↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界スーパーマーケット一号店、本日開店します!  作者: 黒咲かぐら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
74/110

五個と十二人

 惣菜を作る日の朝、白い卵が五個しか届かなかった。


「一個は?」とネネ。


「産まなかった」とフェナ。


「昨日は六個と言いました」


「鳥にも言った。でも産まなかった」


 契約違反にする話ではない。自然に増減することは、最初から分かっていた。


「販売を五個にします」と宗久。


「通常売場の卵を一個使えば?」とリリア。


 卵台には、白札の卵が並んでいる。まだ客は触っていない。


「札を替えれば同じだ」とロアン。


「仕入れ記録も替える必要があります」と雨宮。


 惣菜用と通常販売用を分けた意味がなくなる。だが、開店前で、状態も同じ。変更を記録し、フェナとネネが確認すれば使える。


「一個移します」と宗久。


「昨日、分けるって言った」とリリア。


「分けたあと、理由を残して変更します。黙って混ぜるのとは違う」


 決まりは、何があっても動かさないためではない。変えた時に、誰がなぜ変えたか分かるためにある。


 赤札へ替えた一個に、宗久とフェナが印をつけた。


「鳥の印もいる?」とリリア。


「産んだ鳥が分かるなら」と雨宮。


「そこまでは分からない」とフェナ。


 六個がそろった。


 昼まで通常営業を続ける。卵、白乳、パンは朝に売れ、午後の卵は予定どおり一部を残した。


 惣菜販売の一時間前、外の調理台を組み立てる。


 手洗い用の水桶。排水桶。卵の殻を入れる蓋つき桶。パン用の木ばさみ。完成品を置く台。売らない道具だけで、店の壁一面が埋まった。


「毎回これを出すの?」とトト。


「最初は」と宗久。


「慣れたら減る?」


「必要な物は減りません。置く場所は変えられます」


 ネネが炉へ火を入れる。


 卵を一個ずつ割り、殻と匂いを確認する。最初の五個に問題はない。


 最後の一個は、黄身が崩れていた。


「腐ってはいない」とフェナ。


「運ぶ途中で揺れたのかも」とネネ。


 火を通せば食べられる可能性はある。それでも、ほかの五個と同じ状態ではない。


「これは使いません」と宗久。


「また五個」とリリア。


 予告は六個。外では、すでに客が待っている。


「一個分、卵を薄くする?」とロアン。


「しません」


 五個は、同じ量で作る。


 宗久は予告札の六へ線を引き、五と書いた。理由も添える。


『卵一個を調理前に外したため』


「悪い卵を売ってるみたい」とフェナ。


「外したことを書いています」


「うちの卵が悪いって読まれる」


「運搬で崩れた可能性も書きます」


 フェナは不満そうだったが、消せとは言わなかった。


 一つ目の卵が鉄板へ落ちる。


 二つの黄身が並び、白身が大きく広がった。ネネが折り畳み、薄いパンへ挟む。


 焼けた卵とパンの匂いが、夕方の通りへ流れた。


 待っていた客だけでなく、道の向こうから人が振り返る。


「まだ売りません!」


 リリアが縄の前で両腕を広げた。


 二つ目。三つ目。


 完成品は蓋つきの箱へ入れ、作った順に札をつける。最初の一個から販売時間を数える。


「全部できてから売るの?」


「一個ずつ出すと、調理台の前が混みます」と雨宮。


 五個がそろった。


 列には十二人いた。


「先着五人です」と雨宮。


 六人目の男が声を上げる。


「昨日から待ってた」


「予約は受けていません」


「木片を置いた」


「希望の数を知るための印です」


 男は納得しなかった。


 五個を誰へ売るか。


 商品より先に、列の決まりを作る必要があった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。