白乳を一緒に売れない
「パンと白乳を、一つの札にすればいい」
リリアが、丸パンと白い瓶の絵を並べた。
昨夜の丸パンを買った六人のうち、三人が白乳の値段も聞いた。朝すぐ食べるなら、組み合わせとして分かりやすい。
「二つ買えば安くなる?」とトト。
「安くしません」と雨宮。
白乳は瓶代を預かり、返却時に返す。パンには預かり金がない。一つの価格にすると、何の代金か分からなくなる。
「じゃあ、絵だけ一緒にする」とリリア。
会計台の横へ札を置いた。
最初の客はパンだけ買った。二人目は白乳だけ。三人目が両方を籠へ入れたが、会計で顔をしかめた。
「札の金額と違う」
リリアは、パンの下にパンの価格、白乳の下に白乳の価格を書いたつもりだった。客は二つ合わせた価格だと思った。
「一緒に買えば、その値段じゃないのか」
「別々の価格です」と雨宮。
「なら、並べるな」
客は白乳を戻した。
分かりやすくした札が、買う気をなくさせた。
リリアは札を外そうとしたが、宗久が止めた。
「絵は間違っていません。金額の見せ方を直します」
「私の札で売れなかった」
「確認しないで置かせたのは俺です」
「いつも店長が謝ったら終わる」
リリアは札を抱えたまま、入口へ行ってしまった。
宗久は追いかけなかった。今声をかければ、正しい直し方を説明するだけになる。
その間に別の問題が起きた。冷えた白乳と温かい丸パンを同じ薄い袋へ入れた客が、戻ってきたのだ。
「パンが濡れてる」
瓶の表面についた水が紙包みへ移っていた。雨は降っていない。雨袋を直した翌日に、店の中で商品を濡らした。
ネネは乾いた布巾で瓶を包んだ。
「布巾まで買わせるの?」と客。
「買わせません。これは店の物です」とベラ。
だが店の布巾を渡せば、戻ってこないかもしれない。預かり金を取れば、朝食を買うための金額が増える。
ポルカが包み紙を一枚折り、瓶とパンの間へ仕切りを作った。水は止まったが、袋の中で倒れる。
ガルドは小さな木の輪を置いた。瓶の底は止まる。けれど瓶の太さは工房ごとに違う。
「また全部に合う物を作るの?」とポルカ。
昨日と同じ問いだった。
答えを出したのは、戻ってきたリリアだった。新しい札には、袋の絵が二つ描いてある。
「一緒に食べる。でも、持つ時は分ける」
値引きの札ではなく、選び方と持ち帰り方を示す札にした。価格は商品ごとに離して書く。
宗久は口を出さず、客役になった。
「この二つで、いくらですか」
リリアが別々の価格を指し、最後に瓶代の返却札を見せる。
「分かりました」
「一回で分かった顔しないで。もう一回」
宗久は同じ質問をした。
閉店までに、パンと白乳を一緒に買った客は二人。期待したほどは増えなかった。
それでも、白乳を戻した客が夕方に来て、新しい札の前で立ち止まった。
「今度は別の値段だな」
男は二つを買い、袋も分けてもらった。
売れた数は増えなかった。
間違えて買う客は、一人減った。




