8わん
――ギルドの医務室に響く鳴き声
「エルぅ〜〜〜生きててよがっだぁ〜〜」
「――きみだれだっけ?」
⋯⋯
「ええええぇぇ?!
しぃちゃんだよ、忘れちゃったの?!!」
目をうるうるさせながら、しがみつくしぃちゃん。
「こらっ、シィちゃんで遊ばないの」
ペシッ
息子をはたくエルママ。
「プッ⋯⋯うそうそ、忘れてないって」
口を押さえて笑いを隠すエル。
「わふっ?!しぃちゃん心配したのにぃ」
しぃちゃんは耳のうしろをかきながら、頬を膨らませた。
「ごめんごめん。
足も治ったし、傷も回復してもらったから夜には帰れるよ」
「ほんと、生きて帰れたのは、シィちゃんのおかげね。エルを助けてくれてありがとう」
頭を撫でられて、しっぽをぶんぶん振る。
「わふふっ!
しぃちゃんギルドの登録して、明日お友達と依頼やるんだ!」
「へー、すごいね。もう友達できたの?」
「わふんっ!」
「そっか」
コンコン
「はい」
エルママがドアを開けると、ケイが立っていた。
「副ギルド長のケイだ、入っていいか?」
「どうぞ」
「ケイ!しぃちゃんギルド登録できた!」
「ちょっシィっ、呼び捨てはやめなさい」
「わふー?」
エルにたしなめられるしぃちゃん。
「いや、かまわないよ。それより、エル。
今回はシィとB級のコカトリスを討伐し、村を守ってくれてありがとう」
「いえいえ、そんなそんな!
夢中だっただけで、シィが倒してくれたんです」
首を振るエル。
「今回の戦績を見て、DからBランクに上げさせてもらうよ。報酬も受け取ってくれ」
エルママが受け取った麻袋には、金貨が入っていた。
「金貨?!」
「やったわぁ、2人とも今夜はごちそうよ〜」
「わふっ?!しぃちゃん食べる!」
はしゃぐ3人。
「ごほんっ、それでなんだが」
「わふぅ?」
「コカトリスを倒した2人に提案なんだが、ギルドの特別な依頼をやってみないか?」
「ほ、ほんとですか?!」
「とくべつ?おいしい?」
「シィっ、食べ物じゃないって」
またも、たしなめられるしぃちゃん。
「ごほんっ
ギルドには通常公開してる依頼とは別に、非公開の依頼があるんだ」
「報酬も高くてなかなか普通の冒険者は受けられないし、レアアイテムもドロップするって聞くよ」
目をお金のようにキラキラさせるエル。
「――待ってください。それはどれくらい危険ですか?」
エルママが心配そうに聞く。
「そうだな、正直、安全な依頼とは言えない。
うちのギルドでは、基本Bランク相当からギルドマスターの判断で受けられるものだ」
「やります!」
目をキラキラさせて、エルが言った。
「しいちゃんもやる!スキルあげる!」
「はぁ、言い出したら聞かないんだから⋯⋯
シィちゃん、あとでエルと帰ってきてくれる?
先に帰って夕食の準備してるわねー」
「わふん!」
バタンッ
エルママはため息をついて出ていった。
「エルのママは嫌なのかなぁ」
しぃちゃんは不思議そうにしている。
「そりゃ、親御さんは心配だろうな」
「そっかぁ」
ケイの言葉に納得するしぃちゃん。
「もう2回死にかけたからね。
生きてるうちに特別な依頼を受けて、報酬がっぽり稼いで!親に楽させてあげないと」
ガッツポーズをするエル。
「しぃちゃんもがんばる!」
「となったら」
「わっふん」
「とりあえず、寝よ」
「えぇ?!」
ベッドに寝はじめるエル。
「だってコカトリスまじ怖かったし、死にかけたのよ?さっきお昼食べたから眠いし、もう少し休ませて」
「まぁ、仕方ないな」
「わふぅ、しぃちゃんもなんか食べたい。しょうかん」
ぼとぼとぼとぼとっ
「それはっ!?先ほどの」
「ジャーキーとささみ!はむっカプッ」
ジャーキーとささみを頬張るしぃちゃんを羨ましそうに見るケイ。
「す、少しだけ、くれたりは?」
「いいよ!しょうかん」
ぼとぼとぼとぼとっ
「やった、ありがとな!がぶがぶっうまーーっ
ジャーキーの香ばしい味もだが、このささみのさっぱり塩味も最高だぁ」
「わんわん」
恍惚の表情を浮かべるしぃちゃんとケイ。
「⋯⋯うるさいなぁもう⋯外でやれよ」
ため息をつかれるしぃちゃんとケイであった。
つづく




