最終話
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戦闘終了から1日と半日が経過した。
レオン達2組は、見送りに、と駆けつけたライトル姉妹と共に、『帝』『大』国境付近にいた。
レオンとニーナとオリビエはそれぞれの国の軍服を、バネッサは『帝国』教会『聖女』用修道服を纏っていた。
元『共和国』の3組は西部のユナイツ州都の基地へ行き、すでに無事、家族と再会を果たしている。
「後はオレ達の領分だ。サンキューな」
「お達者でー」
「次会うときに敵同士でない事を祈るよ」
「同感だ」
『神機』の乗せ替え作業が終わったと告げられ、4人はそう言い合って談笑をお開きにした。
「しっかし残念だな。せっかくなら、『聖公女』様にお目にかかりてぇところだったんだだけどな……」
「仕方ないでしょうー、オリビエ。戦闘の上に長旅ですものー」
「わーってるよ姉貴」
ちょっと残念そうにそう言う妹に、彼女より頭1つ背が高いバネッサは、そうやんわりと窘める。
一応セレナが来ている、という体になっていたため、彼女は疲れが出て眠っている、とレオンはごまかしていた。
ちなみに「替え玉」のマリーは本当に疲れていて、個室の椅子をベッド形態にして爆睡中だった。
改めて軽く挨拶を交わした後、3組は各々が護るべき場所への帰路についた。
そこからは特に何事も無く、レオン達は『大連合』東部領の工場地帯まで戻ってきた。
道中、マリーは起きて車窓からの景色にはしゃぎ、電池切れみたいに寝る、というのを繰り返していた。
「えんとつでかーい」
現在はその眠りから目覚めたところで、行きは夜で見られなかった、煙を吐く聳え立つ煙突を見上げてはしゃいでいる。
「あのよこの、くろいこうじょうはなんだ?」
「あの近くだから……、『レプリカ』が作られているところだよ」
「ほえー。じゃあむこうのあれはなんだ?」
自らの個室にやってきて、興味津々で工場を見ているマリーに、レオンはレイラから仕入れた情報で逐一解説している。
「あれはレーション工場だね」
「このまえのまずいくっきーだな」
「そうそ――。……そうかな?」
「れおんはあじおんちだからな。なんでもおいしいっていう」
「手厳しいね」
味オンチだ、とはよく言われるため、苦笑いを浮かべてそう言う。
レーションの話ついでに、列車に乗っている『大連合』と『公国』兵へ、『大連合』製のそれはどうか、とマリーは訊いて回った。
「くにでみかくがちがうのか。なるほど」
非常に興味深そうな様子で、貸して貰った端末で作った、やや線が雑な集計結果表を見て、彼女は新たにそんな見知を得ていた。
「ねえ。マリー」
「なんだ」
「マリーが、通信機が切れてていいか、って訊いてきたときなんだけどね」
「ん」
「なんだか、僕の妹の声が聞こえた気がしたんだけど、何か知っているかい?」
自分を正気に戻してくれた実妹の声が、マリーの特別な力なのか幻聴なのか、気になっていたレオンは、意を決して思案顔のマリーへそう訊いた。
「しってるようでしらない。もしかしたら、そうたのまれたかもしれない」
「……それって、どうい……?」
レオンは軽く呆然とした様子で少し間を空けて、その言葉の真意を訊いたが、生憎マリーは電池切れを起こしてすやすや寝ていた。
立ち上がったレオンは、外にいる女性兵士へマリーを彼女の部屋に運ぶように頼んで、元の位置に戻った。
「頼まれた、か……」
抱き上げられて運ばれても、全く起きないマリーを見送ってから、胸ポケットから実妹のロザリオを取り出した。
こんなになってまで、心配かけるような兄でごめんね。セレナ……。
口に出さずにそう言って、レオンはロザリオを握り、その手を包むように握って小さく背中を丸めた。
*
それから1ヶ月後。
勢いづいた『帝国』軍は、『共和国』軍を国土北部から北西部エリアと、帝都を含む南部エリアの一部に分断し、帝都を完全に包囲した。
勢いそのままに攻め込んだ『帝国』軍は、先帝および皇族暗殺と、ブリュンヒルトとハミルトン家暗殺未遂の主導者を捕らえた。
それをもって、『234年『帝国』内乱』は『帝国』軍の勝利で終結した。
しかし、首都をアーセル州の州都に移した『共和国』残存勢力は、貴族社会を嫌う『帝国』全人口の4割を抱え、国家としては未だ健在だった。
結果、人口・兵力比としては6対4、面積比としては国土中部から西部へ斜めに走る中央山脈を境に7対3で、『帝国』と『共和国』に国が分裂してしまった。
また、ブリュンヒルトは、『大』『公』同盟の協力に感謝し、自身の在位中は『大連合』との専守防衛以外での戦闘行為の一切を凍結する勅令を発した。
*
ひとまず、情勢は一応のところ落ち着いたため、キャクストン邸の一角にある亡命政府は役目を終え、その撤収作業が始まろうとしていた。
それにあたり、ブリュンヒルトはレオン、風邪がすっかり治ったセレナ、家主のキャクストン公、勝手に入ってきたマリーの4人に感謝の言葉を述べようとする。
「えー、本来は敵同士であるのにも関わらず、ご協力をいただき感謝致します……」
地味目のブラウスにロングスカート、というフォーマルな装いをしているブリュンヒルトは、話し始めは畏まっていたが、
「――ってやっぱり真面目なのは性に合わないわね」
真面目な空気に耐えきれず、表情を緩めてそう言った。
半日かけて撤収作業が完了すると、『帝国』から迎えに来た近衛兵と共に、ブリュンヒルトはキャクストン公爵領中心都市の駅で列車に乗り込んだ。
彼女は皇帝らしい、堂々かつ凜々《りり》しい笑みを浮かべ、見送りに来たレオンとセレナへと、窓から手と顔を出して小さく手を振った。
「じゃあ、機会があればまた会いましょう」
2人にそう言った、ブリュンヒルトもといエーデルシュタイン二世は、エレアノールとアメリアと共に、あるべき場所へと帰っていった。




