一世一代の大告白
「げほっ、あ゛ー、やっぱ煙たいな・・・・《そよ風》」
風の初級魔法を発動させ、砂埃を散らす。
「あいつらもいなくなったし、今のところは安全だな。っていうか、見逃されたって感じか・・・(前魔王、絶対気づいてたし)」
制服に付いた砂を払いながら、カナタはため息をつく。
「ま、こいつらは守れたし、よしとするか」
目線の先には、気絶したリルとレナ、ガネル。
「目が覚めたら質問攻めだろうなー、やっぱ」
それも仕方ないか、と呟きつつ《転移》を発動させ、3人を連れて保健室にとんだ。
「ん・・・・・・」
目が覚めた時、リルは保健室のベッドに横たわっていた。
「ここ・・・・保健室・・・・?」
まだ覚醒していない頭を働かせて、意識を失う前の記憶をたどる。
森に薬草を取りに行って、ナノ――――アーネスに会って、戦って――――――
「っ、レナちゃん、ガネル君!」
ベッドから跳ね起き、周りを確認する。
2人は、リルの両隣ですやすやと寝ていた。
見たところ、大怪我をしている様子はない。
「よかった・・・・・」
ほっと一息つく。
――――――大丈夫だ、リル
ふと、気絶する前に聞いたカナタの声を思い出した。
「カナタ、君は・・・・・・?」
ベッドにはいない。
あの威力の魔法をくらってただで済んでいるわけない。
よくて大怪我、悪くて――――――。
「(ダメダメ!そんなこと思っては!)」
悪い考えを払うように頭を振る。
「カナタ君・・・・・」
リルの呼びかけに答えるように、保健室のドアが開いた。
「お、気が付いたのか」
そこには、果物籠を持った元気な姿のカナタがいた。
「あ、カナタ・・・君・・・・・」
「ん?何だ?」
カナタの元気な姿を見て、安心したリルの目から涙が零れた。
「ど、どうした!?どこか痛むか?」
慌てて駆け寄ってきたカナタと視線が合う。
「いえ、大丈夫です。安心しただけですから」
涙を拭って深呼吸をする。
「カナタ君、私たちに説明してくれますか?」
じっとカナタを見つめる。
「・・・・・ああ。そいつらが起きたら話すよ。もうすぐ起きるはずだ」
「全部ですよ?」
「もちろん、全部話す」
そう言ったカナタの表情は、どこか悲しそうだった。
カナタが言った通り、ガネルとレナはすぐに起きた。
リルが経緯を説明して、カナタと向き合う形で座る。
「話す、って言っても何から話せばいいのか・・・・・」
いざ話すとなると内容がまとまらない。
「カナタ君、私たちが質問しますので、それに答えてくれますか?」
「ああ、いいぜ。そっちのほうが話しやすいしな」
リルの提案を快く受け入れる。
「では。カナタ君は、何者ですか?」
「いきなりそこか。俺は、――――――魔王だ。その名の通り、“魔”の付くモノを治める王。リルは聞いただろ?」
「・・・・・・はい」
あれは、本当のことだったのだ。
リルは俯き、服をぎゅっと握る。
「じゃあさ、前は聞きそびれたけど、魔族ってなんだ?」
「そっか、まだ説明してなかったな。魔族ってのは、人間と違って体を変形させることができるんだ。ほら、アーネスって奴居たろ?あいつは腕を変形できる」
「じゃあ、カナタもそんなことができるの?」
「俺はあそこまで出来ないんだ」
恐る恐る聞くレナに、カナタは苦笑する。
「俺ができるのは、精々これくらい」
そう言って、耳を尖らせる。
「この尖った耳も魔族の特徴なんだ。あと、これ」
カナタの背中から、【漆黒】に似た黒い翼が生える。
パッと見、【漆黒】にしか見えない。
「それって【漆黒】ですよね」
「いや、別物だ。これはただの翼。魔武器みたいな能力はない」
「でも同じくらい気持ちよさそうですね・・・・・」
リルの目がハンターのようだった。
「ほ、他の質問はないか?」
それから、いろいろ話した。
ジルのこと、魔界のこと、マーデルとアーネスのこと、そして――――前魔王、マルクのこと。
3人は真剣に話を聞いてくれた。
「――――――なあ、俺が怖くないのか?」
カナタは3人に、一番不安だったことを聞いてみた。
「え?」
「何言ってんの?」
「だってさ、凶暴って言われてる魔族の頂点だぜ?怖がるなっていうほうが無理があるだろ」
カナタがそう言うと、3人は顔を伏せた。
「(やっぱり怖いよな)」
ここから離れよう、そう思ってカナタは席を立とうとする。
「なあ、カナタ。お前、俺たちが怖がってると思ってんのか?」
それを留めたのは、ガネルの声だった。
「お前は、本気で俺たちが怖がってると思ってんのか!?」
勢いよく立ちあがったガネルは、カナタの胸倉を掴み上げた。
「っ、だって、そうだろ?俺のせいでお前らを巻き込んだんだ。俺に出会ったから――――――」
「馬鹿野郎!」
ガツンとカナタに頭突きを喰らわせた。
「~~~~~~っ!イッテェ・・・。何すん・・」
文句を言おうとしたカナタの動きは、そこで止まった。
「俺は、お前と会わなきゃよかったなんて思ってねぇよ」
泣きそうなガネルの表情が目に入ったから。
「・・・・はあ、いいところをガネル君に取られてしまいましたね」
「全くよ。カナタ、あたしたちもガネルと同じ気持ちだからね」
「お前ら・・・・」
呆れたリルとレナの顔にこっちが驚く。
「言ったでしょ、あたしたち“友達だ”って。忘れたの?」
「“友達”を怖がるなんてしませんよ」
ね?と首を傾け微笑むリル。
いつの間にかガネルの手は離れていた。
「ほら、質問の続きしようぜ!」
「そうですね、まだまだ聞きたいことありますし」
「今日は最後まで付き合ってもらうからね」
「・・・・・ああ、どんと来い」
涙が出そうになるのを堪えながら、カナタは精一杯の笑顔を返した。
――――――ホント、最高の友達だ
「そういえばさ、魔族って長生きなんだろ?」
「そうだぜ」
「カナタって何歳なんだ?」
「あー、ざっと400歳」
「「「・・・・・・えええええええええええ!!?」」」
この日一番の驚きでした。




