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秘境を旅する《プロトポロス》  作者: 海月結城


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2/5

情報屋

 あの変な男に情報を売ったであろう、私の親友であり情報屋「カメーリア」のオーナーの元に向かった。


 カメーリアは王都のメイン通りから細道に入り、その奥の奥の裏路地に存在している。入口は隠蔽の魔術が施されていて、その場所を知っている人しか入る事は出来ない。

 プロトポロスは、カメーリアの入口まで一切の迷いもなく、魔術が掛けられてい場所まで辿り着いた。


「おーい! 私が来たぞー!! リスー!」


 プロトポロスが大きな声でその壁に話しかけると、にゅっと手が出てきて、襟を掴んだかと思うとグッと引っ張って中に入れられた。


「このバカ! ここが何処か分かってる!? 情報屋カメーリアの本部! 世界でも数人しか知らない秘匿の場所なの! なんでそんなに大きな声を出すかなぁ!! ポロのバカ!! バーカバーカ! バカバカバカ!!」

「あはは、まぁいいでしょ。どうせ、遮音の魔術を張ってるんでしょ」

「いや、まぁ、そうだけど……はぁ、ほら、中に入りな」

「はーい。あ、そうだ、久しぶりだね! ピエロフォリス」

「えぇ、久しぶりね」


 壁の中は四方を高い壁に囲われたちょっとした広場みたいになっている。その中央に小さな家、すぐ傍に一本の木、角の方に小さな池がある。


「いつ見ても、綺麗に整えられてる。この秘密基地感、最高だよ!!」

「どうも。……ま、この空間を見れるのはポロ位だけどね」


 家の中に入ると2人がけの机と椅子の上に紅茶が用意されていた。

 奥の椅子にリスが座り、手前にポロが座る。同じタイミングで紅茶を口に運ぶ。


「この紅茶うっま! え、これ何処の!?」

「ね、これ美味いでしょ。これは北西部のティーガーで作られた紅茶よ。名前はファスト。もし、そっちに行く用事があれば現地で飲んでみて、これとはまた違う味わいだから」

「なるほどね〜。今度寄った時に飲んでみるよ」


 その紅茶をお互い味わい、一息つくとリスが口を開いた。


「それで、何か用があるんだろう?」


 ポロがリスの居る情報屋の本拠地に来る理由が『ただ紅茶を飲みに来た』『リスに会いに来た』なわけ無い。


「……ねぇ、いくらで売った?」


 それは、リスが関わっていると確信しているから出る言葉。そして、リスもそれが理由でここに来ていることを承知していた。


「何を? とは言わん。金貨340枚だ」


 その金額は、ひとつの情報を売買する時に使うには有り得ない程高い金額だった。

 しかし、その金額を聞いたポロは溜息をついて、やれやれと首を横に振った。


「えぇ……私の情報そんなに安い? 金貨1000枚でも安いと思うんだけどな」


 ポロは自分が如何に特別かを理解している。だからこそ、金貨340枚という平均的な男爵家の資産の3分の2の金額でも安いと言い退ける。


「何を言っている。売ったのはお前の情報じゃない。『暗黒大陸を調査できるかもしれない奴がいる』って情報だ。そこから、お前にたどり着いたやつが居るのなら、それはそいつらの腕が良かったってだけだ」

「ふ〜ん」


 となると、あの男。結構なやり手だね。その情報を買えるだけでも凄いし、その情報だけで私を見つけた胆力は相当なものだ。

 けど、あいつの口車に乗るのは嫌だね。私は1人が好きだから。それに、あそこに行くのに誰かを連れて行くなんて無謀にも程がある。


「私もそろそろ動き出しますか〜。リス、私は行くけど、そうだね……私が向かったことは金貨100枚で売っていいよ」

「はいはい。分かったから、用が済んだならさっさと帰りな。やる事があるんだ」

「そうだね。じゃ、またねー!」


 残っている紅茶を一気に飲み、ポロは席を立った。その瞬間、景色は変わりカメーリアに向かう為に入った裏道に立っていた。


「いや〜、何回味わってもこれ、魔術なのか魔法なのか、全く区別が付かないんだよな〜。流石は私が認めた親友!! よし、それじゃ、向かいますか〜」


 ポロが暗黒大陸に向けて準備を開始しようと歩き始めた時、ポロの名前を呼ぶ声に足を止めた。


「プロトポロス。やっぱりここから出てくると思ったよ」


 声を掛けてきたのは、情報屋に向かう前に話をした男だった。


「君は……」

「そうだ、自己紹介ができていなかった。私は、グリゴーラ。4人組のパーティーのリーダーをしている。武器はこのクナイだ」


 そう言って、グリゴーラと名乗った男は腰に手を回してクナイを引き抜いた。


「これまた、珍しい武器を使っているね」

「まぁね、こう見えても斥候だからね。身軽な武器の方がいいんだ」

「それで、どうして私がここから出てくるって知っていたんだ?」


 そう。まず引っかかるのはそこだ。リスのこの魔法? は、確かに出口は何個もあるが場所は常に入れ替わり出てくる場所もランダムだ。それを、分かっていたかのように私を待ち構えていた。

 この男本当に侮れない。


「うーん、それは企業秘密ってところだね」

「あっそ。じゃ、自己紹介も終わったことだし。私はもう行くね」


 ポロがグリゴーラとの会話を切り上げて横を通り過ぎようとすると腕を掴まれた。


「行くって何処に? やっぱり暗黒大陸に行くつもりか?」

「だったら何ですか? あなた達が行くのは勝手ですけど、私、足手まといは要らないので」


 ポロはそう言ってグリゴーラの腕を振り払い足早にその場を後にした。


 その場に残されたグリゴーラは溜息を着いた。


「リーダー、フラれました? もしかして、ふられちゃいました?」


 そう言ってグリゴーラを揶揄うのは、なんの音も無く現れた17歳くらいの少女だった。

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