二枚目の包み紙
「魚を買ったんだから、紙くらいくれ」
干物を買った客が言った。
一号店では最低限の包み紙を商品代へ含めている。だが、客は匂いが鞄へ移らないよう二重にしてほしいと言った。
「二枚目は有料です」と雨宮。
「今までは布に包んでくれた」
「その布は、お客様の物でした」
紙を無料にすれば、三重、四重を求める客も出る。かといって一枚で汁が染みれば、ほかの商品を傷める。
宗久は干物一枚、二枚、五枚で必要な紙を試した。二枚までは一重。五枚は紙が破れ、二重が必要だった。
「数で変えるの?」とポルカ。
「重さで変えます」
包み紙を商品として売る案も出た。だが一枚ずつでは会計が増える。
十枚一束にし、生活用品棚へ置く。食品を包める紙と、文字を書く安い紙は分けた。食品用には魚とパンの絵をつける。
販売前、宗久は包み紙へ温かい卵パン、冷たい魚、油の入った缶を一晩ずつ置いた。
魚の水分は裏へ染み、卵パンの蒸気では紙が柔らかくなった。缶は問題ない。
「食品用なのに魚を包めないの?」とリリア。
「直接は包めますが、長く持ち歩くなら二重が必要です」
すべてに厚い紙を使えば値段が上がる。薄い紙と、水分の多い品に使う厚い紙を分けた。厚い方には雫の絵をつける。
ところが文字を書く紙を買いに来た子どもが、魚の絵を見て食品用を取った。用途の違いだけでなく値段も指さし、安い方が隣にあると伝える。
「高い方だけ目立たせたら、だますことになる」とポルカ。
宗久は二つの紙束を同じ高さへ並べた。
初日に三束売れた。一束は干物客、二束は弁当を作る食堂だった。
「無料だった物が売れた」とリリア。
「二枚目から有料です。一枚目は商品を渡すために必要です」
無料をなくしたのではない。どこまでが店の責任で、どこからが客の追加希望かを決めた。
食堂の店主は翌朝、包んだパンを一つ持って戻った。
「紙がくっついた」
焼きたてをすぐ包み、蒸気が逃げなかったらしい。一号店の卵パンでも同じことが起こる。
冷ます時間を鐘四分の一と決め、温かいまま渡す時は紙を完全に閉じない。包み紙の札へ、小さな湯気の絵と『熱い物は口を開ける』を加えた。
紙を売れば終わりではない。包む商品ごとに使い方が変わった。
夕方、雨が降った。
紙束を買った女性が、店を出る前に立ち止まる。
「これ、濡れるね」
食品用でも防水ではない。宗久は説明札へ雨の絵を足した。
そして、濡らさず持ち帰る袋が必要だと記録した。
女性は紙束を外套の下へ入れたが、干物の包みまでは隠せない。店員が入口から軒下の馬車乗り場まで木板をかざして送った。
食堂の店主は、くっついたパンを見せながら言った。
「紙代を返せとは言わない。でも、店の札どおり包んだ」
札には食品用としか書いていない。熱いパンに向くとは書いていないが、向かないとも書いていなかった。
「説明していないことまで、客の責任にはできません」と雨宮。
紙一束分を返金する案に、店主は首を振った。
「欲しいのは金じゃない。明日の弁当が紙につかないことだ」
ネネが卵パンを一つ使い、閉じ方を三通り試した。完全に包む、片側を開ける、網の上で冷ましてから包む。客の前で紙を開くと、完全に包んだ物だけ表面が剥がれた。
失敗した一個は売れない。試験費用は店が持ち、結果は食堂にも渡した。返金より手間のかかる答えを、客が求めていた。
商品が四十一品になっても、客の帰り道まで考えると足りない物は減らなかった。
雨脚はさらに強くなり、軒先の王冠野菜から雫が落ちた。濡れない商品を増やすのではなく、どの商品も家まで持ち帰れる方法が要る。




