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『神機』:護りし者  作者: 赤魂緋鯉
第五章 『神機』:幻の女王
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第二話

「ところで、いまからどーなつをたべるよていだが、いっしょにくうか?」

「へえ、いただけるならお願いしたいね」

「りょーりちょーにきいてみる」

「ありがとう。できればエリーナの分もお願いできるかい?」

「まかせろ。ついてこい」


 満足して下ろしてもらったマリーは、非常にご機嫌な調子で2人を誘うと、てこてこ、と歩いて厨房ちゅうぼうのある方向へと歩き出した。


「かっこいいおねーさまはなんてよばれてるんだ?」

「ボクかい? 傭兵の間では『男爵』と呼ばれているから、そう呼んで貰ってもかまわないよ?」

「私は『姫』って呼ばれてるわ」

「つまりだんしゃくおねーさまとひめおねーさま?」

「はっはっはっ、それは斬新な呼び方だね」


 一旦立ち止まってひょこっと首を傾げたマリーに、ジェシカはカクン、と少し脱力する動きを見せて苦笑を浮かべた。


「じょうだんだ。じぇしかおねーさまとえりーなおねーさまと呼ばせて貰おう」

「光栄ですシスターマリー」


 ジェシカは貴族仕込みのゆったりと優美な礼をして、恭しくそうマリーへと返した。


「むふ」


 それでなんだか偉くなった様な気持ちになったマリーは、顔を無駄にキリッとさせて厨房の方へと歩き出した。


「どーなつつくれるか?」

「ちょうど今、メイドが材料買いに行ってるからもう少しまってな」

「おー、わざわざすまないな」

「まあ、自分から買いに行ったんだがな」

「ほえー」

「しかもなんか公室御用達(ごようたし)を買うとかなんとか」

「ごようたし」

「ついでに半休取ったとか取らないとか」

「そんなに」


 数分後に到着し、マリーが厨房の前で料理長とフワフワしたやりとりをしている後ろで、


「……本当に、こんな所で呑気(のんき)にしてて良いのかしらね……」


 壁に寄りかかっているエリーナは、隣でそのやたら行動的なメイドにシンパシーを感じている様子のジェシカの手をとって、伏し目がちにそう言った。


「いたって邪魔になるだけさ。それに、もう完全にボクらの手に余る事になっていると思うよ」


 いつも通り余裕の表情は崩していないが、頭が痛そうにしながらため息を1つ吐いた。


「なるとしたら、エリーナが『聖女』でボクが『神機』のパイロットなら、ってところだね」

「まあそうなんだけど……」


 (つか)まれている方とは逆の手で、ジェシカは相棒の背中に手を回して抱き寄せ、ポンポン、と軽く叩いた。


「悩んだって仕方が無いさ。ここまで気が休まるときが無かったんだし、甘い物でも食べて落ち着こうじゃないか」


 エリーナの髪をそっと梳いたジェシカは、彼女へそう言って額に軽くキスをした。


「なんかごまかされてる気がするのよね……」

「君へボクがそんな事すると思うかい?」

「どの口が言うんだか」

「はは」


 ふくれ面でエリーナはジェシカの脇腹を軽く小突くと、彼女はとぼけるように微笑みを浮かべた。


「……」

「わあッ!?」


 すぐ真横にマリーが来ていたことに気付かず、エリーナは自分を見上げてくる彼女と目が合って、素早く身を引いた。


「うん。えれあのーるおねえさまと、あめりあおねーさまのかんけいとは、すこしちがうようだな」

「ええっと、何が……?」

「こうだ、と、ていぎてしまうのはやぼというものだ」

「そうなの?」

「じょうちょというものだ。たぶん」

「多分?」

「うん」

「そう……?」


 エリーナはマリーの独特な感性がいまいち良く分かっていなかったが、


 なるほど。何ごとも型に当てはめてしまうのは野暮、と。


 ジェシカには感じ入るものがあり、顎に手を当てて2度頷いた。


「はっきりと言えない感――」

「シスターマリーッ! ただいま戻りましたぁ!」

「うおー。でたなもーれつめいどべっきー」

「はい! ベッキーでございます! もう最高級のお砂糖買ってきましたよッ!」

「さいこうきゅう。いいひびきだ」

「でしょうでしょう!」

「おー」


 理解しようと質問をしかけた所で、材料を買いに行ったメイドのベッキーが帰ってきて、マリーの興味が2人から完全に逸れた。


「さて私もお手伝いをば!」

「ベッキー、残念だがもうすぐ掃除の時間だぞ」

「そんなー」

「どんまい」

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