2わん
ザッ
「くそっ
ここまでか⋯⋯」
ダダダーーー!
森で魔物の群れに襲いかかられ、視界の隅に黄色が見えた。
――なんか、おいしそう
死に間際になると食べたい物が浮かぶのかな
ダダダーーー!
「うぉーーーーーぅ!!わおぅおぅーおぅー!」
ガブッ
「ッ?!!」
なんだあれ?!
新手の魔物?!
黄色くて細長い果物?に手足が生えた何かが魔物の群れに噛み付いて、吠えながら追い回している!!
「ゔぅぅぅーーーぅ!」
追い回された魔物たちも、その醜さに恐れおののいて逃げだした。
「わおぉーー!!」
勝ち誇ったようにそれは雄叫びをあげた。
恐ろしく黄色い魔物がこちらに向かってくる。
あぁ、次はこっちか。なんて今日はツイてないんだよ――
――そう思ったときだった。
「しぃちゃん、やっつけた!
もう大丈夫だよ!」
「??!!!」
黄色い魔物がしゃべった?!
いや⋯⋯よく見たら変な服を着た人間?
いやいやいや⋯⋯騙されるな騙されるな
こんな怪しい服を着た人間見たことない
最近は高位の魔物は人語を話すと聞くし、もしかしたら、こいつも⋯⋯
ベローーーン
「⋯⋯うわっわっっ舐めたっ?!
なんだおまえ?!!」
「うん?」
黄色い魔物が首をかしげた。
なんか可愛い⋯⋯
いやいやいやいや、騙されないぞ!
唾液に毒がある魔物かもしれない
とにかく距離をとらねば⋯⋯
ズルズルズル
「いたい?
しぃちゃんもっとペロペロしようか?」
「っ?!やめろ!
こっちにこないで!」
「こわいの?怖くないよ!
しぃちゃんは、じゅうちんのにんじん!」
⋯⋯重鎮のにんじんとは??
「⋯⋯一体どこから」
「あ、まちがえた!
じゅうじんのにんげん!」
「獣人なのか??」
「うん!」
黄色い獣人?は腰に手をあてて、なんだか誇らしそうだ。
「その黄色いのはなに⋯⋯?
そんな獣人見たことない」
「むぅー!
おねえちゃんが可愛いって言ってくれた服なのに」
黄色いとんがりを剥くと、白い耳が見えた。
たしかに犬か狼の獣人のようだ。
「なんでそんな服を着てるの⋯⋯
魔物かと思ったよ?!」
「だって、頭の中の声さんが服を着てって」
「いやいや、着てなかったの??!!」
「うん!
前は毛がもふもふだったから」
いくら獣の特徴を持つ獣人とはいえ、裸族?
ヤバい奴すぎる⋯⋯
こういう輩には極力関わりたくない⋯⋯
でも、結果的には助けてもらったわけだし⋯⋯
足をひねって村に帰るには誰かの助けが必要だし⋯⋯
また魔物に襲われたら、今度こそ⋯⋯
「⋯⋯足をひねっちゃって、村まで支えてくれない?
助けてもらった礼もしたいし」
「わかった!しぃちゃん助ける!」
「こっちはチーターの獣人でエル。あなたは?」
「しぃちゃんはしぃちゃん!」
「シィ?」
「しぃちゃん!」
名前まで変な奴だな⋯⋯
でも、なかなか強そうだし
無事に帰るためには背に腹は代えられない⋯⋯
ザクッザクッ
「シィはどこから来たの?」
「あっちだよ!」
「⋯⋯あっち?森の向こう側の村から?」
「ううん、おねえちゃんと別の世界のおうちにいたんだけど死んじゃって、ここに来た!」
「別の世界のおうち?おねえちゃん?」
「うん!」
うーん、にわかには信じがたい⋯⋯
でも、昔現れた聖女や勇者は異世界からきたと聞いたことあるけども⋯⋯
ジーーー
「ん?お腹すいた?
しぃちゃんジャーキー出せるよ!」
いやいやいやいやいやいや
ないないないないない
黄色いとがった変な服で元裸族だけど、顔は可愛い獣人の少女。
エルはそんなヤバい変人が、勇者や聖女なわけないよねー⋯⋯
と思いながら、帰路につくのでした。
つづく




