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10年の月日を経て―――――

時の流れとは早い事でロンドの領地へのお出かけから10年ほど月日が流れた。


その10年の月日は私の身の回りにいる人たち、そして私自身を大きく変えてしまった。


まず――――


「「きゃー!ごきげんよう、フォルテシモ王子!」」


黄色い声が広いホールにて挙げられる。


本日の夜会の賓客、ご存知わが友人フォルテだ。


もっとも、替え玉なんかではない。


「こんばんは。今日も皆さん、見目麗しいですね。なんだか皆さんに囲まれると恥ずかしいです。」


だが、幼い頃に共に街に出たフォルテでもない。


完全に処世術をみにつけたフォルテだ。


2年前まで替え玉を使っていたとは思えない程立派に王子の仕事をしていた。


そう、すっかり別人のように立派に成長してしまったのだ。


それはいいことではあるのだが、私としては少し困るところがある。


「あっ、ヴィー!!」


「っ!!!」


フォルテにばれないようひっそりとパーティーに参加していた私だが、

あっさりとフォルテに見つかり駆けよられてきてしまう。


以前にもまして積極性の増したフォルテはすこしばかし手がつけられないようになっていた。


私の元へと駆けよってきたフォルテは私の手を掴むや否や、私の顔を見つめてくる。


「今日も美しいですね、ヴィ―。」


「こ、光栄だわ、フォルテ……。」


一段と美しく成長し、一段と積極性の増したフォルテは自分の魅力を知ってか知らずか

本当にぐいぐい来る。


叶うなら早く私を見捨ててもらいたいのに、どんどん惚れられている気がする。


割と冷たく接しているつもりなのになぜこうもなついてくるのだろうか。


「はぁ……フォルテ。王子ならこのようにレディに駆け寄ってくるのはいかがなものなのかしら?

王子らしくいついかなる時も優雅で余裕のあるふるまいを心掛けるべきだと思うのだけど?」


周りの人たちには聞こえないよう静かにフォルテを咎める。


するとフォルテはなぜか嬉しそうに「そうですね、ありがとう。」とお礼を言ってくる。


別にお礼が言われたいわけじゃないのだけど。


なんて思いながら私はため息をついた。


「相変わらずだな、フォルテ。」


(こ、この声は……!)


ロンドの領地へ出かけてから二年の間、私が頭を抱えていた問題の一つが向こうから歩いてくる。


私の頭を痛めさせている元凶は私に近づくなり私の手を取り、私の手に口づけを落とした。


「よぉ、ヴィオラ。」


これまた男らしくイケメン度が上がったロンドが私との距離を詰めて話しかけてきた。


顔面の暴力だ。


「ごきげんよう、ロンド。一昨日振りね……。」


「一昨日?二人は一昨日もあっていたのですか?」


「あぁ。ランディール侯爵のお茶会に招かれててな。お前もいなかったし、俺がエスコートさせてもらったんだ。」


「……へぇ、そうですか。」


ひどく笑顔なフォルテ。


しかしそのフォルテの笑顔は一見花が咲いているようで冷ややかな笑みだった。


……絶対これは嫉妬している。


(そもそも嫉妬なんてする必要はないのよ、フォルテ。貴方はもう少ししたら運命の出会いをするのだから。だからどうかその怖い笑顔をこちらに向けないでっ……)


向けられた笑顔を直視できず、私は持っていた奥義で顔を隠しながらさらに視線もそらした。


「ねぇ、ご覧になって。白バラ、赤バラ、青バラの麗しのローズたちがお揃いよ。」


「本当だわ。今日も素敵ね。」


少し離れたところで令嬢たちがひそひそとこちらを見ながら会話をしている。


何を隠そう、麗しのローズたちというのは私とロンド、そしてフォルテの事だった。


白バラが私、赤バラがロンド、青バラがフォルテだ。


何故そんなダサい呼び名をつけられているのか知らないけれど、いつからかそう呼ばれるようになった。


そして、私たち三人がそろっている時は何人も近づいてはならないという暗黙のルールさえあるようだ。


全く持って迷惑なルールだ。


しかし、そんなルールをたった一人、全く気にも留めない人物がいた。


それは――――


「これはこれは、ロンド殿にヴィオラ嬢ではないですか。」


(……でた。)


暗黙の了解など気にもせずとも咎められないこの国の宝の一人。


以前フォルテの影武者をしていた弟王子、ピアノル第二王子だ。


「またも兄上を独占されているとは、意地悪な方がただ。」


嫌味ったらし気な言葉を吐きながら近づいてきたピアノル王子は一見笑みを浮かべているように見えるが、その実、ひどくこちらを見下したような上から目線な視線を送ってくる。


はっきり言ってひどく苦手な存在だ。


「これはこれはピアノル王子。申し訳ございません。独占するつもりなどは決してないのです。

ただ、一間ばかりの談笑、お許し願えませんこと?」


腹が立つ態度を取られたからといってやり返すわけにもいかない。


私は大人な対応でピアノル王子に語り掛けた。


もしロンドとヒロインちゃんがくっついたりして私がフォルテと結婚。なんて未来がもし仮にあれば

もう最悪すぎる程仮にも弟となる存在と認識したくないレベルに苦手だ。


「フォルテ様。談笑中申し訳ありませんが少々よろしいでしょうか。」


「えぇ、大丈夫ですよ。」


少し険悪な雰囲気の中、家臣と思わしき人がフォルテを呼びに来る。


フォルテは家臣の人と共に私たちから距離の開いた場所へと連れていかれた。


その次の瞬間だった。


「……いい気になるなよ、ヴィオラ・アルトバーン。それに、ロンド・ベルスター・ヴァイオリン、お前もだ!!」


低くドスのきいた声で私とロンドをにらみつけてくるピアノル王子。


そう、何を隠そうピアノル王子はひどくブラコンなのだ。


フォルテを大事に思いすぎるがあまり、フォルテと仲が良いものは皆敵。むしろ排除しようとすら考える危険な人物だ。


そんな人物に残念なことに私とロンドは目をつけられていた。


「良い気になどなっていませんよ、ピアノル様。我々はただの友人であることをわきまえております。ただ一人の弟気味であらせられる貴方と我々は比べ量もない存在なのですから。そこのところはしかと存じ上げているつもりですよ。」


フォルテと話す時とは違い、堅苦しい言葉を並べるロンド。


そんなロンドの言葉を受けてピアノル王子は面白くなさげに苛立ちを見せながら私たちの前から去り、フォルテを追いかけていったのだった。


「はぁ……ったく、何だってんだよ、全く。」


ピアノル王子が見えなくなった瞬間、ロンドは疲れた溜息を吐き出した。


そしてすでにアップにされている前髪をなぞるように髪をかき上げた。


「本当、年々彼の態度がひどくなっていくものだから困るわ。」


(かといえフォルテは私と距離を置くだなんて事考えてくれていないし……。)


なんだかんだ言っても婚約は破棄できずまま、もう15歳になってしまった。


来年はもう寄宿舎へ入り、3年間の学生生活を始めなくてはいけなくなる。


出来ればそれまでに私としては婚約を破棄して平和な生活を送りたいと考えているものの、

現実はそう楽なものではなかった。


「おいヴィオラ、顔色悪いけど大丈夫か?」


「え?あ、あぁ……平気よ。気にしないで。」


「いや、平気そうに見えねぇから。夜風にあたりに行こう。歩けるか?」


「え、えぇ……。」


心労のせいか顔色が悪くなっているらしい私を連れてロンドは人気の少ないバルコニーへと連れだしてくれる。


私を連れだした後、ロンドは「すこしまってろ」といって会場へと戻っていった。


それからしばらくして戻ってきたロンドは私に冷たい飲み物を手渡してくれた。


「安心しろ、アルコールは入ってない。スパークリングジュースだ。」


「……ありがとう、ロンド。」


昔も今も変わらずロンドはやはり面倒見がいい。


さらに言えば男らしい顔つきに逞しい体。


ひどく頼りがいのある男性になったものである。


「……にしても今日はよく寄宿舎から戻ってこれたわね。外出許可、取るの厳しいのでしょう?」


私より年上のロンドは既に今年から寄宿舎に移り住み、学園生活を送っている。


寄宿舎は貴族ばかりで、毎週のように催される貴族のパーティに毎回出席させていてはとんでもないことになるという事で外出許可、そして外泊許可の申請は厳しく審査される。


パーティーで帰宅は殆ど通らない事が多いそうだ。


「メロディン先生が取り計らってくれたんだよ。」


「え……お、お兄様が?」


「あぁ。先生もピアノルの動向を気にしてる。大事な妹に危害を与えないかって。

かといえ、今回はタイミングも悪くてな。先生がパーティーに参加することはかなわなかったから

代わりに俺がナイト役を承ったってわけだ。」


(……なるほど。あわよくばとっととロンドと駆け落ちしろって事なのね。)


お兄様が私を溺愛しているのは現在も変わらない。


でも、お兄様はフォルテに私を嫁がせるくらいなら男らしいロンドに嫁がせたいと思っているらしい。


……しかし間違えてはいけない。これはお兄様がどうこうというよりはロンドの策略なのだ。


10年前、ロンドは冗談で駆け落ちの話題を出したのかと思えば割と本気だったらしく、頭もよく行動力のあるロンドはいざという時にフォルテから私を奪えるように根回しを怠らないでいたのだ。


……実は今、仲のいいフォルテとロンドの間で私の取り合いが行われているのだ。


それに私が気づいていないと思っているのかもしれないけど、残念ながら私は乙女ゲームのヒロインではない。


鈍感ではないためもちろん気づいている。


(そんなことをしてる割に親友で入れる貴方たちが本当にすごいと思うわ。)


でも、そもそもを言えば私なんて諦めてね。と、言いたい。


(……にしても、ゲームのヴィオラは別にフォルテの弟に嫌われてるだのなんだのの設定はなかったわよね……。)


私だから起きてしまったイベントなのか、公開されていないだけで起きていたイベントなのかはわからない。


だけど、本当ならそこまでかかわりあうはずのなかったであろうロンドと私はひどく関わりを持ってしまっている今、乙女ゲームの内容通りに未来が運ぶとは限らない。


(いろいろ気を引き締めていかないとね……。)


最近は自分の周りでありとあらゆることが行われていて正直ついていけない。


だけど、自分の身を守るためにそうは言ってられない。


私も無関心でいてはいけないのだ。


無関心もまた、罪なのだから。


そう思いながら私は冷えたスパークリングジュースを口に含んだのだった。

新作、【生き返りをかけて転生パーティーで魔王をどうにかする旅をすることになりました。】を投稿しました↓

https://ncode.syosetu.com/n7069fc/


交通事故で死んでしまった主人公は大切な人との約束を守るため、生き返りを望み、生き返る条件として異世界に転生して魔王をどうにかする使命を与えられます。


今まで自分が生きた年月よりも長く居世界で生活してもなお、大切な人のいる世界へ帰りたいと願い、魔王をどうにかする為同じ境遇で転生したほかの5人の仲間と旅に出るお話です。


恋愛要素もたくさん入れていくので、ぜひご覧になってみてください!

そしてもしよろしければブクマ、コメントよろしくお願いします!!


凰凬鳳香(おうかぜふうか)

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