24話 転生したらスライム以下だった件
時が流れるのは早いですね。
人それぞれだとは思いますが。
……24話です。どうぞ。
王都に……城に着いた俺と紬を待っていたのは戦場だった。
仮面を着けた男率いるキマイラの集団が城を攻撃してる。
「フハハ、もっと、もっとだ。壊してしまえ。」
仮面男がめっちゃ棒読みでなんか言ってる。……ゆかりじゃないよな? 声違うけど喋り方が似てる。感情がない感じが。
で、これどうすりゃいいんだ。
「2人とも!」
と凜が駆け寄ってきた。
結構ボロボロだ。
「何が起きてるんだよ!」
「凜は大丈夫!?」
「私はなんとかね。でも……」
凜が城を見上げる。
「城がどうしたの?」
「皆城に避難したんだけど、その城が……」
「とても大丈夫そうには見えないな。」
王城は半分くらい陥落してるように見える。そして城の警備員らしき兵隊が大量に地面に突っ伏している。
「回復させてあげたいのだけど……アレから逃げるのがやっとで……」
よく見たら血が付いてる。それらしい傷口は見当たらないが。
「紬、どうす……「悠斗。」
紬の声が俺の声を遮る。
「あいつらの気をそらすことできる?」
「あいつらって、あの集団だよな……」
前方上空に羽を生やしたキマイラが数十匹群がってる。多分アレだ。
「何する気だ?」
「凜と一緒にあの人達を回復しながら城まで行く。」
「無茶だろ。」
「やるしかないじゃん。このまま人が死にかけてるのを見過ごすわけにいかない!」
声がマジだ
「できる当ては?」
「ちょっと無理したらキマイラ数体は対処できると思う。回復は凜任せだけど大丈夫と思う。」
「一応まだ回復魔法分の魔力は残ってるわ。」
凜もやる気だ。
「それに、回復した兵士達も多少戦力になると思う。」
「で、初陣のあいつらを俺が誘き寄せろと。」
紬が頷く。
……絶対に無理だと思うが、こう、スイッチが入った紬に刃向かう面倒臭さは知っている。
3人ともそうだから。今まで振り回し振り回されでやってきたから。
……懐かしいな。まさかまたこんな感じになるなんてな。
「乗った。けど失敗しても文句は言うなよ?」
「任せて。逆MVPには漏れなくペナルティ付きだから。」
「これで負けたら悠斗3連敗じゃない?」
「なっ!? 前のアレ、凜負けてただろ!」
「そういえば、凜が失踪しちゃったから有耶無耶になってたね。」
「けど紬が悠斗が負けを自分で認めたって言ってなかった?」
「それはお前が消えたからだろ!」
「「「……」」」
「「「はははっww」」」
3人同時に笑う。
やっぱこれだよ。この3人でこれだよ。
「キェェェェ!」
「おっと、あいつらは折角の感動の再開を遮るみたいだな。」
「ま、あとはこの騒動が終わってから存分に話そうよ。」
「そうね。悠斗、頑張って生き残ってね。」
「俺が失敗する前提かよ!」
冗談抜きで10回は死にそうだけど……。
まあいいや。
「いくぜ!」
万能ツールの折り畳み傘で飛び上がり、キマイラの集団に撃ち込む。
「[スターダストレイン]!」
舐めてた。
実際、なんとかなるだろでやったら数十、数百匹にも及ぶ大群がこっちきた。
作戦的には一応成功なのだろうが……
油断が命取りになるって本当なんだな。実際命取られてるし。
[覚悟は決まりましたか?]
「ちょっと決意薄らいだ。」
[けど、このままじゃヘイトが紬さん達に向きますよ]
それは不味い。あの数明らかに無理だろ。
……はぁ、しゃあない。
「またお世話なるけどその時は頼むぜ!」
[お任せください]
現在、だだっ広い草原を全力で走って逃げてます。
スターダストレインを後ろにばらまきながらだから数匹は減ったと思うけど、それでもなお多い。
実際にあれから6回死んでるし。魔法陣のサポートがなかったら倍近くは死んでると思う。そこに至っては本当にありがたい。
「キェェェェ!!」
「[スターダストレイン]!」
そして実質できることがこの、逃げながらスターダストレインしかない。
傘系はいかにもの近距離攻撃だし、シールドみたいに使っても追い付かれて全方位から攻撃喰らう。
一度、しゃがんで傘の中に入って防げないか試したけど、あまりの猛攻に傘が耐えられなくてすぐに2回攻撃受けて死んだ。
お陰で傘が使い物にならない。一応昨日みたいなケースを恐れて万能ツールを持ったままなので落ち着くまで傘は直らない。
で、折り畳み傘に至っては空中に浮くだけだし……風は起こせるけど。
空中戦は羽が生えてるむこうの方が有利ってことは自明だし。
フリーズタイムは一体しか止められないことは検証済みだ。
懐中電灯+13による目潰しは……前線のやつらには効くっぽいけどその後ろのやつらに追い付かれて死ぬ。これも検証済み。
よって俺がなんとかできるのはスターダストレインだけって訳。あと懐中電灯+13。
ただ、このスターダストレインにも弱点があって
「あーもう! 当たらねえ!」
そう。走ってるから必然的に手が動く訳で、そのせいで照準が全く合わない訳。
多少はホーミングしてくれるらしいけど、それでも当たらない。
……まあ、魔力が無限になってるらしいから贅沢言えないのは分かってる。
ただ、この量は無理。誰か変わってほしい。
っつってもなぁ、実際にこんなことやれといったあいつらから何の報告も来てないし。
『そっちの調子どう!?』
なんて送ったはずなのに。
ってかそんな事考えてたら追い付かれてる!
「とりま止まれ! [フリーズタイム]!」
その抵抗虚しく攻撃を受けましたとさ。
[頭の邪念をどうにかしたら勝てるのでは?]
「んなことは俺が分かってる。」
冥界っす。まぁ即で戻るんですけど。
「あ、一個質問。俺がやったらいいのにやってないことってある?」
[創造を使ってないですね]
創造ね。……確かに眼中になかった。
「でも実用性があんまりなんだよな。」
[そこを考えるのは貴方の役目です]
「そうっすよね。」
戻ってから数分、創造で壁を作りながらスターダストレインで健闘しているのだが
「埒があかねえ!」
母数が母数なので全くもって減らない。
さっきから何体のキマイラを気絶させたんだろうか……
けど、さっきまでより善戦しているのは確かだ。
この調子で
「キェェェェ!」
「うわっと!」
キマイラの一人が創造で作った壁をぶち破って突進してきた。
避けたはいいけど、その隙に既に10体くらい出てきてる。
「キェェェェ!」
そして凄い猛攻を繰り出してくる。
魔法陣に防いでもら……あ、飛んでいった。
傘もないしここは退却……
「やべっ、足がっ」
はい。転けました。逆にここまで転けなかったのがすごい。
「キェェェェ!」
そうこうしている間に囲まれた。
どんだけいるんだよこいつら。
……しゃあねえ。一回死んで脱出
「[ルナティックフレイムバースト]!!」
その瞬間、キマイラ達は消し炭となった。
のはいいけど
「あっつ!」
俺もモロで喰らった。
冗談抜きで全身が焼けるように痛い。
くそ、一発喰らっとけば……それもそれで痛いけど。
「ハルト!? なんでそこに!」
秋葉が駆け寄ってきた。
「こっちの台詞なんだよな……」
地面に仰向けになったまま呟く。実際問題体が動かないからしょうがない。
「俺はキマイラ達を引き付けてた。」
「無茶するね……。相当な数いたよ?」
[その相当な数を一瞬で消し炭にする秋葉さんもどうかと]
「そうね。危うくこっちも焼け死にそうだったわ。」
「あはは。ごめんごめん。」
翼を生やしたシアンとゆかりが舞い降りてきた。
って、
「え? あの数全部やっつけたの?」
「みたいね。実際どうなのゆかり?」
[379体、一匹残らず消し炭です]
「あはは、けど、無理した、から……ちょっと……休ま……せて。」
秋葉が力なく倒れた。俺と対になるように。
「そりやそうなるよね。」
[ところでマスター、何故ここに?]
「ああ、ちょっと色々あって……
で、俺がおとりになって戦ってたら急に辺り一面が燃えて、今に至るんよ。」
説明完了。
「マスターのキルログが短時間で増えていたのはそういうことだったのね。」
「そういうこと。ってか把握してなかったのか?」
「私からあそこのパネルは同期性がないわ。ゆかりからオズみたいにね。」
「へー。」
正直あんまよくわからないけど。
と、
『紬:悠斗、こっちは上手くいったよ!』
急にメッセージが届いた。
『大丈夫だったか?』
『紬:うん! ……まあ、私も凜もバテて横になってるけど。』
『なら大丈夫だな。』
『凜:そっちは? 上手くいった?』
『まぁ……秋葉達と合流できたからなんとかなったわ。』
計8回死んだけど。
『凜:ならいいのだけど。大変だったでしょ?』
『そりゃな。数百体相手してたっぽいからな。』
嘘はついてない。実際そうだし。
『紬:……お疲れ様。』
『ああ。』
少し顔がにやける。そういやこんな会話も本当に久しぶりだな。
まあ半年ぶりって言ったらそうなんだけど。体感結構長いんだよな。
[なににやけてるのですか?]
「マスターも男性ですから仕方ないでしょうが、こういう空気では謹んでください。」
「まてまてシアン。何を勘違いしてる?」
「別に私は他人の趣味に関与するほどの立場ではないのは承知です。強いて言えば貴方は私のマスターなのでフェティシズムをとやかく言う立場でもないのも承知です。」
「まてまて。大いなる誤解をしている。」
シアンの言ってることが正しいとするとただのド変態じゃないか。
「普通に紬達とメッセージのやり取りしてたんよ。」
「ニヤニヤした訳は?」
「ほら、長らく連絡つかなかった友達と久々に連絡とれたって感じ。なんか嬉しくない?」
[私のメモリにそんなシチュエーションは搭載されてません]
「まず友達と呼べる人が少なく、いたとしても数百年前なので生きてないと。」
「そこについては全力で謝罪する! ごめん!」
こっちまで悲しくなってくるわ!
「私は……わからなくは……ないけど……」
力ない秋葉も答える。
「あ、おはよ。秋葉。」
「まあ……最初から……聞こえてるけど……おはよ……」
めっちゃ消耗してるやん。いつもの元気ないし。
首を曲げて秋葉の方を見るとマフラーの炎が消えそうになってるのが見える。
[ところで、どのようなメッセージなのですか?]
「作戦上手くいったよー的な。」
[それににやける要素ありますか?]
「大いにあるだろ! ああ、上手くいったんだなーって!」
[そういうものですか?]
「そういうものだよ!」
なんか俺の扱い酷くないですか……?
「じゃ、私達は城に行って加勢してくるわ。」
[2人はどうするのですか?]
「休んだら追い付く。」
「多分大丈夫だよ。」
「了解です。じゃ、行きましょ。ゆかり。」
[はい]
ゆかりとシアンが翼を生やして飛び立った。
……便利だろうな。あの翼。
で、だ。今、焼け野原に俺と秋葉がポツンと寝転んでる状況なのだ。
……なんか気まずい。
と、
「ねえハルト。」
秋葉が話しかけてきた。
「どした?」
「私ね……飛べないんだ。」
「は?」
秋葉が続ける。
「この世界の人はね、皆は何かしらの方法で飛んでるの。シアンやゆかりちゃんみたいな大きな羽を生やす人もいれば、目に見えない羽を使ってる人もいる。」
「大将とかも?」
「大将は普通に飛ぶ力を持ってるわ。けど私は飛べない。…これも虐められた原因の一つなんだ。」
「飛べないくらいで?」
「そう。」
秋葉が更に続ける。
「足が一本ないのと一緒な感じなんだ。それほど当たり前なこと。」
「当たり前……ね。」
「そう。当たり前。」
秋葉が起き上がる。そして体育座りになって
「私、なんで飛べないんだろうね。」
と吐き出した。
俺もなんとかして起き上がり、秋葉と背中合わせになるように体育座りをする。
「飛べなくてもいいんじゃね?」
と、語りかける。
「当たり前って誰が決めたんだろうな。」
続けて問いかける。
「え?」
「いやさ、俺、この世界来てから何回か言われたんだよな。『それがこの世界の常識だ』って。」
シアンに大将、魔王サマにも言われたっけな。最初の女神にもか。
「余所者の俺からしたら結構理不尽なことでもさ、この世界だと……皆の間だと当たり前なんだよ。」
死んだらこっちの世界で生きる、こっちの世界に慣れないといけない、弱い者は生きれない。
「常識って、俺一人が知らなかったらその時点で破綻してると思うんだよな。」
「それは……結構な暴論じゃない?」
「まあな。けどさ、そうじゃね?」
俺は更に続ける。
「常識ってさ、常に知識としてあるって感じの言葉で形成されてるじゃん。その知識が蔓延してる前提で。」
「……まあ、そうだね。」
「けど俺にその知識がなかったら俺に蔓延してない時点でもう常識じゃないのよ。つまりそんな常識おかしい。ってな。」
「屁理屈のような気が……。」
「そうだな。でも、俺ってさ、何かを考える上ではまず一に自分のことを考える……エゴイストみたいなもんだし。」
「自分で言うんだ……。」
「自覚してるからな。治そうとは思わないけど。」
「それは……どうなのかな……?」
うん。言わんとしてることは分かってる。
皆に言われてたからな。
「俺の言ってることは俺の主観によるもの。俺以外に理解してもらえないことは分かってる。それでも……」
「それでも?」
「……なんでもない。」
「……何それ?」
「いや、このタイミングで言うことじゃないなーって。」
信じてほしいってな。実際、そんなこと言われても秋葉困りそうだし。
「凄い今更感。」
確かに。ここで途切れたら逆に変だな。
「まぁ、いいや。とにかく、気にするなってこと。」
「急な話題転換。」
「元はと言えばその話だったろ?」
「そうだっけ?」
本人忘れてるんじゃねーよ。
「別に常識とか当たり前とかに縛られるのは一つの考えだけど、俺のような考えもあるってことよ。」
「……そっか。」
……よくよく考えたら文脈どこかでおかしくなかったか?
まあ、秋葉が納得してるならいいけど。
「……でも私は……飛んでみたい。」
納得してませんでした。
「一度……地面に縛られずに、大空に足を着けたい。宙の景色を見てみたい。」
「……そっか。」
いいな。
「その時は俺も飛びたいな。」
「そうね。一緒に飛ぼうね。」
さっきの話は一段落し、再度沈黙が場を制圧していたのだが
「……一回、飛んでみるか?」
「へ?」
俺の言葉がそれを上書きした。
「いやさ、俺、垂直上昇なら傘を使えばできるからさ。」
立ち上がって右手でツールを手に取る。
「お試しで見てみようぜ。宙の景色とやらを。」
左手を秋葉に差しのべる。
「……ええ!」
秋葉はその手をしっかり握って立ち上がった。
「よしっ!」
ツールを握りしめると先が折り畳み傘となった。
それを空に掲げる。
「いくぜ! [出力最大]!」
風が巻き起こり俺達の体が宙に舞う。
「うわぁっ…………」
風に乗って勢いよく昇っていく。
……が、
[error:出力限界]
というメッセージが急に頭に伝わる。
と同時に今まで乗っていた風がピタリと止まる。
「ちょっ! 嘘!」
そして凄い勢いで下降していく。
「ぎゃぁぁぁ!」「きゃぁぁぁ!」
今日はよく落ちるな。3回目じゃないか……?
[格好つけた代償]
「……仰るとおりです。」
冥界。少し頭が冷えてきた。
[無理なさるからツール全部壊れたじゃないですか……]
……確かに傘も折り畳み傘も壊れた。
「それは本当に自業自得です。俺が悪かったです。」
[わかったならいいですが]
「……というより、なんで俺死んですか? 落下じゃダメージ喰らわないはずじゃ?」
[秋葉さんの下敷きになって死にましたよ]
「……位置的におかしくないですか?」
上空では俺が上で秋葉が下で……少し前に同じような現象があったけど秋葉が先に落ちるはず。
[……なんででしょうね?]
「こっちが聞きたい。」
ってかなんで知らないんだ……?
[……で、本来の目的は覚えてますか?]
「本来の目的……」
……あっ。
[王城に向かわないとマズイのでは?]
「そうだった!」
慌てて立ち上がる。
「……けど、俺がいなくてもなんとかなるくないか?」
[……とにかく行ってください]
「はーい。」
[あ、ツール置いていってください。職人に直してもらいますから]
「はーい。……ってあれ?」
ツールが見当たらない。
「落としたかな?」
[そんなはずはないと思いますが……]
少し疑問を抱えながら戻ってきた。
「っと。ただいま。」
「おかえりー。あ、これ。」
秋葉がツールを渡してきた。
「ありがと。どこにあったん?」
「落下の最中にキャッチしちゃった。それ凄いね。持ったら浮いちゃうし。」
あー、謎が解けた。ツールを取った秋葉がツールで少し浮いた分俺が下になったんだ。
「気分晴れたか?」
「うん。」
「そりゃ良かった。」
「ごめんね。マフラーの火が消えかけのときっていつもネガティブになっちゃうから……。」
今、秋葉のマフラーは結構燃え盛ってる。テンションと連動しているんか。
「こっちこそな。なんか少し陰気になっていた。」
「それも多分私のせいなんだけど……」
「ん?」
「いや、なんでもない。ありがとね。宙を見せてくれて。」
「俺としてはなんか釈然としないんだけどな。」
死んでるし。
「あはは。けど、次は本物の翼で飛んでみたいな。」
「こりゃまた贅沢だな。」
「理想を口にして忘れないようにしないとね。」
「で、どうしようか。」
「どうするも、城へ向かうんじゃないのか?」
「あ、そうだったね。」
2人して目的忘れてたじゃねーか。一回冥界行って良かった……。
「それじゃあ行こ
「「「ぶぅぉぉぉぉ!」」」
前方から猛突進してくる何かが。
あいつだ。魔王サマに連れられて森にいたときに出てきたやつ。ブノスとかいうやつだっけ? が群れを成して接近してくる。
コンディションは回復したと言えど……
「ハルト! 戦える?」
「メインウェポンぶっ壊れてるからキツイ! 秋葉は!?」
「ぶっぱなせるけどできれば避けたい!」
ってことは……
「逃げよう!」
「ああ!」
本日2度目の逃走劇。体感は9回目だけど。
「[スターダストレイン]!」
「[フレイムカーフ]!」
前方から星が飛んできても、地面が燃え盛っていても怯むことなく突進してくる。厄介この上ない。
そして早い。さっきのキマイラよりも少しだけ早い。
そのせいで
「くそっ! また囲まれた!」
すぐに囲まれる。
今、大群が俺達の周りをぐるぐる回ってる。
マジで凄い統率。一体でも動きが遅れたら次々ぶつかって崩壊しそうなものなのに……ん?
「よし秋葉! 突破する!」
「どうやって!?」
「見てろ! [フリーズタイム]!」
前方に放った鎖はブノスの大群の1匹を捕らえる。
すると周りを回っていた回転体は一斉に止まった。
「これが激突の連鎖よ!」
「なにそれ?」
「なんでもない。それより抜けるぞ!」
「うん!」
なんとか抜けだし、少し進んだところで再度俺達は休憩していた。
何度か二人とも無事で済んだ。俺一回喰らったけど。
「いや……、なんとか……なったな……」
「ほんと……凄いね……ハルト……」
「ん……俺……がどうした……?」
「いや……さっきの……アレ……ね……」
「そうでも……ねえよ……」
2人とも息絶え絶えで会話のペースがとてつもなく遅い。
そこに
「あれ? 兄ちゃんに嬢ちゃんじゃねえか。」
「「大……将……?」」
大将が現れた。
……荒野に似合わないな。大将のエプロンと白鉢巻。
「……」ピョンピョン
そしてリムも。
「なんで……ここに……?」
「それはこっちのセリフだ。しかも2人とも息絶え絶えじゃねえか。」
「いや……ね……色々……あって……」
「それにここは元々野原のはずだが……何があったんだ?」
「それは……」
説明終了。
「……えらい大変な目に逢ったんだな。」
「ほんとに。どうしてこうなったんでしょうね……」
息も回復し、2人で向かい合って座っている。
秋葉は少し前に立ち上がって何かを集めに行った。
「にしても兄ちゃんが来てから色んなことが立て続けに起こってるな。」
「お陰さまで退屈はしませんけどね……。」
それが要因で死ぬのは勘弁だけどな。
「そういや兄ちゃん、目は大丈夫か?」
「目……ですか?」
「いや、昨日また発光してたろ?」
「ああ。特に何も無いですよ。……っと、おかえり。」
「ただいま。何も収穫なかったけどね。」
秋葉が手ぶらで帰って来た。
「何しにいってたんだ?」
「いや、疲れたし、大将もいることだし、何か作ろうかなって思ってね。」
「ああ、嬢ちゃんの錬金術か?」
「そうそう。それで材料を探してたんだけど、何もなかった。まあ、私が燃やしたのが原因だろうけどね。」
平然とヤバイこと言ってる。
「ということで、何か不要品持ってない? それで調理するからさ。」
「うーん、条件にそぐう物はないな。兄ちゃん、何かあるか?」
「作れないことはないけど……ほら。」
創造で手頃なサイズの立方体を数個作り、秋葉に投げ渡す。
「よし、作ってみる。」
そう言うと秋葉は鍋を取り出して煮込みだした。
その鍋どこから取り出したんだ……。
「嬢ちゃんの料理は何度見ても不思議だな。」
「考えたら負けな気がします。」
「そういうもんか。」
ボフッという音を出して鍋が爆発した。
大将と俺が秋葉の後ろから鍋を覗きこむと……鍋の中には三色団子が6本あった。
「「謎だね。」」「謎だね。」
3人(と1体)で三色団子を食べ歩きしながら王城へ。
「で、大将はどうしてここに?」
「フクシマくんと若葉くんから連絡が来てな。それで王都に向かってたらこの惨状だったってことだ。」
「あれ? 若葉さんってラーメン屋に帰ってなかったの?」
「いや、闇の兄ちゃんに背負われて城にいるって聞いたけどな。」
ってことは魔王サマも城にいるのか。
「更に椎名くんからもSOSが届くもんだからな。相当一大事なんだろうな。」
「琴さんも城に?」
「セレモニーに参加してたんだとさ。」
俺の知り合い総動員じゃねえか。
「……」ピョンピョン
「んー? どうしたリム?」
「……」ピョンピョン
「団子欲しいのか。ほらっ。」
「……」ピョンパクッ
リムが団子を口でジャンピングキャッチした。……口どこにあるんだろうな?
「そういえば大将、ピュイはどうしたんですか?」
「ああ、ギルドで留守番してもらっているよ。」
「あの子が?」
「首にプラカードをぶら下げてもらってるんだ。あの子のホバリングの訓練にもなるかって思ってな。」
……プラカードぶら下げたピュイがピューピュー鳴きながらラーメン屋の前をバタバタ飛んでいるのがめっちゃ簡単に想像できる。
「それはそうと、ここいらへんにら魔物がうじゃうじゃしてるはずなのにな。」
「「ん?」」
「椎名くんから聞いてな。飛行型キマイラと固定砲台型キマイラと原住のブノスが大群でウロウロしてるから気を付けろって。」
「……ええと、飛行するキマイラは秋葉が一掃したろ?」
「ええ。で、ブノスの群れはハルトと一緒に撒いて……」
「固定砲台キマイラは2人とも見てないのか?」
「ええ。」「ああ。」
……やな予感が。
「城を攻撃しているのはその魔物達とは別なの?」
「らしいな。椎名くんから送られてきた画像があるぞ。」
秋葉と一緒に大将のスマホを見ると、キャタピラがついたライオンみたいな画像が。
その横では仮面をつけた男の画像と飛行キマイラの大群が。
「2枚目の仮面男は?」
『琴:そいつらが城を攻撃しているのよ。』
タイミングよく琴さんからメッセージが。
琴さんの声で読み上げられた。凄いな。
「大将、メッセージ。」
『貴方に向けてよ。吉田悠斗。』
「「!?」」
『琴:音声認識機能を装着してるからね。一応会話は聞こえるのよ。』
「知らなかった……」
「なにその高性能機能。」
『琴:私が作ったからね。』
「そういえばスマホを作ったのは椎名くんだったかな。」
衝撃の事実。
『琴:ところでお三方、そんな呑気に話している状況じゃないと思うけど。』
「というと?」
『琴:こっちから見ると三人がいる座標と丁度同じところに固定砲型台キマイラがいるわ。ドンパチしてなきゃおかしい状況でしょ?』
3人して辺りを見渡す。
「いるか?」「いないです。」「いないわ。」
「……」ピョンピョン!
リムが荒ぶっている。
「どうしたリム?」
「……」ピョン!
リムがスマホを支えてない方の手に飛び乗ってきた次の瞬間……
……見上げた目線の先には俺の顔が。
そしてその上に何か黒いものがあった。
そんな景色が一瞬見えた。
そして次の瞬間……
俺は冥界にいた。
[上からくるぞ! 気を付けろ!]
「分かるかい!」
……成る程ね。上にいたわけね。
[ちなみにあのスライムも一緒に踏み潰されましたが無傷でしたよ]
転生したらスライム以下だった件。
[更に言えばスマホも無傷ですよ]
異世界はスマホ以下の強度と共に。
[……本当に先が思いやられるのですが]
「こっちの台詞じゃわ。大体、今日だけで何回死んでるんよ。」
[今日だけで11回目ですね。通算は42回です]
……ヤバい。命の重みとやらを全く感じなくなったかもしれない。
「ってかそんなに死んでるのか。」
[まだ少ない方だと思いますよ]
「死に多いも少ないもないだろ。って言えないんだよなぁ……。」
[まあいいじゃないですか。命が複数ある特権って考えたら]
「そーゆーのどうかと思う。それに甘えさせてもらってるのは事実だけど。」
修理してもらうためにツールを置いて戻ってきた。
固定砲台はぶっ壊れていた。
「おお兄ちゃん。おかえり。」
「ただいまです。」
「そう話してる場合!? だいぶヤバいんだけど!」
秋葉が騒いでるが……ってうわっ!
四方を十数台の固定砲台に囲まれてる。
しかもビームが何本も飛んできてる。
「何が起きたん!?」
「どんどん降ってきてな。気づいたらこの有り様よ。」
「そう説明してる場合!?」
秋葉がビームをめっちゃ避けてる。
って! こっちにも来てる!
「大将! ハルト! なんとかできないの!」
「俺に聞くなよ! 俺は下手したら一瞬で死ぬんだから!」
「生き返れるでしょ!」
「だとしても死にたくねえよ!」
ってか大将なにしてるんだ……って!
ビーム地帯に飛び込む。
「何してるの!」
「だって! リムが!」
「だからって無計画で飛び込むのは無茶でしょ!」
「大丈
[なにやってるんですか?]
「もう二発かよ。」
冥界。本日12回目か。
[無計画に突っ込んだらそりゃ死にますよ。死にたくないのか死にたいのかどっちですか!]
「だってリムがボコボコにされてたらどうしようもないだろ!」
[……言いにくいですが、あのスライムの子、ダメージ食らってませんよ]
「え?」
[言わば完璧な無駄死にです]
……マジかよ。
[あのビーム地獄を食らっても無傷なあの子もすごいですけどね]
……
[これがホントの『転生したらスライム以下だった件』ですね]
「うるさいな! 人がナーバスになってるときに!」
[音が出てませんからうるさくはないでしょ?]
「その文字列がもううるさいんだよ!」
[本当に煽り耐性のない人ですね]
「くそぅ……」
[あ、ツールはまだ直ってないっぽいのでまた来て下さい]
と見送られた。そう何度も行きたくないよ。どうせ行くけど。
「おう兄ちゃん。おかえり。」
「ただいまです。」
「take2してる場合でもないからね!」
秋葉が騒いでビームを避ける。
一方の大将は……って、
「なんで大将にビーム飛んで来ないんですか?」
「あー、さっき俺がビーム吸ったからかな?」
と、一体の砲台が大将をロックオンする。
「あー、これはヤバいやつかもな。二人とも、俺の後ろに来い。」
「了解です。」
「私それどころ……って、あれ?」
秋葉を狙ってる砲台もビームを出すのをやめた。
そして全ての照準が大将に向く。
「……どういうこと?」
「兄ちゃん、嬢ちゃん、後ろから来るビーム、なんとかできるか?」
「あ、じゃあ俺が創造で壁を」
「いや、私がリフレクトで壁を」
「……なんか負けた。頼むわ秋葉」
「オッケー。[リフレクター]!」
秋葉が壁を張ると砲台の発射口に光が集まり出す。
……ビームを発射するときのチャージって本当に光が集まるんだな。
「……」ブルブル
足下で震えてるリムを抱える。
……大将を信じるしかないか。
「いつ発射されるんだよ!」
あれから5分。緊迫状態が続いてる空気を思わず壊す。
ってか、後ろは秋葉のリフレクターあるし、前は大将なんとかしてくれると思うけど、横ががら空きなのいいのかな……
「[創造]」
一応作っとこ。
と、
瞬間、光が一気に収束し、解き放たれた。
「2人とも耐えろよ! [吸収]!」
大将の声が聞こえた。でも俺はそれどころじゃなかった。
ビームに押された壁と秋葉と大将が真ん中の俺の方に押し出されてくるものだから、俺は身動きが取れなくなっていた。
ってか痛くない分逆に辛い。体がマジで動かない。
「どうにかならないんですか!」
「私ももう限界!」
「くっ、意外と強い……」
「……」ジタバタ
全員ヤバいそうだ。
ってか大将! 大将が押されてたらダメだろ!
バリン!
「「「あっ……」」」
……当然クラフトで作った壁は割れないはずがないわけで、俺の右の壁が音をたてて割れた。
そしたら右の方から極太ビームが来る訳で……
気がついたら、荒野の真ん中でポツンと立っていた。
「っっ!」
思わず右目を押さえこんでうずまる。
急に厨二病を発症したわけではない。発症は元からしてる。
「いてて……2人とも、大丈夫か……?」
「え、ええ。なんとか……」
「……」ピョンピョンピョン
「どうしたの……って! ハルト!」
「兄ちゃん! どうかしたか!」
「……」ピョンピョン
皆が駆け寄ってくるが、それどころじゃないくらい痛い。
「大丈夫か?」
「大将……目が……」
「ちょっと待ってな。[分析]!」
「どうなってるの?」
「わからん。それより、嬢ちゃんはさっきの固定砲台型キマイラを見てきてくれるか?」
「了解!」
「……」ピョンピョン
「ん? ついてきてくれるの?」
「……」ピョンピョン
「……そっか。じゃあ行こうか。」
「……」ピョンピョン
「……さて、兄ちゃんだな。……なんじゃこりゃ?」
「な……何が起きてるんですか?」
「兄ちゃん、一回手を外してくれるか?」
「了解です……」
右手を降ろして右目を開けた瞬間
「うぉっ!」「うわっ!」
辺りが閃光に包まれる。
咄嗟に目を瞑る。
「に、兄ちゃん。一回上向いてくれるか?」
「あ、はい。」
真上を向く。首が
「よし、目を開けてみな。」
「はい。」
目を開ける。光が一直線に天に向かっていった。
「こりゃ重症だな……」
「ヤバいんですか?」
「ヤバイもなにも、そんな目じゃ普通に生活するのにも不便だろ。」
そうだろうな。
「まあ、その状態にメリットがないわけでもないがな、」
「本当ですか!? っ!!!」
「っ!!」
大将の方を向いたのが悪かった。また閃光に包まれた。
再度目を瞑って上を向く。
「できればずっとそのままにしてほしい。」
「……態勢がきついのでちょっと待ってください。」
地面に背を向け寝転ぶ。
「オッケーです。」
「よし。話を戻す…が、何を話してたっけな?」
「この状態のメリットについてです。」
「そうだったな。今の兄ちゃんは凄く強くなってる。」
「というと?」
「星魔法の威力がヤバイらしい。」
「……スターダストレインしかないですけど。」
「一回撃ってみたらどうだ?」
「この態勢じゃ無理です。」
「そうなのか。ま、いいや。」
「もっと凄い強化とかはしてないんですか? 防御力上昇とか?」
「そういうのはないな。けど、星魔法適正が降りきれてる。」
「その星魔法一発で都市を消し去る威力まで?」
「流石にそこまではいかんな。けど、魔法によるが、2,3発で飛竜を倒せるかもな。」
……思ったより地味な威力。
「もっとも、兄ちゃんはそこまで強い魔法を使えないしな……。」
「他に星魔法とかあるんですか?」
「ああ。過去に一人だけ、星魔法を使える人がいてな。」
「へー。」
まあ、使える人が滅多にいないらしいからな。
いない訳じゃないし。
「なんだったかな。スターストームだとかいう技だったかな。」
「どんな技ですか?」
「空から大きなエネルギー弾を落とす技だったな。ぶっちゃけ、強かった。」
「そんなにですか?」
「その人の勇姿は伝記として残ってるくらいだからな。」
「へー。」
相当凄そうな。
「まあ、機会があれば見せてあげるわ。結構レアものだぞ。」
「そういうものはやっぱり入手難しいんですか?」
「いや、世界に1冊しかないぞ。なんたって、俺が書いたからな。」
……どういうことだ?
「ちなみにその人と会うことは?」
「多分無理だな。なんたって、百数十年前だからな。」
……マジでどういうことだ?
結局俺の目は眼帯で覆うことでなんとかすることにした。
「ただいまー。」
探索組が帰って来た。
「おかえり。リムもおかえり。」
「……」ピョンピョン
「で、嬢ちゃん。どうだった?」
「どうもね。跡形すら残ってなかったわ。」
「逃げられたのか?」
「ところがそうでもないのよ。見てこれ。」
秋葉がポケットから何かを取り出した。
「リムが見つけてきたの。大将、これわかる?」
「どれ……? うーむ……」
後ろから覗きこむと、何かの欠片が見えた。
……よく遺跡から発掘されるアレにしか見えない。
「普通に皿の破片じゃ?」
「「皿?」」
「普通にそれっぽくないですか?」
「だとしてもなんのために?」
「ほら、大昔に文明があって、その文明の遺産が残ってたとかそういうパターン。よくあるじゃん。」
「……私はそんな事例聞いたことないけどね。大将はどう思う?」
「兄ちゃんの仮説は多分違うと思うぞ。」
……違いました。
「この欠片に生命反応がするんだ。」
「「生命反応?」」
「分かりやすく言うと、生き物だった痕跡があるんだ。」
「つまり?」
「この欠片はさっきの砲台だった可能性が大きいって訳だ。」
……マジですか。
「生きた皿……、なんでもないです。」
「つまりどういうこと?」
「固定砲台は木っ端微塵になった可能性が大きいな。」
「いやー、しかしよくこんなもの見つけてきたな。」
「凄いね。」
「……」ピョンピョン
「ほんとリム活躍してるよな……。」
それに比べて俺はどうよ。マジでスライム以外じゃねえか。
「ところでハルト、その眼帯どうしたの?」
「あー、ちょっとな。」
マジでさっきから足しか引っ張ってないぞ。実際手負いだし。
ん? 手負い……? ま、いいか。
『琴:で、お三方。本来の目的を忘れてないかしら?』
落ちてたスマホから声がする。
「「目的?」」
『琴:少し急ぎ足で来れないかしら? こっちはだいぶピンチよ。』
あ、そっか。城に向かうのが目標だったな。
……なんか忘れてる気がしなくはないけど。
「そういえばそうだったな。色々ありすぎて忘れるところだった。」
そう言い大将はスマホを拾い上げた。
「よし、それじゃ行くか。」
「はーい。」「了解です。」
その時の俺は思ってもいなかった。
ここまでのいざこざは前哨戦に過ぎないと。
はい。24話でした。
少しずつですが物語は進んでいきます。
1話1デスを目標にしていた悠斗くんですが、結構死にましたね……。
まあ、ここまであまり死ななかったのが奇跡だったってことで。
次回[目を覚ましてください!]




