↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界スーパーマーケット一号店、本日開店します!  作者: 黒咲かぐら


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/110

買い占めは一人二袋まで

「金を払うんだ。何袋買おうが俺の勝手だろ」


 乾麺を十袋抱えた男は、籠を離さなかった。


 後ろには、残りを買いたい客が集まっている。


「今の札には購入数の制限を書いていません」と雨宮。


 その通りだった。開店後に突然「二袋まで」と決めれば、先に買えた客と扱いが変わる。


「十袋、何に使います?」と宗久。


「酒場で売る。湯で戻すだけなら、厨房の手間が減る」


 転売目的だと自分から認めた。


「店で売る値段は?」


「俺が決める」


「今日の十袋は売ります。ただし、次の営業から一人二袋までにします」


 周囲から不満の声が上がった。


「買い占めを認めるのか!」


「書いていなかった店の責任です。今いる方には、残り十袋を一人一袋までで販売します」


 男の会計を済ませ、乾麺の棚へ数量制限の札を出した。


「次から二袋なのに、今は一袋?」


「残りを十人に一袋ずつ買っていただくためです。ご理解いただけない場合は、次の入荷をお待ちください」


 客は文句を言いながらも列を作った。


 乾麺は十分で売り切れた。


 次に植物油が動いた。乾麺を買えなかった客が、珍しい日本商品を何か持ち帰ろうとしたらしい。十本のうち、六本が続けて売れた。


 リリアが説明札を読み上げる。


「これは食べる油。灯りには使わない。鍋にいっぱい入れない」


「いっぱい入れたら?」


「燃える」


 客の手が止まった。


「普通に使えば燃えません」と宗久。「獣脂より匂いが少なく、冷めても固まりにくい油です」


「何を焼く?」


 ネネが白根の切れ端を薄く削り、植物油で焼いた。看板の灯りを消し、調理器具へ電力を回す。香ばしい匂いが売場へ広がった。


 塩を振った白根を試食へ出すと、植物油は残り四本も売れた。


「全部なくなりました」と雨宮。


「説明で売れたな」


「白根も売れました」


 加工品だけでも、地元野菜だけでもない。組み合わせることで、両方に新しい食べ方が生まれる。


 しょうゆは一本しかないため、試食用に開ければ販売できない。宗久は香りだけを嗅いでもらい、使い方を説明した。


「売らない物を、なぜ置く」と客。


「次に何本仕入れるか決めるためです。欲しい方は、この札へ印をつけてください」


 購入希望の札へ、指印が増えた。昼までに二十七人。


「一本しかないのに二十七人」とロアン。


「次は三十本、ではありません」と雨宮。「実際の値段を見て買わない人もいます」


「十本からだな」と宗久。


「売れたら増やす。売れなければ止める」


 ヴァルドが帳簿をのぞき込みながら言った。最初の出店審査で宗久が答えた言葉を覚えていたらしい。


「その通りです」


「忘れるな」


 夕方には、青果もほぼ売り切れた。残ったのは傷のついた葉野菜が八束と、香りの強い草が五束。値下げには前日申請が必要なため、今日だけ安くはできない。


「捨てるの?」とリリア。


「まだ食べられる物は、従業員が同じ値段で買える。ただし、閉店前に取り置きはしない」


「売れなかったら?」


「記録して、賄いに使う許可を組合へ相談する」


 リリアは葉野菜を見たが、隠さず平台へ戻した。


 閉店の鐘まで、あと半刻。


 整理札は百四十番まで進んでいた。最後の客を入れ、ガルドが列の後ろへ営業終了の札を立てる。


「今日はもう入れない」と言われた男が、銀貨を見せた。


「倍払う」


「順番は変えません」とガルド。


「店長を呼べ」


 宗久が出ると、男は銀貨二枚を差し出した。


「しょうゆを売れ」


「一本しかありません。今日は販売しません」


「金ならある」


「二十七人が次の入荷を待っています」


「そいつらより高く買う」


「価格は誰が買っても同じです」


 男は銀貨を引っ込め、店名を確認して帰った。


「貴族の使いかもしれない」とロアン。


「次に来ても同じ値段だ」


 閉店の鐘が鳴った。


 最後の客を送り出し、扉を閉める。全員がその場へ座り込んだ。


「終わった?」とリリア。


「ここから数えます」と雨宮。


 売上、在庫、釣り銭、廃棄。試験営業は、扉を閉めて終わりではない。


 缶詰の在庫はゼロ。乾麺ゼロ。植物油ゼロ。しょうゆ一本。青果十三点。


 ところが、雨宮が会計記録と現金を数え終えたとき、銀貨一枚分が足りなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。