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メモリーズ(仮)  作者: 御厨 郁葵
第一章 旅立ち編
27/32

23話 懐かしい日常

桜の季節になりましたね。それどころではない騒動で賑わってますけども。

それでは、騒がしくなる日々のお供に23話です。

どうぞ。

山で大戦闘を繰り広げられた後。

「ほーら、リム、ピュイ、おいでー。」

「ピュー!!!」バタバタ

「……」ピョンピョン

夕日を背に、俺は広場で久々にリム達と戯れていた。

「紬はこれからどうするの?」

「うーん、暫く悠斗や秋葉のいるギルドにお邪魔しようかな?」

いつの間に仲良くなったのやら秋葉は紬と談笑して

[これが今回の成果です]

「おお、ありがとな。若葉くんに後で渡さないとな。」

「ゆかりも大将もちゃっかりしてるわね……」

「まあな、これで食ってるのもあるしな。」

「それにすがってる私達も私達ね。」

大将とシアンとゆかりも談笑している。

「じゃ、帰るか。万季(マイ)。」

「は、はいっ。お父さん。」

……え?

「あれ? そこの二人って親子だったの!?」

[え? 知らなかったのですか?]

「だって、そんなこと言われてないし……」

「い、言ってないですもん……」

「あ、そうか。ここにいる面子の大将と俺以外は全員初対面か。」

……なんかややこしくなってきたぞ。

「逆になんで万季が一人でこの山に居てると思うんだ?」

おっさんが皆に尋ねると

「てっきり緊急クエスト繋がりで来たのかと。」と紬。

「たまたま迷い混んだのかと。」とシアン。

「……なんでだろ?」秋葉は思考を放置。

「……まあ正解は一家でピクニックってところだろうな」と魔王サマ。

「それじゃあ逆になんではぐれたんだ?」と尋ねると

「親子喧嘩?」と紬。

「そんなわけないじゃない。現に今こうして仲良くしているし。」とシアン。

「じゃあなんで?」と秋葉。

「……龍が襲ってきたのが答えじゃないか?」と魔王サマ。

「お、ご明察。」とおっさん。

「で、はぐれた嬢ちゃんはクエスト組と合流して兄弟たちは闇の兄ちゃんと鉢合わせになったと。」と大将。

「そもそも、なんで大将と魔王サマはおっさんとマイを知ってるんだ?」

「ああ、秋人さんはこの山を拠点としているギルドマスターなんだよ。」

意外な事実。

……まあ、大将と比較したらこのおっさんの方がギルドマスターっぽいけど。

「家族ギルドって部類だな。ここら辺は儂ら以外の家はないし。」

「で、大将と秋人さんはギルド間で同盟結んでるって感じ。」

「……なんで響はそれを知ってるの?」

「魔王として仲介してたんだよ。その当時は魔王軍幹部としてだけど。」

[それを知ってる上で響さんはなんで3人と戦ったのですか?]

「……だってその3人だとは思っていなかったし。当時立ち会った時ってあの3人いなかったよな? マイちゃん?」

「は、はい……。」

……なんかややこしくなってきた。

「まあとにかく、儂らはここらでお暇しようかな。大将さんも仕事あるんだろ?」

「そうだな。こっちも引き上げるとするか。」

あ、皆帰るんだ。

[私達も帰りましょうか]

「そうだね。紬はどうする?」

「私も一緒させてもらおうかな? ラーメン屋行くついでに報酬受け取りたいし。」

「オッケー。じゃ、いくよ。[転移(テレポート)]!」

女性陣がテレポートで帰った。

いつの間にか大将も消えている。

あれ……? 置いてかれた?

魔王サマはお取り込み中だし、リムとピュイは……ってあれ?

『秋葉:あれ? ハルトどこいるの?』

メールが来た。

『どこって、さっきの広場から動いてないけど。』

『秋葉:あれ? 一緒に飛ばしたはずなのに。』

『範囲外だったとか?』

『秋葉:でもリムとピュイは無事にこっちに来てるけど?』

あれー?

『マジで取り残されたパターンじゃねーか!』

いつのまにか魔王サマどっかいってるし!

おっさん達はもう帰ってるし!

……どうしろっていうんだ。

「あ、そうだ。」

そーいえば昨日の夜に転移クリスタルたるものを貰ってたんだった。

使お。

クリスタルを取り出して一緒に貰った紙を一読する。

クリスタルを握りしめるといいんだな。

よし。



「え!? あ! ちょ、そこから離れて!」

「え?」

一瞬研究所に飛ばされたが次の瞬間……



「うっそだろぉぉぉぁぉ!」

上空へ飛ばされた。

『何が起きたんですか!?!?』

琴さんへメッセージを送る。

『琴:私が機械を作動させた瞬間に機械の上に飛んで来たみたいね。』

『なんつータイミングなんだよ!』

……しょうがない、もう一回使おう。

『連続してこれから使いますか?』

『琴:今日はもう試運転しないから使わないけどなんで?』

『そこへ飛びたいからですよ。』

クリスタルを出して……ってあれ?

『琴:昨日の報酬で渡したクリスタルで?』

『そうですけど……あれ? どこいったんだ?』

『琴:昨日大将に渡したアレ、使い捨てよ。完成品を渡すつもりが間違えたわ。』

『マジかよ。じゃあ俺は……』

『琴:……もう一回落下しきらないと無理よ。』

『マジか!』

……はい、アスノヨゾラのおかわりきました。


『琴:……残念だけど、座標を見る限りは夜明けまで落ちてこないわ。』

地獄じゃねえか!



何のアクシデントもなく夜明けを迎えました。

いや、アクシデントしかなかったっちゃなかったけど。

まあ、死なずに朝焼けを拝めました。

……死んだら早く帰れたんじゃ?

っと、いけない。命を粗末にしてはいけないな。

いくら生き返るからといい、いつ生き返れなくなるかわからないからな。

「にしてもどんだけ高い所に飛ばされたんだよ……」

未だに地面が……いや、やっと地面が見えた。

ラーメン屋の真上にいます。……そこそこ人通りあるけど大丈夫かこれ?

あ、魔王サマがいる。魔物をゾロゾロ連れて。

百鬼夜行か何かか? 戦争か?

「今日は皆と懇親会~~♪」

なんか魔王サマがご機嫌そうに歌ってる。

キャラ違うくね?

そうしてラーメン屋に入っていった。

ってか、上から見るとラーメン屋大きいな。

百鬼夜行がどんどんラーメン屋に収まっていく。

そしてその後ろにいた小太りでコートを羽織った青年がラーメン屋に入るタイミングで、もうすぐ着地しそうな距離まできた。

「ちょっとどいてぇぇぇ!」

「うわっとい!!?」

声に驚いた青年が避けた。

反面、俺はふわっと着地する。

そして青年は

「親方! 空から男の子が!」

ラーメン屋の中に入っていった。

「天空の城はこの上にはないはずなんだがな……っと、やっぱり兄ちゃんか。」

「やっぱりって何ですか……。」

大将が店から出てきた。

「ってか天空の城がどこかにあるんですか?」

「ないことはないぞ。……まあ、立ち話も何だ。中に入るか。」



ラーメン屋。1Fは宴会中なので2Fのテーブルでさっきの男と朝ごはんを食べている。

人がいないから贅沢に4人席に陣取っている。

「ってことが君があのハルトくんか。」

「あ、はい。吉田悠斗です。」

「秋葉から何度か話聞いてるよ。」

秋葉? ここでも出てくるのか。

「実を言ったら一回会ってるんだけどな。」

「え? そうでしたっけ?」

「ああ。それも一昨日。」

一昨日……何があったっけ? 正直昨日色々あったから記憶消えてるけど……。

「タピオカ退治の時ですか?」

「うーん、そのときいたことにはいたけど、直接接触したのはその後だな。」

その後……あっ、

「連絡先大交換会のときですか?」

「そうそう。そのときちゃっかり交換してるはずだ。」

どうりで記憶に薄いはずだ。

……まあ、その直後に第一次アスノヨゾラやってるから記憶に残らないのも無理はないと言い訳……って、誰に言い訳してるんだ?

とりあえずスマホの連絡先を覗いて……50人。琴さんや昨日のおっさん達も入ってるのを除外しても40人いる……。

「ええと、どちら様ですか?」

「おっと、自己紹介がまだだったな。」

あ、よかった。また名前を名乗る前は(ryされるかと思った。

「俺は拓生(たくお)。紅の里出身の……ま、魔法使いだな。」

「なんでそこでどもるんだよ。」

「いや、魔法使いって言っていいのかって考えてしまって……。」

そうすると拓生さんは少し黙りこんで

「いや、幻術使いだ。訂正する。ちょっとやり直させて。」

「あ、はい。別にいいですけど。」

俺の返事を聞くと立ち上がった。そして

「俺は拓生。くりぇないの里出……だー、もう!」

別の所で噛んだ。

「もう一回! もう一回やらせて!」

「あ、はい。」

「俺は拓生! 紅の里出身の幻術使い!」ハァハァ

息切れする程のものか? ……お客さんほとんどいなくてよかったな。

「な、何とか言えた。」

「あー、で、秋葉とはどういう関係で?」

「ん? 秋葉? ああ、養成学校の同期なんだ。」

学校ね。秋葉この前言って……ん?

「秋葉、飛び級したとか言ってましたけど。」

「あー、知ってるんだ。」

「拓生さんも飛び級したんですか?」

「拓生でいいよ。飛び級してないよ。丁度秋葉が飛び級するタイミングで魔王軍に入ってね。」

ん? ややこしくなってきたな。

「魔王軍の……言ったら留学みたいなことをしてね。別の世界の学校に転入したんだ。」

ますますわからなくなってきた。

西帝彩(せいていいろどり)学園(がくえん)ってとこだったっけ。まあ、そこで数年過ごしたんだ。」

あれ? 聞き覚えある学校だ……。

「ひょっとして、その学校って吸血鬼化した人狼だったり、常に和服を着てる妖狐とかいたりしなかった?」

「そうそうそうそう! え? もしかして通ってた?」

「いや、義弟がそこに通ってて。たまに聞いてたんだ。」

ヒビから聞いてたな……。お伽噺のようなほんとの話。

ヒビ、元気にしてるかな……。

「そうなのか。でそこに高二まで通ってたんだけど、前魔王の体調が悪くなったのをうけてこっちの世界に戻ってきたんよ。」

「へー。そうなんですか。」

……じゃあ現実世界でもワンチャン会ってる可能性があるって訳か。

ヒビのことを知ってたらワンチャンあるな。

「お陰さまで今は魔王軍の偉いところにいさせてもらっています。」

「あれ? 魔王軍って今下で宴会してるんじゃ?」

「あー、あれは王主催の懇親会なんですよ。魔物達と王が仲良くなるための。」

「なのに幹部クラスの拓生は出席しないのか?」

「まあ……な。それこそ全員参加の宴会の席でだな。いつでも会える俺よりも、いつも魔物達の事を考えている王と触れあえる方がいいと思うし。」

「そんなものなのか。」

「魔物達からの人気も王がダントツで高いし、わざわざただの幹部である俺が水を差す必要はないかなってね。」

魔王サマもいろいろあるんだな。



「そういや拓生って何歳なんだ?」

「18だけどどうしたの?」

「いや、2歳下の義弟と知り合ってないかって思って……あれ?」

秋葉と同期なんだよな?

「どした?」

「いや、秋葉が16で、拓生が18なんだよな。早生まれとか抜きにしてもおかしくないか?」

「……あー、それね。」

なんかまたややこしく重い話が来そうな予感……。

「なんかあっちの世界とこっちの世界って時の流れが違うそうなんよ。」

「あー、1年365日の向こうの世界とは経つ日数が違うから年も違うと?」

「ちょっと違うがそういうことだな。実際は1日の長さが違うから1日が長いこっちの世界の方が1年が遅いって話。」

へー。

「というか、ハルトはあっちの世界出身なんだよな?」

「はい。そうなりますね。」

「じゃあ、アレ知ってる? 近藤無双ってゲーム。」

「ああ! 苗字無双系列の最新作!」

「通じる? あれホントいいよな! 特に……



苗字無双とは

第一作の主人公の山田が近所の山田達を集めて領地を征服するゲーム [山田無双]を皮切りに、世界的大ブームを果たしたシリーズ。

五作目の近藤無双が社会現象を起こし、今や老若男女問わずに愛されているゲームである。



「ハルトはどのシリーズが好き?」

「山田も捨てがたいけど、やっぱ佐藤のラストが一番だなぁ……。」

「ああ、あのラスト格好いいよな!」

「「佐藤は2人もいらない。いくぜ!」」

「あれがホントに好きで……拓生は?」

「佐藤のラストもいいけど……やっぱ近藤も捨てられないんだよな……。あの遠藤と決別するシーンとか。」

「ああー!」



とまあ立派なオタトークをしていたんだが

「おっとやべぇ! そろそろ行かなきゃ!」

「じゃあこんくらいで。」

「そうだな。またなハルト!」

「ああ!」

とお開きとなった。

いやー、話した話した。

「誰と話してたの?」

と紬がやってきた。

「ああ、拓生って人とちょっとな。」

「魔王軍幹部の?」

「ああ。」

「悠斗って無駄に交遊関係ひろいよね……。」

無駄にとはなんだ。

「そういう紬は何してたん?」

「秋葉達からピュイとリムの世話を任されてたから散歩行ってたよ。」

「その秋葉たちは?」

「依頼行ってるよ。ゆかりちゃんの社会勉強も兼ねてだってさ。」

「へー。」

シアンに言わせたら俺の仕事だって色々言われるだろうな……。

「そういえばさ」

「んー?」

「凜って今何してるの?」

凜……丹場(たんば)(りん)。俺と紬の親友。

紬の話では早いうちにこの世界に来てるらしい。

「凜ね……アイドルやってるんだってさ。」

「アイドル!?」

予想の更に上を行ってた。

「なんかいろんな場所をツアーで回ってるんだとか。」

「ヤバ。」

幼なじみが遠い存在になってしまった。

「あと、人気歌手の天宮(あまみや)(そら)さんと近々セッションか何かするって聞いたかも。」

「は!?!?」

「悠斗好きでしょ?」

「そうだけどえ? マジ?」

「マジマジ。悠斗がこっち来たって言ったら自慢してやるって言ってた。」

「あいつ……」

天宮爽……俺が追ってる大人気人気歌手。子役で有名だったが歌手に転身した。

「いつかのタイミングで共演して、年が一緒ってこともあって意気投合してそれ以降共演が増えたんだって。」

そう。天宮爽は俺たちと同い年なのだ。

ちゃんと高校も通ってたらしい。

……親友がどんどん遠い存在になっていく。

「チケット取っておこうか?」

「倍率やばそう。」

「そこは、親友特権ですよ。」

「マジで? 使えるん?」

「チケットくらいなんとかしてあげますよ。私にかかれば。」

「マジ感謝です。」

「そりゃどうも。」

親友がいてよかった。マジで



昼時。

紬と会話の延長線で昼ごはんを食べていたら、宴会が終わったらしく2Fに魔王サマがやってきた。

ちなみにこのラーメン屋、見た目によらず地上4F構造で、3-4Fはプライベートスペースとなっている。といってもギルドメンバーは自由に出入りできるからいわゆるフリースペースなのだが。

実際俺は4Fで寝させてもらってるし。

「お、やってるやってる。」

「そりゃ飯くらい食うだろ……」

「やっほー。」

それぞれ言葉が飛び交う。ってか今日は珍しく俺ら以外の姿が見えない。

「下に人っている?」

「魔物くん達が帰ってから数人来たけど……どうした?」

「いや、人少ないなーって。」

「確かにね。私たち以外人いないね。」

「まあ……今日は王都でセレモニーがあるからうちの客足が落ちるのは想定内だけどね。」

「あ、はーさん。」

「お待たせ。持ってきたわよ。」

若葉さんが魔王サマの昼食を持って上がってきた。

ちなみにメニューは俺達と同じナポリタン。本当に何でもあるなこのラーメン屋……。

そして若原さんもイスに座った。

俺と魔王サマの正面に紬と若原さんが座っている。

「セレモニーって?」

紬が問いかける。

「王女様の襲名式だとよ。なんか跡継ぎやらとかで一悶着あった政治が落ち着いたタイミングでやってるんだとさ。」

「「へー。」」

流石魔王サマ。詳しいな。

「なんで揉めてたのだろうね?」

「あれ? はーさん知らないん? 能力使いの女の子が産まれなかったからどーのってニュース。」

「ああ、そういえばそんなことありましたね。王子がイケメンって報道で半分埋もれてたけど……」

「王子は剣術の達人でもあるらしいですからね。」

「「?」」

やべえ、こっちの事情に疎すぎて全く付いていけない……。

「ちなみに女王様ってどんな人なんですか?」

「俺と同い年の治癒魔法使いだよ。多少引っ込み思案なところがあるけど。普通にいい子だよ。」

「なんでそんなに詳しいの?」

「確かに。やけに情報量多いじゃん。」

「ああ……えーと、それは、あー……」

紬と俺が突っ込んだら魔王サマがめっちゃ動揺してる。

若原さんも疑問そうに見ている。

「まあ、このくらいならいいか……。おんなじ学校に行ってたんよ。」

「へー。」

「それって例の西帝彩学園か?」

「ギクッ!」

「あれ? 聞いたことある学校だね。」

「ほら、ヒビが行ってたとこ。たまに話してたやつ。」

「あー、狼が学校通ってるやつね。はいはい。」

紬もピンときたようだ。

「な、何で知ってるの……?」

「たまたまさっき拓生って人と語ってたんだ。その話題の一つがその学校なもんで。」

ってかさっきから魔王サマがめっちゃ挙動不審なんだが。

「拓生さん……。その人ほかに何か言ってなかった?」

「ん? 普通にゲームの話……ってか拓生って魔王軍幹部とか言ってたけど?」

「ま、まあ確かに幹部ではあるね……。」

「というか響さん、そのセレモニーに出なくて大丈夫なんですか?」

若葉さんが急に参加してきた。

「あー、それに関しては大丈夫。今出てきた拓生さんが魔王軍として出てるから。」

だからさっき急いで出ていったのか。

「ねえ悠斗、私たちもそのセレモニー行ってみない?」

「まあ興味あるしな……行くか。」

「私も行こうかな? 大将に許可もらって。」

「というかこのギルドからはそのセレモニーに参加しないんですか?」

「そんな話は聞いてないけど……とりあえず大将のところ行ってくる!」

若葉さんが下へ降りていった。

「魔王サマは?」

「……まさか行く流れになってない?」

「まあ、そうなるね。」

「……マジですか。」



ということで4人で王都まで歩いてます。

ピュイとリムは大将の元でお留守番しています。ってのも大将が

「フクシマくんに続いて若葉くんまでまた行ってしまうのか……。」

と悲しそうにしていたので置いてきた。

少なくともアニマル(?)セラピーにはなると思う。

「というかフクシマさん行ってたんだ……知らなかった。」

「フクシマさん何かしてなきゃいいけど……。」

前列2人(若葉さんと魔王サマ)はフクシマさんを案じている。

対して後列の俺らは

「凜いるってさ。」

「どこに?」

「セレモニーの観客席。」

「マジかよ。ガードマンとかめっちゃいて目立ちそう。」

「お忍びだってさ。案外バレないものらしいよ。」

「嘘だー。だってあの凜だろ?」

「その凜が言ってるんだよ。」

凜といえば、この3人の中で一番大人しいやつだった。

まあ、俺と紬が暴れ役だから仲介役の凜が比較して大人しいってだけで凜も凜でアクティブなんだけど。

「そういえば若葉さんって病み上がりじゃなかったの?」

「確かに。大丈夫なんですか?」

「あっちゃー、今聞いちゃう?」

若葉さんが振り返る。

「体調は回復したよ。過度な運動はできないけどね。」

後ろを向いたまま歩く辺り大丈夫だろうな。

「けどはーさん、流石にまだ治りきってはないだろ?」

「あ、わかる? けど、このくらいなら何てことないよ。」

若葉さんをよく見てみるとステータス表示たるものが。

そこを見ると貧血を起こしている。

……大変なんだな。

「私もラーメン屋の一員だからね。このくらいでへこたれてっとっと……」

「ほらほら、早速よろけぇっとい!」

若葉さんと魔王サマがこけたのを魔法陣が受け止める。

ほんとこの魔方陣、仕事する……って、

「なあ、紬……」

「ええ。悠斗……」

俺達の目線の先、今こけた2人の上に……

「キェェェェ!」

頭が牛、胴体が人間、四肢が鳥の何かがいた。



「いたた、大丈「[フリーズタイム]!」

「なんだなんだ?」

「上! 上!!」

「若葉さん連れてこっち来て!」

「ああ、ってうわぁぁキマイラァァ!!」

あーもうめちゃくちゃだよ。

魔王サマが若葉さんをしょってキマイラに突進してしまったよ。

「上じゃねえのかよ!」

「上に注意してってことよ!」

「キェェェェ!」

やべ、フリーズタイム切れた。

「魔王サマは若葉さん避難させて! ここは俺たちが!」

「「「悠斗(ハルトさん)戦えるの?」」」

「一斉に言うなよ! 実際問題若葉さん運べるの魔王サマしかいないだろ!」

「紬さ「「却下!」」

「何で!」

「後で話す! いくよ悠斗!」

「ああ!」

紬がボウガンを構える。

俺も傘を構える……はずだったが無かったのでそれっぽく構える。

「キェェェェ!」



キマイラが空中から突っ込んできた。

そこを紬がボウガンで撃つが当たらない。

創造(クラフト)で作った壁でキマイラを受け止める。

「いけるか!?」

「ええっ! [乱れ撃ち]!」

しかしキマイラは再び空中へ。

「ちょっ! 待っ! 待て!」

壁を利用して紬の乱れ撃ちをガードする。

「悠斗、止めるやつ撃って! そこを集中攻撃するから!」

「さっき使ったばっかでしばらく撃てないんだよな……。」

「ちょっ! 肝心なときに!」

「今更そんなこと言われてもなあってよっとい!」

キマイラの落下を避ける。

キマイラは落下の衝撃で少し地面に埋まった。

そこを

「[五月雨(さみだれ)]!」

「[スターダストレイン]!」

2人で攻撃する。

しかしキマイラはすぐに脱出し、かすりもしなかった。

「くそっ、当たらない!」

「動き封じれないの?」

「待ってろ。……よし、溜まった! [フリーズタイム]!」

しかし避けられた。

「あっ……」

「バカ! 何やってるの!」

「当てるの難しいんだよ!」

「ホーミングとか無いの!?」

「あったら苦労しねえよ! ってかその言葉そのまま返すわ!」

「それもそきゃぁぁぁ!」

「おいどうし……ってぎゃぁぁぁ!!」

キマイラの右足が俺の左手、左足が紬の右手を掴んで高く翔んだ。

高所には慣れているがスピードがヤバイ。

ってかダメージ判定受けてるじゃん。謎……。

「ちょ、なんとかして!」

「んなこと言われても撃った直後だから無理だよ!」

左手が封じられ……いや、いける!

「落ちる準備しろよ紬! [スターダストレイン]!」

右手から数多の光の弾が出されてキマイラに当たる。

その衝撃で掴んでいた足が外れる。

「きゃぁぁぁ!」

中途半端に高い位置から投げ出された俺と紬。

紬の手を右手で掴み、反対の手で折り畳み傘を出して上昇……する計算だったが

「昨日置いてきたんだったぁぁぁぁ!」

このままじゃ地面に激突する。

俺がクッションに……なるのは明らか俺が死ぬし、そうでもしないと紬に大ダメージだし……。

……ああもう! 背に腹は代えられねえ!

紬のクッションになるべく、手を放した。

……が、落ちる速度が一緒な為、下に回る事など出来るわけない。

そうでなくとも紬の方が(今は)重いわけだし無理だ。

……ここは完全に俺の勉強不足だわ。

2人して地面に落ちる。

「大丈夫か紬!?」

「……あれ? 痛くない……」

紬の下に魔方陣がいた。どうやらクッションになったっぽい。

マジ有能すぎます。うちの魔方陣。

「よかった……のはいいけどどうするよ?」

「そうね……あいつの動きを少しでも封じれたらなんとかなりそうだけど……って悠斗危ない!」

「うおっと!」

紬の声でキマイラの空中降下をよける。

「あの爪も厄介だな。」

「そうね。私達の動きが完全に封じられるから厄介でしかないわ。」

「ほんとに。あれがなければ……でもきついしな……ん?」

「何か思いついた?」

「ちょっとなんかとかなるかもしれない。」

「キェェェェ!」

キマイラが突進してきた。

2人でかわし、そこにフックショットを撃ち込む。

キマイラの足をフックショットが掴む。

「俺が足枷になるから狙い定めて!」

「オッケー! ちょっとそのまましてて!」

と、キマイラが翔んだ。俺の体も宙に浮く。

そうだった。俺の体めっちゃ軽いんだった。

まてまてまて! めっちゃ回る! 酔う!!

「ぎゃぁぁぁ! 紬! 早く!!」

「いくよ! [五月雨]!」

紬が撃った矢が数本、キマイラを貫く。

しかし俺の体も同じように貫かれていた。



冥界。

「フレンドリーファイアくらいは許してくれてもよくない!?」

[できたら苦労しません]

「まあ、そうだろうけどよ……」

開口一番に口から出たのは文句だったわけだが、

「キマイラどうなった?」

[ちゃんと追い払えてると思いますよ]

「ならまあよかった。」

人一人死んでるから良くないっちゃ良くないけど。

[あと、これ職人から預り物です]

パネルの横に機械チックな白い筒が置いてあった。

「これなに?」

[万能ツールというらしいです。なんでも武器の持ち替えが簡単になるとか]

「へー。持っていっていいの?」

[貴方専用に作ってあるらしいからその方がいいと思います]

筒……もとい万能ツールは軽く持ちやすかった。

ツールに付いてるボタンを押すと、先端から傘の本体が出てきた。

傘がそのままあって、傘の持ち手部分がツールになっている形だ。

「凄く便利なやつじゃんこれ。職人いる?」

[はい なんでしょうか▼]

ドット絵の家が出現し、中から職人がでてきた。

……原理どうなってるんだろう?

「いつもほんとありがとう。」

[よろこんで くれたなら 幸いです▼]



[そういえば]

「ん?」

戻ろうとしてたところにパネルが話しかけてきた。

音声ないから眼前で主張してきたという方が正しいが。

[オズから貰ったベクトル変化装丁装置使わないのですか?]

「え? なにそれ?」

[ほら、この前貰った黒い環。覚えてませんか?]

「そういえば……」


[そうですか……あ、そうだ]

「ん?」

[これ持っていってください]

「何これ?」

[ベクトル変化装丁装置です。装備するとベクトルを自在に操れます]

「というと?」

[装備した部分に触れたもののベクトル……動きの向きや大きさを変更できます]

「へー。」

[ただ、使い捨てで一度使ったら永遠に戻りませんから注意してください]


こんな会話をオズとした気がする。

確かクラフター検定云々の後だっけな。

[それを使えばもっと強くなれると思いますよ。]

「んなこと言われてもな、使い捨てで永遠に戻らないんだろ? 無駄使いしたくないし……」

[それを宝の持ち腐れと言うんですよ]

「うぐっ。でもなぁ……」

[……はぁ。私が答えを言うのもなんですし、大将にでも相談して決めてください]

「わかった。ええと、戻っていい?」

[いいですよ]



「あ、お帰り。」

「ただいま。」

戻ってきた。

「遅かったね。」

「まあな。で、お前は何やってるん?」

「ん? 凜と連絡取り合ってる。」

紬はスマホを弄りながら答える。

「あ、グループチャットにするから悠斗入ってきて。」

「りょーかい。」

スマホを取り出して紬のスマホと繋げる。

『入れてる?』

『紬:入れてるよー。』

『凜:久しぶりー。悠斗。』

『おひさー……って、めっちゃ心配してたんだぞ!』

『凜:ああ、紬から聞いたよ。いやー、迷惑かけたね。』

『迷惑どころじゃねえよ……。なあ紬。』

『紬:そうだったね。あのときはマジで血眼になって探したもんね。』

『凜:そんなに心配したんだ。』

『そりゃな。』

『紬:そりゃね。』

『凜:で、こっち来るって話はどうなったっけ?』

『紬:ああそうだ。悠斗と2人で城までいくからそのとき落ち合おうって話だったよね。』

『凜:そうそう。あれ?』

『紬:どうしたの?』

『凜:2人とも早く来』

『ちょ、マジでどうした?』

……返事が途切れた。

「悠斗、なんかやばくない?」

「なんかヤバそうだな。っと、ちょっと待ってくれ。」

メッセージが来た。

『秋葉:ハルト、ちょっもいい?』

『今王都に行かなきゃいけないんだけど』

『秋葉:ちょうどいいわ。何人か連れて早く来て!』

えらい焦りようだ。

「どうしたの?」

「いや、秋葉からも王都に来いって。」

「……なんかヤバそうじゃない?」

「洒落じゃなくなってきたな。って、またメッセージ……」

相手は魔王サマだった。

『響:来て 王都 早く』

「マジで洒落にならんメッセージ来てんけど。」

「誰から?」

「魔王サマ。検索用語のように箇条書きで来いって。」

「……どうする?」

「どうするも、行くしかねえだろ。」

「そうね。」

という訳で俺と紬は駆け足で王都に向かうこととなった。





という訳で23話でした。

着々と物語は進んでいるはずです。

余談ですが、今回の話に出てきた。西帝彩学園は某所で書かせていただいた『非日常』シリーズの舞台となっております。

いずれ非日常シリーズも陽の目を浴びることになる(予定)のでその際もよろしくお願いします。


次回[覚悟は決まりましたか?]

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