20話 翼を持った者たち
語彙力の格差を感じる20話です。
少しだけ物語が進展するかと思いきやあまりしません。
それではどうぞ。
戻って辺りを確認する。
どうやらここは俺が最初にこの世界に来たときの森らしい。
というのも西の方にシアンと出会ったあの白い巨塔があるのだ。
ペラッペラのボール紙でできたかのような白い巨塔。
スライムと一緒に来たんだっけ。何か少し前のことなのに結構懐かしい。
で、話を戻そう。
冥界で教えてもらった死因はバードストライクだ。
で、周囲に鳥がいるのかという話だが、
「ピュ…………」グルグル
いた。縮こまって目を回している。
手のひらに乗っかるくらい小さな赤い小鳥。
その小鳥の元に行ってしゃがみこむ。
「ピュイ?」
あ、気づいた。
「ピ、ピュ! ピュ!」パタパタ
飛び立とうとしているのか、翼をバタバタ動かしている。だが飛び出さない。
もしかしたらと思いスキャンしてみると、怪我をしているのがわかった。便利だな。
「……」
「ピュ! ピュ! ピュイ!」ジタバタ
……大将なら手当てしてくれるかな。
ラーメン屋。
「ほい、治ったぞ。」
「ピュー! ピュ!」バタバタ
治ったっぽい。流石大将。
「ありがとうございます。」
「いいってことよ。しかし兄ちゃん、やけに懐かれてるな。」
「そうですか?」
確かにこの子、さっきから俺の周りをちょこちょこしてる。
「……」ピョコピョコ
と、スライムがやってきた。
「……?」ジー
「……」ジー
「ピュ! ピュイ♪」パタパタ
「……」ピョンピョン
意気投合したっぽい。早い。
「にしても兄ちゃん、どうしてうちに持ってきたんだ?」
「あー、まぁ、外は真っ暗ですし、怪我したのを見て放ってはおけないですし……迷惑でした?」
「そんなことないぞ。うちのギルドが盛り上がってくれるなら本望だ。」
「そうですか。良かったです。」
本当に良かった。ここで追い出されたらどうしようか本気で悩むところだった。
「っと、長くなったな。これ、琴から預かった報酬だ。」
「あ、ありがとうございます。」
小さなクリスタルと紙を受け取った。
「ちなみにこれ、なんですか?」
「転移クリスタルだとよ。一方通行で、転移先は新作の転移装置って言ってたな。」
「……めっちゃ二度手間じゃないですか?」
「あと、使うときに何らかのリスクを負う可能性があるから兄ちゃん一人で使ってくれとも言ってたぞ。」
「……ご丁寧にどうも。」
次にあの装置を使うときにはZ軸を何とかしてほしいな……。
「あとな、この小鳥、飛べないみたいだ。できればそこもなんとかしてあげたかったが……生憎そういうのは全く詳しくなくてな。兄ちゃん、何とかしてやれるか?」
「了解です。何かしらやってみます。」
次の日。
ラーメン屋の朝は早い。
朝っぱらから大きな打撃音が鳴り響いた。
「……おはようございます。マスター。」
その打撃音の主はシアンだ。
髪の一部を鈍器に変形し、自らの主を叩き起こしていた。(物理)
一方の主である俺はというと、
「おはよう。……ってのはいいんだけど、避けてくれると助かるんだが。」
現在進行形でその鈍器の下敷きになっていた。
で、だ。
今現在、俺はラーメン屋から結構離れた山の狩場にいる。
というのもだ、大将から
「この小鳥を見守っててほしい。フクシマくんが危うく煮込むところだった……。」
秋葉から
「昨日の話だけど、先に依頼の場所まで行ってて。場所はあそこの山だから。」
オズから
『オズ:データの採取のためにゆかりを山岳地帯まで連れていってください』
という色々な事情をいっぺんに聞かされたのだ。
で、ここにいるのは俺、ゆかり、シアン、魔王サマ、スライム、小鳥の4人+2匹。
魔王サマについては何故ついてきたのかすら謎だ。
[なにをするんですか?]
と、ゆかりが尋ねてきた。
「とりあえずは秋葉待ちだな。というか何で魔王サマまでいるんだ?」
「ん? いや、大所帯で面白そうなことになりそうだなーってついてきた。」
……それでいいのか?
「マスター、この子は?」
シアンが小鳥を手のひらに乗せて言った。
「昨日拾ってきた。スライムみたいについてきてくれるんだ。」
「名前はあるんですか?」
「……まだ考えてない。」
名前……名前か。
「……よし、鳴き声から取ってピュイでどうだ?」
「……マスターってネーミングセンス壊滅的ですね。」
「いくらなんでも単調すぎだな。」
ボロクソな言われようじゃねーか。
「じゃあお前ら考えてみろよ! いい名前出てくるか? 無理だろ!」
「えーっと、ゴンザレス。」
「トリン。」
「却下。ピュイが一番かわいい。」
ということで独断と偏見でこの小鳥はピュイという名前になりました。
「……」ピョンピョン
「ん? どうした?」
スライムが跳び跳ねている。
「名前つけてほしいのか?」
「……」ピョンピョンピョン
どうやらそうらしい。
「じゃあ2人とも、このスライムの名前つけて。あんだけボロクソ言うんだったら自信があるんだろうな。」
「……思い付かない。」
「青眼の白龍」
「却下。誰がブルーアイズなんて名前つけるんだよ。」
「なんでお前はそんな口出しできるんだ?」
「俺の子だからに決まってるだろ!」
子ではないけど。
「この子は……リム。リムで決定。」
ということで晴れてこのスライムに名前がつきました。
「よろしくな。リム、ピュイ。」
「ピュー!」パタパタ
「……」ピョコピョコ
[私よりいい名前貰ってる……]
「お待たせー。っと、思ったより大所帯になったね。」
秋葉が合流した。
「じゃ、出発しようか。」
「そういえば目的地って何処なんだ?」
「あ、言ってなかったね。」
秋葉がパネルを出す。
「この山にいる魔物を倒したいの。これ見て。」
パネルには一匹の巨大な龍とそれを率いる青いローブの集団が映っている。
「すげえな。うちの軍の破壊担当になってほしいくらいだぜ。」
魔王がなんか物騒なこと言ってる。
「こいつらを倒すのか?」
「村を荒らしてるらしいからね。この龍が人間って説もあるけどね。」
急に凄い情報が発覚した。
「その情報って確かなのか?」
「いや、わかんない。だから確かめにいくの。」
「で、何で私たちを呼んだの?」
[秋葉さんならソロでも簡単そうですけど]
「そうそう。下手すりゃ龍すら一撃で倒せそうだし。」
「あー、うーんと……」
めっちゃ歯切れが悪い。
「理由無かったとか? 別にそれでもいいけど。」
「あ、いや、ちゃんとした理由はあるんだ。あるんだけど……」
めっちゃ秋葉の歯切れが悪い。……言及しちゃ不味かったか?
「……まぁ、言いたくないなら言わなくていいぞ。誰にしもそんな事情はあるしな。」
「あ、ありがとう。」
魔王サマのフォローが入った。流石。イケメン。
「じゃ、行くか。」
「ええ。」「おう。」「オッケー。」[はい]
で、少し歩いていたのだが、
「あれ? 響さんは?」
「確かに。響いないね。」
まさかはぐれた? いや、魔王サマに限ってそれは……
『響:やべぇ、お前ら見失った。』
「本当にはぐれてたー!」
マジかよ。こんなことあるか? まだ10分も歩いてないけど。
『響:あ、リムも一緒にいるぜ。』
『何やってるんだ……』
『響:リムが他のスライムに襲われてたから助けてたらこうなった。』
『……いつもありがとうございます。』
『響:いいってことよ。』
ピュイは……っと、大丈夫だ。俺の肩に乗っている。
『響:すぐに追いつくと思うからそのまま進んでて。』
『秋葉:りょうかーい(スタンプ)』
……グループチャットだったのかこれ。
「じゃ、ちょっと早いけど2人待つためにご飯にしようか。」
[2人というよりは1人と1匹ですけど……]
「細かいことはいいの! [フレイム]!」
秋葉がどこからか鍋を取り出した。
そして地面に着火した。
「よーし、皆、なんでもいいから拾ってきて。」
「料理の素材か?」
「うん。けど、本当に何でもいいよ。」
「一応聞いておくが『ナン』ってオチじゃ……」
「ないよ。」
……結構自信あったのに。
[探しましょう]
「了解。」「はーい。」
という訳で秋葉を除いた俺、ゆかり、シアンは食材を探しに少し進んだ。
と言っても、何処に行くかの見当がつかないから、ピュイに先頭を任せることにした。
「ピュ♪ピュ♪ピュイ♪ ピュ♪ピュ♪ピュイ♪」トテトテ
かわいい。
[小さいし遅いから気をつけないと踏みつけてしまいそうですね]
「物騒だな!」
「といってもここにいる3人って全員浮いてない?」
……言われてみれば。
俺はデフォで数cm地面から離れてるし、ゆかりも一緒だ。
シアンに至っても歩くときは完全に浮遊している。
……踏みつける心配はないな。
「ピュ? ピュ! ピュイ!ピュイ!」バタバタ
何が見つけたようだ。
「ピュイ!」ビシッ
落ちてた木の棒を拾って指し示した先は、2-3mの木だった。
よく見ると、木の実が生っている。
「おっ、ナイス。じゃあ、ここからどうやって取るかだな。」
「あ、任せて。」
そう言うとシアンは真っ白な翼を背中から生やして飛んだ。
「……は?」
そうして楽々と木の実を採った。
そして綺麗に着地(ただし地面に着いてない)するとその翼は消えた。
「……なに、それ。」
「何って、翼だけど。」
「それを聞いているんだよ。何その翼。」
「魔力使ったら生やせるよ。ゆかり、やってみて。」
[はい]
ゆかりにも羽が生えた。ホログラムの羽が。
「どうやるんだ? それ。」
「え、翼を生やしたいと念じたらでるよ。」
翼を生やしたい……
翼を生やしたい……
羽を生やしたい……
……
「できないけど。それって創作の延長線みたいなものか?」
「デフォでできない?」
「できない。できたらとっくにやってる。」
[データによるとマスターには翼の適正はないです]
「あ、じゃあ無理だね。」
「理不尽すぎない!?」
翼を生やして飛ぶってロマンをいとも簡単に打ち砕かれた。
[生まれつき翼を持っていても飛べない人もいますよ]
そう言うゆかりの視線の先にはバタバタと翼を動かしてホバリングしてるピュイがいた。
地面から十数cmは浮いているがそれ以上いってない。
「ピュ」トテン
疲れたのか、羽を動かすのを止めたら地面に垂直落下した。
「飛べないのか?」
「ピュイ……」ズーン
「一緒だな。」
「ピュ……ピュイ♪」
また俺とピュイの間に小さな絆が芽生えた。
あ、
「そういえば俺、飛べるわ。」
職人から貰った折り畳み傘を開く。傘から風が吹いて俺の体が宙に浮いた。
「ピュイー!!」ナミダメ
小さな絆は風と一緒に吹き飛んだ。ごめんよ。
あれから色々な葉っぱや木の実を採取して秋葉の元へ帰って来た。
「あ、おかえりー。」
[戦利品です]
ゆかりが木の実やら葉っぱやらを鍋の近くに置く。
「オッケー。じゃ、始めるよー。[フロウ]!」
秋葉が鍋に魔法で生成した水を入れて火にかける。
そして材料を手にとって鍋に放り込んでいく。
すると、鍋が爆発した。
「熱っつ!」
煙の中から鍋の残骸が飛んできた。
そして、煙が晴れると鍋があった場所には……ローストビーフがあった。
「……なにこれ。」
「ローストビーフだよ。」
「違う、どうしてこうなった。」
[ラーメン屋名物、秋葉さんの食錬成ですね]
「……何で木の実から肉ができあがるんだ?」
「「[さぁ……?]」」
「2人はともかく秋葉まで首傾げたら駄目だろ!」
「だ、大丈夫。味に関してはみんなのお墨付きだから。」
「例えば?」
「フクシマさんとか。」
「よけい心配だわ。」
「あはは……とりあえず食べてみたら?」
一枚食べてみる。……ローストビーフだわ。
「どんなメカニズムしてんだよ……」
[フクシマさんは完璧な食材を駄目にするプロと言われているのに対し、秋葉さんはダメな食材から完璧な料理を作るプロと言われています]
……ほんとになんなんだ。と、
「ピュッ!」サシダシ
ピュイが木の実を差し出してきた。
「あ、ありがと。」
木の実をかじってみる。あれ……? なんか……視界……がグ……ルグルと……
[あ、その木の実は毒性です……って、マスター!?]
冥界。まさか食あたりでここにくるとは思わなかった。
[お肉の錬金術師]
「あれどういうメカニズムしてるんだ?」
[さぁ?]
「お前もわからないのか……」
「ピュ!ピュー!!」ダキッ
戻るとピュイが抱きついてきた。可愛いやつめ。
秋葉たちの方を見ると……ホールケーキが置いてあった。
うん、ツッコむのはやめよう。
ということで20話でした。
スライムに名前がやっとつきました。この回初登場の小鳥の方が先になってはいますが……
次回は番外編……というよりかはanother sideの話になります。




