王都、パニック
「お前等気合いが足りないんだ!」
第四騎士団の団長がそう言って、全員を連れて寒中と言うには暖かい日射しの水泳に行ってしばらく後。
うんざりした顔で城を出て行った兵士全員がパンツ一丁の姿で現れ、顔を真っ赤にして叫んだ。
「巨人が出たァ!」
おおよそ、その声を聞いた全員が 「訳の分からない事を言っている」と、そう思った。
巨人というのは、実在するものではない。昔話で良く出てくる不思議な存在でしかない。
昔話曰く川の流れと変えたとか、大きな岩を砕いたとか、森の形を変えたとか。困っている人を助けてくれる、山のような体を持ち、豊穣を司る、何というか、神様のような物。子供の頃に良い子にしていないと巨人様に食べられると教わらなかった者は居ない……それはそう言うものだった。
だから全員が鼻で笑った。
第四騎士団の一同は「嘘じゃない」と声を張り上げた。
そこから先兵隊が半分笑いながら出て行って、青ざめた顔ですぐ戻ってきた。
「本当にいた。この町に向かってきている」
その報告で、事態は笑い話ではなくなった。
全兵に徴収がかかり、町中に警報の鐘の音が鳴り響く。
どうしたんだと町の住民はざわめき、情報は混乱し、噂は波のように広がっていく。
「巨人が現れたんだ。俺たちなんてペチャンコだ!」
いつもなら笑い飛ばされるような冗談も、厳戒態勢の騎士の姿を見れば笑い飛ばせるはずもない。
住民の避難誘導が始まり、人々は逃げ惑う。大通りは片付けられ、兵士は弓と槍を構える。
兵士が身構える中、王都の正面、大街道から巨人が現れた。
左手山……城から見て大街道の左手にある山としてそう呼ばれる山の陰から巨人がのそりと現れる。
身の丈は山の木々に勝るとも劣らない大きさの巨体はお伽噺の姿そのままだった。
紺色の服を身にまとい、大きな腰巻きを付けている。そして藍色のズボン。
その手には巨大な網を持っていた。
「きょ、巨人だ」
見上げるほどの巨人の姿に兵士達は震える。誰もが勝てるとは思っていなかった。
何せ相手は家よりも大きい。屈強な鎧を身につけていても捻り潰されてしまうのは目に見えている。だがそれでも、兵士達は逃げる事なく身構えていた。
山のような巨人が相手でも王都を守る騎士として、引くわけにはいかなかったからだ。




