ピアノルからの招待状
「はぁぁぁぁ――――つっかれたぁぁぁ―――――!」
屋敷に帰宅するなりベッドに転がり込む私。
嫌味やら羨望のまなざしやら、愛想笑いやら、夜会は本当に嫌いだ。
そして何よりピアノル王子が本当面倒くさい!!!
そんな事を思いながら私は静かに上体を起こした。
(取り合えず、日記でもかこう。)
乙女のたしなみ……というほどではないが、
その日何があったかはここ何年かは欠かさず書き記してある。
別にセーブってわけでもないけど、
何かあったときに過去を振り返る事が出来るからである。
過去に戻ることはできないけど。
(リセットボタンがあるなら迷わず私は婚約を申し込まれたあの日――――いや、その前に眼をつけられる理由となったお茶会ぐらいまで時を戻すわ。)
ここ最近はピアノルのせいでもういっそう友人になれなかったという現在でも悪くないとすら思ってしまう。
そうなればロンドとも恐らく友達にはなれなかっただろうから、ただのモブとしてヒロインちゃんを見守る事になったのだろうけど。
……変な妬みとか抱かれるよりはただのモブでいい。
(しかも何がって、ピアノル王子の情報は全くこっちにはないのよね……。)
作中、フォルテの替え玉として弟が使われていたことは確かに内容としてあった事は思い出せている。
だけど、名前だって作中では聞いたことはなかったし、キャラ絵だって全くなければおそらくセリフすらなかったと思う。
そんな相手にあんなふうに目をつけられていたら何されるかが怖くて仕方ない。
(婚約解消さえできればきっともう睨まれることもないんだろうけどな……。)
なんておもうけど、それができれば苦労はしない。
いっそうピアノル王子を理由にフォルテに婚約を破棄したいとか言えないだろうか。
いや、言っても無駄だ。
本人たちの意思ではなく、そこには親の意思がいるからだ。
(はぁ……つらい。っていうか胃がきりきりする……。)
もう軽く胃腸炎にでもなっていそうだ。
本当、目の上のたん瘤だ。
そんな事を思っていると私の部屋の扉が叩かれる。
「お嬢様、リディでございます。
失礼してもよろしいでしょうか。」
「え、えぇ。どうぞ。」
リディがゆっくりと部屋へと入ってくると
リディは困ったような表情で私へ手紙を差し出してきた。
差出人は今、目の上のたん瘤と思っていたピアノル王子だった。
私は早速リディから手紙を受け取り拝読させてもらう。
なんと内容はお茶会のお誘いだった。
それも、二人きりの。
文章上は未来の姉弟水入らずでお茶でも飲んで談笑いたしましょう。
的な内容だが、相手はあのピアノルだ。
うさん臭さしかない。
(断りたい。すごく断りたいっ……!!!!!)
断りたさ過ぎてまたも胃が痛くなってくる。
あぁ、もう本当になんて事だ。
こんなにも断りたいのに断ることなど勿論できるはずもない。
「リディ……返事を出しておいて……。必ず伺いますと……。」
「は、はい……。」
断る権利のない私は胃を痛めながらもリディに手紙を頼む。
あのピアノルが何を考えているかは知らないし解らない。
だけど絶対ろくでもない事だけはわかる。
招待されたのは3日後の昼過ぎ。
ひどく体調でも壊せたらいいのにと私は願わずにはいられなかった。




