プロローグ
王都『ベーグ』
そこは大陸中央に位置していると思われる、大陸の西側を統治している国王が住まう都市である。
東側は巨大な山脈が聳え、その先を彼らは暗黒大陸と呼び、100年以上その先に足を踏み入れることは叶っていない。あるのは少しの口伝と100年以上前の資料だけ。
その口伝と資料によると東側には西側の10倍以上の大陸が広がっていて、見たことのない植物や資源が眠っている。それらを持ち帰った時、この大陸は一気に50年は進むと言われている。
どうにかして、それらを持ち帰ってきて欲しい。が、東側に行くために通らなければいけない山脈には常に吹雪が舞い、魔物という人類が戦うにはまだ少し早い天敵が跋扈している。
そんな時、国王の耳にとある噂が飛び込んで来た。
「暗黒大陸を調査できるかもしれない女がいる」
と。
国王は直ぐに彼女と連絡を取ろうと準備した。
もし、その噂が本当で暗黒大陸から有益な情報を獲得することが出来れば、民たちの生活がより良くなる。
それが何よりも嬉しい。
しかし、どうやら彼女は何処かに定住している訳では無いらしい。
旅人として過ごしているということで、連絡の手段が偶々寄った町で手紙を受けるといった方法しかない。
「なぁ、その噂って何処から流れてきたんだ? 探し始めて1ヶ月は経つぞ、そろそろ彼らの情報も集まってきただろう?」
「そうですね。今から話を聞いてきます」
その部屋には国王と参謀総長、騎士団長が話をしていた。その中で、参謀総長が部屋を出てどこかに向かった。
さてさて、そんなお偉いさん方が探している人物は何処にいるのか、彼女は今王都で食べ歩きをしていた。
「うっひゃー! なにこれ美味〜!!」
彼女が手に持っているのは全長50cmの鶏の足だった。
炭で焼かれ茶褐色に染まった肉は自身の油でギラギラと光り輝いている。それを一口、かぶりつく。
口の中いっぱいに広がる肉汁が、体を内側から喜ばしてくれる。
堪らず、二口目、三口目とかぶりつく。
周りでそれを見ていた人達は、彼女の美味そうに食べる姿に魅了され、そのお店に長蛇の列が出来上がっていた。
当の本人は、そんなこと露知らず今も美味しそうにそれを食べていた。
そんな時だった。彼女の前に1人の男が道を塞ぐように前に立った。
「ん? 何か用ですか?」
「君だろ? 最近とある界隈の人たちが話題に挙げている奴って」
「えーっと、食事中なのでさよなら」
手に持っていた鶏の足に噛り付きながら男の横を通り過ぎようとすると「待ってくれ!」と言いながら手を掴まれた。
「今、否定しなかっただろ! ってことは、何の話題に君の名前が挙がっているのか理解しているってことだろ!」
「……」
「頼む! 少し話を聞いてくれないか、プロトポロス」
「……分かりました。それじゃ、そこに入りますか」
残っていた鶏の足を全て胃の中に収めてから近くにあった飲食店に入店した。
「いらっしゃいませ! 2人で良いですか?」
「はい」
「では、こちらへどうぞ」
店員さんに案内された席はお店の一番奥の角の席だった。
「注文が決まったら呼んでくださいね」
メニューを見ていると、飲み物とケーキがメインかと思ったらちゃんとしたご飯も置いてあるみたいだ。
「ねぇ、ここのお代は話しかけてきた貴方持ちでいいでしょ?」
「そ、それは、もちろんだ。なんでも、好きなモノを頼んでくれ」
「それじゃ……」
メニューを開き中を見る前に店員さんを呼び、注文を始めた。
「これと、これと、後これ……こっちも……後、これもお願いします」
「な、なぁ、ちょっと……頼みすぎじゃないか?」
「……あげませんよ。ってか、そっちも早く何か頼んでください」
「あ、そ、そうだね。じゃあ、これをください」
「はい。ちょっと待っててくださいね」
注文を終え、目の前の男に目をやる。
「それで、話ってのはなに? 私、この後……(特にやることは……無いな)やることあって忙しいんですけど」
「すまない。それじゃ、早速本題に移らせてもらう。俺たちと一緒に暗黒大陸の調査に行かないか?」
「嫌です」
「何故だ?」
「そんなの簡単ですよ。貴方と行ったところでその場所に最初に足を踏み入れるのが私じゃなくなるじゃないですか。私は、一番にその場所に立ちたいんですよ。私の隣には誰にも立ってほしくないんですよ」
私がそう言うと、相手は少し黙った。
丁度、そのタイミングで飲み物と食事が提供された。
目の前に出された料理を食べると、適当に入ったお店だが美味い。流石、王都で出店しているお店だ。接客もさることながら料理もちゃんと美味い。
「そ、そうか。プロトポロス、君の考えは分かった。しかし、一人で暗黒大陸を調査するなど、死神の鎌を首元に突き付けられながら生活しているようなものだぞ。俺たちと一緒に行けば死神の鎌は首元からは離すことが出来る! 一緒に行ってはくれないか!!」
「無理ですよ。貴方の話はつまらない。面白味の欠片もない。それじゃ、ご飯も頂きましたので私はこれで……」
「ま、待ってくれ!」
料理も食べ終え、店員さんに美味しい料理の感謝を伝えて店を出た。
「はぁ、私の情報が漏れたのって絶対にあいつの所為だ!」
私は、親友が営んでいる情報屋に向かった。
王城では、国王が所有している諜報部隊を呼びプロトポロスの情報が国王の耳に到達した。
「そうか、名をプロトポロス、性別は女性で15歳だと。その若さで暗黒大陸に行けるというのか……。何か、彼女特有の性質かなんなのか……。一度話をしたいな。彼女を見つけ出し、ここに招待してくれ。ここまで情報が出てこないんだ。くれぐれも隠密に頼むぞ」
「かしこまりました」
「プロトポロス、人類の希望に成り得るか……」
その大陸に住まう人類が暗黒大陸のすべてを知ることは今後一生無いだろう。
それでも、彼女は進む。
何のために? 自分の好奇心を満たすために。




