青い旗の売場
缶切り五個を生活用品棚へ置くと、朝から誰も気づかなかった。
「札は出てる」とリリア。
「魚缶を買う人は、ここまで来ません」と雨宮。
食品と刃物を同じ棚には置けない。だから離した。だが離しすぎれば、必要な商品があることも伝わらない。
宗久は魚缶の横へ、缶切りの見本ではなく絵札を置いた。
『開ける道具は生活用品棚』
棚の上には、同じ青い旗を立てる。
最初の客は旗を見つけ、缶切りも一緒に買った。二人目はすでに家にあると言い、魚缶だけ。三人目は値段を見て缶詰を戻した。
「道具が高いから、食品まで売れなくなった」と久瀬。
「一度買えば繰り返し使えます」と宗久。
「客は今日払う」
器と汁物の時と同じだった。便利でも、最初の負担が大きい。
缶切りを買った当日だけ魚缶を値引く案はやめた。必要のない魚缶まで買わせる形になる。
代わりに、店の備品で開ける方法は残す。家で食べる者は缶切りを買い、すぐ食べる者は会計後に店で開ける。
昼前、青い旗だけを見て白乳売場へ来た客がいた。魚缶の札にも白乳の棚にも、同じ青を使っていたからだ。
「青は冷たい物だと思った」と客。
リリアは旗へ白い缶の絵を縫いつけた。色だけに意味を任せず、形も合わせる。生活用品棚の旗には、鉤のついた缶切りの影絵を足した。
旗を高くしすぎると、入口の王冠野菜の看板に隠れる。低くすると人の頭で見えない。ポルカが店の外、入口、会計台の三か所から確認し、最も見える高さへ印をつけた。
「売るのは缶切りなのに、旗ばかり直してる」とトト。
「見つからない商品は、置いていないのと同じです」
それでも刃物を子どもが取れる棚へは置けない。見本は木製で刃のない物にし、商品は会計台の後ろで渡した。
午後、五個すべて売れた。缶切りだけ買った客も一人いた。
「油の缶を開けたい」と言う。
店の裏で空の油缶を借り、本人の前で試す。魚缶より縁が厚く、一度では刃が入らない。ガルドが握りへ小さな突起を足すと、両手で押せた。
「魚用と油用、二種類にするか」とガルド。
「まず同じ道具で開けられる範囲を札へ書きます」
何でも開く万能道具にはしない。開かなかった缶の形も、見本絵へ加えた。
魚缶のために作った道具が、別の加工品にも必要とされた。
閉店後、ガルドへ次の十個を頼む。
「今度は百じゃないのか」
「五個が一日で売れました。次は十個です」
「倍にはするんだな」
五個目を買ったのは、最初にスポンジを菓子と間違えた男だった。
「今度は食べない物だと分かる」
「刃があります。触るのは会計後です」
「前より怖いな」
男は笑ったが、木製見本を握ったまま離さない。家では妻が缶を石で割っているという。自分が使うためではなく、石を使わせないために買うのだった。
「使う人も一緒に説明を聞けますか」
「今日は来てない」
売るか、次に来てもらうか。後ろには客が並んでいる。
宗久は商品を渡し、同じ大きさの使い方札をもう一枚つけた。翌日、男の妻が開けた空き缶を持ってきた。切り口は途中で二度曲がっていたが、指は切っていない。
「絵の三番目を逆に見た」と妻。
トトと同じ間違いだった。一人の失敗ではなく、絵の順番の問題だと分かった。
四十番目の商品、現地製缶切りが生活用品棚へ加わった。食品棚から見える青い旗と、会計台の後ろにある現物。その二つで一つの売場だった。
その横で、客が買った干物を包む紙を求めていた。
食品を増やすたび、持ち帰るための商品も足りなくなる。
宗久は青い旗を外さず、缶の絵が通りから見える向きへ直した。明日の客が一人で見つけられるか、答えが出るのは次の開店後だった。




