最終話
2人が何事も無く『公国』へと帰ってから、2ヶ月が経過した。
レオンと『聖女』2人は、いつも通りサンルームでティータイムをしていた。
「そういえば最近、『大連合』のマクレーン大将が退任されたそうですね」
「ああ、聞いてるよ」
他愛ない会話を交わす中で、その事を思い出したセレナは、勉強疲れで眠ってしまったマリーを膝に乗せているレオンにそう言う。
「『不死身卿』も、流石に歳には勝てないか」
今度、お宅に挨拶にでも伺おうかな、と言うレオンは、爆睡するマリーの頭を撫でる。
不死身卿ことマクレーン大将は、ちょうど75歳になった1週間前まで、『公国』に隣接する東部領の司令官を務めていた。
彼は『大連合』の前身の1つである国の軍で、何度も死にかけては、その度に生還して戦果を挙げ続けた事から、『不死身卿』と称えられている。
10年前の『大連合』発足後、隠居するように東部領の初代司令官となった彼は、『大連合』と『公国』の同盟締結に貢献し、その後も両国間の橋渡し役として尽力していた。
また、マクレーンはレオンの事を高く買っていて、『3ノ月戦役』ではベイル中将にいち早く賛同した。先の戦いでも彼の協力のおかげで、レイラの救援にギリギリ間に合ったのだった。
何を彼への手土産にしようか、とレオンとセレナが話し合っていると、ベテランのメイドが部屋にやってきてセレナに耳打ちする。
ご苦労様です、と彼女が言うと、メイドは頭を下げて部屋から出て行った。
「何かあったのかい? セレナ」
「はい。新しい『大連合』東部領の司令官の方が、ここに見えられたそうです」
妙に嬉しそうな様子で、レオンの問に答えたセレナは、応対するために応接室へと向かう。レオンとちょうど起きたマリーも、彼女と一緒について行った。
3人が応接室に入ると、長ソファーに新しく着任した司令官と、それを挟むように部下2人が座っていた。
セレナの姿を見ると、その3人は立ち上がって敬礼し、その後、中央の司令官が口を開いた。
「先日、新たに東方面軍司令官に着任いたしました。少将のレイラ・シュルツであります」
凜とした表情でそう言った彼女――、『英雄の影』レイラは、レオンの姿を見て朗らかに微笑んだ。




