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異世界スーパーマーケット一号店、本日開店します!  作者: 黒咲かぐら


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70/110

大きな卵から売れる

 最初の客は、一番大きな卵を取った。


 二人目も、大きい物を選ぶ。


 三人目は籠の中をかき分け、下にあった卵を持ち上げた。


「やっぱり大きい順」とリリア。


 白い卵は一個ずつ同じ値段。フェナは同じ鳥の卵だから同じだと言ったが、客には殻の大きさしか見えない。


「小さいのが残る」とフェナ。


「分けて値段を変えますか」とシャルナ。


「申請した価格は一つです」と雨宮。


 初日に勝手な変更はできない。


 宗久は残った卵を奥へ隠さなかった。代わりに、一個ずつ量りへ載せる。


 大きな卵でも軽い物がある。小さくても重い物もあった。


「中の黄身が二つなら重い」とフェナ。


「割らずに分かります?」


「持てば、だいたい」


 フェナは五個を選び、黄身が二つあると思う方へ印をつけた。ネネが検査用として買い取り、割る。


 当たったのは三個。


「だいたいだね」とフェナ。


「商品札には書けません」


 大きさも、中身も完全にはそろわない。それを隠して同じに見せるより、一個ずつ違うと伝える。


 リリアが、大小の卵を並べた絵を描いた。


『風尾鳥の卵。大きさは選べます。黄身の数は割るまで分かりません』


「外れがあるみたい」とフェナ。


「黄身が一つでも卵です」


「二つの方が得だろ」


「同じ値段なら、そう思う客はいます」


 昼前、小さい卵だけが四個残った。


 子どもを連れた女性が、そのうち二個を選んだ。


「大きいのは売れました」とリリア。


「この子が自分で持つから、小さい方がいい」


 子どもは両手に一個ずつ包み、落とさないよう歩いた。


「小さいのも売れた」とリリア。


「理由が違いましたね」と雨宮。


 最後の二個は、パン職人が買った。


「大きさが違うと、同じパンに使えないのでは」と宗久。


「二個とも割って、必要な分だけ使う」


 家庭と仕事でも、選び方は違う。


 十二個は昼までに売り切れた。


 完売の札を出すと、あとから来た客が不満を口にした。


「朝しか買えない物ばかり増えた」


 白乳も卵も、数が少なく、朝に売れる。鮮魚も早い時間ほど選べる。


「仕事が終わるころには、乾麺しか残ってない」


 冷蔵売場と朝小窓を作ったことで、早く来られる客には便利になった。夕方の客には、店が遠くなっている。


「卵を夕方まで残しますか」とベラ。


「わざと売らないの?」とフェナ。


「夕方に買いたい人がいると分かりました」


 次回は朝にすべて出さず、一部を午後に並べる。ただし当日販売の条件は変えない。


 試しに、午後販売分と書いた空のくぼみを四つ残した。卵そのものは保管箱へ入れ、客から触れない場所に置く。


「あるのに売らないのか」と朝の客。


「夕方に来る方の分です」


「先に来た人が買えないのは変だ」


「夕方まで働く人も、この店のお客さんです」


 納得する者もいれば、首をかしげる者もいた。


 夕方、仕事着のまま来た女性が、残していた二個を買った。


「昨日は殻しか見られなかった」


 残り二個は売れなかった。完売にはならない。それでも、夕方の客が実際に買えた。


 ネネが火を通し、閉店後のまかないへ使う。従業員の食事として店が買い取ったことも記録した。


「全部売るより、面倒」とロアン。


「どの客に来てほしいかを決める売場です」と宗久。


 朝だけ便利な店では、町のスーパーにはなれない。


「売れ残ったら?」


「店が買い取ります」


「卵料理にする?」とネネ。


「惣菜の許可はまだありません」


 宗久は答えながら、売場を見た。


 パンがある。肉と魚がある。白乳と卵が加わった。野菜、果物、調味料、加工食品、生活用品もある。


 材料はそろい始めたのに、すぐ食べられる商品がない。


「夕方の客が買える物を、朝の商品を残すだけで作ろうとしていました」


「ほかに何がある?」とリリア。


「店で作る食事です」


 雨宮が宗久を見る。


「惣菜売場を申請するんですか」


「まだ申請書を作る段階です」


「店長の『まだ』も信用していません」


 閉店後、組合の飼育係がクウを連れてきた。


 小鳥は籠の中で風を吸い、羽を膨らませている。


「この鳥、冷蔵棚の裏へ置けないか」


「なぜです?」


「熱を食べて、冷たい風を吐く」


 冷蔵設備と門を同時に動かす方法が、卵から孵ったばかりの鳥によって持ち込まれた。

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