたはずなのにこんなところをのんびりと歩いているという光景に
驚かずにはいられない。
しかもどうやら追われている様子もない。
どうしてなのだろう。
そんなことを思っていたらフォルテに訝し気な表情を向けられた。
「……ヴィオラ、兄様と知り合いなんですか?」
「し、知り合いというか……。」
こんな時でも冷静さを失わないフォルテが面倒くさい。
気になったこと一つ聞くためにまずは尋問を受ける事になるとは。
そしてかなり返答しにくい内容を問われてもうなんというか、かなり面倒くさい。
なんて答えるが正解か……そんな事を思っていた時だった。
「実は彼女とは捕らわれの身の上仲間だったんだよ。僕ここに捕らわれていた一人、彼女も同じく捕らわれていた一人。脱出したいって思いに導かれてか出会って、脱出作戦を企てていた仲間なんだ。ね、ヴィオラ?」
恐ろしくすらすらと事実と嘘を混ぜながら話すヘオン。
完全に嘘をつきなれている人物の嘘のつき方に私は言葉を失った。
私の思った通りだ。
この男、やばい奴だ。
なんて思いながらもとりあえずフォルテが怖いので同室という事実をせっかくヘオンが伏せてくれたのもあるし、頷いて見せる。
そんな私とヘオンの態度にどこか腑に落ち無さを感じているのか、一瞬フォルテの顔は訝し気に歪むけれど、すぐに小さな溜息と共に納得の声が返ってくる。
そして――――――
「とりあえず話は後にしましょう。お二人とも、ここから出ますよ。」
そういってフォルテはヘオンには今だ尚ついていた拘束具を外し、部屋の外へと私たちの誘導を行ってくれる。
そんなフォルテに私とヘオンはついていく。
けれど、私はフォルテに誘導され逃げている最中、どうしても気になり少し前を走るヘオンを見てしまう。
何故お仕置き部屋集合だったのに私が本来仕事をさせられていたであろう部屋に来ていたのか。
それも、何故堂々と部屋までやってこれたのか。
そして、何故こんなにも冷静沈着なのか。
どうしてもこの状況になじませられないヘオンの素振りに私は疑問を抱く事しかできないでいたのだった。




