表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『神機』:護りし者  作者: 赤魂緋鯉
外伝 2 『神機』:男爵と姫
56/113

第七話

 それからおよそ1時間後。


「エリーナ。交代の時間だよ」

「んー……」


 ムクリ、と寝ぼけ眼で半身を起こしたエリーナは、数秒後に完全に目を覚ました。副操縦席のアルテミスは、20分程前に就寝していた。


「……なんで顔逸らすのよジェシカ?」

「いや、特に深い理由はないよ」

「ああそう?」


 未だにさっきの一撃の余波が残っていて、ジェシカはエリーナの顔を真っ直ぐ見ることが出来なかった。


「本当に何も無いの?」


 あんまりにも挙動不審だったので、砲撃手席に行ったエリーナは、もう一度ジェシカにそう訊ねた。


「もう寝てるの」


 だが、彼女はさっさとエリーナが使っていた寝袋に入り、(たぬき)寝入りして聞いてないフリをした。



                    *



 ジェシカとエリーナが、それぞれ2回ずつ見張りをやった所で夜が明け、2人と少し遅れて目を覚ましたアルテミスは、レーションのクッキーで簡単な朝食を()る。


「で、夜中のアレは結局何だったのよ。ジェシカ」

「いや、実は何か居ると思って見てたら、野生のイノシシだったんだ」

「あ、そう。本当に大したことなかったのね」


 目を泳がせているジェシカと、無自覚にその原因になっているエリーナのやりとりを、アルテミスは暖かい目をして聞いていた。


 出発の準備を終え、各自が自分の席に着いた所で、


「昨日は散々だったけど、今日は良い日になると良いわね」

「なるさ。きっと」

「あなたの言葉はいつも心強いわ」

「そりゃどうも」


 幼なじみ2人がそんな会話を交わして、意気揚々と難所へと足を踏み入れる。


「橋が……」

「落ちてるねえ」


 その中でも、比較的安全なルートへと繋がる、谷川に架かる橋の対岸側が、橋桁(はしげた)の根元から土砂崩れを起こしているせいで落ちていた。


「もー! またこんなのばっかりー!!」

「まあまあ。急がば回れっていうじゃないか」

「十分回ってるわよー!」

「あはは。もう一回りだね」

「そうねえ……。はあ……」


 うがー、と嘆き散らすエリーナをジェシカがなだめつつ、橋とは逆の急斜面にへばりつく様についている道を進んでいく。


「うー、落石しそうね……。早く抜けたいわ……」


 その道は『レプリカ』がギリギリ通れる幅しかなく、歩いた方が早いレベルの速度しか出せない。


「……でも防止用ネットがついてますし、そうそう落ちては来ないと思いますよ」

「普通はそうだけれど、私の――」

「あっ、岩だ」

「場合こうなるよのねー! やだー!」


 自分の思ったとおりになって、ちょっと涙目になるエリーナの一方、ジェシカは冷静に、イノシシほどの大きさの岩を対ミサイル機銃で粉砕した。


 ちなみにその岩は、落石防止ネットの(はる)か上の、山頂付近から落下してきたものだった。


「……すいません、あんまり効果無くて……」

「いいのよ……。私の不運が過ぎるだけだもの……」


 今朝付けて貰ったばかりの加護すら効かない、強烈な不幸体質のエリーナは、めちゃくちゃへこんではいるが、慎重なレバーさばきでくねくね道を確実に進んでいく。


 眼下には広葉樹混じりの針葉樹林が広がり、それと急斜面との間にやや幅の広い川が流れている。


「ねえエリーナ。落ち込んでても仕方ないし、良いことを口に出してみたらどうだい?」

「そうね……、少しは良くなるかも……」


 ジェシカは明るいトーンでエリーナへそう提案すると、彼女はそれに乗ってみることにした。

 そこで、やれカジノで銅貨1枚が金貨10枚になるやら、その臨時収入で豪遊するやら、と景気の良い話をしていると、


「うわあ!?」

「あ、ヤギだ」


 目の前を崖下から登ってきた、馬ほどの大きさのヤギが目の前に現れ、エリーナは驚いて『レプリカ』を急停止させた。


「何よあの大きさ……」

「この辺の固有種さ。遭遇出来るのは結構珍しいらしいよ」

「早速良いことありましたね」

「そうね! やっぱりポジティブにいくべきね!」


 希望が見えたエリーナは、再び朝のように元気な状態に戻ったが、


「さて、早く北フォレストランドに行って、美味しい物食べるわよ!」


 そう言って機体を前進させようとした途端、路肩が大きく割れて崩れ落ちた。


 先程の急ブレーキの圧力が原因でひびが入ったせいで、この機体特有の前進の際に起こる、ガクン、という振動に路肩が耐えきれなかったのが原因だった。


「えっ、まってこれ……」

「うん。落ちるね」

「ひゃああああっ!?」


 右側の支えを失った機体は、谷底に向かって、ゴロン、と転げ落ち始めた。


「いやああああああああ!! 勘弁してええええ!!」

「あははっ! あははははっ! エリーナ! 僕ら転げ落ちてるよ!」

「ええそうねええええええええ!」

「なんでジェシカさん楽しそうなんですかああああ!」

「彼女いっつもこうなのよおおおお!」

「ええええええええっ!」

「あはははっ!」


 悲鳴を上げる2人と、ゲラゲラ笑う1人を乗せた機体は、6回転ほどした後、カーブする川のど真ん中でちょうど直立して止まった。


「いやそうはならないでしょ……」

「なってます……」

「あー、エリーナと居ると本当飽きないなあ。あははは」

「それは良かったわね……」


 グロッキー状態のエリーナとアルテミスをよそに、実に楽しそうなジェシカは1人エキサイトしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ