20.5話 強者と弱者
世界がウイルスどうこう言ってますが私は元気です。
それでは病気とは無縁の世界のお話をどうぞ。
どうも、望月 響です。
年齢は17歳。職業……は魔王を嗜んでいます。
魔王と言っても人間界に侵攻ーとか、世界の半分をお前にーとかそんな大層なことではなく、ただ魔物達のリーダー的な存在の人間です。
魔物って言っても悪い子達じゃないんですよ。みんな僕に懐いてくれてますし、可愛いし。
なんで魔王をやっているかは追々話すとして……
僕は今、山にいます。
何でここにいるかは割愛します。知り合いについてきただけですから。
「……完っ全にはぐれた。」
そして見ての通り、完全にはぐれています。
というのも……
みんなの後ろについていき山道を歩いていると、黒い魔物が飛んできてリム君を拐っていってしまったので、追いかけたら
「……」バタバタ
『なんだ、この雑魚は?』
『親分、こいつ、一族の恥さらしでっせ』
『例のはぐれスライムでやんす』
『そうか、それじゃあここらで処分するか』
という現場に立ち会ったので
「はぁ、[詠唱 空間斬]」
という感じで対処していたらこうなってしまいました。
とりあえず先行組に連絡しましょうか……。
と言ってもどういう文章がいいんでしょうか……?
メールを送ったことないのであまりわかりません。
……まぁ、魔王らしい口調でメッセージ書きましょうか。
『やべぇ、お前ら見失った。』
どうだろうか? 最悪失礼口調は魔王特権を使うとしてもこれは……。
って、送ってる!? ヤバイヤバイ! とりあえず何か書かないと……
『あ、リムも一緒にいるぜ。』
……これでいいかな?
『悠斗:何やってるんだ……』
返事がすぐ帰ってきた。結構使いこなしてるんだ。
一応状況説明……っと。
『リムが他のスライムに襲われてたから助けてたらこうなった。』
『悠斗:……いつもありがとうございます。』
『いいってことよ。』
とりあえずこんな感じでいいかな?
あ、でもメール送ったってことは迎えに来てほしいって意味に取られるかも。
『すぐに追いつくと思うからそのまま進んでて。』
これでよしっと。……魔王っぽくない文面だけど。
『秋葉:りょうかーい(スタンプ)』
あ、グループチャットにしてた……。
ということで現在山道を道なりに進んでいます。
と言っても何も手がかり無しで進んでいる訳ではなく……
『魔王様ーっ』バタバタ
こうやって信頼できる情報通に偵察してもらっていた。
ハーピーのシルだ。大きさはピュイ君と同じくらいだ。
『3km先に大将を発見しました!』
「お、ありが……ん? 大将?」
『はい。ラーメン屋の大将です。』
「何で?」
『さぁ? 一応発見したので。』
「あ、ありがとう。皆と例の調査対象は見つかった?」
『先行している皆さんはこのまま行けばすぐに追い付きますよ。調査対象は見つかりませんでした。』
「了解。」
『はいっ。じゃあ行きますね。』パタパタ
「ありがとうねー。」
あれから少し進んだ。
僕の興味は一緒に歩いてるリム君へ向かった。
「……」ピョンピョン
「そういえばリム君って全く喋らないね。」
僕自身は魔物を含めた動物の声が聞こえる。これも魔王をしている理由の一つだ。
さっきの黒い魔物達やシルの声がわかるのもこのためだ。
けど、リム君の声は全く聞こえない。
スライムはお喋りな方の魔物だから結構珍しいパターンだ。
「ひょっとして喋れないの?」
「……」ピョン
「もしかして生まれたばっかりとか?」
「……」フルフル
……何か意味ありげだ。さっきの魔物達が言ってたことと関係するのかな?
ある程度の意思疎通はできるみたいだけど。
「戦闘とかはできる?」
「……」
固まった。僕も足を止める。
「大丈夫。誰も見てないよ。」
だからこそ僕もこの口調で喋ってるし。
しゃがんでリム君と目線を合わせる。……リム君に目はないけど。
「……」ピョンピョン
するとリム君は木の枝を拾った。
「……」っ/
かわいい。
「……」っ/)ブンブン
必死に振っている。
「ありがと。もういいよ。」
かわいいってことだけはわかった。
「……そうだ、魔王軍に入らない?」
「……」?
雑な導入なのはわかっている。だけども
「その方が何かあったら助けやすいし、魔物の友達も増えるよ。お望みとあらば力だって与えることができるし。」
正直どっちにもデメリットはないはず。うち、ホワイトだと自負しているし。……ホワイトだよね?
「……」フルフル
しかし答えはNOだった。
……なんでだろ?
「……」
「何か気に入らなかった?」
「……」フルフル
あれ? 違った。
「じゃあなんで?」
「……」クルクル
何かを表現しようとしている。
「……」パタッ ヒョコン
「あ、おに……悠斗のこと?」
「……」ピョンピョン
当たった。
「悠斗がどうした?」
「……」ピョン ピョン
「一緒にいたいって?」
「……」ピョンピョン
当たったみたいだ。
「何でそんなに慕っているの?」
「……」ピョンピョンピョン
……今度はまるでわからない。
まあ、いいか。
「じゃあ早く追い付かないとな。」
「……」ピョン
リム君が膝の上に乗ってきた。
僕はそれを抱き抱えた。
そして再び歩きだした。
……のはいいんだけど、
「おうおう兄ちゃん、金目の物全部置いてきや。」
歩きだした矢先にチンピラ3人に絡まれた。
発言だけ聞くと大将ともとれなくはないけど、明らかに大将じゃなくてチンピラです。
「ちょっと急いでるんだ。通してくれないか?」
「あぁ? お前誰に向かって口利いてると思ってるんだ?」
思いっきりこっちの台詞なんですよ。僕魔王なんですよ。
「知らないし用はない。無駄な話してる余裕はないんだ。」
「おいおいおい、完全に舐めきってるなぁ!」
チンピラCの拳が飛んで来た。
「……はぁ。」
その拳を避けて
「[詠唱 逆転換]」
逆方向に吹き飛ばす。
チンピラCは元いた側……チンピラABがいる方に飛んでいった。
「おっと! 俺の仲間に何しやがる!」
「何って言われても、何もしてないじゃないですかー。勝手に殴ってきて勝手に飛んでいっただけじゃないですかー。そんな見ただけで分かることをわざわざ聞くんですかー?」
嘘はついてない。実際触ってすらないし。
チンピラCをかわしたチンピラAが逆上しているのをなだめる。
実際はなだめるつもりなんて更々無いが。逆に煽っているまである。
「チッ、おい、やっちまえ。」
「はいよ!」
チンピラBが十徳ナイフを持って突っ込んできた。
「よっと。」
そこに前転で突っ込む。
チンピラBはバランスを崩した。
そこにアッパーを突き刺す。
「ぐはぁっ!」
チンピラBは地面に落ちた。
「この野郎、よくも冬馬と春晄を!」
チンピラAがこちらに向かってきた。
すると刃物を取り出して
「[極 五月雨]!」
何か打ち出してきた。
腕を前に組んでやり過ご……したかったが、放たれた刃物の複製物は全方位から飛んで来たみたいで、
「っ! 」
全身に刺さる。……まあ、この服防御力高いからそこまで痛くはないんだけど。
「これで決める! [極 鋼鉄斬り]!」
飛びかかって刀で追撃してきた。
僕は手を前に広げて剣が手に触れる瞬間に
「[詠唱 物質変化]」
剣を紙に変えた。
紙に変わった剣は手に当たってぐしゃっと潰れた。
「なっ!?」
チンピラAはその場にすとんと落ちた。
そして俺はぐしゃぐしゃになった刀を伸ばして
「[詠唱 物質変化]」
元に戻してチンピラAの真横の地面に刺した。
「バ、バケモン! おい、逃げるぞ!」
チンピラAはそのまま逃げた。
「ま、待ってくださいよ夏希さん!」
チンピラBCも後に続いた。
……正直楽しかった。またいつか再戦したい人達だった。
あれ? そういえばリム君は……って、
「……」プルプル
五月雨刺さってるー!!
「だ、大丈夫かぁ!?」
「……」キョトン?
刺さっていた五月雨を抜く。それにしてもピンピンしている。
あそっか、スライムって斬擊耐性あるんだっけ?
それにしても見た感じノーダメージなのが凄い。
僕の魔王装備でもそこそこのダメージなのに。
「……」ガサゴソ
「どうした?」
リム君がガサゴソしたと思うと、落ちているナイフを差し出してきた。
十徳ナイフだ。チンピラBのだろうか?
「棄てるのも何だし持っておいたら?」
「……」ピョンピョン
気に入ったようだ。ナイフを(全部しまったままで)振り回している。
「……」ブンブン
かわいい。
「さて、寄り道もしたことだし行こうか。」
「……」ピョンピョン
再び二人で歩きだした。
「そういえばナイフはどこ?」
「……」サッ
「あ、持ってるんだ。」
……ポケットとかないのにどこからとりだしたんだろ?
リム君の体半透明だから見えるはずなのに……。
まあいいか。
と、上の方から魔物の声が。
『キシシ、俺たちの縄張りに入ったようだな』
本日3回目。流石にもう慣れた。
声的にキメラか何かだろう。
『どうする? 奇襲かけるか?』
『人間の方は結構強そうだ。スライム拐ってびっくりしたところ攻めよう』
残念、その手口も本日2回目なんだ。
『それかここから巨大な石を落として殺そうぜ』
『フハハ、名案だ。それには人間と言えど対策はできっこないな。』
丸聞こえなんだよね……。
上を一度も見てないし、声が聞こえてないと思っているだろうから無理もないけど。
そんな状況を知ってか知らずか、リム君が何かを訴えてきた。
「……」ピョンピョン
「どした? 何かあったの?」
「……」ピョンピョン
流石に上のことを訴えてるわけでもないだろうし、訴えてるとしても上を見たらいけないと思う。
「……」ピョンピョン
『ボス、スライムの動きが変です』
『人間にバレなきゃそれでいい、準備しろ』
ほら、こう言ってるし。
と、リム君は僕の手に飛び付いてきた。
「わっ、どうした?」
驚いていると、目の前の光景が変わった。
地面と限りなく近い視点。……リム君の視点かな?
そしてその視点は上を見上げて……龍が数十匹映った。それも大量の。
パッと見季節外れの鯉のぼりだ。
しかもそのうち半分は巨大な岩を持ち上げている。
……ヤバイな。
今の視点は?と突っ込むべきだろうが、上の様子を見てそうは言ってられない。
かといって上を見たらノータイムで落石してくるだろう。
……しょうがない。
「[詠唱 災雷絶死]!」
全力の魔法を上にぶっぱなす。
一応魔王なので都市一つ壊滅させる程度の魔法は使える。……のだが、
『やべぇ、気付いてやがる。おい、総攻撃だ!』
『『『『はい!!』』』』
大半生き残ってる。なんで!?
落石をくぐり抜けながらリム君を抱えあげて走り出す。
「[詠唱 重力場]」
逃げ際に龍たちの真下に重力を発生されて龍たちの動きを封じる。
『逃げるぞ! 追え!』
『『『『はい!!』』』』
しかし何故か効いてない。どんどん近づいてくる。
「助けてーーー!!!」
ということで番外編でした。
今回は響くん回でした。初出の情報も大分ありましたね。
次回[私が言いたいこと分かります?]




