夢心地気分の裏では
「はぁ……退屈だわ……。」
牢に軟禁されてから――――えっと、もう何日目だっけ?
と、なるほどに閉じ込められてる日々が続いていた。
(近々解放される。みたいな話をヴェリテちゃんが聞いたとか言っていたけれど、事実どうなのやら……)
でまかせでないことを信じるのみだ。
(最近皆やけに忙しそうで話し相手として訪ねてきてくれることはほとんどないし、退屈なのよね……。)
とはいえ、ヴェリテちゃんが来てくれる度もちろん私は究極に癒されている。
あの可愛しいしぐさ、愛らしい見た目!!
そして愛くるしい声!!
いや、聖女の様に美人ともいえるのだけれど、綺麗可愛い!もう最高!!
と、癒されていても、質素な部屋にもうおそらく一か月近くは閉じ込められている。
退屈になるのも、ここから出たくなるのも仕方ない。
(私が犯人だ――――――みたいな話が出てないだけまだ感謝するべきだっていうのは解っているのだけれどね。)
でも、それでも正直この状況は一秒でも早くどうにかなって欲しいものだ。
なんて思っていると、部屋の扉が叩かれた。
「ヴィオラ様、お夜食のお時間です。」
扉の向こうからお城の侍女が入ってくる。
(……ん?)
気のせいだろうか。
侍女の様子が少しおかしい気がする。
侍女は何と手を震わせているのだ。
(いつもの侍女とは違うし、私が王子に毒を持った犯人かもしれないと思って怯えているのかしら?)
だとしたら怯えさせてしまって申し訳ない。
でも、だからと言って違うなどと弁解しようものなら面倒事を引き起こす確率もなくはない。
口で侍女を味方につけようとしている、とか言ううわさが出たら嫌だし……。
あまり下手に会話を試みないようにしている。
なので私は食事を置いた侍女が退出するまで一切声は賭けなかった。
そして、次女が去った後、大きなため息をついてから食事に眼を向けた。
(怯えられたくないんだけどな……。)
女の子にあんな顔をさせたくないのに……。
というか、あんな顔をされたくないのに。
(犯人、本当ムカつく。)
なんて思いながら私は腹を立てつつも夜食のスープとパンを口に含む。
(……そういえば、もし犯人がピアノルなら絶対にされたくないけど、今がある意味チャンスよね。牢に入れられてる私の食事に毒でも盛れば、私の事を消せるというのに……。)
自分が飲んだ毒を私も飲んでいたらうまくいけば私が自害したとか、そういう感じに事を運べるかもしれない。
いや、絶対にされたくないけど。
でも、それをしてこない当たり、別に私を殺したいわけではないのだろうか?
(いや、でも、王子暗殺未遂は死罪よね?……私の事、殺したいわけではないわけはなさそう……。)
でも、だったらなんなんだという話だ。
(それにそもそも普通に消したいなら私のお茶に毒を盛ればよかったじゃない。何で自分のに盛るのよ、面倒くさい。)
考えれば考えるほどますますよくわからなくなってくる。
(あぁ~もう!なんだかすごく頭がこんがらがってきた!!!そうだわ!こういう時は楽しいことを考えましょう!!そう、例えばここを出たらヴェリテちゃんと何して遊びかとかっ……!!)
正直言えばもう、遠くから見つめているだけで幸せだった。
でも、せっかくこんなにも早く友達になれ、さらにはちょっと親友っぽくない?みたいな関係になれているわけだ!
この機会に仲を深めておくことに越したことはない!
(この件が終わったらコモドと一緒に領地に帰っちゃうだろうしな……。)
でも、その前に遊ぶ時間くらいは欲しいものだ。
(まずはそうね、ヴェリテちゃんのお洋服を選びに行きたいわ!!)
すごく素敵なお洋服をたくさん来てもらい、そしてそれからお茶をして……
そう、そしてお待ちかね恋バナ!!!
(誰かのルートに突入してる確率もあるわよね!?突入してたら全力でサポートしてあげたいっ……!!)
望む!!ヴェリテちゃんの輝かしい未来!!!
と、そんな感じの事で私の脳内がいっぱいになってくる。
いや、やはり押しには幸せになって欲しい。
個人的に推せるカップリングはと聞かれたらもう全員と言えるほど推せる!!
フォルテはちょっと重いけど、愛しい人の為になら我が身すら投げ出してくれる愛に生きる人だ。
ロンドはすぐからかっては来るけど、それが逆に気さくでいい感じというか、楽しい人だ。
メロディンお兄様はお兄様でまぁ、シスコンでうざいけど、男らしい感じの時はすごくイケメンで優しいと正直に思ってる。
そして、フラットンお兄様は攻略対象ではないはずだけど、もしフラットンお兄様が好きというのならそれだってもちろん心から応援する。
クールだけど情に厚くて、なんだかんだで面倒見もいいし、仕事もできる!!
優良株だ!
(そしてフラットンお兄様とヴェリテちゃんがくっついたらヴェリテちゃんは私のお姉さんって事に……――――――)
幸せな未来を脳裏に思い描く。
誰と結ばれてもすごく素敵な未来。
そしてその誰と結ばれても私が近くにいればなお幸せ。
幸せすぎる妄想に私は脳内に花を咲かせていたのだった。
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「よし、どうやら薬がよく効いてるようだな。」
難いの良い男がきらびやかな扉を閉めて出てきた男に話しかけた。
扉の中から出てきた細身の人相の悪い男は気味悪く笑った。
「可哀想になぁ。見た感じいい身なりのお嬢様がこんな闇娼館に売られるとはなぁ。」
「はははっ!ちがいねぇ!!どこのどいつにめぇつけられたか、可愛そうなもんだぜ。そういやこの間売られてきた女見てぇな男もある意味可哀想ではあったな。どこの金持ちにてぇ出したか、金持ちにやとわれた人売りに売られてきやがってよ。……いや、マジで同情するぜ、ここの客は男しか居ねぇから男の客取らされんだろ?」
難いの良い男と細身の男は一気に声のトーンが落ちる。
人さらいから人を買う仕事を生業としている二人だが、人らしい感情があるにはあるらしい。
「あぁ~マジでお貴族様はえげつねぇよな。だが、俺らにも生活があるから逆らえねぇし、馬鹿は出来ねぇ。おい、せめてあの女みたいな男と今きたお嬢様、同室にしておいてやれ。」
「はぁ!?なんで!」
「いい身なりのもん同士話が合うかもしれねぇだろ!?まぁ、それとあれだ。……同じ男としての情けだ。」
「あぁ、なるほど。」
良い顔をして話す難いのいい男の話に細身の男は納得したように手をポンっと叩いた。
恐らく根っからの悪人ではなさそうな二人は静かに自室へと帰っていったのだった。




