売場を持っていく
三日目、北門へ棚を一台持っていった。
商品は載せていない。四十二品の絵札だけを、普段の売場と同じ位置へ並べた。
「野菜、肉、魚、乾物、生活用品」
マノンが通路を示す。
「欲しい物の前へ、この木玉を置いてください」
最初の旅人は入口で止まった。
「三日の旅に要る物は、どこだ」
「商品ごとに分かれています」
「それを全部探すのか」
一号店では、野菜を選び、肉を選び、調味料を選ぶ。その時間も買物の一部だった。出発前の旅人には、選ぶ時間が荷造りを遅らせる。
男は乾麺の札を見つけたあと、塩を探す途中で棚を離れた。
「分かりにくい」とマノン。
「店と同じにしたのに?」とリリア。
「同じだからだよ」
マノンは自分で並べた札を外した。
その時、北門から風が吹き込み、外した絵札が地面へ散った。旅人たちが拾い、近くの板へ勝手に置いていく。
乾麺の隣に火口布。白乳の隣に木椀。石けんの隣に雨蓋。
「売場がばらばら」とトト。
「旅人には、これが一緒なんだ」とマノン。
火を起こして乾麺を煮る。白乳を木椀へ分ける。体を洗ったあと、濡れた布を雨蓋の下へ入れる。店員には異なる部門でも、使う者には一つの場面だった。
マノンは札を元へ戻さず、旅人が置いた位置を紙へ写した。自分の売場を壊された悔しさは顔に残っていた。
「せっかく百回直したのに」
「間違っていたわけではありません」と雨宮。
「分かってる。ここでは合わないだけ」
それを認める方が、間違いと言われるより難しかった。
『今夜』『三日』『長旅』
三つの板を置き、旅人へ好きな場所に絵札を並べてもらう。
乾麺は三か所すべてへ置かれた。白乳は今夜だけ。干物は三日と長旅。石けんは長旅に多いと思っていたが、今夜へ置く者も多かった。
「宿で体を洗う」と女が言った。
商品の種類ではなく、使う時刻で売場が変わった。
だが宿の主人は板を蹴るように戻した。
「今夜の板に白乳とパンを置くなら、宿の朝食と同じだ」
「商品を売ってはいません」とマノン。
「絵を見せれば、客の頭ではもう売っている」
昨日は取引の話ができた。それでも、相手の不安が消えたわけではなかった。
宗久は今夜の板から、宿で扱う商品を外そうとした。
「外すな」と主人。
「では、どうしますか」
「宿で買える物には、宿の印をつけろ。一号店まで行かなくていいと分かる」
一号店の商品をすべて自分の店へ呼び込むのではなく、近くで買える場所を案内する。
宿の印をつけると、旅人が白乳の札を見て尋ねた。
「夜明け前にも買えるか」
主人は答えに詰まった。宿の朝食は鐘が鳴ってから。昨夜の鉱山帰りと同じで、商品はあっても時刻が合わない。
「明日から、白乳だけ夜明け前に渡す」と主人。
「うちから仕入れる数は?」と宗久。
「先に客へ聞く。お前たちの真似だ」
主人は不満そうに言い、白乳の札へ自分の印を押した。
片づける時、マノンは旅人が並べた順のまま札を束ねた。一号店へ戻せば、また部門ごとの棚へ戻す。それでも写した紙は捨てない。
三日間の調査で、北門に新しい店はできなかった。
代わりに、一号店の商品を扱う場所が一つ増えた。




