再びの妖精の国
もぞもぞ、もぞ。
不思議な額縁を通って妖精の国へと出た幸彦は立ち上がった。
服装は重装備で、周囲を探るようにして動く。武器として持っているのは虫取り網だけだった。
ブーツを履いて、その中にズボンの裾を入れこむ。
万全の状態になった幸彦はグルッと周囲を見渡す。
「向こうの場所が変わっても、こっちの出口がズレる訳じゃないんだな」
そこは昨日と変わらない洞窟の入り口だった。
洞窟の周りは原っぱで、辺りを森で囲まれている。森と行っても、木の大きさは高くても幸彦の胸丈ほどしかない。これが一番成長した姿である事は周囲の様子から見ても間違いなかった。ここが大規模な……植林場だったりすれば話は別だけども。
何はともあれ、まずは人というか、妖精か、小人を探さなくてはならない。
「よし、ひとまず」
「おお、巨人様」
川を探さないと……いけなかったんだが……探さなくても良さそうだ。
出鼻をくじかれたような気持ちに成りつつ、幸彦は小人の近くに歩み寄って声をかける。
「どうも。えっと、昨日の小人の誰かですか?」
しゃがみ込んでそう訪ねると、手を擦り合わせて幸彦を拝んでいた緑色の服を着た小人は、この言葉に顔を上げる。
中年の男は痩せていて、なるほど飢餓だから……と幸彦は納得する。
「へえ、そうです」
返事をする小人に、幸彦は内心でガッツポーズをして、なるべく落ち着いた声色を心がけながら口を開く。
「この辺に、大きな町か、ええっと王様はいます?」
「王ですか? 王ならば、王都にいらっしゃるはずですが……いかがなさいました?」
そう訪ねられて、幸彦はなんと答えたものか躊躇った。
生け贄に捧げられた人を誘拐されたと言って良いのか悪いのか。
……リリィを見てると、巨人が復讐に現れたと誤解されてもおかしくないな。
昨日のこっちの言葉にいちいち驚いていたリリィの様子を思い出し、幸彦は面倒なことになりそうだと思う。
何か良いアイディアは……そうだ。
「実は他の小人や妖精も助けようと思って来たんですよ」
「おお。ありがたい事です。ありがとうございます、ありがとうございます」
再び手を擦り合わせて拝み始めた小人に幸彦は苦笑いを浮かべつつ、先ほどの質問を再び口にする。
「それで、その王都って場所に行きたいんだけど……場所はどこですかね?」
「王都でしたら……あちら側でございます」
そう言って小人が指出した方向には緑が一面あるばかりで、何も見えない。
「……えっと、このまま、まっすぐ?」
「ええ、街道が見えますのでそれをまっす……見えますか?」
親切に説明してくれる小人には悪いが、幸彦にはその街道というのが見て取れない。
「申し訳ないですけど……」
「……もうしわけありません。木に遮られておるのでしょう。それでしたら、あちらの川がございます。そちらを上流側へ進みますと左手側に大きな街道が見えて参りますので」
「見てわかりますか?」
「ええ、それは大き……巨人様から見れば小さいかもしれませんが」
そう言って小人のおじさんがそう困ったように笑う。
まあ、幸彦から見れば妖精達の住処は小さいかもしれない。
「その先に王都が見えて参ります。街道沿いに進めば間違いないかと」
「そうか。ありがとうございます。行ってみます」
「へぇ。お役に立てたようでしたら、幸いでございます」
深々と頭を下げる小人のおじさんに礼を行ってから、立ち上がり指差された方向へ向かって歩く。
昨日に引き続き、天気がいい。それが作用して厚着して居る服の中がとにかく蒸す。加えて周囲はとにかく雑草が多い。
「普通に森だな……」
かき分けて進む事しばらく、林を抜ける。
土手のようになっている斜面を降りて、絨毯のように雑草が生えている。
何というか普通に河原だ。雑草も小さいので、まるでコケのようだ。
「森の中よりは……歩きやすいかな?」
幸彦は何はともあれ上流を目指す為に歩き出した。




